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さらに2日後、彼女たちの処罰が決まった。
2週間の謹慎・・・
お父様から伝えられ、これで学園にまた通えると喜んだけれどお兄様は納得できていないのか『甘すぎる!』と怒っていた。
彼女たちはオルト嬢に指図された訳ではなく、庶子の私が侯爵令嬢の身分を与えられている事が気に食わなかった・・・元平民なら下位貴族でも多少嫌がらせをしても大丈夫だと思っていた・・・と理由を言っていたそうだ。
彼女たちはオルト嬢を憐れになど思っていなかったとも・・・
彼女たちには学園長から『ユティフローラ・ラグーナ令嬢は間違いなくラグーナ侯爵とラグーナ侯爵夫人の娘です。今後この様な戯言に惑わされないように』と厳重注意を受けて謹慎を言い渡されたそうだ。
それと同じ事を学園長からオルト嬢にも伝えられたと・・・
今回オルト嬢が処罰を受けなかったのは彼女たちが勝手に行動した事が分かったからだ。
それでもオルト嬢が私を"偽物"だと口にする事は二度と出来なくなった。
オルト嬢の存在を知ってしまったからには、いつか相見える日も来るのだろう。
その時は堂々とした姿を見せなくてはならない。
ラグーナ侯爵家の娘として、ソルトレグス帝国の王位継承者第三位として、見下される訳にはいかない。
そもそも後ろ指を指されるような事は何もしていないもの。
結局明日登校しても翌日は休みだったこともあり休み明けに登校する事になった。
心配そうな顔をしたお父様とお兄様に笑顔で行ってきますと手を振って馬車に乗り込んだ。
結局10日近く休んでしまったけれど、久しぶりの学園に心が弾む。
馬車の扉が開いて手を差し出してくれたのはエド。
「おはようエド。ありがとう」
「おはようユティ」
「わたくしもいるわよ。おはようユティ」
「おはようリア」
私たち3人、いえ私に視線が向けられている事は気づいたけれど、無視して3人で教室に向かった。
教室に入るとクラスメイトが次々声をかけてくれる。
私を偽物だと蔑むような目を向けてくる人がいないことにも安心した。
以前と変わらない日常が送れると思うと嬉しくなった。
そして食堂でランチを3人で食べている時にもあちこちから視線は向けられていた。
気分はよくないが、今こそ堂々とした姿を見せつける場だと背筋を伸ばした。
「こんにちはエドワード、エミリア。それに久しぶりだねラグーナ嬢」
振り向くとトレーを持ったディオリス殿下が笑顔で立っていた。
挨拶を返すと「私も御一緒してもいいかな?」と円卓のテーブルのひとつ余っている席に返事を待たぬまま座った。
「3人で仲良く食事しているのに勝手に入ってこないで下さい」リアのストレートな言葉も私の正面に座ったディオリス殿下は「たまには幼馴染との交流も大事だよ」と軽く流した。
確かに学年が違えばこういう共有の場でしか会う機会は少ない。
それにディオリス殿下はリアとエドの幼馴染だし、一緒に食事ぐらいしてもいいと思う。のだが・・・さらに視線が集まるのはいかがなものか・・・私は3人のやり取りを見ながらも食事に集中した。
「あら、ディオリス殿下、エドワード様ご機嫌よう」
「こんにちはブリジック嬢」
「ああ、こんにちは」
声のする方を見ると確かにブリジック嬢がいたけれど、笑顔で挨拶するディオリス殿下とは違い目線も合わせず素っ気ない態度のエド。
そして、私とリアには挨拶なし・・・
エドとリアからブリジック嬢のことを聞いていたとはいえ、エドの近くにいる私たちのことをよく思っていないことは分かった。
その証拠に私たちの存在を無視してディオリス殿下とエドに話しかけ続けている。
ついリアの方を見ると慣れているのか気にもせず黙々とランチを食べている。
私の視線に気づいたのか目が合うと面白いことを思いついたような顔でウインクしてきた。
「ユティわたくし達は食べ終わりましたし席を外しましょうか?お邪魔のようですし」
嫌味を忘れないリア。
「え、ええ。ディオリス殿下お先に失礼致します」
殿下に挨拶をするとエドまで立ち上がった。
「ラグーナ嬢待って、ちょっと待って」
慌てたようにディオリス殿下に引き止められた。
接点のない彼と話すことなど何もないのにと首を傾げると目を見開いて動かなくなった。
「ディオリス殿下はほっといてユティ行きましょう」
リアがそう言うならいいかと席から立ち上がろうとした時「キャッ」と声がしたと思ったら頭に何かが当たって次々に上から物が落ちてきた。
膝に落ちたものを見てブリジック嬢の持っていたランチプレートが私にあたったのだろうと思ったが位置的におかしい・・・
さっきまではエドとディオリス殿下の間にいたのに・・・今は私の後ろにブリジック嬢がいる。
「「ユティ」」リアとエドの声が聞こえた。
「ごめんなさいね~。でも貴女が急に立ち上がるからよね?」
まるで自分は何も悪くないと言うようなセリフに少しだけイラッときた。
ただでさえ視線を集めていたのに、食器の落ちる音とブリジック嬢のワザらしい声で注目され、さらに私は汚れまみれだ。
こんな時こそ背筋を伸ばし淑女の微笑みを貼り付けブリジック嬢に「そうですね。申し訳ございませんわ。では今度こそ失礼致します」と礼をして背中を向けた。
「ラグーナ嬢!着替えなら医務室にある。私が連れて行こう」
後ろから聞こえるディオリス殿下にも振り向いてしっかり断る。
「いいえ結構ですわ。ディオリス殿下はブリジック嬢とごゆっくりお過ごし下さいませ」
もちろん微笑みは崩さない。
リアとエドが何かを言う前に目で止めるとエドが上着を脱いで肩にかけてくれた。
そのまま食堂から出て行く。
「あの女ワザとユティが立ち上がるタイミングを狙ったな」
「ええ、相変わらずいい性格だこと」
「2人とも私は全然気にしていないわ。それよりも皆さんの目を見た?ブリジック嬢に非難の目を向けていたわよ」
あれは誰が見てもワザとしか見えなかったはずだ。
それに食堂から出る時に目が合った男子生徒が頷くのを見て彼がジル兄様がこの学園に紛れ込ませた人物だと分かった。
この事も報告するのだろうけれど、あと他に何人ジル兄様の手の者が入り込んでいるんだか・・・ジル兄様は本当に過保護だわ。
2週間の謹慎・・・
お父様から伝えられ、これで学園にまた通えると喜んだけれどお兄様は納得できていないのか『甘すぎる!』と怒っていた。
彼女たちはオルト嬢に指図された訳ではなく、庶子の私が侯爵令嬢の身分を与えられている事が気に食わなかった・・・元平民なら下位貴族でも多少嫌がらせをしても大丈夫だと思っていた・・・と理由を言っていたそうだ。
彼女たちはオルト嬢を憐れになど思っていなかったとも・・・
彼女たちには学園長から『ユティフローラ・ラグーナ令嬢は間違いなくラグーナ侯爵とラグーナ侯爵夫人の娘です。今後この様な戯言に惑わされないように』と厳重注意を受けて謹慎を言い渡されたそうだ。
それと同じ事を学園長からオルト嬢にも伝えられたと・・・
今回オルト嬢が処罰を受けなかったのは彼女たちが勝手に行動した事が分かったからだ。
それでもオルト嬢が私を"偽物"だと口にする事は二度と出来なくなった。
オルト嬢の存在を知ってしまったからには、いつか相見える日も来るのだろう。
その時は堂々とした姿を見せなくてはならない。
ラグーナ侯爵家の娘として、ソルトレグス帝国の王位継承者第三位として、見下される訳にはいかない。
そもそも後ろ指を指されるような事は何もしていないもの。
結局明日登校しても翌日は休みだったこともあり休み明けに登校する事になった。
心配そうな顔をしたお父様とお兄様に笑顔で行ってきますと手を振って馬車に乗り込んだ。
結局10日近く休んでしまったけれど、久しぶりの学園に心が弾む。
馬車の扉が開いて手を差し出してくれたのはエド。
「おはようエド。ありがとう」
「おはようユティ」
「わたくしもいるわよ。おはようユティ」
「おはようリア」
私たち3人、いえ私に視線が向けられている事は気づいたけれど、無視して3人で教室に向かった。
教室に入るとクラスメイトが次々声をかけてくれる。
私を偽物だと蔑むような目を向けてくる人がいないことにも安心した。
以前と変わらない日常が送れると思うと嬉しくなった。
そして食堂でランチを3人で食べている時にもあちこちから視線は向けられていた。
気分はよくないが、今こそ堂々とした姿を見せつける場だと背筋を伸ばした。
「こんにちはエドワード、エミリア。それに久しぶりだねラグーナ嬢」
振り向くとトレーを持ったディオリス殿下が笑顔で立っていた。
挨拶を返すと「私も御一緒してもいいかな?」と円卓のテーブルのひとつ余っている席に返事を待たぬまま座った。
「3人で仲良く食事しているのに勝手に入ってこないで下さい」リアのストレートな言葉も私の正面に座ったディオリス殿下は「たまには幼馴染との交流も大事だよ」と軽く流した。
確かに学年が違えばこういう共有の場でしか会う機会は少ない。
それにディオリス殿下はリアとエドの幼馴染だし、一緒に食事ぐらいしてもいいと思う。のだが・・・さらに視線が集まるのはいかがなものか・・・私は3人のやり取りを見ながらも食事に集中した。
「あら、ディオリス殿下、エドワード様ご機嫌よう」
「こんにちはブリジック嬢」
「ああ、こんにちは」
声のする方を見ると確かにブリジック嬢がいたけれど、笑顔で挨拶するディオリス殿下とは違い目線も合わせず素っ気ない態度のエド。
そして、私とリアには挨拶なし・・・
エドとリアからブリジック嬢のことを聞いていたとはいえ、エドの近くにいる私たちのことをよく思っていないことは分かった。
その証拠に私たちの存在を無視してディオリス殿下とエドに話しかけ続けている。
ついリアの方を見ると慣れているのか気にもせず黙々とランチを食べている。
私の視線に気づいたのか目が合うと面白いことを思いついたような顔でウインクしてきた。
「ユティわたくし達は食べ終わりましたし席を外しましょうか?お邪魔のようですし」
嫌味を忘れないリア。
「え、ええ。ディオリス殿下お先に失礼致します」
殿下に挨拶をするとエドまで立ち上がった。
「ラグーナ嬢待って、ちょっと待って」
慌てたようにディオリス殿下に引き止められた。
接点のない彼と話すことなど何もないのにと首を傾げると目を見開いて動かなくなった。
「ディオリス殿下はほっといてユティ行きましょう」
リアがそう言うならいいかと席から立ち上がろうとした時「キャッ」と声がしたと思ったら頭に何かが当たって次々に上から物が落ちてきた。
膝に落ちたものを見てブリジック嬢の持っていたランチプレートが私にあたったのだろうと思ったが位置的におかしい・・・
さっきまではエドとディオリス殿下の間にいたのに・・・今は私の後ろにブリジック嬢がいる。
「「ユティ」」リアとエドの声が聞こえた。
「ごめんなさいね~。でも貴女が急に立ち上がるからよね?」
まるで自分は何も悪くないと言うようなセリフに少しだけイラッときた。
ただでさえ視線を集めていたのに、食器の落ちる音とブリジック嬢のワザらしい声で注目され、さらに私は汚れまみれだ。
こんな時こそ背筋を伸ばし淑女の微笑みを貼り付けブリジック嬢に「そうですね。申し訳ございませんわ。では今度こそ失礼致します」と礼をして背中を向けた。
「ラグーナ嬢!着替えなら医務室にある。私が連れて行こう」
後ろから聞こえるディオリス殿下にも振り向いてしっかり断る。
「いいえ結構ですわ。ディオリス殿下はブリジック嬢とごゆっくりお過ごし下さいませ」
もちろん微笑みは崩さない。
リアとエドが何かを言う前に目で止めるとエドが上着を脱いで肩にかけてくれた。
そのまま食堂から出て行く。
「あの女ワザとユティが立ち上がるタイミングを狙ったな」
「ええ、相変わらずいい性格だこと」
「2人とも私は全然気にしていないわ。それよりも皆さんの目を見た?ブリジック嬢に非難の目を向けていたわよ」
あれは誰が見てもワザとしか見えなかったはずだ。
それに食堂から出る時に目が合った男子生徒が頷くのを見て彼がジル兄様がこの学園に紛れ込ませた人物だと分かった。
この事も報告するのだろうけれど、あと他に何人ジル兄様の手の者が入り込んでいるんだか・・・ジル兄様は本当に過保護だわ。
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