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お兄様はリアとエドの早朝張り込みのおかげで落書きの犯人が見つかったことにはお礼を言っていたが、まだ15、16歳の子供が危険なことをするのはダメだよっと、優しく諭していた。

目が覚めたリアはお兄様に諭されてシュンと落ち込んでいたが、"ユティの信頼する友達がリア嬢でよかった" とお兄様に微笑まれると真っ赤になってまた気絶してしまった。

エドの「はぁ短時間で2度の気絶・・・コイツ置いて帰ってもいいですか?」に私もお兄様も笑うしかなかった。

夕食も我が家でお父様も加わって5人で取った。
終始リアだけが落ち着かない様子だったけれど、楽しい時間を過ごせた。

結局、彼女たちの処罰が決まるまでは学園を休むことになったけれど、その間もリアとエドが報告がてら会いに来てくれると言って帰って行った。

もちろん彼女たちの家にはラグーナ侯爵家から抗議文が届く手筈になっている。

下位の貴族令嬢だと聞いた。
その彼女たちが侯爵令嬢である私を中傷したのだ。

良くて謹慎。

最悪は学園を退学させられて修道院行きか、もしくは廃嫡または除籍されて平民になるかのどちらかだろう。

オルト嬢の根拠のない言葉を信じなければ・・・彼女たちが処罰を受けることもなかったのに・・・

学園内での事だろうが彼女たちがした事は社交界でも噂になる。
たとえ謹慎だけで済んだとしても、彼女たちの居場所はもう社交界にはないだろう。
厳しいようだがこれが貴族世界だ。




それから3日後リアとエドが会いに来てくれた。

既に彼女たちがした事は学園で噂になっているそうだが、私が偽物だと言う噂も広がってしまったようだ。

ナルシ嬢の情報では『彼女たちはわたくしに同情してあんな事をしてしまったのね』と泣くオルト嬢に同情する子息や令嬢に囲まれて守られているそうだ・・・もちろん下位貴族たちだ。

「オルト嬢は見た目は小柄で可愛らしい令嬢らしくて、男子生徒からは人気があるそうなのよ。守ってあげたくなるような庇護欲をそそる令嬢なんですって」

「会ったことは無いが俺から言わせれば強かなイメージだけどな」

「自分の見せ方を知っているのでしょうね」

「オルト嬢がラグーナ侯爵家で過ごしたのはたった7ヶ月ほどなのに、自分が侯爵令嬢だと信じているのは何故なんだ?その期間以外はずっと男爵家の本当の父親の元で育ったんだろ?」

「母親の言葉を信じて父親をラグーナ侯爵だと思い込んでいるのでしょうね。それとラグーナ侯爵家での待遇が忘れられないのかもしれないわね」

リアとエドがお菓子を食べながら話している。

男爵は娘に何も教えていないのだろうか? 

お父様を思い続ける人と結婚して男爵は幸せだったのだろうか?

オルト嬢は父親を何て呼んでいるのだろうか?

いつからお父様を父親と思い込まされていたのだろうか?

疑問ばかりが頭に浮かぶ。

一度オルト嬢と話して誤解を解いた方がいいのだろうか?
庇護欲をそそると言われるような令嬢なのだから母親のような攻撃的な人ではないと思うのだけれど・・・

・・・いえ、ダメね。
お父様とお兄様に絶対に反対される。

でもこれ以上偽物と言われるのもイヤ!

「ユティの事はわたくしとエドが守るから、早く登校してね」

「ありがとう」

早く学園にまた通いたいな。





~ビアンカ・オルト男爵令嬢視点~

小さい頃からお母様に繰り返し言われてきた言葉がある。

『貴女のお父様はラグーナ侯爵家のご当主様なのよ。とても素敵な方なの。今は理由があって一緒に暮らせないけれど、いつかビアンカに本当のお父様に会わせてあげるわ』

綺麗で優しい大好きなお母様。

一緒に暮らしている男の人は物心ついた時から"おじさん"って呼んでいた。

そのおじさんに、『僕はビアンカのお父様だよ』と何度も言われたけれども、信じられなかった。

だっておじさんは男爵なのよ?

こんな冴えない男の人が綺麗なお母様にも、可愛らしいわたくしにも相応しくないもの。

お母様がいつも話してくれるラグーナ侯爵こそわたくしのお父様に相応しい。

ラグーナ侯爵家には、今は子連れの女の人が住んでいるらしい。
その人の息子と娘を優しいお父様は庶子として籍にいれたのですって。
他人を籍に入れるなんて!
庶子は妾との間に生まれた子の事をいうのでしょ?
お父様はお母様だけを愛しているって、だからその子供たちはお父様の本当の子供じゃないとお母様が教えてくれた。


なぜなの?
ここにお父様の本当の娘がいるのに!って、ずっと思っていたの。



だけど14歳の頃、やっとお父様に呼び寄せてもらえた。
平民の女が亡くなったのですって。

お母様とわたくしを引き止めるおじさんをお母様は『準備が整ったのでロイド様のもとに行きます。二度とここには戻りません』と冷たくあしらって馬車に乗った。

初めて見るラグーナ侯爵家はわたくしの住んでいた男爵家の家よりも何倍も大きくて、子供のわたくしの目から見ても調度品も高価な物だと分かった。

お父様はお仕事で海外にいるらしく、迎えは侯爵家の執事長とメイド達がしてくれた。

庶子の義理兄は留学中らしく会えなかった。

そして、わたくしから侯爵令嬢の座と、お父様を奪った庶子の娘にだけ会った。

わたくしが着るべきドレスを当たり前にように着ているその子にムカついた。

"すべてわたくしに返しなさい!"

今からわたくしが、ラグーナ侯爵家唯一の娘になるのよ!
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