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お父様とお兄様に話した結果、私はしばらくの間学園を休むことになってしまった。
過保護で心配性なお父様とお兄様に『ユティの身を守るためだよ』と言われれば嫌だと我儘も言えなくなった。


それも仕方のないことだろう。
ビアンカ・オルト嬢が私を閉じ込めたあの女の人の娘だったなんてね。
思いもしなかった。
いえ、娘の存在を忘れていたわね。

私が閉じ込められている間、オルト嬢はラグーナ侯爵家の令嬢として私の部屋を与えられ、部屋にあるドレスや宝飾品も『お父様からのプレゼントよ』とあの人に言われれば信じたかもしれない。
いや、今も信じているのだろう。

私が見つかって、ラグーナ侯爵家から追い出されたのは当然だ。
だって、彼女にはお父様の血の一滴も流れていないのだから。
私たち家族から言わせればあの母娘は侵入者に過ぎない。

確かに男爵家と侯爵家では環境も身につけるものにも差が出るのは知っているわ。

それが忘れられないのだろうか?
でも、彼女がラグーナ侯爵家で過ごしたのは7ヶ月程なのに?
彼女は自分の母親が何をしたのか知らされていないのだろか?

・・・そうよね。
知っていれば、自分がラグーナ侯爵家の娘ではないことも知っているし、私を偽物だと人に話したりしないはずだ。
だって母親は処刑された罪人ですもの。
もしかして母親の死因も知らないのでは・・・

あの人が我が家で使った部屋は中の物を全部破棄して閉ざされた。
もちろん元の私の部屋もオルト嬢が使用していた為、全て破棄した後は物置部屋になっている。

今はお兄様の部屋の隣を改装して元の部屋よりも広く、以前よりも落ち着いた部屋になっている。
前は可愛らしい部屋だったものね。

「お父様とお兄様はオルト嬢のお顔をご存知ですの?」

「知らないよ。見る価値もない」

珍しくお父様が眉間に皺を寄せて言い捨てる。

「私も母親の方は見たけれど娘の方は我が家の護衛に任せたからね会っていないよ」

なるほど・・・私も一度彼女を見たけれど覚えてないわね。

「まあ父上はあの女にも護送されるまで一度も会わなかったからね。あの女にとって父上と会わせるのはご褒美になってしまうからね」

そうよね。
学生の時からお父様を思っていたであろうあの人はお父様に会えないまま最後を迎えたのね。

「取り敢えず、ユティは暫く学園を休んでいなさい。その間に犯人を見つけて処罰を与えよう」

お父様も相当怒っているわね。

「そうだよユティは生まれた時から僕の可愛い妹なんだ。それに侯爵令嬢のユティを『汚らわしい』と言った令嬢も探し出すから安心してね」

お兄様まで・・・

「わかりました学園は休みます。でも、リアとエドには私とオルト嬢の関係を教えてもいいかしら?2人は信用出来る人たちよ」

「いいよ。マキュリー公爵夫妻とオーラント公爵夫妻にも私から伝えておこう。彼らはあの女の執着を知っているからね」





次の日、私は初めて学園を休んだ。

そして黒板に書き込んだ犯人は私が休んだその日のうちに見つかったそうだ。
学園の帰りに我が家に寄って詳しく話すとリアから先触れがあった。

「リア、エドいらっしゃい」

「ユティに報告があるの」

「私も2人に話したい事があるから応接室に行きましょう」

リアとエドの2人は犯人の行動を予測して早朝から学園の護衛と一緒に物陰に隠れて待機していたらしい。
そして2学年の令嬢3人を現行犯で取り押さえたと。

「昨日ナルシ嬢が言っていたオルト嬢が流している噂の理由もだいたい分かったわ。これはラグーナ侯爵家の一部の人と王家しか知らない事なのだけれど、2人を信用して話すわ。口外はしないでね」

2人が頷くのを確認してから話しはじめた。

オルト嬢の母親がお父様に執着し、我が家の執事長の家族を人質にして、お父様は外交で海外に、お兄様はソルトレグス帝国に留学中で私が1人で留守をしている間にラグーナ侯爵家に後妻として入り込んだこと。

私を約7ヶ月間地下に閉じ込め暴力を奮っていたこと。

娘のオルト嬢をお父様の娘だとラグーナ侯爵家の使用人たちに紹介し、私の部屋とドレスに宝飾品まで与えていたこと。

私の水死体を用意し、私が死んだことにし葬儀まで済ませていたこと。

話している間にどんどん顔色が悪くなる2人に安心させるように微笑む。

そして留学中のお兄様が突然帰ってきたことで、赤の他人がラグーナ侯爵家に入り込み夫人のように振る舞っていたことが発覚し捕まったこと。

私を見つけたのはお兄様と一緒に我が家についてきていた従兄弟でソルトレグス帝国の皇太子のジルグレート皇子だったこと。

私のお母様がソルトレグス帝国の皇女だったこと。
お母様が皇女だと言うことはグラドラ王国では一部の人しか知らないこと。

お兄様はソルトレグス帝国の王位継承権第二位で、私が王位継承権第三位だと言うこと。

数年後にはジルグレート皇子のもとに私が嫁ぐこと。

「機会があればリアとエドにもジル兄様を紹介するわね」

あの人の話の時には青い顔をしていた2人もジル兄様と私の話になれば目を見開いて驚愕した表情ね。

「・・・だからか、うちの両親がユティを守れと言っていたのは」

「そうね。わたくしの両親もよ」

「だからね、お兄様には政略結婚は必要ないの。リア頑張ってね」

「ええ!ええ!レグルス様がソルトレグス帝国の王位継承権第二位だろうとそんなものは関係ないわ!わたくしは例えレグルス様が平民だったとしても彼を好きになっていたわ!」

立ち上がって力説するリアの後ろにはノックをして入ってきたお兄様が困った顔で笑っていた・・・

エドは呆れてヤレヤレとポーズを取っているし、お兄様に気付いたリアは・・・驚いて固まったまま気絶した・・・。

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