18 / 58
18
しおりを挟む
デビュタントでは白いドレスを着ることになっているが、ドレスのリボンや刺繍の色には決まりがなく、婚約者のいる方ならば相手の色を使ったり、婚約者がいなければ家族の色を使う事が多い。
そういう私はお父様とお兄様の髪の色の濃紺をドレスの刺繍に使い、腰周りのリボンも濃紺だ。
ネックレスとイヤリングはお父様の瞳の色のブルーサファイア。
玄関ホールで私の支度を待っていた、お父様とお兄様には絶賛されたが、これは侍女達の技術が優れているからだ。
「私がエスコートしたかったのに・・・」
馬車に乗り込もうとしたら、まだお兄様は拗ねているようでお父様にブツブツ文句を言っていた。
「お前がチェスで負けるのが悪いのだろう?エスコートの権利が欲しければ次は頑張りなさい。ユティのエスコートが叶わないままジルグレート皇子のところに嫁いでしまうぞ」
まあ!お父様ったら意地悪ね。
「それはダメだ!ユティ大丈夫だぞ。次は兄様が必ず勝つからね」
「頑張ってくださいね。お兄様」
お兄様と使用人達に見送られて、デビュタントが開かれる王宮に向かった。
「王族への挨拶とファーストダンスが終われば帰宅も許されているからね。疲れたら我慢せずに言いなさい」
「はい!でもお父様と踊るのは楽しみなんです!」
「ユティがいい子に育ってくれて嬉しい」
もう大袈裟なんだから。
程なく王宮に到着したようで馬車が止まった。
お父様が先に降りて手を差し出してくれた。
お父様に連れられて向かった先は控え室のようで、呼ばれるまではここで待機するようだ。
暫くすると係の人が声をかけてくれた。
「さあユティ準備はいいかい?」
「はい」
大きな扉の前で「ロイド・ラグーナ侯爵、ユティフローラ・ラグーナ侯爵令嬢のご入場」
ホールに一歩踏み込めば天井には大小のシャンデリアが眩しく、着飾った沢山の方に白いドレスの令嬢に一斉に注目された気がしたが、その視線がお父様に向けられたものだと気付いた。
お父様世代の夫人だけでなく、若い令嬢の方までがお父様を見て頬を染めているからだ。
確かにお父様って娘の私から見ても素敵なんだよね。
実年齢よりも若く見えるし、背も高くて引き締まった体つきだし無駄な脂肪なんて付いてなくスタイルもいいの。
それに甘いお顔もいい!
自慢のお父様よ!
次々にお父様に挨拶にくる方たちに私も丁寧な挨拶を返していると騒がしかったホールが急に静まり返ると皆が揃って礼をとる。
王族の入場だ。
王族の方たちが席に着くとデビュタントを迎えた高位貴族から挨拶のために並び始めた。
今年の成人を迎えるのは4つある公爵家の内、今年はマキュリー公爵家のリアと、オーラント公爵家のエドだけみたいで、次はラグーナ侯爵家の私の番だった。
陛下と王妃様に挨拶をすると、2人とも私を見て目を見開いた。
王妃様の口が『ミルティーア様』と動いたと思ったら口元を扇子で隠してしまわれた。
私を見つめる王妃様の目は若干潤んでいるように見えた。
お父様とその場を後にしてリアとエドと合流したら、マキュリー公爵夫妻と、オーラント公爵夫妻もいた。
「リアすごく似合っているわよ」
「それを言うならユティもよ」
2人で笑い合っていると「はあ」と溜め息が聞こえた。エドだ。
「帰りたい・・・リア、ファーストダンスを踊ったら帰らないか?」
どうしたの?リアに目で質問すると、リアが顎でさした方向を見るとこちらを睨む令嬢が・・・
「あの方がブリジック嬢よ」
でもブリジック嬢のその後ろにも色とりどりのドレスで着飾った令嬢たちの集団がこちらを見てヒソヒソと話しているようだ。
雰囲気的にいい話をしてるとは思えない様子に不安になってきた。
「さあユティ、ファーストダンスだ。お手をどうぞレディー?」
いつもダンスの練習に付き合ってくれていたお父様とのダンスはとても楽しくて一曲が終わるのもあっという間だった。
その後はパートナーを変えてエドとも踊り、リアは真っ赤な顔でお父様と踊っていた。
いつの間にか彼女たちの存在を忘れていた。
そして、次の日から私の周りでおかしな事が起こり始めたのだ。
そういう私はお父様とお兄様の髪の色の濃紺をドレスの刺繍に使い、腰周りのリボンも濃紺だ。
ネックレスとイヤリングはお父様の瞳の色のブルーサファイア。
玄関ホールで私の支度を待っていた、お父様とお兄様には絶賛されたが、これは侍女達の技術が優れているからだ。
「私がエスコートしたかったのに・・・」
馬車に乗り込もうとしたら、まだお兄様は拗ねているようでお父様にブツブツ文句を言っていた。
「お前がチェスで負けるのが悪いのだろう?エスコートの権利が欲しければ次は頑張りなさい。ユティのエスコートが叶わないままジルグレート皇子のところに嫁いでしまうぞ」
まあ!お父様ったら意地悪ね。
「それはダメだ!ユティ大丈夫だぞ。次は兄様が必ず勝つからね」
「頑張ってくださいね。お兄様」
お兄様と使用人達に見送られて、デビュタントが開かれる王宮に向かった。
「王族への挨拶とファーストダンスが終われば帰宅も許されているからね。疲れたら我慢せずに言いなさい」
「はい!でもお父様と踊るのは楽しみなんです!」
「ユティがいい子に育ってくれて嬉しい」
もう大袈裟なんだから。
程なく王宮に到着したようで馬車が止まった。
お父様が先に降りて手を差し出してくれた。
お父様に連れられて向かった先は控え室のようで、呼ばれるまではここで待機するようだ。
暫くすると係の人が声をかけてくれた。
「さあユティ準備はいいかい?」
「はい」
大きな扉の前で「ロイド・ラグーナ侯爵、ユティフローラ・ラグーナ侯爵令嬢のご入場」
ホールに一歩踏み込めば天井には大小のシャンデリアが眩しく、着飾った沢山の方に白いドレスの令嬢に一斉に注目された気がしたが、その視線がお父様に向けられたものだと気付いた。
お父様世代の夫人だけでなく、若い令嬢の方までがお父様を見て頬を染めているからだ。
確かにお父様って娘の私から見ても素敵なんだよね。
実年齢よりも若く見えるし、背も高くて引き締まった体つきだし無駄な脂肪なんて付いてなくスタイルもいいの。
それに甘いお顔もいい!
自慢のお父様よ!
次々にお父様に挨拶にくる方たちに私も丁寧な挨拶を返していると騒がしかったホールが急に静まり返ると皆が揃って礼をとる。
王族の入場だ。
王族の方たちが席に着くとデビュタントを迎えた高位貴族から挨拶のために並び始めた。
今年の成人を迎えるのは4つある公爵家の内、今年はマキュリー公爵家のリアと、オーラント公爵家のエドだけみたいで、次はラグーナ侯爵家の私の番だった。
陛下と王妃様に挨拶をすると、2人とも私を見て目を見開いた。
王妃様の口が『ミルティーア様』と動いたと思ったら口元を扇子で隠してしまわれた。
私を見つめる王妃様の目は若干潤んでいるように見えた。
お父様とその場を後にしてリアとエドと合流したら、マキュリー公爵夫妻と、オーラント公爵夫妻もいた。
「リアすごく似合っているわよ」
「それを言うならユティもよ」
2人で笑い合っていると「はあ」と溜め息が聞こえた。エドだ。
「帰りたい・・・リア、ファーストダンスを踊ったら帰らないか?」
どうしたの?リアに目で質問すると、リアが顎でさした方向を見るとこちらを睨む令嬢が・・・
「あの方がブリジック嬢よ」
でもブリジック嬢のその後ろにも色とりどりのドレスで着飾った令嬢たちの集団がこちらを見てヒソヒソと話しているようだ。
雰囲気的にいい話をしてるとは思えない様子に不安になってきた。
「さあユティ、ファーストダンスだ。お手をどうぞレディー?」
いつもダンスの練習に付き合ってくれていたお父様とのダンスはとても楽しくて一曲が終わるのもあっという間だった。
その後はパートナーを変えてエドとも踊り、リアは真っ赤な顔でお父様と踊っていた。
いつの間にか彼女たちの存在を忘れていた。
そして、次の日から私の周りでおかしな事が起こり始めたのだ。
210
お気に入りに追加
2,427
あなたにおすすめの小説

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい

(完結)だったら、そちらと結婚したらいいでしょう?
青空一夏
恋愛
エレノアは美しく気高い公爵令嬢。彼女が婚約者に選んだのは、誰もが驚く相手――冴えない平民のデラノだった。太っていて吹き出物だらけ、クラスメイトにバカにされるような彼だったが、エレノアはそんなデラノに同情し、彼を変えようと決意する。
エレノアの尽力により、デラノは見違えるほど格好良く変身し、学園の女子たちから憧れの存在となる。彼女の用意した特別な食事や、励ましの言葉に支えられ、自信をつけたデラノ。しかし、彼の心は次第に傲慢に変わっていく・・・・・・
エレノアの献身を忘れ、身分の差にあぐらをかきはじめるデラノ。そんな彼に待っていたのは・・・・・・
※異世界、ゆるふわ設定。

婚約者の不倫相手は妹で?
岡暁舟
恋愛
公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?
百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」
あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。
で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。
そんな話ある?
「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」
たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。
あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね?
でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する?
「君の妹と、君の婚約者がね」
「そう。薄情でしょう?」
「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」
「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」
イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。
あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。
====================
(他「エブリスタ」様に投稿)
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

婚約者様。現在社交界で広まっている噂について、大事なお話があります
柚木ゆず
恋愛
婚約者様へ。
昨夜参加したリーベニア侯爵家主催の夜会で、私に関するとある噂が広まりつつあると知りました。
そちらについて、とても大事なお話がありますので――。これから伺いますね?

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる