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しおりを挟む『君は僕のお嫁さんになるんだよ。僕の可愛いユティ。大好きだよ』
ジル兄様・・・
暖かい・・・
目は覚めたはずなのに何も見えない。
やっぱりあの部屋?
それとも天国なのかしら?
だって背中から伝わるのは固い木箱の感触ではないもの。
手を動かしそうとしても動かない。
指は少しだけ動くみたい。
指に触れたのは柔らかい何か・・・お日様の匂いがする。
声は?声は出せるかしら?
『だ、だれか、、いるの?』掠れて上手く声が出せないみたい。
「「ユティ!」」「お嬢様!」
天国じゃない?これは夢の中なの?
大好きなお父様とお兄様の声が聞こえたもの。
それにベスの声も・・・
『ゆ・・めなの?』
「医者を呼べ!早く!」
医者?夢にもお医者様が出てくるの?
「ああユティ。なぜユティがこんな目に・・・」
「もう大丈夫だよ。安心してユティ」
お父様泣いているの?
頭を撫でているのはお兄様なの?
ごめんなさい。
真っ暗で何も見えないの。
それともまだあの部屋にいるの?
これは私の夢なの?
分からない・・・
意識が沈んでいく・・・
夢ならまた声を聴かせて・・・
「意識が戻ったのならもう大丈夫です。ですが光のない暗闇に長い間閉じ込められていたせいで、すぐには目の包帯は外せません。少しづつ慣らしていきましょう。顔や身体の打撲痕も綺麗に治りますから安心して下さい」
「ユティ・・・やはり生きていてくれたんだな」
「あの遺体は偽装だったんですね。許せない」
「あの女と娘は?」
「お嬢様が閉じ込められていた部屋に入れております」
「執事長は?」
「地下牢で尋問中です」
「すべて吐かせろ!拷問してもいい!」
「はっ」
「すまないユティ。誘拐されて殺されたと思っていたんだ」
「ジルグレートだけがユティの生存を信じていました。あの遺体をユティだと信じた自分が許せない」
「あの女は私の妻だと名乗り、侯爵夫人の振りをし、自分の娘を私の娘だと偽ってユティの部屋を与えていたらしい」
「父上の留守中に執事長がそれを認めれば使用人も信じたでしょうね」
「何度か外交から私が帰ってきた時にあの女の姿はなかった。使用人からもあの女の報告が一度もなかったんだ」
「夫に妻の報告がないのは有り得ませんよね」
「何れバレるのは時間の問題だった。なのに何がしたかったんだ?何の目的でユティをあんな目にあわせたんだ?」
「その目的の為にユティの遺体まで用意して?」
「ユティに暴力を振るっていたのはあの女だ。手足を切り落としてもいい。何もかも吐かせてやる!」
「当然です」
「本当に・・・ユティが生きていてよかった」
「・・・はい」
次に真っ暗な世界で目覚めた時、お友達の声が聞こえた。
『起きたかい?小さい姫』
『ええ』
『安心して君は助け出されたんだよ』
『夢・・・じゃないの?』
『うん。早く元気になってね』
『ええ』
『また来るよ。じゃあね』
『ありがとう』
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