上 下
60 / 71

60

しおりを挟む
そして楽しみにしていたお爺様とお婆様に会える日が来た。
お二人に会う前に父様から父様にはヒューガ様という弟と、フレンシア様という妹がいたこと。
そしてヒューガ様が三歳で池で亡くなったこと。
妹のフレンシア様は七歳の時に目の前で殺されたこと。父様も毒を盛られたり暗殺されそうになったことを教えてくれた。
そして⋯⋯お婆様の心が壊れてしまったことも。

「だから母上⋯⋯お婆様との会話や交流などはあまり期待しない方がいい」

「父様⋯⋯悲しかったね。辛かったよね」

私がずっと父様の傍にいるから。一人になんかしないからと言って父様を抱きしめた。

まさか父様にこんな辛い過去があったなんて⋯⋯それにどうしてカクセア王国から帰ってくるまでに12年もかかったのだろう?
12年前といえば前国王陛下がロベルト現国王陛下に譲位したのは授業で習ったけれど⋯⋯それに関係しているのかな?




さすが王宮。門を潜ってから数十分してようやく目的地の祖父母の暮らす離宮に到着した。

玄関先には黒髪に少し白髪が混じった女性と、父様によく似た老人が迎えてくれた。

「よく来たな何年ぶりだ?」

きっとこの方が前国王で私のお爺様。
その隣でニコニコ笑顔なのがお婆様ね。

「お久しぶりです父上、母上。この子がの娘のルナフローラです」

「はじめまして。お爺様、お婆様。ルナフローラと申します」

「ああよく来てくれたな」

温かい手で頭を撫でてくれたのがちょっと照れくさくて嬉しい。

お祖母様は何も言わずニコニコ笑顔だ。
実年齢よりも若く見える。50歳は過ぎているはずなのに40歳前後にしか見えない。
⋯⋯でも、お婆様は笑顔だけれど私のことも父様のことも見ていない。

「こっちに茶の用意が出来ている。ついておいでルナフローラ」

お爺様はお婆様の手を引いて、私と父様を応接間に案内してくれた。

会話をするのは主に私とお爺様で、私たちが帰る時間までお婆様はお爺様の隣で終始ニコニコしているだけだった。

結局時間にして一時間に満たない時間をお爺様とお婆様と過ごし、次に会う約束をしていると使用人が現国王と王太后様の訪問を告げに来た。

!!伯父様だ!
この間の婚約式の時に「陛下だなんて寂しいこと言うなよ~伯父様って呼んでくれよ~。それともお義父様って今から呼んでもいいんだぜ」なんて巫山戯たことを言うから父様に「お義父様はまだ早い!」と反対されたので伯父様と呼ぶようになった。

あの婚約式の日息子しかいない伯父様は「女の子は可愛いね~」と、フェイがヤキモチを焼くぐらい私の傍を離れなかった。

その伯父様が忙しい執務の合間を縫ってここに?

「やあルナ!ルナがここに来ているって聞いたから抜け出して来てしまったよ」

抜け出したんだ⋯⋯

王太后様は私たちに会釈だけしてお婆様の所へ行くとギュッと抱きしめていた。
父様が言っていた通り二人の関係は良好に見えた。

「兄上、俺たちは帰るが?」

「じゃあ可愛いルナの顔を見れたことだし私も帰るかな」

と⋯⋯私に会いに来たと言っていたけれど本当は他に何か目的があって来たような気がする⋯⋯

そして、見送られながら馬車に乗り込む寸前にお婆様が突然私に抱きついてきた。そして耳元で「ルナちゃん気を付けて」と、誰にも聞こえないような小さな声だったけれど、しっかりとした口調で警告してきた。
もしかして、心が壊れた振りをしている?
すぐに離れた時にはまたお婆様はニコニコ笑顔に戻っていた。

そんな私に殺意を向けている者がいることも、さらにその者に冷たい眼差しを向けている者がいることも気付かないまま四人にお別れの挨拶をして馬車に乗り込んだ。
もちろんすぐにお婆様の言葉を父様に伝えた。
少し驚いたあと「ルナは何も心配することは無いよ」と言ってくれた。

でもお婆様は『気を付けて』って、私は誰かに狙われているの?
それに、もしお婆様が心が壊れた振りをしているだけだとしたら何のために?
それは⋯⋯父様を、愛する我が子を守るためだとしか考えられない。
だけど、その為に10年以上も心が壊れた振りなんて⋯⋯出来るの?

そうまでしなければならなかった原因が近くあったとしたら?

それはちょっと⋯⋯考え過ぎよね?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?

望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。 ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。 転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを―― そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。 その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。 ――そして、セイフィーラは見てしまった。 目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を―― ※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。 ※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)

【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」 婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からくなっていました。 婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。 ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/01  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過 2022/07/29  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過 2022/02/15  小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位 2022/02/12  完結 2021/11/30  小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位 2021/11/29  アルファポリス HOT2位 2021/12/03  カクヨム 恋愛(週間)6位

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔

しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。 彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。 そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。 なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。 その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。

王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。

しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。 相手は10歳年上の公爵ユーグンド。 昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。 しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。 それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。 実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。 国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。 無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。  

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。

巻き戻り令嬢は長生きしたい。二度目の人生はあなた達を愛しません

せいめ
恋愛
「アナ、君と私の婚約を解消することに決まった」  王太子殿下は、今にも泣きそうな顔だった。   「王太子殿下、貴方の婚約者として過ごした時間はとても幸せでした。ありがとうございました。  どうか、隣国の王女殿下とお幸せになって下さいませ。」 「私も君といる時間は幸せだった…。  本当に申し訳ない…。  君の幸せを心から祈っているよ。」  婚約者だった王太子殿下が大好きだった。  しかし国際情勢が不安定になり、隣国との関係を強固にするため、急遽、隣国の王女殿下と王太子殿下との政略結婚をすることが決まり、私との婚約は解消されることになったのだ。  しかし殿下との婚約解消のすぐ後、私は王命で別の婚約者を決められることになる。  新しい婚約者は殿下の側近の公爵令息。その方とは個人的に話をしたことは少なかったが、見目麗しく優秀な方だという印象だった。  婚約期間は異例の短さで、すぐに結婚することになる。きっと殿下の婚姻の前に、元婚約者の私を片付けたかったのだろう。  しかし王命での結婚でありながらも、旦那様は妻の私をとても大切にしてくれた。  少しずつ彼への愛を自覚し始めた時…  貴方に好きな人がいたなんて知らなかった。  王命だから、好きな人を諦めて私と結婚したのね。  愛し合う二人を邪魔してごめんなさい…  そんな時、私は徐々に体調が悪くなり、ついには寝込むようになってしまった。後で知ることになるのだが、私は少しずつ毒を盛られていたのだ。  旦那様は仕事で隣国に行っていて、しばらくは戻らないので頼れないし、毒を盛った犯人が誰なのかも分からない。  そんな私を助けてくれたのは、実家の侯爵家を継ぐ義兄だった…。  毒で自分の死が近いことを悟った私は思った。  今世ではあの人達と関わったことが全ての元凶だった。もし来世があるならば、あの人達とは絶対に関わらない。  それよりも、こんな私を最後まで見捨てることなく面倒を見てくれた義兄には感謝したい。    そして私は死んだはずだった…。  あれ?死んだと思っていたのに、私は生きてる。しかもなぜか10歳の頃に戻っていた。  これはもしかしてやり直しのチャンス?  元々はお転婆で割と自由に育ってきたんだし、あの自分を押し殺した王妃教育とかもうやりたくたい。  よし!殿下や公爵とは今世では関わらないで、平和に長生きするからね!  しかし、私は気付いていなかった。  自分以外にも、一度目の記憶を持つ者がいることに…。      一度目は暗めですが、二度目の人生は明るくしたいです。    誤字脱字、申し訳ありません。  相変わらず緩い設定です。

処理中です...