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早いもので今日から私は最終学年に進級した。
馬車から降りるなり凄い注目されている。


実は春季休暇の間に私とフェイの婚約が決まったりもしたんだよね。
公表もされたし、だからこの視線も仕方がないと諦める。




本当は新年の夜会の時にフェイに私の気持ちを伝えるつもりだったのだけれど、あの日は父様とロー兄様だけでなくアリーまで見失ってしまって、さらに先に帰るように言われたらそっちが気になってすっかりフェイに伝えるのを忘れちゃったんだよね。
まあその時は焦らなくても次に会った時にでも伝えようと思っていたんだけどフェイの方が待てなかったみたいなんだよね。

次の日の朝、突然我が家に訪問してきた。
まだ父様たちも帰ってきていなくて、朝食もまだだったから一緒に食事してから庭園を散歩することにした。

「そ、それでルナの聞いてほしい⋯⋯は、話って?」

「ああ、あれね。私もフェイのことが好きだって伝えようと」思って⋯⋯最後まで言う前にフェイに思いっきり抱きしめられていた。

「やった!ありがとうルナ!絶対に大切にする。生涯ルナだけを愛すると誓う」

腰に手は回っているけれど少し離れてくれて「⋯⋯だから結婚しよう?」と言ってくれた。

け、結婚?まだそこまでは考えていなくて驚いてたのと、フェイの悲鳴が上がったのは同時で見上げると父様の手がフェイのこめかみを掴んで持ち上げていた。

「結婚だと?許すわけがないだろ!」

「お、叔父上!い、痛い!痛い!離してください!」

「今の言葉を取り消したらな」

「絶対に取り消しません!俺はルナと結婚するんだ!」

「と、父様!離してあげて」

「⋯⋯嫌だ」

「け、結婚なんてまだまだ先だから!父様とずっとここで暮らすって約束したでしょう?」

「ルナ、それは本当か?」

「そうよ、私は結婚したとしても大好きな父様とずっと一緒にいるもの」

それを聞いてすぐにフェイを降ろしてくれたけれど⋯⋯父様は対抗意識からか大人気なかった。

「ふん!お前は『好き』俺は『大好き』だとさ」

またそれに対抗するフェイも大人気なかった。

「そんなの父親だからでしょう?俺は異性としてルナに『好き』だと言ってもらいましたから!」

睨み合う父様とフェイは本当によく似た顔をしていた。
それを止めたのはアリーだった。

「ねえ、わたくし昨日から寝ていないの。疲れているの。煩くして怒らせないで。程度の低い言い争いばかりしていたら二人ともいつかルナに嫌われるわよ。フェリクス王子はさっさと帰って仕事しなさい。ブラッディ様も後処理が残っているでしょう?⋯⋯さあルナこんなの放って行きましょう」

さ、流石ね。
この二人を黙らせるなんて。
アリーに手を引かれて歩き出したけれど、気になって振り向くと二人ともまだ固まっていた。

まあ、喧嘩するほど仲がいいって言うし、それに二人は叔父と甥の関係だものアリーの言う通り放っておいても大丈夫よね。


それからというものフェイは何度も婚約を認めてもらいに時間の許す限り我が家を⋯⋯父様を訪ねてきた。
真剣な顔のフェイ。
悔しそうな顔のフェイ。
悲しそうな顔のフェイ。
そして私に会うと嬉しそうな顔をするフェイが何だか可愛くて、愛しくて、結婚なんてまだ先だと考えていなかったのに、自然と私からも父様に婚約をお願いするようになっていた。

私たち二人の懇願にフェイが婿入りすることで漸く婚約の許可がおりた。

その日はロー兄様と朝まで飲み明かしたとか⋯⋯

そして、春季休暇中に王家の国王陛下と王妃様、王太子殿下と王太子妃様、そしてロイド殿下。
我が家からは父様、私、ロー兄様、アリーも参加して婚約式がひっそりと行われた。

この時には既にロイド殿下とエリザベスの婚約が白紙になったと公表されていた。理由はフォネス夫妻とエリザベスは馬車の事故により亡くなってしまったそうで、同時に跡取りのいないフォネス伯爵家は爵位と領地を共に王家に返上された。

突然の悲報に驚きはしたけれど悲しいとは思わなかった。

そして、婚約式後ロイド殿下だけが知らなかった、私があの時のフローラだと陛下が伝えると周りの目を憚らず泣いたのにはびっくりした。ツーっとロイド殿下の瞳から流れる涙に思わず美形の涙って綺麗なんだって思ったのは私だけではなかった。

そう、アリーがその綺麗な涙に心を鷲掴みされた。

「ダメ!胸がキュンキュンする!これが初恋ってやつね!」

うん、それロイド殿下にも聞こえているからね。
アリーの初恋を応援したい気持ちもあるけれど、エリザベスに耐えていたロイド殿下の気持ちも大切にしてあげたいと思う。
王女と王子の政略結婚でも気持ちが伴うものなら、きっと幸せになれると思うんだ。
だからアリー頑張ってね。



そして婚約式が行われた後日、父様から私の祖父母に会いに行こうと誘われた。
祖父母って前国王陛下と側妃様だよね。
私の頭の中には祖父母という存在がなかったことに気付いて慌てた。
そうだよね。私にもお爺様とお婆様がいるんだ。と、ようやく実感して、少し緊張もして、会えることが嬉しくて、その日が楽しみになっていた。





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