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うん、憶測していたものに近い内容だった。
助けてって⋯⋯
自分たちが私にしたことを馬鹿だから忘れたのかしら?
あの追い出された日の暴力はいま思えば死ぬ一歩手前だったと思う。
あの日、スティアート公爵家までの道を覚えていなかったら?
力尽きた私をロー兄様が姪だと気づいてくれなかったら?
辿り着くまでに人攫いに遭遇していたら?
今の幸せはなかった。
大好きな父様とロー兄様に会うことも、フェイと出会うことも出来なかったのよ。
お母様が亡くなってからはいい思い出なんて一つもなかった。朝早くからこき使うくせに、碌に食事は与えられず暴力は日常茶飯事だった。
あの痛みは忘れられても、恐怖や屈辱は忘れられない。
目の前にいるエリザベスだって自分の両親が私に何をしていたか知っているでしょう?⋯⋯貴女は見て笑っていたのだから⋯⋯
だからね、フォネス伯爵がアリスト様から脅迫されようが、貴女が追い詰められていようが助けようとは思わないし、助けたいとも思わない。
"自業自得"なのよ。
私はエリザベスや伯爵夫人のように贅沢がしたかった訳じゃない。フォネス伯爵家の中で存在を無視されていてもよかった。普通に衣食住を与えられて八つ当たりのように暴力を振るわれたりしなければ許せたと思う。
うん、許すのは無理だ。
それに血の繋がりのない赤の他人、それも酷い扱いをしていた人たちを救う気になれない。
「⋯⋯そう、話は分かったわ。でも貴女を助ける理由が私にはないの。だって貴女と私は血の繋がりもない赤の他人でしょう?」
「え?」
なんで驚くのかな?
「だって⋯⋯だってランベル様はわたくしのお異母姉様でしょう?」
まだお異母姉様って言ってるのか⋯⋯
「私の父親は王弟でランベル公爵よ。フォネス伯爵とは何の関係もないわ」
「え?」
馬鹿だから分からないのか?
「だから⋯⋯私と貴女は父親も違えば母親も違うの。さっきも言ったように赤の他人よ」
「で、でも!わたくし達は一緒に暮らしていた家族でしょう?」
ああイライラする!
散々酷い目に遭わせておいて今さら家族ヅラするつもりなの?
それともエリザベスの中では無かったことになっているの?
我慢できない!
「いい加減にしなさい!黙って聞いていたら気分が悪くなるわ!エリザベスさんのお異母姉様って亡くなっているでしょうが!ルナを家族ですって?じゃあ虚偽の死亡届を提出したってことよね?このまま通報してもいいのよ?⋯⋯ああ、そうね。わたくしはカクセア王国の王女でルナはハトコになるの。ほら瞳の色が同じでしょう?これはカクセア王国の王族の証なの。ランベル公爵も同じ色よ」
私よりも先にアリーがキレちゃった⋯⋯
「お、お異母姉様が王族と?」
「貴女がルナをお異母姉様と言うならわたくしがこの国の国王に直接フォネス伯爵家が何をしたのか訴えてもいいのよ」
「で、でも訴えるなんて⋯⋯」
「ええ、虚偽の死亡届を提出しただけでも重罪なのに、両国の王族の血を引くルナを貴女のお異母姉様だと言い張るならフォネス伯爵家で行われていた虐待は万死に値するわ!」
「お、お異母姉様⋯⋯」
まだ言うか!
「今さら縋られても無駄よ。私はエリザベスたちを許す気はないの」
そう許せないの。
コレで私がフローラだってことを認められなくなったでしょう?
認めちゃうとフォネス伯爵家は罪に問われるのだから。
泣かれてもエリザベスの涙に絆されたりしない。
「そうね、助けられる人って言うかアリスト様の脅しを止められる人を知っているわよ」
「だれ?誰なら助けてくれるの?」
「簡単よロイド王子に言えばいいのよ。まあ?家族で犯罪を犯したこともバレて婚約は破棄になるだろうけれどね。⋯⋯そしてアンタたちは罪人になり裁かれる。まあ安心しなさい。貴女たちを脅した令嬢も終わることになるからね」
うわっ、何て悪い顔をするのアリー!王女様なのにいいの?イメージって大切よ!
エリザベスの方を見れば体はガタガタと震え絶望って言葉がピッタリの顔になっていた。
「もう帰りなさい。エリザベスに出来ることは罪を暴かれる前に先に自白することだけよ」
エリザベスはふらふらと立ち上がり足元もおぼつかないまま帰って行った。
帰ってから両親と相談するなり勝手にすればいいわ。
どんなに足掻いても結果は同じ。
きっと逃げることは出来ない。
父様とロー兄様がフォネス伯爵家を、そこで働いている使用人を許すわけが無いもの。
全ての行いは自分に返ってくるのよ。
身をもって知りなさい。
それにしても最後までお異母姉様って⋯⋯本当に馬鹿なんだから。
助けてって⋯⋯
自分たちが私にしたことを馬鹿だから忘れたのかしら?
あの追い出された日の暴力はいま思えば死ぬ一歩手前だったと思う。
あの日、スティアート公爵家までの道を覚えていなかったら?
力尽きた私をロー兄様が姪だと気づいてくれなかったら?
辿り着くまでに人攫いに遭遇していたら?
今の幸せはなかった。
大好きな父様とロー兄様に会うことも、フェイと出会うことも出来なかったのよ。
お母様が亡くなってからはいい思い出なんて一つもなかった。朝早くからこき使うくせに、碌に食事は与えられず暴力は日常茶飯事だった。
あの痛みは忘れられても、恐怖や屈辱は忘れられない。
目の前にいるエリザベスだって自分の両親が私に何をしていたか知っているでしょう?⋯⋯貴女は見て笑っていたのだから⋯⋯
だからね、フォネス伯爵がアリスト様から脅迫されようが、貴女が追い詰められていようが助けようとは思わないし、助けたいとも思わない。
"自業自得"なのよ。
私はエリザベスや伯爵夫人のように贅沢がしたかった訳じゃない。フォネス伯爵家の中で存在を無視されていてもよかった。普通に衣食住を与えられて八つ当たりのように暴力を振るわれたりしなければ許せたと思う。
うん、許すのは無理だ。
それに血の繋がりのない赤の他人、それも酷い扱いをしていた人たちを救う気になれない。
「⋯⋯そう、話は分かったわ。でも貴女を助ける理由が私にはないの。だって貴女と私は血の繋がりもない赤の他人でしょう?」
「え?」
なんで驚くのかな?
「だって⋯⋯だってランベル様はわたくしのお異母姉様でしょう?」
まだお異母姉様って言ってるのか⋯⋯
「私の父親は王弟でランベル公爵よ。フォネス伯爵とは何の関係もないわ」
「え?」
馬鹿だから分からないのか?
「だから⋯⋯私と貴女は父親も違えば母親も違うの。さっきも言ったように赤の他人よ」
「で、でも!わたくし達は一緒に暮らしていた家族でしょう?」
ああイライラする!
散々酷い目に遭わせておいて今さら家族ヅラするつもりなの?
それともエリザベスの中では無かったことになっているの?
我慢できない!
「いい加減にしなさい!黙って聞いていたら気分が悪くなるわ!エリザベスさんのお異母姉様って亡くなっているでしょうが!ルナを家族ですって?じゃあ虚偽の死亡届を提出したってことよね?このまま通報してもいいのよ?⋯⋯ああ、そうね。わたくしはカクセア王国の王女でルナはハトコになるの。ほら瞳の色が同じでしょう?これはカクセア王国の王族の証なの。ランベル公爵も同じ色よ」
私よりも先にアリーがキレちゃった⋯⋯
「お、お異母姉様が王族と?」
「貴女がルナをお異母姉様と言うならわたくしがこの国の国王に直接フォネス伯爵家が何をしたのか訴えてもいいのよ」
「で、でも訴えるなんて⋯⋯」
「ええ、虚偽の死亡届を提出しただけでも重罪なのに、両国の王族の血を引くルナを貴女のお異母姉様だと言い張るならフォネス伯爵家で行われていた虐待は万死に値するわ!」
「お、お異母姉様⋯⋯」
まだ言うか!
「今さら縋られても無駄よ。私はエリザベスたちを許す気はないの」
そう許せないの。
コレで私がフローラだってことを認められなくなったでしょう?
認めちゃうとフォネス伯爵家は罪に問われるのだから。
泣かれてもエリザベスの涙に絆されたりしない。
「そうね、助けられる人って言うかアリスト様の脅しを止められる人を知っているわよ」
「だれ?誰なら助けてくれるの?」
「簡単よロイド王子に言えばいいのよ。まあ?家族で犯罪を犯したこともバレて婚約は破棄になるだろうけれどね。⋯⋯そしてアンタたちは罪人になり裁かれる。まあ安心しなさい。貴女たちを脅した令嬢も終わることになるからね」
うわっ、何て悪い顔をするのアリー!王女様なのにいいの?イメージって大切よ!
エリザベスの方を見れば体はガタガタと震え絶望って言葉がピッタリの顔になっていた。
「もう帰りなさい。エリザベスに出来ることは罪を暴かれる前に先に自白することだけよ」
エリザベスはふらふらと立ち上がり足元もおぼつかないまま帰って行った。
帰ってから両親と相談するなり勝手にすればいいわ。
どんなに足掻いても結果は同じ。
きっと逃げることは出来ない。
父様とロー兄様がフォネス伯爵家を、そこで働いている使用人を許すわけが無いもの。
全ての行いは自分に返ってくるのよ。
身をもって知りなさい。
それにしても最後までお異母姉様って⋯⋯本当に馬鹿なんだから。
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