【完結】野垂れ死ねと言われ家を追い出されましたが幸せです

kana

文字の大きさ
上 下
44 / 71

44

しおりを挟む
投稿時間設定を忘れていたお詫びの本日二話目の投稿です。



♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢



早いもので二年に進級して二ヶ月が経とうとしている。

フェイが卒業してからお一人様の時間になる予定がそうはならなかった。
そう、二年に上がってから変化も少しだけある。
なんと!クラスメイト達と挨拶以外で会話することが増えたことだ。

この学園は家格は関係なく成績順でクラスが決まる。
一人の脱落者もなく、一年の時と同じ顔ぶれでそのまま進級した。
だけどその中に目立つ存在の令嬢が一人。
彼女はカクセア王国からの留学生でアイリーン・カクセア。そうカクセア王国の第二王女なのだ。
背が高く長い手足にスレンダーな体。
真っ直ぐな黒髪に紫色の瞳。父様と同じ色を持つ高貴な彼女は私にとってに当たるらしい。
新学期が始まる前日に、我が家に挨拶に来てくれた。ていうか一緒にここで暮らすことになっている。

「ブラッディ様!お会いしとうございました」

父様と一緒に出迎えるなりそう言って父様に抱きつこうとし思いっきり拒絶されていた。

「⋯⋯相変わらずですね」

「お前もな」

「隣の方が?」

「ああ、俺の命よりも大切な娘のルナフローラだ」

自慢げにそして愛しげに私の髪を撫でながら紹介してくれた。

「まあ!まあ!まあ!無愛想なブラッディ様のそんなお顔は見たことがないわ!」

そう言って興味深げにマジマジと見られると恥ずかしい⋯⋯

「なんって可愛いの!わたしのことはアリーと呼んで!」

「えっと⋯⋯では私のことはルナとお呼びください」

「ええ!ルナ今日からよろしくね。クラスも同じはずよ」

グイグイ来るアリーに慣れない私は少しだけ引いてしまったけれど、さっぱりしていてどこにも嫌味や悪意がないのは分かる。どうもアリーは父様がカクセア王国にいた頃に何とか笑わせようと悪戦苦闘していたようだ。
その日の夜には裏表のないアリーと打ち解けていた。

で、新学期早々アリーがやってくれた。

「ねえルナ?あれはロイド王子よね?」

「ええ」

馬車から降りるとロイド殿下の腕にしがみつくエリザベスと、それを引き剥がそうとするロイド殿下が目に入った。

「ではアレがロイド王子の婚約者のエリザベス嬢で間違いない?」

「⋯⋯ええ」

「見苦しいわね」

思いのほかアリーの『見苦しい』という言葉が辺りに響いてしまった。
それはエリザベスに聞こえたようでパッとこちらを睨みつけてきた。
エリザベスが睨むってことは自覚があるんだ~なんて思っていたら早速噛み付いてきた。

「見かけない方ね。わたくしを誰だと思っていますの?」

「知らないわね。わたくしには朝から男に撓垂れ掛かるような下品な令嬢の知り合いはいないもの」

「な、なんですって!わ、わたくしが下品だと言うの?」

ロイド様~と目に涙を浮かべてまた撓垂れ掛かろうとして「いくら婚約者でも時と場所ぐらいは弁えろ」と、ロイド殿下本人に諌められていた。

「ねえ?ロイド王子?」

「何ですか?アイリーン

「余計なお世話かもしれないけれど、貴方はその若さで人生を棒に振るおつもりなの?何十年も後悔し続けながら生きていくつもりなの?悪いことは言わないわ早く決断した方がいいわよ」

さすがアリー!それよそれ!ここにいる全員が思っていても口に出せなかったセリフそのまんまよ!
上下に頷く人も小さく拍手している人たちもいる。

「⋯⋯そうだね。本人に自覚がないままだと⋯⋯時間の問題だね」

「そう⋯⋯分かっているのならいいわ。わたくしは他国の人間ですものこの国のことに口を出すつもりはなかったの。これは本当よ。口出ししてごめんなさい」

ロイド殿下とアリーの会話の意味が理解出来ないのかエリザベスだけが『え?』『何のこと?』などと首を傾げているが、噛み付いた相手が王女だと二人の会話を聞いていれば謝罪ぐらいはするはずなんだけど⋯⋯分かってないのね。やっぱりエリザベスは馬鹿だった。

その日以来、エリザベスはアリーを見つけると食ってかかるようになった。
公爵令嬢の私が相手でも問題になったのに、相手が王女だろうとエリザベスには関係ないようだ。

もう、王家との婚姻どうこうの前にフォネス伯爵家の没落までそう時間はかからない気がする。



王女なのに裏表もなく気取らないアリーはクラスでも人気者に。
そしていつの間にかクラスメイトたちが私にも声をかけてくれるようになっていた。
彼らからは嫌な気配を感じない。それどころか見守られているような温かいものを感じるのだ。

フェイと過ごしたあの場所は今はアリーと過ごしている。

次にフェイに会えるのはいつになるのかな。
少しだけ寂しいな⋯⋯
しおりを挟む
感想 463

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける

堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」  王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。  クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。  せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。  キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。  クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。  卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。  目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。  淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。  そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

比べないでください

わらびもち
恋愛
「ビクトリアはこうだった」 「ビクトリアならそんなことは言わない」  前の婚約者、ビクトリア様と比べて私のことを否定する王太子殿下。  もう、うんざりです。  そんなにビクトリア様がいいなら私と婚約解消なさってください――――……  

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

「いなくても困らない」と言われたから、他国の皇帝妃になってやりました

ネコ
恋愛
「お前はいなくても困らない」。そう告げられた瞬間、私の心は凍りついた。王国一の高貴な婚約者を得たはずなのに、彼の裏切りはあまりにも身勝手だった。かくなる上は、誰もが恐れ多いと敬う帝国の皇帝のもとへ嫁ぐまで。失意の底で誓った決意が、私の運命を大きく変えていく。

処理中です...