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~アリスト伯爵令嬢(長女)視点~
わたくしはリディア・アリスト。アリスト伯爵家の第一子で長女。
長い間子供に恵まれなかった両親はわたくしを蝶よ花よと大切に育ててくれましたわ。
その温室育ちのわたくしが初めて同じ年頃の子供たちが集まるお茶会に参加したのは六歳の時でしたわ。
初めての王宮に初めてのお茶会。それに参加出来ることが嬉しくてワクワクしていましたの。
その日はお母様の好きなピンク色のドレスをわたくしに用意してくれて、髪にも同じピンク色のリボンを着けて参加しましたわ。
いつもより可愛くなった気がして少しテンションが高くなっていたかもしれません。
たくさんお友達が出来ると期待して参加しましたのに、お友達が出来るどころか仲間にも入れてもらえませんでした。
すでに出来上がったグループの令嬢方はチラチラとわたくしを見ながら聞こえないような声でお話されていて、その視線は今まで向けられたことのないものを感じ、恐ろしくなりその場を逃げ出してしまいましたの。
気づいた時にはお茶会の喧騒も届かない静かな場所に来てしまっていましたの。
楽しみにしていたお茶会がお友達も出来ず、帰り道もわからない⋯⋯不安と悲しみに涙が浮かんだ時です。『迷子なの?』と、わたくしに声を掛けてくれた男の子がいましたの。
銀色の髪に緑色の瞳のまるで天使を連想させる可愛らしい男の子でしたわ。
『大丈夫だよ。僕がみんなの所に連れて行ってあげる』
安心したのかポロリと涙が零れ落ちてしましたの。
その男の子は自然な動作でハンカチを取り出しそっとわたくしの涙を拭って下さったの。
『あ、ありがとうございます』
『気にしないで。じゃあ行こうか』
そう言って手を差し伸べてくれましたの。
柔らかくて温かい手。
ゆっくりと歩きながら『ピンクのドレスが君によく似合っているね』と、微笑んでくれた時にわたくしはその男の子に恋をしてしましたの。
それからですわ、わたくしがピンク色に拘るようになったのは⋯⋯
結局、お茶会の会場に戻るとお開きの時間になっており解散になってしまいましたの。
邸に帰ってから両親にその日の出来事をはしゃいで報告し、お礼のお手紙を送る時になってお名前を知らないことに気づきましたの。
ですが、お貸しいただいたハンカチに施された刺繍からスティアート公爵家のご子息であるローレンス様だと男の子のお名前がすぐに判明しましたわ。
ローレンス様⋯⋯素敵なお名前です。
お礼のお手紙を書き、お返事がきた時は舞い上がってしまいましたわ。
ローレンス様は同じ六歳だというのに綺麗な文字で『気にしないで』と書き綴られていました。
『リディア、我が家では公爵家とご縁を結ぶのは難しいのだよ。諦めなさい』
何度目かの婚約の打診をスティアート公爵家からお断りされた時にお父様が言った言葉ですわ。
それでも諦められず、わたくしなりにローレンス様に相応しい令嬢を目指し淑女教育、勉学と努力を重ねてまいりました。
二度目にローレンス様にお会いできたのは学園に入学してからです。
約10年近くお会いしない間に優しい顔立ちはそのまま身長も伸び凛々しく成長されていましたわ。
誰にでも平等に優しいローレンス様は学年関係なく人気者でしたのでなかなか近づけなく、どうしてもローレンス様にお近づきになりたくて登校時と下校時には挨拶をさせていただきましたの。
それを毎日繰り返していましたら、嫌がらせをされるようになってしまいました。
教科書にも机にも『調子に乗るな』『身分を弁えろ』酷い時は『死ね』とまで書かれ、呼び出されることもありましたわ。
そんな時に助けてくださったのもローレンス様です。
ですがその度に⋯⋯『もう、僕のことは諦めてくれないか。君の好意に応えることは出来ない』とわたくしの想いを拒絶されるのです。
分かっていましたわ。
それでも⋯⋯それでもローレンス様をお慕いする気持ちは消えることはなかったのです。
今日、ローレンス様がランベル公爵令嬢とダンスを踊っている時の笑顔⋯⋯アレが本当のローレンス様の笑顔ですのね。
ランベル公爵令嬢⋯⋯とても綺麗なご令嬢でしたわ。
その後もランベル公爵令嬢は妹のセリアの想い人であるフェリクス殿下からダンスを申し込まれて一緒に楽しそうに踊られるお二人はとてもお似合いでしたわ。
笑わない王子。と、呼ばれるフェリクス殿下が蕩けるような笑顔で見つめている令嬢。
わたくしはこの二人を応援しますわ。
このホールのどこかでお二人を見ているであろうセリア諦めなさい。
ランベル公爵令嬢に何もしないで。
彼女の後ろには恐ろしい魔王様がいるのよ。
そう、わたくしは初めて会った時から魔王様が恐ろしいの。
何がって見た目と威圧感ですわ。
だから魔王様を怒らせないで。
⋯⋯でもセリア貴女はわたくしの言葉など聞かないのでしょうね。
ローレンス様を諦められないわたくしを見下し馬鹿にしていますものね。
『我が家の恥晒し』『行き遅れ』『アンタみたいな姉なら居ない方がいい』⋯⋯傷つく言葉は何度言われても慣れることはないのよ。
わたくしはリディア・アリスト。アリスト伯爵家の第一子で長女。
長い間子供に恵まれなかった両親はわたくしを蝶よ花よと大切に育ててくれましたわ。
その温室育ちのわたくしが初めて同じ年頃の子供たちが集まるお茶会に参加したのは六歳の時でしたわ。
初めての王宮に初めてのお茶会。それに参加出来ることが嬉しくてワクワクしていましたの。
その日はお母様の好きなピンク色のドレスをわたくしに用意してくれて、髪にも同じピンク色のリボンを着けて参加しましたわ。
いつもより可愛くなった気がして少しテンションが高くなっていたかもしれません。
たくさんお友達が出来ると期待して参加しましたのに、お友達が出来るどころか仲間にも入れてもらえませんでした。
すでに出来上がったグループの令嬢方はチラチラとわたくしを見ながら聞こえないような声でお話されていて、その視線は今まで向けられたことのないものを感じ、恐ろしくなりその場を逃げ出してしまいましたの。
気づいた時にはお茶会の喧騒も届かない静かな場所に来てしまっていましたの。
楽しみにしていたお茶会がお友達も出来ず、帰り道もわからない⋯⋯不安と悲しみに涙が浮かんだ時です。『迷子なの?』と、わたくしに声を掛けてくれた男の子がいましたの。
銀色の髪に緑色の瞳のまるで天使を連想させる可愛らしい男の子でしたわ。
『大丈夫だよ。僕がみんなの所に連れて行ってあげる』
安心したのかポロリと涙が零れ落ちてしましたの。
その男の子は自然な動作でハンカチを取り出しそっとわたくしの涙を拭って下さったの。
『あ、ありがとうございます』
『気にしないで。じゃあ行こうか』
そう言って手を差し伸べてくれましたの。
柔らかくて温かい手。
ゆっくりと歩きながら『ピンクのドレスが君によく似合っているね』と、微笑んでくれた時にわたくしはその男の子に恋をしてしましたの。
それからですわ、わたくしがピンク色に拘るようになったのは⋯⋯
結局、お茶会の会場に戻るとお開きの時間になっており解散になってしまいましたの。
邸に帰ってから両親にその日の出来事をはしゃいで報告し、お礼のお手紙を送る時になってお名前を知らないことに気づきましたの。
ですが、お貸しいただいたハンカチに施された刺繍からスティアート公爵家のご子息であるローレンス様だと男の子のお名前がすぐに判明しましたわ。
ローレンス様⋯⋯素敵なお名前です。
お礼のお手紙を書き、お返事がきた時は舞い上がってしまいましたわ。
ローレンス様は同じ六歳だというのに綺麗な文字で『気にしないで』と書き綴られていました。
『リディア、我が家では公爵家とご縁を結ぶのは難しいのだよ。諦めなさい』
何度目かの婚約の打診をスティアート公爵家からお断りされた時にお父様が言った言葉ですわ。
それでも諦められず、わたくしなりにローレンス様に相応しい令嬢を目指し淑女教育、勉学と努力を重ねてまいりました。
二度目にローレンス様にお会いできたのは学園に入学してからです。
約10年近くお会いしない間に優しい顔立ちはそのまま身長も伸び凛々しく成長されていましたわ。
誰にでも平等に優しいローレンス様は学年関係なく人気者でしたのでなかなか近づけなく、どうしてもローレンス様にお近づきになりたくて登校時と下校時には挨拶をさせていただきましたの。
それを毎日繰り返していましたら、嫌がらせをされるようになってしまいました。
教科書にも机にも『調子に乗るな』『身分を弁えろ』酷い時は『死ね』とまで書かれ、呼び出されることもありましたわ。
そんな時に助けてくださったのもローレンス様です。
ですがその度に⋯⋯『もう、僕のことは諦めてくれないか。君の好意に応えることは出来ない』とわたくしの想いを拒絶されるのです。
分かっていましたわ。
それでも⋯⋯それでもローレンス様をお慕いする気持ちは消えることはなかったのです。
今日、ローレンス様がランベル公爵令嬢とダンスを踊っている時の笑顔⋯⋯アレが本当のローレンス様の笑顔ですのね。
ランベル公爵令嬢⋯⋯とても綺麗なご令嬢でしたわ。
その後もランベル公爵令嬢は妹のセリアの想い人であるフェリクス殿下からダンスを申し込まれて一緒に楽しそうに踊られるお二人はとてもお似合いでしたわ。
笑わない王子。と、呼ばれるフェリクス殿下が蕩けるような笑顔で見つめている令嬢。
わたくしはこの二人を応援しますわ。
このホールのどこかでお二人を見ているであろうセリア諦めなさい。
ランベル公爵令嬢に何もしないで。
彼女の後ろには恐ろしい魔王様がいるのよ。
そう、わたくしは初めて会った時から魔王様が恐ろしいの。
何がって見た目と威圧感ですわ。
だから魔王様を怒らせないで。
⋯⋯でもセリア貴女はわたくしの言葉など聞かないのでしょうね。
ローレンス様を諦められないわたくしを見下し馬鹿にしていますものね。
『我が家の恥晒し』『行き遅れ』『アンタみたいな姉なら居ない方がいい』⋯⋯傷つく言葉は何度言われても慣れることはないのよ。
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