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父様が小さいため息を吐いてからロー兄様に声をかけた。

「ローレンス、次はお前の番だぞ」

「そうでした!閣下ありがとうございます。ルナ待たせたね。僕と踊ってくれるだろ?」

「え、ええ、もちろん」

その瞬間、ド派手な女性は怯えたように見えたが、すぐに凄く残念そうな顔でロー兄様を見つめていた。

そのド派手でどピンクの女性には目も向けず解放感からか凄い笑顔で私をダンスに誘った。

チラリとド派手な女性を見ると、ロー兄様の笑顔にうっとりしている。
その他の令嬢はロー兄様と親しくしている私を睨んでくる人が多いと言うのに⋯⋯
彼女は本当にロー兄様が好きなんだ。
何だか申し訳ない気持ちになった。けれど⋯⋯ロー兄様は苦手のようだから彼女を応援する気はない。


「ねえロー兄様?あの方とはどういった関係なの?」

ロー兄様に優雅にリードされながら思わず聞いてしまった。

「⋯⋯ちょっと執拗く言い寄られて困っているんだ。それも何年も」

予想した通りだった⋯⋯
一方通行な片思い。

「何度断っても釣り書を送ってこられ、休日の待ち伏せは当たり前で外出も出来なかった」

それは一途では済ませられない行動ね。

「だから我が家とランベル公爵家に秘密の通路を閣下が作ってくれたことは彼女を欺けるし、僕にとって喜ばしいことだった。それにルナにいつでも会えるからね」

まあ確かに通路を使えば馬車もいらないし、時間も短縮できるものね。

「あ~あ、ルナとの楽しい時間の終わりだ」

「私も楽しかったわ」

「ほら、フェリクス殿下がお待ちかねだよ」

振り向くとフェイがこっちに向かってきていた。

「僕はルナの気持ちを優先するよ」

優先する?私の気持ちを?何それ?
今だって私は自由だよ?
父様には好きなことをさせてもらっているよ?

「ルナ、俺とも踊ってくれるだろ?」

「ええ」

周りからは黄色い悲鳴が飛び交う。
こうやって見ると本当にフェイは王子様なんだとつくづく思う。

「楽しんでいるか?」

「ええ。フェイは?」

「俺は基本夜会には参加しない。ルナと会いたいから、ルナと踊りたいから今回も参加した」

と、ニヤリと悪戯っぽく笑った。
これだから本音か揶揄われているのか分からなくなる。
『夜会に参加しない』って言うのも、まだ二回しか参加していない私からすれば、その二回ともフェイに会ったし踊った。
それに今回だってフェイには普通にここで会えるものだと思っていた。

「私もフェイに会いたかったわ」

え?なに?なんでフェイが真っ赤になるの?
フェイの言った言葉をそのまま返しただけだよ?
やめてよ!こっちまで釣られて顔が火照ってくるじゃない!
その後はフェイの顔が見られなくて何を話したか覚えていない。

そのままフェイに手を引かれ父様のところに戻ったら⋯⋯なぜか父様がフェイを睨んでいた。
父様!その顔怖いから!
機会を伺っていただろうド派手どピンクの女性が真っ青になって倒れたわよ!
⋯⋯なんだかこの人憎めないな。

は叔父上の元にお返ししますよ」

意味は分からないがフェイは私には微笑んで、父様にはその言葉を残して去って行った。

「⋯⋯帰ろう。もういいだろう」

父様はぼそりと呟いたかと思えば私の手を引いて歩きだした。
慌ててロー兄様も着いてきたけれどロー兄様はまだ残っていてもいいのに。

「夜会では僕は閣下から離れませんよ!貴方は僕の守護神ですから」

守護神⋯⋯都合良く魔除に使っているのかと思っていた。

父様とロー兄様と共にホールを出る私を憎々しげに睨む令嬢が居たことも、フェイがその令嬢に冷たい眼差しを向けていることも、もちろん気づかなかった⋯⋯。





♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢




いつもエールや感想ありがとうございます。
とても励みになっています。

短編のつもりだったのですが、ストックが10万字を超えてしまいました( ̄▽ ̄;)
あと5万字以内には収めますが長編に変更します。

紛らわしくてすみません(>ω<;)

どうか最後までお付き合い下さいm(_ _)m
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