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学園に到着してフェイにエスコートしてもらいながらホールに向かった。

今まで周囲を気にしたことはなかったけれど、フェイが王子だと知って冷静に周りを見渡せば⋯⋯令嬢たちの視線が痛い。

「フェイってモテるのね」

「⋯⋯俺の地位が魅力的なんだろ」
 
「それだけじゃないと思うな~」 

だってフェイは一見冷たく見えるけど綺麗な顔をしている。スラリと背も高いし服の上からでも鍛えられているのが分かる。
父様と似ていると思っていたのは気の所為ではなかった。叔父と甥の関係なら似ていてもおかしくはない。

「あれ?じゃあ私とフェイって従兄妹になるの?」

「!そう言えばそうだな」

「ふふっなんだか不思議ね」

だから気が合ったんだ。

「それより今日は俺から離れるなよ?傍にいれば俺が守れるからな」

(それにルナに嫉妬や妬みの感情を向けるのは一人や二人じゃないだろう。アイツを顎で使ってた女も参加しているはずだしな。炙り出すには学園のパーティーは丁度いい。ごめんなルナ。俺が卒業してしまう前にルナの敵を排除しときたいんだ。卒業したら今のように会うことが出来なくなるだろ?ルナには憂いなく学園生活を楽しんでもらいたいんだ)

「は~い」

大丈夫って言っても聞いてくれないのだろうな。

目立つフェイとホールに入ると一斉に注目を集めた。去年まで不参加だったと言うフェイは今まで一度も女性をエスコートしたことがないらしい。
初参加で初のエスコートが私でいいのだろうか?⋯⋯従兄妹だからいいのよね?

フェイが言っていた通り、視線の中には私を忌々しそうに睨む者が何人かいる。
だけど全然怖くない。
か弱い令嬢たちの細腕で一体何が出来るの?
せいぜい嫌味を言ったり睨む程度でしょう?
陰で悪口を言うとか、いい加減な噂を流されるかとかそんなものだろう。

今の私は何も抵抗が出来なかった昔の私ではない。
もう、一人で耐えなくてもいいの。私には父様とロー兄様。それに守ってくれると言うフェイがいるもの。

そんなことを考えている間に生徒会長のダンスパーティー開始の挨拶が終わっていた。

「さあルナ踊ろうか」

「ええ。楽しみましょう」

音楽に合わせて踊る。
やっぱりフェイは踊りやすい。優雅に私をリードしてくれる。
楽しい!フェイと踊るのとっても楽しい!


「そろそろ来るぞ」

何が?と聞く前に令嬢の集団がこっちに向かって来ているのが目に入った。

「フェリクス殿下がダンスパーティーに参加なされるなんて初めてですわよね。次は是非わたくしと踊っていただけませんか?」

「それなら私とも!」

令嬢たちは私を押しのけてフェイの腕にしがみつこうとして⋯⋯振り払われた。

「俺はルナ以外とは踊らない」

その一言で一斉に令嬢たちは私を睨んだ。
だから何?私はニッコリと笑顔を返す。

「ランベル様。フェリクス殿下を解放していただけませんか?」

後ろから名を呼ばれ振り向くと⋯⋯気の強そうな綺麗な令嬢が微笑んで立っていた。まあ、目は笑っていないけれどね。
同時に振り向いたフェイが私の腰に手を回し引き寄せられた。

「⋯⋯」

解放とは?意味がわからない。
それよりも他の生徒たちの視線がここに集まっているのが気にならないの?

「これ程人気のあるフェリクス殿下をランベル様が独り占めなさるなんて⋯⋯ねえ?皆さま」

「ええ」「そうですわ」「狡いわ」なんて言っている。

「はっ、違うな。俺がルナを独り占めしているんだ。ルナは俺にとって特別なんだ。それよりもお前たちはいつから公爵令嬢よりも立場が上になったんだ?名乗ることもせず一方的に攻めるなんてな」

「「「⋯⋯⋯⋯」」」

「ですが!フェリクス殿下を慕う者はわたくしだけではありませんわ。⋯⋯お近付きになりたくてもそんな機会を一度も与えてはくれませんでしたもの!⋯⋯もっと、わたくしを知っていただけたらきっと」

「興味がない、俺はお前を知りたいとも思わない」と言い切った。

こんな言い方ではフェイの印象が悪くならないか心配になる。

「では!ランベル様は」

「お前たちは知らないのか?俺とルナは従兄妹だ。可愛い従兄妹と親しくして何が悪い?」

最後まで聞く必要は無いと、ひと睨みしてから令嬢たちの輪から私を連れ出した。
令嬢の横を通り過ぎる時に、先程フェイに見せていた綺麗な顔とは程遠い、驚くほど恐ろしい形相で私を睨みつけていた。

私は何も話していないのに⋯⋯睨むならフェイにしてよ。
でも、キツめの美人さんは本当にフェイが好きなのかもしれない。
フェイが『興味がない』と言った時、一瞬だけれど傷ついた顔をしていたから。

結局、一曲踊っただけで帰ることにしたけれど、ホールから出る時にド派手なドレスでロイド殿下の腕に胸を押し付けるように抱きついているエリザベスを見た。
あれは⋯⋯下品だわ。
王子妃教育も進んでないようね。

印象的だったのは大きなエリザベスの胸を押し付けられても鼻の下を伸ばすでもなく無表情だったロイド殿下だ。
彼はデビュタントの日もそうだった。

そのことにエリザベスだけが気付いていないのだろう。
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