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~ランベル公爵(父様)視点~
俺は前国王と側妃との間に生まれたこの国の第二王子だ。
当時、30歳の王太子だった前国王と王太子妃だったチェルシー妃殿下との間に兄上しか子はおらず、この国に留学に来ていた隣国の王女だった16歳の母上とお互いがひと目で恋に落ちたとか⋯⋯
隣国の王女であった母上を側妃に迎えるにことに貴族院は反対するどころか歓迎され、母上が学園を卒業後すぐに婚姻し三年後に俺が生まれた。
側妃である母上は立場を弁えており前国王には常に「チェルシー妃殿下を優先して下さいませ」とよく言っていた。
実際、母上を迎えても父上はチェルシー妃殿下を蔑ろにすることなく表面上は母上よりも優先していたと思う。
チェルシー妃殿下と母上の関係も悪くはなかったと思う。
また、父上とチェルシー妃殿下は12歳年の離れた異母兄のロベルト兄上と俺を分け隔てなく接してくれていた。
だからか異母兄は俺たちをとても可愛がってくれていた。
⋯⋯本来なら俺の3つ下に弟がいた。
だが、俺が6歳の時⋯⋯世間には不慮の事故と公表されたが、 俺は今も弟は殺されたと思っている。
俺が王子教育を受けている時間、弟のヒューガが池に浮かんでいるのが発見された。
まだ3歳の子供が乳母や侍女たち、護衛騎士の目を掻い潜って一人で池に行ったと⋯⋯?
そんなこと有り得るか?
その時の母上のショックは酷いものでもう少しでお腹の子を流産するところだった⋯⋯
それからの父上は時間の許す限り妹が生まれるまで母上に付きっきりで⋯⋯
俺が7歳になってすぐに妹が生まれた。
初めての娘が自分に似ているのもあるのだろうが、余程可愛かったのか娘のフレンシアを溺愛していた。(今なら分かるが確かに娘は可愛い)
それでも父上はチェルシー妃殿下のこともロベルト兄上のことも常に気にかけていたと思う。
いま思えばロベルト兄上しか子供のいないチェルシー妃殿下と三人も子供に恵まれた母上とでは傍から見れば父上からどちらが寵愛を受けているか歴然だったのかもしれない。
そうなると元公爵令嬢だったチェルシー妃殿下と他国の王女だった母上⋯⋯次期国王にとロベルト兄上よりも俺を後押しする貴族が増えてしまった。
俺は物心ついた時から母上から「ロベルト様が国王になられた暁にはブラッディが陰ながら支えなさい。その為には身に付けられるものはすべて身につけお助けしなさい。もしロベルト様の身が危険にさらされた時はブラッディが身を呈してお守りしなさい」と何度も、何度も言われて育った。それを俺も不服に思ったことは一度もなく、心から当然だと思っていた。
なのに⋯⋯それなのに俺の食事に毒が混入された。俺が10歳の時だった。その頃には少しずつ俺も毒に慣らされはじめていた頃だった。
それは即死するような物ではなく、少量ずつ食事に混ぜ徐々に身体を蝕んでいくという物だった。
最初に毒に気がついたのは母上だった。
犯人は俺が生まれた時から世話をしてくれていた乳母の娘だった。
乳母に似て優しい女性でとてもそんなことを仕出かすような人ではなかった。確実に裏に誰かがいたはずだった。
だが、理由を聞く前に自ら毒を飲み自害してしまった。そして責任を取って乳母までが自害してしまった。
真相は闇に葬られたまま⋯⋯
ヒューガに続いて俺まで亡くしそうになった母上の精神は可愛い盛りの3歳になったばかりのフレンシアと俺の存在で何とか耐えられていた。
この時の母上の精神は本当にギリギリだったのだろう。
必要以上に俺たちに過保護になってしまった母上は信用のおける者だけを俺とフレンシアの傍に置いた。
それでも⋯⋯そこまでしても魔の手はヒタヒタと、少しづつ、少しづつ近付いていたことに俺たちは誰も気づくことが出来なかった。
だから⋯⋯また俺は大切な家族を失ってしまったんだ。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
いつもたくさんのエール、感想ありがとうございます。
明日も父様視点です。
俺は前国王と側妃との間に生まれたこの国の第二王子だ。
当時、30歳の王太子だった前国王と王太子妃だったチェルシー妃殿下との間に兄上しか子はおらず、この国に留学に来ていた隣国の王女だった16歳の母上とお互いがひと目で恋に落ちたとか⋯⋯
隣国の王女であった母上を側妃に迎えるにことに貴族院は反対するどころか歓迎され、母上が学園を卒業後すぐに婚姻し三年後に俺が生まれた。
側妃である母上は立場を弁えており前国王には常に「チェルシー妃殿下を優先して下さいませ」とよく言っていた。
実際、母上を迎えても父上はチェルシー妃殿下を蔑ろにすることなく表面上は母上よりも優先していたと思う。
チェルシー妃殿下と母上の関係も悪くはなかったと思う。
また、父上とチェルシー妃殿下は12歳年の離れた異母兄のロベルト兄上と俺を分け隔てなく接してくれていた。
だからか異母兄は俺たちをとても可愛がってくれていた。
⋯⋯本来なら俺の3つ下に弟がいた。
だが、俺が6歳の時⋯⋯世間には不慮の事故と公表されたが、 俺は今も弟は殺されたと思っている。
俺が王子教育を受けている時間、弟のヒューガが池に浮かんでいるのが発見された。
まだ3歳の子供が乳母や侍女たち、護衛騎士の目を掻い潜って一人で池に行ったと⋯⋯?
そんなこと有り得るか?
その時の母上のショックは酷いものでもう少しでお腹の子を流産するところだった⋯⋯
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それでも父上はチェルシー妃殿下のこともロベルト兄上のことも常に気にかけていたと思う。
いま思えばロベルト兄上しか子供のいないチェルシー妃殿下と三人も子供に恵まれた母上とでは傍から見れば父上からどちらが寵愛を受けているか歴然だったのかもしれない。
そうなると元公爵令嬢だったチェルシー妃殿下と他国の王女だった母上⋯⋯次期国王にとロベルト兄上よりも俺を後押しする貴族が増えてしまった。
俺は物心ついた時から母上から「ロベルト様が国王になられた暁にはブラッディが陰ながら支えなさい。その為には身に付けられるものはすべて身につけお助けしなさい。もしロベルト様の身が危険にさらされた時はブラッディが身を呈してお守りしなさい」と何度も、何度も言われて育った。それを俺も不服に思ったことは一度もなく、心から当然だと思っていた。
なのに⋯⋯それなのに俺の食事に毒が混入された。俺が10歳の時だった。その頃には少しずつ俺も毒に慣らされはじめていた頃だった。
それは即死するような物ではなく、少量ずつ食事に混ぜ徐々に身体を蝕んでいくという物だった。
最初に毒に気がついたのは母上だった。
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だが、理由を聞く前に自ら毒を飲み自害してしまった。そして責任を取って乳母までが自害してしまった。
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それでも⋯⋯そこまでしても魔の手はヒタヒタと、少しづつ、少しづつ近付いていたことに俺たちは誰も気づくことが出来なかった。
だから⋯⋯また俺は大切な家族を失ってしまったんだ。
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いつもたくさんのエール、感想ありがとうございます。
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