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~フェリクス第二王子視点~
見つけた⋯⋯
思った通りだ。
俺の知っているフローラなら今年がデビュタントだ。
なら、必ず王宮の舞踏会に姿を現すと思っていた。
この喜びをどう表せばいい?
身体が震えるのは歓喜からか?
それとも今から俺がする行動に拒絶されないか不安だからか?
⋯⋯そんな事はどうだっていい。
生きてくれていただけで、君が幸せそうに笑っていてくれるだけでいい。
震える足を一歩進めただけで周りの声も音楽も聞こえなくなった。
もう、君だけしか見えない。
歩を進めるたびに近づく距離。
心臓が今までに無いくらいドクドクと騒がしい。走り出したくなるのを耐えたんだ、どうか昔のように俺に笑顔を見せてくれないか?
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
~フローラ視点~
さあ、父様ともロー兄様とも踊ったし夜会の雰囲気も味わえたし、そろそろ帰る⋯⋯
?
父様とロー兄様が突然難しい顔になった、視線は私の後ろを見ている。何かあるの?振り向く前に後ろから聞き覚えのない声が呼んだのは過去の私の名前⋯⋯フローラと⋯⋯
「俺と踊ってくれないか?フローラ」
振り向くと真剣な表情をした⋯⋯この間授業に遅れないように起こしてあげた金髪に碧眼の美形が強ばった顔で手を差し出していた。
「お願いだ⋯⋯」
私がすぐに返事をしないからか、今度は不安げな様子の彼に自然と手を添えてしまった。
「ええ、喜んで」
うわっ、ダンスの申し込みを受けただけで満面の笑みを浮かべるなんて!
美形の破壊力の凄まじさ!恐るべし!
「「ルナ!」」
「同じ学園の人なの。心配しないで、一曲踊るだけよ。すぐに戻ってくるからね」
名前も知らない人。
でも、あんな目でお願いされたら断れないよ。
私の腰に手を添えた彼の手が微かに震えている。
もしかして凄く勇気を出してダンスに誘ってくれたのかな?
「⋯⋯ラ」
父様の安定感と、ロー兄様の優雅さを併せ持つ人だな。
「⋯ローラ」
それにこの人踊りやすいな。
「聞こえないのか?フローラ」
やっぱり、前の私を知っている。
「私の名前はフローラではありません。ルナフローラです」
近くで見るとやっぱり父様と似ているな~
「違うよ。君はフローラだ」
「名前は似ていますが違います」
「いいや、俺がフローラを間違えるはずがない」
執拗いな~
でも、確信がある言い方だよね。
「ルナフローラです」
それでもシラを切るしかないね。
「今はだろう?」
⋯⋯。
「まあいい。まずは、この間は起こしてくれてありがとうだな」
「あの後遅れませんでした?」
「⋯⋯少しだけ遅れた」
遅れたんだ⋯⋯困った人だな。
美形の気まずげな顔もコレもまた良いね。
美形ってどんな顔でも美形のままなんだ。
ところで、この人が同じ学園に通っていることは知っているけれど名前は?
私の思っていることが分かったのか、目の前の彼は自己紹介をしてくれた。
「フローラは覚えていないかも知れないが⋯⋯俺はフェイ『フェイ』と呼んでくれ。同じ学園の三年生だ」
「フェイ?フェイ様?」
⋯⋯聞いたことがあるような?
「敬称はいらない。フローラにはフェイと呼ばれたい」
愛称で?今名前を知ったばかりなのに?
でも、そう呼んでいた記憶が何となくあるような?無いような?
ただ、朧気だけれど思い当たりる人はいる。
だって、私がフォネス伯爵家の邸から外に出たのはお母様と王宮に行った時ぐらいしか記憶にないから。
それに、そんな懇願するような顔をされたら拒否なんて出来ないよ。
「フェイ?じゃあ私のことはルナと呼んでください」
「⋯⋯ルナ」
父様とロー兄様以外にそう呼ばれるのは初めてだ。
何となく擽ったい。
それにしても視線が痛い。
瞬きをしていないのかずっと私を見ている。
そして何故だが私も視線を逸らせれない。
「ルナもあの木陰で昼寝してるよな?」
なぜ知っているのだろうか?
「あそこは俺の入学当初からのお気に入りの場所なんだ。大きな木だからルナは俺が裏にいるのに気付いていなかっただろ?」
⋯⋯まったく気付かなかった。
イビキとかかいてないよね?
「ええ、私だけかと思っていました。それに私も彼処が気に入っています」
「また学園が始まるとあの場所に来るだろう?」
「⋯⋯私が行ってフェイの邪魔になりませんか?」
でも、邪魔と言われたらまた別の場所を見つけなくてはならなくなる。
「はははっ、気にするな。彼処でルナと会えるのを楽しみしにしているよ」
笑うと眩しいくらいだ。本当に美形だな。
まあ会えるといってもフェイは三年生だし、彼が卒業するまでのその間に長期休暇もあるし、さすがに寒い時期は外でのお昼寝は無理だろうから日数的には少ないかな。
気付けば曲が終わり、フェイが父様のところまでエスコートしてくれた。
その後、私たちは帰ることにしたのだけれど父様とロー兄様がその夜遅くまで話し合っていたことを疲れて爆睡していた私は知らなかった。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
~父様&ロー兄様の会話~
「また面倒な方に目を付けられましたね」
「⋯⋯初恋らしいぞ」
「はい?」
「フローラが幼い頃に一度だけフィーナが王宮に連れて行ったことがあるらしい」
「はぁ、その時からですか」
「甥の初恋を応援したい気持ちもあるが、相手がルナだからなぁ⋯⋯」
「あの二人⋯⋯美しい一枚の絵画を観ているようでしたね」
「ルナには幸せになって欲しい⋯⋯それが俺の父親としての唯一の願いだし本心だ。
だが!まだだ!まだルナは俺のルナだ!今は誰にも渡さない!これは絶対だ!」
「はい!僕も同感です!!」
朝食の席で珍しく飲みすぎたのか二日酔いの頭痛に耐える父様とロー兄様がいた。
見つけた⋯⋯
思った通りだ。
俺の知っているフローラなら今年がデビュタントだ。
なら、必ず王宮の舞踏会に姿を現すと思っていた。
この喜びをどう表せばいい?
身体が震えるのは歓喜からか?
それとも今から俺がする行動に拒絶されないか不安だからか?
⋯⋯そんな事はどうだっていい。
生きてくれていただけで、君が幸せそうに笑っていてくれるだけでいい。
震える足を一歩進めただけで周りの声も音楽も聞こえなくなった。
もう、君だけしか見えない。
歩を進めるたびに近づく距離。
心臓が今までに無いくらいドクドクと騒がしい。走り出したくなるのを耐えたんだ、どうか昔のように俺に笑顔を見せてくれないか?
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~フローラ視点~
さあ、父様ともロー兄様とも踊ったし夜会の雰囲気も味わえたし、そろそろ帰る⋯⋯
?
父様とロー兄様が突然難しい顔になった、視線は私の後ろを見ている。何かあるの?振り向く前に後ろから聞き覚えのない声が呼んだのは過去の私の名前⋯⋯フローラと⋯⋯
「俺と踊ってくれないか?フローラ」
振り向くと真剣な表情をした⋯⋯この間授業に遅れないように起こしてあげた金髪に碧眼の美形が強ばった顔で手を差し出していた。
「お願いだ⋯⋯」
私がすぐに返事をしないからか、今度は不安げな様子の彼に自然と手を添えてしまった。
「ええ、喜んで」
うわっ、ダンスの申し込みを受けただけで満面の笑みを浮かべるなんて!
美形の破壊力の凄まじさ!恐るべし!
「「ルナ!」」
「同じ学園の人なの。心配しないで、一曲踊るだけよ。すぐに戻ってくるからね」
名前も知らない人。
でも、あんな目でお願いされたら断れないよ。
私の腰に手を添えた彼の手が微かに震えている。
もしかして凄く勇気を出してダンスに誘ってくれたのかな?
「⋯⋯ラ」
父様の安定感と、ロー兄様の優雅さを併せ持つ人だな。
「⋯ローラ」
それにこの人踊りやすいな。
「聞こえないのか?フローラ」
やっぱり、前の私を知っている。
「私の名前はフローラではありません。ルナフローラです」
近くで見るとやっぱり父様と似ているな~
「違うよ。君はフローラだ」
「名前は似ていますが違います」
「いいや、俺がフローラを間違えるはずがない」
執拗いな~
でも、確信がある言い方だよね。
「ルナフローラです」
それでもシラを切るしかないね。
「今はだろう?」
⋯⋯。
「まあいい。まずは、この間は起こしてくれてありがとうだな」
「あの後遅れませんでした?」
「⋯⋯少しだけ遅れた」
遅れたんだ⋯⋯困った人だな。
美形の気まずげな顔もコレもまた良いね。
美形ってどんな顔でも美形のままなんだ。
ところで、この人が同じ学園に通っていることは知っているけれど名前は?
私の思っていることが分かったのか、目の前の彼は自己紹介をしてくれた。
「フローラは覚えていないかも知れないが⋯⋯俺はフェイ『フェイ』と呼んでくれ。同じ学園の三年生だ」
「フェイ?フェイ様?」
⋯⋯聞いたことがあるような?
「敬称はいらない。フローラにはフェイと呼ばれたい」
愛称で?今名前を知ったばかりなのに?
でも、そう呼んでいた記憶が何となくあるような?無いような?
ただ、朧気だけれど思い当たりる人はいる。
だって、私がフォネス伯爵家の邸から外に出たのはお母様と王宮に行った時ぐらいしか記憶にないから。
それに、そんな懇願するような顔をされたら拒否なんて出来ないよ。
「フェイ?じゃあ私のことはルナと呼んでください」
「⋯⋯ルナ」
父様とロー兄様以外にそう呼ばれるのは初めてだ。
何となく擽ったい。
それにしても視線が痛い。
瞬きをしていないのかずっと私を見ている。
そして何故だが私も視線を逸らせれない。
「ルナもあの木陰で昼寝してるよな?」
なぜ知っているのだろうか?
「あそこは俺の入学当初からのお気に入りの場所なんだ。大きな木だからルナは俺が裏にいるのに気付いていなかっただろ?」
⋯⋯まったく気付かなかった。
イビキとかかいてないよね?
「ええ、私だけかと思っていました。それに私も彼処が気に入っています」
「また学園が始まるとあの場所に来るだろう?」
「⋯⋯私が行ってフェイの邪魔になりませんか?」
でも、邪魔と言われたらまた別の場所を見つけなくてはならなくなる。
「はははっ、気にするな。彼処でルナと会えるのを楽しみしにしているよ」
笑うと眩しいくらいだ。本当に美形だな。
まあ会えるといってもフェイは三年生だし、彼が卒業するまでのその間に長期休暇もあるし、さすがに寒い時期は外でのお昼寝は無理だろうから日数的には少ないかな。
気付けば曲が終わり、フェイが父様のところまでエスコートしてくれた。
その後、私たちは帰ることにしたのだけれど父様とロー兄様がその夜遅くまで話し合っていたことを疲れて爆睡していた私は知らなかった。
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~父様&ロー兄様の会話~
「また面倒な方に目を付けられましたね」
「⋯⋯初恋らしいぞ」
「はい?」
「フローラが幼い頃に一度だけフィーナが王宮に連れて行ったことがあるらしい」
「はぁ、その時からですか」
「甥の初恋を応援したい気持ちもあるが、相手がルナだからなぁ⋯⋯」
「あの二人⋯⋯美しい一枚の絵画を観ているようでしたね」
「ルナには幸せになって欲しい⋯⋯それが俺の父親としての唯一の願いだし本心だ。
だが!まだだ!まだルナは俺のルナだ!今は誰にも渡さない!これは絶対だ!」
「はい!僕も同感です!!」
朝食の席で珍しく飲みすぎたのか二日酔いの頭痛に耐える父様とロー兄様がいた。
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