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先頭に威厳と存在感のある国王様と、その国王様にエスコートされているのが美しく気品に溢れた王妃様。
腹違いとはいえ、国王様は父様と髪と瞳の色以外はよく似ていた。
12歳の時に呼ばれたお茶会では顔を見ることも出来なかったけれど、5歳の頃にお母様と王宮に呼ばれた記憶は微かにある。だけど昔過ぎて王妃様のお顔まではあやふやだ。
続いて王太子のキースクリフ殿下と、王太子妃のイザベル様。
美男美女のお似合いの二人だ。
去年第一子の王子がお生まれになった。
続いてロイド殿下とエリザベス。
この二人も王太子夫妻にも負けず劣らずの美形だ。
エリザベスは得意げな表情をしているけれど、普段は柔和なロイド殿下の表情は"無"だ。それに周りの皆からの視線も冷たい。
当然だ。デビュタントの衣装は白いドレスのはずが⋯⋯確かに元は白いドレスだったのだろう。
ロイド殿下の色を使いたかったのだろうがやり過ぎだ。
ロイド殿下の瞳色である青と、エリザベスの瞳色の水色を使ったレースとリボンで元の白がほとんど隠れてしまっている。
常識知らずのこのドレスを王家が用意したとは思えない。
ならフォネス伯爵家か⋯⋯もうエリザベスが王子妃になるのは無理な気がする。
そのまま国王がデビュタントの皆にお祝いを述べて、続いて高位貴族から順番に王家の方々に挨拶をする。
もちろん王弟であり公爵である父様と娘の私が一番最初だ。
父様の簡単な挨拶に続いて私も無難に挨拶を済ませた。
顔を上げると私に優しい眼差しを向けてくれた国王と、その隣には口元に手をやり何故だが涙目の王妃様と目が合った。
取り敢えず淑女らしく微笑んでから父様に促され私たちの挨拶は終わった。
あとは最低でも一曲ダンスを踊ればいいらしい。
もちろん私のファーストダンスの相手は父様で、その次はロー兄様と踊る約束をしている。
「さあお手をどうぞ俺の宝物」
うふふっ父様ったら!
「はい!」
私のダンスの練習相手はいつも父様かロー兄様だった。
だから二人が踊りやすいのも慣れているからだと思っていた。
けれど周りの様子を伺うと、父様とロー兄様のレベルが高かったのだと今更ながら気付いた。
さすが元王族、高位貴族なだけある。
「上手くなったな。さすが俺の娘だ」
「忙しい合間を縫って父様が練習に付き合ってくれたお陰ですよ」
父様と微笑み合う。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
この時、何故か私を父様の養女だと思い込む女性たちに敵視されていたとは⋯⋯
曲が終わり次はロー兄様が誘ってくれた。
「僕のお姫様、一曲踊っていただけますか」
「もちろん」
逞しく安定感のある父様とまた違う、ロー兄様のリードは優雅で本物の王子様と踊っているようで、まるで私まで本物のお姫様になったような気分を味わえた。
まあ、曲が終わるまで褒めちぎられたのは苦笑いで軽く流していたけれどね。
「二曲続けて踊って疲れただろう?ひと休みしようか」
そう言って父様の所までエスコートしてくれたのは、ロー兄様に声をかけようと待機していた令嬢方から逃げるためなんだろうな。
ふふっ婚約者も居なくて性格も穏やかで、公爵でさらに超美形なロー兄様が数多の令嬢に狙われるのは仕方がないよね。
この時、私とロー兄様との関係を知らない令嬢や未亡人から憎悪を向けられていたとは⋯⋯
そして、この後ある人物の登場でさらに若い令嬢たちにまで妬みや嫉妬の籠った視線を向けられたことに⋯⋯
この日、私の知らない間に幅広い年齢層の女性たちから敵認定をされた事に私はまったく気づかなかった。
腹違いとはいえ、国王様は父様と髪と瞳の色以外はよく似ていた。
12歳の時に呼ばれたお茶会では顔を見ることも出来なかったけれど、5歳の頃にお母様と王宮に呼ばれた記憶は微かにある。だけど昔過ぎて王妃様のお顔まではあやふやだ。
続いて王太子のキースクリフ殿下と、王太子妃のイザベル様。
美男美女のお似合いの二人だ。
去年第一子の王子がお生まれになった。
続いてロイド殿下とエリザベス。
この二人も王太子夫妻にも負けず劣らずの美形だ。
エリザベスは得意げな表情をしているけれど、普段は柔和なロイド殿下の表情は"無"だ。それに周りの皆からの視線も冷たい。
当然だ。デビュタントの衣装は白いドレスのはずが⋯⋯確かに元は白いドレスだったのだろう。
ロイド殿下の色を使いたかったのだろうがやり過ぎだ。
ロイド殿下の瞳色である青と、エリザベスの瞳色の水色を使ったレースとリボンで元の白がほとんど隠れてしまっている。
常識知らずのこのドレスを王家が用意したとは思えない。
ならフォネス伯爵家か⋯⋯もうエリザベスが王子妃になるのは無理な気がする。
そのまま国王がデビュタントの皆にお祝いを述べて、続いて高位貴族から順番に王家の方々に挨拶をする。
もちろん王弟であり公爵である父様と娘の私が一番最初だ。
父様の簡単な挨拶に続いて私も無難に挨拶を済ませた。
顔を上げると私に優しい眼差しを向けてくれた国王と、その隣には口元に手をやり何故だが涙目の王妃様と目が合った。
取り敢えず淑女らしく微笑んでから父様に促され私たちの挨拶は終わった。
あとは最低でも一曲ダンスを踊ればいいらしい。
もちろん私のファーストダンスの相手は父様で、その次はロー兄様と踊る約束をしている。
「さあお手をどうぞ俺の宝物」
うふふっ父様ったら!
「はい!」
私のダンスの練習相手はいつも父様かロー兄様だった。
だから二人が踊りやすいのも慣れているからだと思っていた。
けれど周りの様子を伺うと、父様とロー兄様のレベルが高かったのだと今更ながら気付いた。
さすが元王族、高位貴族なだけある。
「上手くなったな。さすが俺の娘だ」
「忙しい合間を縫って父様が練習に付き合ってくれたお陰ですよ」
父様と微笑み合う。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
この時、何故か私を父様の養女だと思い込む女性たちに敵視されていたとは⋯⋯
曲が終わり次はロー兄様が誘ってくれた。
「僕のお姫様、一曲踊っていただけますか」
「もちろん」
逞しく安定感のある父様とまた違う、ロー兄様のリードは優雅で本物の王子様と踊っているようで、まるで私まで本物のお姫様になったような気分を味わえた。
まあ、曲が終わるまで褒めちぎられたのは苦笑いで軽く流していたけれどね。
「二曲続けて踊って疲れただろう?ひと休みしようか」
そう言って父様の所までエスコートしてくれたのは、ロー兄様に声をかけようと待機していた令嬢方から逃げるためなんだろうな。
ふふっ婚約者も居なくて性格も穏やかで、公爵でさらに超美形なロー兄様が数多の令嬢に狙われるのは仕方がないよね。
この時、私とロー兄様との関係を知らない令嬢や未亡人から憎悪を向けられていたとは⋯⋯
そして、この後ある人物の登場でさらに若い令嬢たちにまで妬みや嫉妬の籠った視線を向けられたことに⋯⋯
この日、私の知らない間に幅広い年齢層の女性たちから敵認定をされた事に私はまったく気づかなかった。
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