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~ロイド第三王子視点~
「ランベル嬢は一人が好きみたいだよな」
「ああ、あんなに可愛い子ってなかなか居ないよ。贅沢は言わないからせめて友達ぐらいにはなりたかった⋯⋯」
「そんなこと皆思っているさ」
「そうですわ!わたくし達女子だって話しかけらませんのよ!」
「一匹狼みたいでかっこいいよな」
「素敵ですわ~」
「「「でも⋯⋯残念(ですわよね)だよな」」」
「だからこそ!俺たちが見守ってやろうぜ!」
「そうだぜ!あのフォネス嬢に言いがかりを付けられて困っていたもんな」
「ええ!次こそ相手が誰だろうと守って差し上げたいですわ」
クラスメイト達が一致団結するのを興味が無い素振りで聞き耳を立てていたロイドは、クラスメイト達の方がルナフローラのことを理解していることに少しだけ嫉妬し、安心もしていた。
ただ話に出ていたフォネス嬢か⋯⋯あれからもエリザベスの教育は進んでいない。
新しく雇った担当教師に聞くと基礎が出来ていないらしく初歩からやり直しだそうだ。
以前の担当教師は将来『臣籍降下』することが決まっている第三王子の僕の妃にそこまでの教育は必要ないと思っていたと勝手な言い訳をしていた。
担当教師が代わってからエリザベスが厳しすぎると泣きついてくるが、今習っているところは本当に初歩の初歩で、王子妃教育の前⋯⋯各家で幼い頃に習って身につけているべき礼儀作法だ。
僕に泣きつけば逃げられると思っているのか?
「エリザベスは出来ないんじゃなくて、やりたくないだけだろ?」
「ち、違いますわ」
ぽろぽろとよく涙が出るな。
この涙を流す姿に最初は守ってあげたいと思っていた前の僕を殴りたい。
「泣いてどうにかなると思っているなら⋯⋯はっきり言うよ。このままだと君は王族に嫁ぐどころか高位貴族にも嫁ぐ資格すらないよ」
嫌なことがあるとすぐに泣くエリザベスの涙は安すぎる。
「ひ、酷い!」
「なら、死ぬ気で頑張るしかない。ここには君を甘やかしてくれるご両親はいないんだ。僕の為に頑張ってくれないか?」
こんなエリザベスだけど自分で選んだ婚約者だ。
最後の最後まで僕は見放すつもりは無い。
いや、見放すことは許されないんだ。
「はい⋯⋯わたくし愛するロイド様の為なら頑張れますわ」
愛する⋯⋯ね。
エリザベスと知り合って三年になる。
最初は本当に僕のことを好きなんだと、態度と言葉で現せてくれるその気持ちが嬉しかった。
でも、三年も付き合えば為人も分かってしまう。
彼女は僕が王子だから好きなんだ。
もし僕が下位貴族の子息や平民だったとしたら見向きもしなかっただろう。
そのことを母上や兄上は気付いていたのに⋯⋯
「約束だよ。さあ、教室に戻って」
「はい!頑張ります!」
このままいけば僕は数年後にはフォネス伯爵家に婿入りする。
王子教育の中には領地経営も含まれており、フォネス伯爵家は領地の民が納めた税金しか収入がないことは知っている。
今の贅沢な生活を続けていられるのも王子の婚約者に与えられる予算に家族で手を付けているからだ。
それは僕がエリザベスと婚姻した時点で終了することを彼らは分かっているのだろうか?
一度覚えた楽して贅沢の出来る生活が一瞬にしてレベルが落ちることに、彼らは耐えられるのだろうか?
僕たち王族は傍から見れば贅沢な暮らしをしていると思われがちだが、切り詰めるところはきっちり締めている。と理解している者は意外と少ないのかもしれない。
だから僕にエリザベスという婚約者が居ようが媚を売り、隙あらば撓垂れ掛かる令嬢が何人もいた。
エリザベスに取って代わろうとする令嬢もいれば、野心から自分の娘を薦めてくる貴族連中もいる。
いま思えばフォネス伯爵もそうだった。
本当に僕は、何も見えていなかった。
フローラ⋯⋯今となってはもう謝ることも出来ない。
それでも僕は君に謝り続けるしかないんだ。
「ランベル嬢は一人が好きみたいだよな」
「ああ、あんなに可愛い子ってなかなか居ないよ。贅沢は言わないからせめて友達ぐらいにはなりたかった⋯⋯」
「そんなこと皆思っているさ」
「そうですわ!わたくし達女子だって話しかけらませんのよ!」
「一匹狼みたいでかっこいいよな」
「素敵ですわ~」
「「「でも⋯⋯残念(ですわよね)だよな」」」
「だからこそ!俺たちが見守ってやろうぜ!」
「そうだぜ!あのフォネス嬢に言いがかりを付けられて困っていたもんな」
「ええ!次こそ相手が誰だろうと守って差し上げたいですわ」
クラスメイト達が一致団結するのを興味が無い素振りで聞き耳を立てていたロイドは、クラスメイト達の方がルナフローラのことを理解していることに少しだけ嫉妬し、安心もしていた。
ただ話に出ていたフォネス嬢か⋯⋯あれからもエリザベスの教育は進んでいない。
新しく雇った担当教師に聞くと基礎が出来ていないらしく初歩からやり直しだそうだ。
以前の担当教師は将来『臣籍降下』することが決まっている第三王子の僕の妃にそこまでの教育は必要ないと思っていたと勝手な言い訳をしていた。
担当教師が代わってからエリザベスが厳しすぎると泣きついてくるが、今習っているところは本当に初歩の初歩で、王子妃教育の前⋯⋯各家で幼い頃に習って身につけているべき礼儀作法だ。
僕に泣きつけば逃げられると思っているのか?
「エリザベスは出来ないんじゃなくて、やりたくないだけだろ?」
「ち、違いますわ」
ぽろぽろとよく涙が出るな。
この涙を流す姿に最初は守ってあげたいと思っていた前の僕を殴りたい。
「泣いてどうにかなると思っているなら⋯⋯はっきり言うよ。このままだと君は王族に嫁ぐどころか高位貴族にも嫁ぐ資格すらないよ」
嫌なことがあるとすぐに泣くエリザベスの涙は安すぎる。
「ひ、酷い!」
「なら、死ぬ気で頑張るしかない。ここには君を甘やかしてくれるご両親はいないんだ。僕の為に頑張ってくれないか?」
こんなエリザベスだけど自分で選んだ婚約者だ。
最後の最後まで僕は見放すつもりは無い。
いや、見放すことは許されないんだ。
「はい⋯⋯わたくし愛するロイド様の為なら頑張れますわ」
愛する⋯⋯ね。
エリザベスと知り合って三年になる。
最初は本当に僕のことを好きなんだと、態度と言葉で現せてくれるその気持ちが嬉しかった。
でも、三年も付き合えば為人も分かってしまう。
彼女は僕が王子だから好きなんだ。
もし僕が下位貴族の子息や平民だったとしたら見向きもしなかっただろう。
そのことを母上や兄上は気付いていたのに⋯⋯
「約束だよ。さあ、教室に戻って」
「はい!頑張ります!」
このままいけば僕は数年後にはフォネス伯爵家に婿入りする。
王子教育の中には領地経営も含まれており、フォネス伯爵家は領地の民が納めた税金しか収入がないことは知っている。
今の贅沢な生活を続けていられるのも王子の婚約者に与えられる予算に家族で手を付けているからだ。
それは僕がエリザベスと婚姻した時点で終了することを彼らは分かっているのだろうか?
一度覚えた楽して贅沢の出来る生活が一瞬にしてレベルが落ちることに、彼らは耐えられるのだろうか?
僕たち王族は傍から見れば贅沢な暮らしをしていると思われがちだが、切り詰めるところはきっちり締めている。と理解している者は意外と少ないのかもしれない。
だから僕にエリザベスという婚約者が居ようが媚を売り、隙あらば撓垂れ掛かる令嬢が何人もいた。
エリザベスに取って代わろうとする令嬢もいれば、野心から自分の娘を薦めてくる貴族連中もいる。
いま思えばフォネス伯爵もそうだった。
本当に僕は、何も見えていなかった。
フローラ⋯⋯今となってはもう謝ることも出来ない。
それでも僕は君に謝り続けるしかないんだ。
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