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「お異母姉様!」

はぁここ最近何度ため息をついたか⋯⋯

「私はランベル公爵家の娘ですよ。貴女のような妹などおりません。何度も言わせないで下さい」

「エリザベス!いい加減にしろ!」

王子殿下が間に入るのも何度目かしら?
最近は彼から話しかけて来なくなったと言うのに、エリザベスが執拗い。

「君のは亡くなっているはずだろ?大体生きていたとしてもエリザベスの方がじゃないか!姉妹の定義も知らないのか?」

「だってぇ~。ランベル様が亡くなったに似ているのですものぉ~。」

そうだね。本人だもの。
だから何?今さらフォネス家の人間に何か出来るとでも?それこそ私に生きていられたら困るのはフォネス家の方なのに⋯⋯馬鹿だから分からないんだろうね。注意されてもまだ自分を異母姉だと認めない。
それに大好きだなんて馬鹿なだけじゃなくて嘘つきなのね。

「⋯⋯それがどうした?似ているからと君がランベル嬢を呼びする理由にはならない!」

「この人はお異母姉様よ⋯⋯間違いないの。わたくしには分かりますわ!」

「⋯⋯そのの名前は?」

「え?えっと⋯⋯フ、フロ、フロ⋯⋯う~ん何年も前だから忘れちゃったっ!えへへっ」

可愛子ぶっても無駄だ。
それに名前すら覚えてないってどうなんだ?

「大好きなだったのに名前も覚えていないのか?」

うわーエリザベスを見下ろす殿下の目が怖くない?
まあ、私は関係ないね。

「我が家から抗議文を送らせてもらいます」

「是非そうしてくれて構わない。⋯⋯それとエリザベス、何度も抗議文の来るような令嬢は王家に迎えることは出来ないと知っているな?」

当然ね。

「え?なんで?ロイド様?」

「王子妃教育で最初に習っただろ?」

「し、知りませんわ!」

絶対に教えられているはず。
エリザベスが覚えていないだけでしょう。
いや、覚える気がなかっただけかも。

「⋯⋯君は最初から王子妃になるつもりがなかったのか?」

そう取られても仕方がない。
エリザベスは婚約者に選ばれたからと安心していたようね。
適正もない、努力もしないなら白紙に戻されても文句は言えない。

「婚約してから二年。王子妃教育も進んでいない。⋯⋯このままだとエリザベスを王家に迎えられないと分かるだろ?」

「い、いや!ロイド様!な、何でそんな意地悪を言いますの?」

「嫌なら努力するんだ。それが出来ないなら⋯⋯降りてもらう」

さすがにエリザベスでも、何を降りてもらうかは理解してるよね?

「私はこれで失礼しますがフォネス嬢、次はありませんからね」

睨むだけで謝りもしない。
どんな教育を受けているんだか!あの親だ、甘やかすだけで碌な教育はしていないことは想像がつく。
これで私に関わってこなくなればいいけれど⋯⋯

取り敢えず帰ったら父様に報告ね。









「なるほどね~やっぱりフォネス家って賢い奴が居ないんだね」

今日も帰ったらロー兄様が来ていた。だから父様と一緒に話を聞いてもらうことにした。

「あの家は財政状況が悪く、王子の婚約者に宛てがわれている金が無くなれば一気に没落することは目に見えている。何がなんでも王族との婚約を逃したくはないだろう」

「没落?私がいた頃は贅沢な暮らしをしていたよ」

「ああ、それはね。姉上が嫁ぐ時の契約で毎年フォネス伯爵家に我が家が援助をしていたからなんだよ。例え姉上が亡くなってもがいたからね、君が何不自由なく過ごせるように続けていたんだよ。まさかその金をには一切使わず、自分たちで使い込むなんてね。自分が金持ちになったと勘違いしていたようだよ」

「まあ、その援助が無くなれば碌に働いていないフォネス伯爵家が困ることになるのは当然だ」

「彼はねが亡くなっても永遠に援助が続くと思っていたようなんだ。自分に都合のいい頭をしているよね」

どれだけ厚かましいんだ!

どうも自分で死亡届を出したにも関わらず、お金が振り込まれないことに憤慨してスティアート公爵家、つまりロー兄様のところに催促に来たそうだ。
私が死んでからもずっとお金を貰えると思っていたらしい。
⋯⋯馬鹿だ。
貰えないと理解すると、今度は私を探し出そうとしたとか⋯⋯
やっぱり馬鹿だ。
もし見つかったとしても、嘘の死亡届を提出したことを罪に問われるとは思わなかったのだろうか?貴族の生死の虚偽は重罪だと子供でも知っているのに。
私の遺体を確認もせずに届けを出したのは、あの状態の私なら確実に野垂れ死ぬと思っていたんだろうね。

「フローラが生きているなら我がスティアート公爵家で引き取る」と、伝えてからはロー兄様に催促をしなくなったらしい。

当然だ!

まあ、生きていたら私への仕打ちがロー兄様にバレると焦ったんだろうけど、もう遅いんだよね。私が受けてきた仕打ちを全て話しちゃったもんね。


「王家でもフォネス家の娘エリザベスの評価は低い。このまま婚約を継続するのは難しいだろう」

だとしたら、フォネス伯爵家は没落するのも時間の問題ね。






私を溺愛する父様と、ロー兄様が私への仕打ちを許すほど甘い人ではないことを、天国から地獄へと突き落とす計画を立てていたことを、この時の私は何も知らなかった⋯⋯
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