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エリザベスが去っても、第三王子にここぞとばかりに次々に自己アピールをするクラスメイト達に囲まれていた。
やっぱり王族との繋がりは魅力的なんだ。
それから直ぐに担任が現れ第三王子は解放された。
「ロイド・ストレジアです。学生の間だけは王族とか関係なく仲良くしてくれたら嬉しい」
なるほど?学生の間だけね。
ここで親しくなったとしても、だからと言って卒業後はその限りではないってことね。
自己紹介はどんどん進み次は私の番になった。
「ルナフローラ・ランベルです。よろしくお願いいたします」
過度な自己アピールはするなって父様からの言い付けだからこんなものでいいよね。
全員の自己紹介が終わると、次は学園内をゾロゾロと歩きながら紹介された。
そして一度元の教室に戻り解散だ。
授業で使用する教科書は入学前に各家に届いている。
教科書以外の筆記用具やノートなどは各自で用意するようにと入学案内に記載されていた。
今日はここまでで解散し、本格的な授業は明日からだ。
さて、帰るとしますか。
あれ?今日も誰とも会話しなかった?
これで友達なんて出来るのだろうか?大丈夫か?私⋯⋯
全然大丈夫じゃなかった⋯⋯
入学して一週間も経つのに朝、教室に入る時に「おはようございます」と、帰りに教室から出る時に「ごきげんよう」と二言しか声を発していない。
授業だって先生が生徒を指名することは無いから言葉を発する機会がない。
ああ、食堂で注文する時は声を出しているな。
⋯⋯休憩時間も一人。
⋯⋯移動教室へも一人。
⋯⋯昼食も一人。
だからと言って、別に寂しくない。
うん、全く平気だ。
邸に帰れば父様や使用人たちが笑顔で迎えてくれるし、ロー兄様も度々会いに来てくれる。
そうだよ。有り難いことに?私って眠っている時くらいしか一人の時間がないくらい構われっ子だった。
考えようによっては、これっていいんじゃない?
そうだよ!いいんだよ!一人って最高なんだよ!こんな一人になれる時間も人には必要なんだよ!
ってことを帰って父様に言ったら「そんな所までルナはフィーナにそっくりだな」って懐かしそうに言われた。
確かにお母様って娘の私から見ても儚くて守ってあげたくなるような人だったけど、いま思えば意外とマイペースな人だったわ。
目の前で私が転んでも「あらあら、気をつけなさいよ~」って、慌てることなく手当てするような人だった。
これが父様なら大慌てで医者を呼んじゃうね。
見た目はクールなのにね。
だから気にせずこれからも一人を楽しむことにしたんだ。
なのに、何でなのよ!話しかけてこないでよ!
入学して一ヶ月が経った。
私なりに学園生活を楽しんでいたのに!
「ずっと見ていたけどいつも一人だよね。大丈夫かい?」
余計なお世話だよ。
「⋯⋯一人が好きなので」
「でも心配だな」
「大丈夫です。お気遣いなく」
放っておいて欲しい。
「僕と君は従兄妹になるんだよ?心配するのは当然だろ?」
やめて、本当にやめて欲しい。
「ロイド様ぁ~誰と話しているんですかぁ~」
ほら!エリザベスが来たじゃない!
しかも睨んでいるし!
「では、失礼します」
ふぅ~エリザベスのお陰で逃げきれた。
本当に勘弁して欲しい。
二度と話しかけてこないで!と、願ったんだけどそれは叶わなかった⋯⋯
何かにつけて気にかけてくれるのは彼が優しい人だからだとは思う。
でも!そのせいで今の状況になっているのよ!
「ランベル様?王子殿下にはエリザベス様と言う婚約者がいますのよ?」
知っているわよ。
「どうやって殿下に取り入ったのか知りませんが身の程を弁えなさい!」
取り入ってないし、身の程って⋯⋯
一応私は公爵令嬢。
貴女たちは誰?
グズんグズん⋯⋯
「エリザベス様!泣かないで下さいませ!」
わざとらしい!それ絶対に嘘泣きだよね?
「私からは一度も話し掛けていないわ」
パシッ
ふぅ⋯⋯久しぶりの痛みだわ。
エリザベスが先に手を上げるかと思えば連れている令嬢の方が早かった。
「殿下に色目を使わないで!」
再度振り上げた令嬢の手を掴んだ。
もう、立場的に弱い私じゃないのよ?
「ねえ?私は公爵令嬢で、エリザベス様は王子殿下の婚約者かもしれないけれど今はただの伯爵令嬢。其方の方たちはどこのお家の方かしら?名乗りもせずに突然言いがかりをつけ手を上げましたわね?」
「⋯⋯何が言いたいのよ」
やっと口を開いたかと思えばやっぱりこの子も親に似て馬鹿なのね。
その証拠に立場を理解できていない。
「公爵令嬢の私に手を挙げて「ごめんなさい」で済と思っているのなら大間違いよ。我がランベル家から三家に抗議文を送るわ」
今のエリザベスよりも私の方が爵位は上。
もちろん私を溺愛する父様に報告すれば只では済まない。しかも手まで上げちゃうとね。
「エ、エリザベス様」
「も、もう行きましょう」
今ごろ気付いて慌てだしても遅いのよ。
「なんでよ!わたくしはロイド様の婚約者よ!」
やっぱり馬鹿だ。王子の婚約者だからって自分が偉くなったつもりなんだ。
分かってないな。だから馬鹿なんだよ。
「お前たち何をしているんだ!エリザベス!」
「ロイド様ぁ~この人がわたくしを脅すのですわぁ~」
「エリザベス、僕をこれ以上失望させるな」
おや~?もしかして殿下はエリザベスの本性に気付いているの?婚約者だからといって一方の言い分だけを鵜呑みにしない公平な人なんだね。
まあ、例えそうでもコレだけは言わせてもらう。
「王子殿下、痴話喧嘩に巻き込まれたくありませんのでもう話しかけないで下さいね」
わざと冷たく突き放すように言ってこの場を去ることにした。
後ろから「え?お異母姉様?」って聞こえたのは無視して⋯⋯
てか、まだ異母妹のフリしてたのか。
面倒なことにならなければいいけれど。
後日、エリザベスを除く二人の令嬢が学園から姿を消したことを教えてくれる人のいない私の耳に届くことはなかった⋯⋯
エリザベスへの抗議文はフォネス伯爵家だけでなく王家にも送ったそうで、もともと評価の低いエリザベスの立場は崖っぷちになったとか⋯⋯
即、婚約を解消にしないのは外聞が悪いからなのか、それとも思惑があるからなのかは私には分からないけれど⋯⋯何かあるのだろうな、とは思っている。
やっぱり王族との繋がりは魅力的なんだ。
それから直ぐに担任が現れ第三王子は解放された。
「ロイド・ストレジアです。学生の間だけは王族とか関係なく仲良くしてくれたら嬉しい」
なるほど?学生の間だけね。
ここで親しくなったとしても、だからと言って卒業後はその限りではないってことね。
自己紹介はどんどん進み次は私の番になった。
「ルナフローラ・ランベルです。よろしくお願いいたします」
過度な自己アピールはするなって父様からの言い付けだからこんなものでいいよね。
全員の自己紹介が終わると、次は学園内をゾロゾロと歩きながら紹介された。
そして一度元の教室に戻り解散だ。
授業で使用する教科書は入学前に各家に届いている。
教科書以外の筆記用具やノートなどは各自で用意するようにと入学案内に記載されていた。
今日はここまでで解散し、本格的な授業は明日からだ。
さて、帰るとしますか。
あれ?今日も誰とも会話しなかった?
これで友達なんて出来るのだろうか?大丈夫か?私⋯⋯
全然大丈夫じゃなかった⋯⋯
入学して一週間も経つのに朝、教室に入る時に「おはようございます」と、帰りに教室から出る時に「ごきげんよう」と二言しか声を発していない。
授業だって先生が生徒を指名することは無いから言葉を発する機会がない。
ああ、食堂で注文する時は声を出しているな。
⋯⋯休憩時間も一人。
⋯⋯移動教室へも一人。
⋯⋯昼食も一人。
だからと言って、別に寂しくない。
うん、全く平気だ。
邸に帰れば父様や使用人たちが笑顔で迎えてくれるし、ロー兄様も度々会いに来てくれる。
そうだよ。有り難いことに?私って眠っている時くらいしか一人の時間がないくらい構われっ子だった。
考えようによっては、これっていいんじゃない?
そうだよ!いいんだよ!一人って最高なんだよ!こんな一人になれる時間も人には必要なんだよ!
ってことを帰って父様に言ったら「そんな所までルナはフィーナにそっくりだな」って懐かしそうに言われた。
確かにお母様って娘の私から見ても儚くて守ってあげたくなるような人だったけど、いま思えば意外とマイペースな人だったわ。
目の前で私が転んでも「あらあら、気をつけなさいよ~」って、慌てることなく手当てするような人だった。
これが父様なら大慌てで医者を呼んじゃうね。
見た目はクールなのにね。
だから気にせずこれからも一人を楽しむことにしたんだ。
なのに、何でなのよ!話しかけてこないでよ!
入学して一ヶ月が経った。
私なりに学園生活を楽しんでいたのに!
「ずっと見ていたけどいつも一人だよね。大丈夫かい?」
余計なお世話だよ。
「⋯⋯一人が好きなので」
「でも心配だな」
「大丈夫です。お気遣いなく」
放っておいて欲しい。
「僕と君は従兄妹になるんだよ?心配するのは当然だろ?」
やめて、本当にやめて欲しい。
「ロイド様ぁ~誰と話しているんですかぁ~」
ほら!エリザベスが来たじゃない!
しかも睨んでいるし!
「では、失礼します」
ふぅ~エリザベスのお陰で逃げきれた。
本当に勘弁して欲しい。
二度と話しかけてこないで!と、願ったんだけどそれは叶わなかった⋯⋯
何かにつけて気にかけてくれるのは彼が優しい人だからだとは思う。
でも!そのせいで今の状況になっているのよ!
「ランベル様?王子殿下にはエリザベス様と言う婚約者がいますのよ?」
知っているわよ。
「どうやって殿下に取り入ったのか知りませんが身の程を弁えなさい!」
取り入ってないし、身の程って⋯⋯
一応私は公爵令嬢。
貴女たちは誰?
グズんグズん⋯⋯
「エリザベス様!泣かないで下さいませ!」
わざとらしい!それ絶対に嘘泣きだよね?
「私からは一度も話し掛けていないわ」
パシッ
ふぅ⋯⋯久しぶりの痛みだわ。
エリザベスが先に手を上げるかと思えば連れている令嬢の方が早かった。
「殿下に色目を使わないで!」
再度振り上げた令嬢の手を掴んだ。
もう、立場的に弱い私じゃないのよ?
「ねえ?私は公爵令嬢で、エリザベス様は王子殿下の婚約者かもしれないけれど今はただの伯爵令嬢。其方の方たちはどこのお家の方かしら?名乗りもせずに突然言いがかりをつけ手を上げましたわね?」
「⋯⋯何が言いたいのよ」
やっと口を開いたかと思えばやっぱりこの子も親に似て馬鹿なのね。
その証拠に立場を理解できていない。
「公爵令嬢の私に手を挙げて「ごめんなさい」で済と思っているのなら大間違いよ。我がランベル家から三家に抗議文を送るわ」
今のエリザベスよりも私の方が爵位は上。
もちろん私を溺愛する父様に報告すれば只では済まない。しかも手まで上げちゃうとね。
「エ、エリザベス様」
「も、もう行きましょう」
今ごろ気付いて慌てだしても遅いのよ。
「なんでよ!わたくしはロイド様の婚約者よ!」
やっぱり馬鹿だ。王子の婚約者だからって自分が偉くなったつもりなんだ。
分かってないな。だから馬鹿なんだよ。
「お前たち何をしているんだ!エリザベス!」
「ロイド様ぁ~この人がわたくしを脅すのですわぁ~」
「エリザベス、僕をこれ以上失望させるな」
おや~?もしかして殿下はエリザベスの本性に気付いているの?婚約者だからといって一方の言い分だけを鵜呑みにしない公平な人なんだね。
まあ、例えそうでもコレだけは言わせてもらう。
「王子殿下、痴話喧嘩に巻き込まれたくありませんのでもう話しかけないで下さいね」
わざと冷たく突き放すように言ってこの場を去ることにした。
後ろから「え?お異母姉様?」って聞こえたのは無視して⋯⋯
てか、まだ異母妹のフリしてたのか。
面倒なことにならなければいいけれど。
後日、エリザベスを除く二人の令嬢が学園から姿を消したことを教えてくれる人のいない私の耳に届くことはなかった⋯⋯
エリザベスへの抗議文はフォネス伯爵家だけでなく王家にも送ったそうで、もともと評価の低いエリザベスの立場は崖っぷちになったとか⋯⋯
即、婚約を解消にしないのは外聞が悪いからなのか、それとも思惑があるからなのかは私には分からないけれど⋯⋯何かあるのだろうな、とは思っている。
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