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しおりを挟む入学式の感想を聞かれたら"こんなものか"って感じたのが正直な気持ち。
もっと感動とかするものだと勝手に思っていたから。
新入生代表の挨拶は第三王子が務めた。
あの日、顔も見ることがなかったロイド第三王子を見ても"ふ~ん彼がエリザベスの婚約者か"と思っただけ。王子様なだけあって綺麗な顔をしていたけれど特別惹かれるようなことはなかった。
今日は入学式だけで、式が終わればそのまま解散になった。
明日はクラス編成のための試験があり、休みを挟んでクラス発表が行われると、それから本格的に学園生活が始まると一年の学年主任が言っていた。
私は会場の入口で待ち合わせをしている父様のもとに急いだ。
ん?
何かあったのかな、父様の機嫌が悪そうだ。
ただでさえ鋭く目つきが悪いのに眉間に皺まで寄っている。
だからか父様に挨拶をしたいだろう人たちがウロウロと様子を伺うだけで近付けないみたい。
「父様」
「ルナ帰るぞ」
私が声をかけると眉間の皺は無くなったけれどこの場を少しでも早く立ち去りたいみたい。
馬車に乗り込むなり父様は頭を抱えた。
「心配だ。あんな場所にルナが通うなんて心配だ~」
「なんで?大丈夫だよ」
「⋯⋯ルナ?周りの視線に気付かなかったのか?」
「あ!そう言えば誰とも話していない!挨拶すらしていないわ!どうしよう~」
「⋯⋯俺の娘は鈍感なのか?いや、このままでいいんじゃないか?」
「何?聞こえないよ」
「うん?今日も俺の娘は可愛いって言っただけだ」
おかしな父様。でも機嫌が良くなったからいいか。
朝起きてからずっと父様が離れてくれなかったんだよね。
今日だってクラス編成のための試験が終わればすぐに帰ってくるって分かっているのに心配性なんだから。
馬車から降りるとなんだか騒がしい。
今日は一年生だけが登校だから、あの集団は全員同級生なんだと思う。
うん、関わらないでおこう。
どこでエリザベスに会うか分からないものね。
まあ、会ったところで困ることはないけれど⋯⋯
結果から言えば試験は意外と簡単だった。
その結果でクラスが決まるのよね。
今日も朝から父様の心配性が爆発して着いてこようとするのを何とか宥めて学園に到着した。
私はAクラスね。
登校すると生徒でごった返した校舎の入口の掲示板に張り出されたものを見て入学案内に入っていたこの学園の案内図を思い浮かべながらクラスに向かうことにした。
クラスはA、B、Cの三クラスで分けられていた。
Aクラス、Bクラス、Cクラスの順に人数が増えていたのは何でだろう?
トータルで一年生は60人ぐらいかな?
高貴な気品を漂わせ背筋を伸ばし銀髪を靡かせ、真っ直ぐ前を向いて歩くルナフローラは、周りの生徒たちから注目されていることに気付くことなく入口に『一年A組』の札の付いた教室に辿り着いた。
開け放たれている扉からそっと中を覗き込んで、窓際の一番後ろの席に取り敢えず着席した。
内心は指定されていないからどこに座ってもいいんだよね?大丈夫だよね?と不安になりながらもそれは顔には出ていない。
周りから視線を集めていることにも全く気付きもしない。安定のルナフローラ。
そろ~と目だけを動かして周りの様子を伺う。
当然だけれど知っている顔はない。
暫くするとキャッキャッと騒がしい女性たちの甲高い声が聞こえてきたと思ったら、何人もの女生徒を引き連れて新入生代表挨拶をした第三王子が現れた。
さすが王子様。おモテになる。
「Aクラスではない生徒はここからは入ってはいけないよ」
と、穏やかだけれどピシャリと言い切った。
ふ~ん⋯⋯チヤホヤされていても鼻の下を伸ばしたりしないんだ。
「ロイド様ぁ~エリザベスはロイド様とクラスが別れて寂しいですぅ~」
⋯⋯⋯⋯。
うん、元々綺麗な顔立ちだったエリザベスは、この三年でさらに磨きがかかっていた。
義母の妖艶さも引継ぎながら、胸とか、胸とか、胸とかね。
それでいて可憐な見た目に成長していた。
でも、甘えたような話し方は変わらない。
15歳にもなってアレはない。
「はぁ、僕も残念だよ。まさかエリザベスがCクラスだとはね。成績順でクラス分けがされることは知っていただろう?」
「あ、あの日は調子が悪かっただけですわ!」
第三王子の袖をちょこんと摘んで上目遣い⋯⋯
やだッ、あのエリザベスがか弱く見える。
私の知らない三年間で知性は伸びなかったけれど女としての技を磨いていたのね。
「⋯⋯早く自分のクラスに行くんだ」
「⋯⋯はぁ~い」
まあ、それも第三王子には効かなかったみたいだけれどね。
エリザベスを見送る第三王子の目が冷たく見えたのは私の気の所為なのだろうか⋯⋯
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