13 / 71
13
しおりを挟む入学式の感想を聞かれたら"こんなものか"って感じたのが正直な気持ち。
もっと感動とかするものだと勝手に思っていたから。
新入生代表の挨拶は第三王子が務めた。
あの日、顔も見ることがなかったロイド第三王子を見ても"ふ~ん彼がエリザベスの婚約者か"と思っただけ。王子様なだけあって綺麗な顔をしていたけれど特別惹かれるようなことはなかった。
今日は入学式だけで、式が終わればそのまま解散になった。
明日はクラス編成のための試験があり、休みを挟んでクラス発表が行われると、それから本格的に学園生活が始まると一年の学年主任が言っていた。
私は会場の入口で待ち合わせをしている父様のもとに急いだ。
ん?
何かあったのかな、父様の機嫌が悪そうだ。
ただでさえ鋭く目つきが悪いのに眉間に皺まで寄っている。
だからか父様に挨拶をしたいだろう人たちがウロウロと様子を伺うだけで近付けないみたい。
「父様」
「ルナ帰るぞ」
私が声をかけると眉間の皺は無くなったけれどこの場を少しでも早く立ち去りたいみたい。
馬車に乗り込むなり父様は頭を抱えた。
「心配だ。あんな場所にルナが通うなんて心配だ~」
「なんで?大丈夫だよ」
「⋯⋯ルナ?周りの視線に気付かなかったのか?」
「あ!そう言えば誰とも話していない!挨拶すらしていないわ!どうしよう~」
「⋯⋯俺の娘は鈍感なのか?いや、このままでいいんじゃないか?」
「何?聞こえないよ」
「うん?今日も俺の娘は可愛いって言っただけだ」
おかしな父様。でも機嫌が良くなったからいいか。
朝起きてからずっと父様が離れてくれなかったんだよね。
今日だってクラス編成のための試験が終わればすぐに帰ってくるって分かっているのに心配性なんだから。
馬車から降りるとなんだか騒がしい。
今日は一年生だけが登校だから、あの集団は全員同級生なんだと思う。
うん、関わらないでおこう。
どこでエリザベスに会うか分からないものね。
まあ、会ったところで困ることはないけれど⋯⋯
結果から言えば試験は意外と簡単だった。
その結果でクラスが決まるのよね。
今日も朝から父様の心配性が爆発して着いてこようとするのを何とか宥めて学園に到着した。
私はAクラスね。
登校すると生徒でごった返した校舎の入口の掲示板に張り出されたものを見て入学案内に入っていたこの学園の案内図を思い浮かべながらクラスに向かうことにした。
クラスはA、B、Cの三クラスで分けられていた。
Aクラス、Bクラス、Cクラスの順に人数が増えていたのは何でだろう?
トータルで一年生は60人ぐらいかな?
高貴な気品を漂わせ背筋を伸ばし銀髪を靡かせ、真っ直ぐ前を向いて歩くルナフローラは、周りの生徒たちから注目されていることに気付くことなく入口に『一年A組』の札の付いた教室に辿り着いた。
開け放たれている扉からそっと中を覗き込んで、窓際の一番後ろの席に取り敢えず着席した。
内心は指定されていないからどこに座ってもいいんだよね?大丈夫だよね?と不安になりながらもそれは顔には出ていない。
周りから視線を集めていることにも全く気付きもしない。安定のルナフローラ。
そろ~と目だけを動かして周りの様子を伺う。
当然だけれど知っている顔はない。
暫くするとキャッキャッと騒がしい女性たちの甲高い声が聞こえてきたと思ったら、何人もの女生徒を引き連れて新入生代表挨拶をした第三王子が現れた。
さすが王子様。おモテになる。
「Aクラスではない生徒はここからは入ってはいけないよ」
と、穏やかだけれどピシャリと言い切った。
ふ~ん⋯⋯チヤホヤされていても鼻の下を伸ばしたりしないんだ。
「ロイド様ぁ~エリザベスはロイド様とクラスが別れて寂しいですぅ~」
⋯⋯⋯⋯。
うん、元々綺麗な顔立ちだったエリザベスは、この三年でさらに磨きがかかっていた。
義母の妖艶さも引継ぎながら、胸とか、胸とか、胸とかね。
それでいて可憐な見た目に成長していた。
でも、甘えたような話し方は変わらない。
15歳にもなってアレはない。
「はぁ、僕も残念だよ。まさかエリザベスがCクラスだとはね。成績順でクラス分けがされることは知っていただろう?」
「あ、あの日は調子が悪かっただけですわ!」
第三王子の袖をちょこんと摘んで上目遣い⋯⋯
やだッ、あのエリザベスがか弱く見える。
私の知らない三年間で知性は伸びなかったけれど女としての技を磨いていたのね。
「⋯⋯早く自分のクラスに行くんだ」
「⋯⋯はぁ~い」
まあ、それも第三王子には効かなかったみたいだけれどね。
エリザベスを見送る第三王子の目が冷たく見えたのは私の気の所為なのだろうか⋯⋯
1,268
お気に入りに追加
8,613
あなたにおすすめの小説
あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します
矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜
言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。
お互いに気持ちは同じだと信じていたから。
それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。
『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』
サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。
愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します

【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける
堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」
王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。
クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。
せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。
キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。
クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。
卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。
目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。
淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。
そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる