3 / 71
3
しおりを挟む
「お・ね・え・さ・ま」
また言っている。
先に生まれたのが姉だって馬鹿だから知らないのかな?
それとも妹気分が味わいたいだけなんだろうか?
これを無視すると義母に言いつけるんでしょう?
だから自分の身を守るために返事だけはすることにしている。
「何でしょうか?」
「わたくし、お母様と一緒にお父様に会いに王都に行くの~。いっぱい甘えるんだ~。うふふっお父様はわたくしの欲しいものは何でも買ってくれるの~」
⋯⋯⋯⋯。
言うだけ言って義姉は義母の元に向かった。
距離があってもそこから聞こえる声は義母のもの。
「しっかりあの子を見張っていなさい!甘やかせた者はクビにするわよ!」
ここにも馬鹿がいる。
王都に行くたびに同じことを言うなんて。
ここには私に優しくしてくれる人は一人もいないというのに。
はぁ、ここに来てもう一年は過ぎたわね。
その間に父親がここに来たのは三回。
義母と異母姉は二ヶ月に一度は王都に行く。
その間だけが私の頬が赤く腫れ上がることも背中に痣ができることはない。
だって、私に暴力を振るうのは父親と義母だけだから。
いつも山のようにドレスや宝石を買ってきて見せびらかすのは義姉。
義母に似て派手なドレスばかりで羨ましいと思ったことは一度ない。それどころか使用人服しか持っていない私でも恥ずかしくてあんな派手なドレスもゴテゴテした宝石も身に着けたいとは思わない。
それにしても、義母の目がないのだから食事ぐらいちゃんとした物が食べたい。贅沢は言わない。使用人と同じ物でいいのに⋯⋯
お風呂だって入れなくていいから温かいお湯を使わせて欲しい。
あの義母は宣言通り、本当に死なない程度に食事を与えてこき使う。
暴力だって顔は手で叩き、体は足で蹴る。
足で人を蹴るなんて貴族の夫人としてどうなの?
鞭など道具を使われないだけマシか。
あと言葉使いもお母様と比べると品がない。
まああんな人達のことはどうでもいいから、お腹が空いた。
いつか苦しくなるぐらいお腹いっぱい食べたい。
水でお腹を膨らますのはもう嫌だ。
それから一ヶ月程であの二人が帰ってきた。今回も買い物三昧だったのだろう。乗ってきた馬車の他に二台の馬車から使用人総出で荷物を運んでいるから。
毎回、こんなに買い物をしていて大丈夫なんだろうか?
この本邸から出たことはないけれど、この領地は私が知らないだけで潤っているのだろうか?
⋯⋯私が気にかけることはないか。
どうせ、この家を継ぐのはエリザベスかその夫になるだろうし、もしかしたら義弟が生まれるかもしれないしね。
私は⋯⋯このまま使用人として一生こき使われるのか、それとも政略結婚の駒にされるのか⋯⋯父親次第だろう。
でも、成人したらこの家を出て行くつもりだ。
それまで生きていられればの話だけど。
「フローラ!フローラ!早く来なさい!」
ふう、帰ってくるなり呼び出すのもいつものことね。
あの男の前では本性を隠して猫を被っているからか、ストレスが溜まるらしい。
それを私で発散するために呼び出すのはやめて欲しい。
「お呼びで「アンタの声は聞きたくない!って言ったでしょ!お前は喋るな!」
バシッ
ここにも使用人が何人も居るというのに⋯⋯本当に汚い言葉。
慣れたものでみんな聞こえない振り、見て見ぬふり。
そうよね。止めたりしたら次は自分に降りかかるかもしれないものね。別に恨んだりしない。誰だって我が身が可愛いもの。
あ~あ、しばらく仰向けで眠れていたのにな、今晩からまたうつぶせ寝になるのか⋯⋯
気持ちで負けない!って、ずっと強気で頑張ってきたけれど、もう心が折れそうだ。
誰でもいいから、ここから助け出してくれないかな⋯⋯
また言っている。
先に生まれたのが姉だって馬鹿だから知らないのかな?
それとも妹気分が味わいたいだけなんだろうか?
これを無視すると義母に言いつけるんでしょう?
だから自分の身を守るために返事だけはすることにしている。
「何でしょうか?」
「わたくし、お母様と一緒にお父様に会いに王都に行くの~。いっぱい甘えるんだ~。うふふっお父様はわたくしの欲しいものは何でも買ってくれるの~」
⋯⋯⋯⋯。
言うだけ言って義姉は義母の元に向かった。
距離があってもそこから聞こえる声は義母のもの。
「しっかりあの子を見張っていなさい!甘やかせた者はクビにするわよ!」
ここにも馬鹿がいる。
王都に行くたびに同じことを言うなんて。
ここには私に優しくしてくれる人は一人もいないというのに。
はぁ、ここに来てもう一年は過ぎたわね。
その間に父親がここに来たのは三回。
義母と異母姉は二ヶ月に一度は王都に行く。
その間だけが私の頬が赤く腫れ上がることも背中に痣ができることはない。
だって、私に暴力を振るうのは父親と義母だけだから。
いつも山のようにドレスや宝石を買ってきて見せびらかすのは義姉。
義母に似て派手なドレスばかりで羨ましいと思ったことは一度ない。それどころか使用人服しか持っていない私でも恥ずかしくてあんな派手なドレスもゴテゴテした宝石も身に着けたいとは思わない。
それにしても、義母の目がないのだから食事ぐらいちゃんとした物が食べたい。贅沢は言わない。使用人と同じ物でいいのに⋯⋯
お風呂だって入れなくていいから温かいお湯を使わせて欲しい。
あの義母は宣言通り、本当に死なない程度に食事を与えてこき使う。
暴力だって顔は手で叩き、体は足で蹴る。
足で人を蹴るなんて貴族の夫人としてどうなの?
鞭など道具を使われないだけマシか。
あと言葉使いもお母様と比べると品がない。
まああんな人達のことはどうでもいいから、お腹が空いた。
いつか苦しくなるぐらいお腹いっぱい食べたい。
水でお腹を膨らますのはもう嫌だ。
それから一ヶ月程であの二人が帰ってきた。今回も買い物三昧だったのだろう。乗ってきた馬車の他に二台の馬車から使用人総出で荷物を運んでいるから。
毎回、こんなに買い物をしていて大丈夫なんだろうか?
この本邸から出たことはないけれど、この領地は私が知らないだけで潤っているのだろうか?
⋯⋯私が気にかけることはないか。
どうせ、この家を継ぐのはエリザベスかその夫になるだろうし、もしかしたら義弟が生まれるかもしれないしね。
私は⋯⋯このまま使用人として一生こき使われるのか、それとも政略結婚の駒にされるのか⋯⋯父親次第だろう。
でも、成人したらこの家を出て行くつもりだ。
それまで生きていられればの話だけど。
「フローラ!フローラ!早く来なさい!」
ふう、帰ってくるなり呼び出すのもいつものことね。
あの男の前では本性を隠して猫を被っているからか、ストレスが溜まるらしい。
それを私で発散するために呼び出すのはやめて欲しい。
「お呼びで「アンタの声は聞きたくない!って言ったでしょ!お前は喋るな!」
バシッ
ここにも使用人が何人も居るというのに⋯⋯本当に汚い言葉。
慣れたものでみんな聞こえない振り、見て見ぬふり。
そうよね。止めたりしたら次は自分に降りかかるかもしれないものね。別に恨んだりしない。誰だって我が身が可愛いもの。
あ~あ、しばらく仰向けで眠れていたのにな、今晩からまたうつぶせ寝になるのか⋯⋯
気持ちで負けない!って、ずっと強気で頑張ってきたけれど、もう心が折れそうだ。
誰でもいいから、ここから助け出してくれないかな⋯⋯
962
お気に入りに追加
8,606
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける
堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」
王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。
クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。
せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。
キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。
クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。
卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。
目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。
淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。
そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
真実の愛は素晴らしい、そう仰ったのはあなたですよ元旦那様?
わらびもち
恋愛
王女様と結婚したいからと私に離婚を迫る旦那様。
分かりました、お望み通り離婚してさしあげます。
真実の愛を選んだ貴方の未来は明るくありませんけど、精々頑張ってくださいませ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜
たろ
恋愛
この話は
『内緒で死ぬことにした 〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜』
の続編です。
アイシャが亡くなった後、リサはルビラ王国の公爵の息子であるハイド・レオンバルドと結婚した。
そして、アイシャを産んだ。
父であるカイザも、リサとハイドも、アイシャが前世のそのままの姿で転生して、自分たちの娘として生まれてきたことを知っていた。
ただアイシャには昔の記憶がない。
だからそのことは触れず、新しいアイシャとして慈しみ愛情を与えて育ててきた。
アイシャが家族に似ていない、自分は一体誰の子供なのだろうと悩んでいることも知らない。
親戚にあたる王子や妹に、意地悪を言われていることも両親は気が付いていない。
アイシャの心は、少しずつ壊れていくことに……
明るく振る舞っているとは知らずに可愛いアイシャを心から愛している両親と祖父。
アイシャを助け出して心を救ってくれるのは誰?
◆ ◆ ◆
今回もまた辛く悲しい話しが出てきます。
無理!またなんで!
と思われるかもしれませんが、アイシャは必ず幸せになります。
もし読んでもいいなと思う方のみ、読んで頂けたら嬉しいです。
多分かなりイライラします。
すみません、よろしくお願いします
★内緒で死ぬことにした の最終話
キリアン君15歳から14歳
アイシャ11歳から10歳
に変更しました。
申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる