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こうなったのも全て⋯⋯







昨日、領地からこの王都にある邸に義母と異母姉と一緒に父親に呼び出された。


お母様が亡くなってから2年。
お葬式にすら父親は顔も出さなかった。
私と、執事と使用人だけでお母様を見送った。
普段からお母様と父親が顔を合わすことはほとんどなかった。
いいえ、父親が邸に帰ってこなかっただけ。
父親に会えなくて寂しい思いをしたことはなかった。
だって私には愛してくれるお母様がいたから。
それに使用人たちも良くしてくれた。


それがお母様のお葬式の2日後には義母と異母姉を連れて帰ってきた。
大好きなお母様を亡くして泣いてばかりの私を無理やり呼び出した先には、父親と同じ髪色と瞳の色。顔は義母に似た私よりも数ヶ月早く生まれたという異母姉を紹介された。

その当時10歳とはいえ令嬢教育を受けて数年、帰ってこない父親が不貞をしているとは感じていた。それでもそれがお母様と婚姻を結ぶ前からの不貞だとは思いもしなかった。

数回しか顔を合わせたことしかない父親に、別に期待もしていなかった分ショックでもなかった。
ただ軽蔑しただけ。
それにお母様の口からこの父親を尊敬する言葉も愛ある言葉も聞いたことがなかったから。悪口も聞かなかったけれどね。
その頃には教育の中にあった"政略結婚"だと理解していたから。

それでもお母様はいつも初恋の人のことをそれはそれは嬉しそうに恥じらいながらよく話してくれた。それはお母様が亡くなるまで⋯⋯お母様はずっと初恋の人を思っていたのだろう。
よかった。
こんな夫としても、父親としても尊敬するところが一つもない人がお母様の想い人ではなくて⋯⋯

だから父親が義母と異母姉を連れてきた時から既に予測はしていた。
ーーーこの邸に私の居場所がなくなると。

まず、私の部屋は異母姉の部屋に。
そして私は使用人部屋に。
次に、それを咎めた執事や侍女長を解雇し、私に優しかった使用人がいなくなるまでに2ヶ月もかからなかった。
それからだ。
私が伯爵令嬢だと知らない者ばかりになると、義母の命令で使用人以下の扱いをされるようになったのは⋯⋯
早朝から水仕事。朝食も昼食も夕食も使用人の残り。それも残りがあればの話。まったく口にすることも出来なかった日も珍しくはなかった。

でも暴力を振るわれることがないだけマシね。
なんて、思いながらその生活に日々耐えていた。
そんなある日、私宛てに手紙が届くなり私に感心のなかった父親が『なぜ王家からの手紙がお前に届くんだ!』と、怒鳴りながら頬を叩かれ、訳も分からずその手紙を読むことも出来ないまま馬車に乗せられた。

着いた先はフォネス伯爵家の領地の本邸。
初めて訪れた本邸の使用人には身なりから最初は私が伯爵家の令嬢だとは信じてもらえなかった。
それも当然だと思う。
以前の令嬢らしく手入れをされていた面影など今の私にはないのだから⋯⋯
それでもフォネス伯爵家の家紋のついた馬車に乗ってきたことで一応は認めてくれたのか、久しぶりに温かい食事にふかふかのベッド、暖かいお風呂に使用人たちからの丁寧な扱いを堪能することができた。

⋯⋯それも束の間だった。
4日後には義母と異母姉が文句を言いながらこの本邸に来たのだ。



温かい朝食の後、テラスでのんびりお茶をしていたらエントランスの方が騒がしくなり、ヒステリックな声が聞こえてきた。
ああ、天国もここまでね。 
はぁ~~長い溜め息がでた。

ノックもなく扉の開いた先には派手なドレスに濃い化粧の義母が鬼の形相で立っていた。その後ろから異母姉がニヤニヤと笑って覗いていた。

「アンタ!何を勘違いしているの?あの女とアンタはあたくし達の10年間を奪っていたのよ!⋯⋯ここに居る限り死なない程度にこき使ってやるわ!!分かったらそのドレスを脱いで使用人用の服に着替えなさい!!」

⋯⋯納得はしていない。
でもこの義母はすぐに手が出ることは経験済み。

「⋯⋯はい」

⋯⋯ほら、ね。

部屋を出ようとした私の前に立ち塞がり手を振り上げた。

パンッ!

この日から王都に居た時よりもキツく、耐える日々が始まった。
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