上 下
58 / 67

58

しおりを挟む
~ほとんどカトリーナの話しになります~





来てあげましたよ!
時間通りに!ソルト伯爵家に!

でも、通されたのはカトリーナ様のお部屋・・・
お茶会じゃなかったの?

いつもの侍女はお茶の用意が終わったら部屋から退室して行ってしまった。
だから部屋には私とカトリーナ様だけ。

「わざわざお呼びして悪かったわね」
と言いながら足を組むカトリーナ様。

この口調と態度に違和感が・・・
年下だよね?
私の方がお姉さんだし公爵令嬢だよ?

「時間がもったいないから単刀直入に聞かせてもらうわ。貴女、転生者とか、異世界転生って言葉分かる?」

ちょ、ちょっと待った~!
なぜその言葉をカトリーナ様が?

「て、転生者ですか?」

「ま、それはあとから聞かせてもらうよ」

知らないフリをしておこう。
面倒ごとに巻き込まれたくないもの。

「そ、それよりカトリーナ様の口調が・・・」

まるで年上の人と話しているみたい。

「ああそれはね、わたくしには前世の記憶があるのよ。40歳で死ぬまでは医者をしていた記憶がね」

「よ、40歳!」

マジか!
しかも医者ですと!!

「そ、それでなぜ私に?」

「ハッキリ言うわ。ここはね前世で読んだ小説に類似した世界なのよ」

「はあ?小説?類似?」

「そう、国の名も、登場人物の名前も一致するわ」

乙女ゲームの世界かと疑ったこともあったけれど小説だったか!

「最初から話すわ。わたくしが前世の記憶を思い出したのは5歳の時。たまたま図書室で医師だった祖父の手記を見つけた時よ」

フムフム

「ただその時は前世を思い出しても小説とは結びつかなかったわ」

「そして、わたくしにも貴族教育が始まって、この国の名を知った時も国王の名前を知った時も聞いた事があるような不思議な感じがしただけだった」

「・・・でもね、王太子、アンドリュー殿下の名前を聞いて一気に頭の中に物語の内容が駆け巡ったわ」

「この小説は大して売れなかったし、結末も登場人物の誰にとっても悲惨なものだった。・・・だから、結末を変えられるならば変えたいと思ったんだ・・・。そして、わたくしが7歳の時にジョシュア殿下の婚約者候補だった読書好きの姉が王宮の図書室に行く度について行くことにした。わたくしの話しを真剣に聞いて、信じてくれる人がいないかを探していたんだ」

「そこに、本当にたまたまアンドリュー殿下が来たの。縋り着いたね。もう必死だったよ・・・」

「だってアンドリュー殿下は結婚して子にも恵まれ、さらに王太子妃のお腹には第二子も授かって幸せの絶頂で・・・愛する王太子妃とお腹の子、それと第一子まで亡くすことになる人だからね」

「おかしな幼児が紛れ込んで騒いでいると思ったんだろうね。だけどアンドリュー殿下は面倒くさそうではあったけど話しを聞いてくれたよ」

「そこで全部話したよ。前世のこと、この先の未来のこと、知っている限り全て話した。最初は黙って聞いていただけのアンドリュー殿下だったけどね、第一子の名前を言ったら信じてくれたよ。密かに未来の自分の子供の名前を考えていた名だったそうだ」

「その当時アンドリュー殿下もまだ16歳の子供だったけど動いてくれた。国王にも話しを通してくれたんだ」

「今から5年後、この国に疫病が流行る・・・そこへ、トライガス王国が戦争を仕掛けてくるんだとね」

「そして国と国民を守るため戦ったが・・・結果は分かるだろう?既に疫病で疲弊していた国だ・・・敗戦国の末路なんて悲惨だよ」

「だが、それで終わらなかった。カサンドリア王国と戦ってトライガス王国も無傷ではすまなかった。戦争で疲弊したトライガス王国に今度はダイアモア王国が戦争を仕掛けたんだよ」

「その原因がマーガレットだ。トライガス王国でも、カサンドリア王国でも問題を起こしてね、居場所がなくなったマーガレットは次はダイアモア王国に渡り国王の妾になるんだ。マーガレットは追い出されたことを恨んでいたんだろうね。国王を唆したんだ。そこからこの大陸は次々に戦火が広がって行ったんだ・・・」

「・・・」

「約3年前、アンドリュー殿下がトライガス王国に訪問する際、わたくしも同行させてもらったよ。唯一トライガスで戦争を起こそうとしていた国王を止めようとしていたバレリオ王太子に協力を仰ぐためにね。バレリオ王太子はすぐに信じてくれたよ。トライガス国王は既に戦の計画を進めていたからね」

「わたくしは2人が話し合っている間にトライガスの王城にある図書室で過去の書籍を読み漁ったね。祖父の手記に残されていた資料を元にわたくしが予想していた疫病の病名を確定するためにね」

「前世の知識で薬は作れる。それで疫病は完治すると確信して、今度はわたくしの知識でその薬を作った」

「そこで疫病問題は解決したが、トライガス国王とマーガレットの問題が残っていた。バレリオ王太子もずっと動いてくれたんだけどね、国王の考えを変えることも、マーガレットを更生させることもダメだった。・・・だからマーガレットの留学を許したんだよ。この国でマーガレットを処分するためにね」

「あとは分かるね。国王に責任を負わせ退位という名の幽閉。マーガレットからは自由を奪った。その為に犠牲になった者たちは冷たいようだけど自業自得だね」




「それで、あんたも転生者だろ?ヴィクトリア?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

七年間の婚約は今日で終わりを迎えます

hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

結婚式の日取りに変更はありません。

ひづき
恋愛
私の婚約者、ダニエル様。 私の専属侍女、リース。 2人が深い口付けをかわす姿を目撃した。 色々思うことはあるが、結婚式の日取りに変更はない。 2023/03/13 番外編追加

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

アリシアの恋は終わったのです。

ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。 その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。 そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。 反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。 案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。 ーーーーー 12話で完結します。 よろしくお願いします(´∀`)

処理中です...