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次の日の昼休み、食事を終えてカフェに向かっているとドルチアーノ殿下に呼び止められた。
「ヴィクトリア嬢!ソルト嬢の言っていたことは違う、違うんだ!」
そんな必死に言い訳がましく言わなくても・・・そうでしょうね。
1つの家から王族に嫁げるのは1人だと決まっているもの。
だからそんな必死な顔しなくても大丈夫ですよ~。
ソルト様のお姉様がジョシュア殿下の婚約者に選ばれた時点で、いくら彼女がドルチアーノ殿下に想いを寄せても結ばれることはないんだよね。
ちょっとあの時は巫山戯たことを思っただけよ?
本気で思っていた訳ではなかったわよ?
「ふふふっ分かっていますよ」
「そ、それならいいんだけど・・・君は・・・」
珍しく口ごもっているけれど・・・
「まだ何かありますの?」
「い、いや、何でもない。それよりも卒業式に友人達と参加するって聞いたよ」
「来年の本番のために雰囲気を知っておこうと参加することにしたんです」
「そっか。僕が卒業したらもう君と会う機会は減っちゃうんだね」
「あ!そうなりますね?」
そっか~
言われてみればそうよね。
王族と気軽に会うことなんて普通に考えたら無理だわ。
たまたま年もそう変わらないから同じ学院に通えて、過去のことは水に流しつつ会話をする仲になれただけで、本来なら王宮で開かれる夜会でしか会うことが出来ない存在だったわ。
「この一年、君とのいい思い出が出来てよかったよ。・・・ありがとう」
殿下なりに『デブス』発言のことは反省しているんだろうな。
でも私の頭の中では仕返しはやっておくべき!という気持ちと、もう会うことも無くなるんだしもうどうでもいいか、と言う気持ちもあるんだよね・・・
「こちらこそドルチアーノ殿下にはお世話になりました。
それに・・・助けていただいたご恩は忘れません。あの時はありがとうございました」
いや!まだ諦めたらダメだ!
きっとチャンスはあるはず!
泣かせる!いつか絶対泣かせる!
「あの、ヴィクトリア嬢・・・笑顔が怖いんだけど・・・」
あら?顔に出てた?
「ふふふっ殿下、気の所為ですわ」
「そう?ならいいんだけど」
まだ何か言いたそうにしていたけれど、予鈴が鳴ってそこで会話は終わった。
放課後、ウチの馬車の前に・・・カトリーナ・ソルト嬢が・・・
つい、昨日も見た仁王立ちで立っていた。
その隣には彼女の侍女らしき方が、申し訳なさそうに私に何度も頭を下げている。
「ディハルト様!」
「・・・はい」
「これから毎日、ディハルト様がドルチアーノ様に色目を使わないか監視致しますわ!」
ソルト様は今日も元気ね。
私は一気に疲れたけれどね!
「・・・そうですか」
卒業式まであと4日だし、好きにさせとけばいいか。
「ヴィー、迎えに来たよ」
この日のお迎えはリアム兄様。
後ろからのリアム兄様の声に反応して振り向いたソルト様が固まった。
「ありがとうございます」
「それでこの可愛らしい令嬢は?」
「カトリーナ・ソルト様ですよ」
「こんにちはソルト嬢。僕はリアム・ディハルト。ヴィクトリアの兄だよ」
ニコリと笑ってリアム兄様が挨拶しても、まだ固まったまま動かないソルト様。
う~ん・・・
このまま放っておいていいのかな?
目線をソルト様の侍女に向けると、また頭を下げだした。
リアム兄様も困った顔をしているけれど、私に手を差し出してくれた。
なるほど・・・彼女を放置して帰るつもりのようだ。
馬車に乗り込む前に一応声は掛けたけれど、彼女は目を見開いたまま私の声にも反応しなかった。
まさか、この子立ったまま気絶とかしてないよね?
少し心配しつつも、侍女も傍にいることだし気にせず馬車に乗り込んだ。
ソルト様が断言した通りなら、明日も私を監視しに来るでしょう。
さあ、リアム兄様帰りましょう!
まさか、次の日から彼女の恋愛相談に乗ることになるなんて思いもしなかった・・・。
「ヴィクトリア嬢!ソルト嬢の言っていたことは違う、違うんだ!」
そんな必死に言い訳がましく言わなくても・・・そうでしょうね。
1つの家から王族に嫁げるのは1人だと決まっているもの。
だからそんな必死な顔しなくても大丈夫ですよ~。
ソルト様のお姉様がジョシュア殿下の婚約者に選ばれた時点で、いくら彼女がドルチアーノ殿下に想いを寄せても結ばれることはないんだよね。
ちょっとあの時は巫山戯たことを思っただけよ?
本気で思っていた訳ではなかったわよ?
「ふふふっ分かっていますよ」
「そ、それならいいんだけど・・・君は・・・」
珍しく口ごもっているけれど・・・
「まだ何かありますの?」
「い、いや、何でもない。それよりも卒業式に友人達と参加するって聞いたよ」
「来年の本番のために雰囲気を知っておこうと参加することにしたんです」
「そっか。僕が卒業したらもう君と会う機会は減っちゃうんだね」
「あ!そうなりますね?」
そっか~
言われてみればそうよね。
王族と気軽に会うことなんて普通に考えたら無理だわ。
たまたま年もそう変わらないから同じ学院に通えて、過去のことは水に流しつつ会話をする仲になれただけで、本来なら王宮で開かれる夜会でしか会うことが出来ない存在だったわ。
「この一年、君とのいい思い出が出来てよかったよ。・・・ありがとう」
殿下なりに『デブス』発言のことは反省しているんだろうな。
でも私の頭の中では仕返しはやっておくべき!という気持ちと、もう会うことも無くなるんだしもうどうでもいいか、と言う気持ちもあるんだよね・・・
「こちらこそドルチアーノ殿下にはお世話になりました。
それに・・・助けていただいたご恩は忘れません。あの時はありがとうございました」
いや!まだ諦めたらダメだ!
きっとチャンスはあるはず!
泣かせる!いつか絶対泣かせる!
「あの、ヴィクトリア嬢・・・笑顔が怖いんだけど・・・」
あら?顔に出てた?
「ふふふっ殿下、気の所為ですわ」
「そう?ならいいんだけど」
まだ何か言いたそうにしていたけれど、予鈴が鳴ってそこで会話は終わった。
放課後、ウチの馬車の前に・・・カトリーナ・ソルト嬢が・・・
つい、昨日も見た仁王立ちで立っていた。
その隣には彼女の侍女らしき方が、申し訳なさそうに私に何度も頭を下げている。
「ディハルト様!」
「・・・はい」
「これから毎日、ディハルト様がドルチアーノ様に色目を使わないか監視致しますわ!」
ソルト様は今日も元気ね。
私は一気に疲れたけれどね!
「・・・そうですか」
卒業式まであと4日だし、好きにさせとけばいいか。
「ヴィー、迎えに来たよ」
この日のお迎えはリアム兄様。
後ろからのリアム兄様の声に反応して振り向いたソルト様が固まった。
「ありがとうございます」
「それでこの可愛らしい令嬢は?」
「カトリーナ・ソルト様ですよ」
「こんにちはソルト嬢。僕はリアム・ディハルト。ヴィクトリアの兄だよ」
ニコリと笑ってリアム兄様が挨拶しても、まだ固まったまま動かないソルト様。
う~ん・・・
このまま放っておいていいのかな?
目線をソルト様の侍女に向けると、また頭を下げだした。
リアム兄様も困った顔をしているけれど、私に手を差し出してくれた。
なるほど・・・彼女を放置して帰るつもりのようだ。
馬車に乗り込む前に一応声は掛けたけれど、彼女は目を見開いたまま私の声にも反応しなかった。
まさか、この子立ったまま気絶とかしてないよね?
少し心配しつつも、侍女も傍にいることだし気にせず馬車に乗り込んだ。
ソルト様が断言した通りなら、明日も私を監視しに来るでしょう。
さあ、リアム兄様帰りましょう!
まさか、次の日から彼女の恋愛相談に乗ることになるなんて思いもしなかった・・・。
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