50 / 67
50 マーガレット視点
しおりを挟む
~マーガレット視点~
「自己紹介がまだだったね」
今まで黙って会話を聞いていた素敵なおじ様が優しく微笑んで声をかけてくれたの。
この方なら助けてくれるかもしれないわ!
「私はディハルト公爵、ヴィクトリアの父親だよ。随分とうちの娘が世話になったね」
!!!
嘘でしょう?父親ですって?
「私はディハルト公爵家嫡男のルイスです」
あの子の兄ですって?
「僕はディハルト公爵家の次男リアムだよ」
この人もなの!
彼らがあの子の兄だと知っていたら、アレクシスなんかに執着せずにヴィクトリアと仲良くしていたわ。
そうしたら今ごろ2人のどちらかを手に入れられたのに・・・
・・・無理だわ。
この人達はわたくしを助けてはくれない。
やめて、震えないで、わたくしは王女よ!
みっともない姿を見せる訳にはいかないわ!
「さて、君はどうするんだい?」
「ど、どうとは・・・」
「王女ではない君をここには置いておけないと殿下も仰っていただろう?この部屋から出たら君は着の身着のままこの王宮から追い出される。行き先はあるのかい?」
あるわけないじゃない!
だから助けを求めたのよ!
でも、2人のどちらでもいいから欲しいわ。
この部屋から出される前に何とか気を引かないと・・・
狙うならルイス様一択ね。
彼は時期公爵様だもの。
今と生活はさほど変わらない筈だわ。
それにあの子だって何れはお嫁に行くもの、少しの間だけ媚びればいいだけよ。
考えるのよ。
チャンスは限られているわ。
国にはもう戻れない・・・
頼れる人もいない・・・
それにこの国でも恨まれているなら、見つかれば殺されてしまうかもしれない。
王女として何不自由なく育ったわたくしは外の世界では生きていけない。
そんな事は分かっているわ。
誰かに頼るしかないの。
「ご迷惑はお掛けしません。だから、お願い致します。ディハルト公爵家に置いていただけませんか?」
ルイス様を見つめながら目を潤ませて見上げるわ。
ほら、庇護欲がそそられるでしょう?
「うちには君が陥れようとした可愛い妹がいる。君の嘘のせいで妹がアレクシスに何をされたかその場に居た君は知っているだろ?」
・・・忘れていたわ。
「あれは、アレクシスがやったことですわ」
ルイス様が無理なら優しそうなリアム様ならどう?
「そうだね。でもその前にも僕たちの可愛い妹は君の取り巻き達に怪我を負わされたんだよ?彼らも君の嘘が原因で廃嫡されたよ?」
どう言えばいいの?
何をすれば・・・
「お願いします。何でも致しますわ」
"何でもする"この言葉は魔法の言葉よ。
きっとルイス様とリアム様の頭の中は、わたくしを自由に出来ると色々なことを想像しているはずだわ。
「それに私は昨日婚約したばかりだ。彼女と君を会わせたくない。可愛くて優しい彼女を私は蕩けるほど甘やかすつもりだ」
まだこれでもダメなの?
そんなのまた奪ってしまえばいいの。
「まあ、君をうちに連れて行くことはないから他を当たりなさい」
父親の方は頭が固いわね。
「僕たちは可愛いヴィーを傷つけた君を受け入れない。そんな君でも受け入れてくれるとしたら・・・」
誰?誰なら面倒を見てくれるの?
「アレクシスだけだね」
アレクシス?
もう彼のことは飽きてるのに・・・。
でもアレクシスは侯爵家の嫡男だったわ。
彼のところに行くのもいいかもしれないわ。
「彼にはもう君しかいないから大切にしてくれるさ」
そんなのことは当たり前でしょう?
だってアレクシスはわたくしに夢中だもの。
ほとぼりが冷めるまではアレクシスを利用させてもらうわ。
彼も顔だけはいいもの。
頑なに口付けだけしかしなかったアレクシスも、一緒に住めば間違いなくわたくしを求めてくるわ。
経験のない彼があの快感を知れば、さらにわたくしに夢中になるでしょうね。
それに今はアレクシスに頼るしかないわ。
「分かりました。彼にわたくしの身をお任せしたいと思います」
「アレクシスならどんな君でも受け止めてくれるよ」
キリリとしたルイス様も良いけれど、優しく微笑むリアム様も捨て難いわね。
何れにしろ、どんな手を使っても2人を手に入れるわ。
「それでいいんだな?」
まだいましたの?アンドリュー殿下・・・
わたくしを追い出す貴方に用はないのよ!
「はい、わたくしはアレクシス様をお慕いしていますもの」
嫌になったらアレクシスを捨てて逃げ出せばいいのよ。
「そうか・・・リアム頼んだ」
「はい」
リアム様がわたくしに手を差し出して立たせてくれた。
アレクシスのところまで連れて行ってくれるのね。
え?
一瞬何が起こったのか分からなかった。
リアム様の手元が動いたと思ったら・・・
ニヤリと笑ったアンドリュー殿下と、高い位置から冷たく見下ろすリアム様と目が合ったことまでは覚えている・・・
「罪深いお前を自由にするわけがないだろう?残りの人生後悔しながら生きていきな」
遠くなる意識の片隅でアンドリュー様の言葉だけは聞き取れた・・・
経験したことの無いような痛みで目が覚めた。
あの時わたくしに何があったの?
下半身のこの痛みは何なの?
それにここは何処なの?
痛みと恐怖に自然と涙が浮かんでくる。
誰か、誰かいないの?
真っ暗な部屋に月明かりがカーテンの隙間から少しだけ入っている。
あれから何時間、何日経ったのかも分からない。
分からない、分からない、何も分からない・・・
「薬が切れたか・・・」
暗闇から聞こえたのはアレクシスの低い声だった・・・
「完全に傷が塞がるまでは寝ていろ」
傷?
どういう事?
腕にチクッとした痛みがと思ったら・・・意識・・・が遠のいてい・・・く・・・
「自己紹介がまだだったね」
今まで黙って会話を聞いていた素敵なおじ様が優しく微笑んで声をかけてくれたの。
この方なら助けてくれるかもしれないわ!
「私はディハルト公爵、ヴィクトリアの父親だよ。随分とうちの娘が世話になったね」
!!!
嘘でしょう?父親ですって?
「私はディハルト公爵家嫡男のルイスです」
あの子の兄ですって?
「僕はディハルト公爵家の次男リアムだよ」
この人もなの!
彼らがあの子の兄だと知っていたら、アレクシスなんかに執着せずにヴィクトリアと仲良くしていたわ。
そうしたら今ごろ2人のどちらかを手に入れられたのに・・・
・・・無理だわ。
この人達はわたくしを助けてはくれない。
やめて、震えないで、わたくしは王女よ!
みっともない姿を見せる訳にはいかないわ!
「さて、君はどうするんだい?」
「ど、どうとは・・・」
「王女ではない君をここには置いておけないと殿下も仰っていただろう?この部屋から出たら君は着の身着のままこの王宮から追い出される。行き先はあるのかい?」
あるわけないじゃない!
だから助けを求めたのよ!
でも、2人のどちらでもいいから欲しいわ。
この部屋から出される前に何とか気を引かないと・・・
狙うならルイス様一択ね。
彼は時期公爵様だもの。
今と生活はさほど変わらない筈だわ。
それにあの子だって何れはお嫁に行くもの、少しの間だけ媚びればいいだけよ。
考えるのよ。
チャンスは限られているわ。
国にはもう戻れない・・・
頼れる人もいない・・・
それにこの国でも恨まれているなら、見つかれば殺されてしまうかもしれない。
王女として何不自由なく育ったわたくしは外の世界では生きていけない。
そんな事は分かっているわ。
誰かに頼るしかないの。
「ご迷惑はお掛けしません。だから、お願い致します。ディハルト公爵家に置いていただけませんか?」
ルイス様を見つめながら目を潤ませて見上げるわ。
ほら、庇護欲がそそられるでしょう?
「うちには君が陥れようとした可愛い妹がいる。君の嘘のせいで妹がアレクシスに何をされたかその場に居た君は知っているだろ?」
・・・忘れていたわ。
「あれは、アレクシスがやったことですわ」
ルイス様が無理なら優しそうなリアム様ならどう?
「そうだね。でもその前にも僕たちの可愛い妹は君の取り巻き達に怪我を負わされたんだよ?彼らも君の嘘が原因で廃嫡されたよ?」
どう言えばいいの?
何をすれば・・・
「お願いします。何でも致しますわ」
"何でもする"この言葉は魔法の言葉よ。
きっとルイス様とリアム様の頭の中は、わたくしを自由に出来ると色々なことを想像しているはずだわ。
「それに私は昨日婚約したばかりだ。彼女と君を会わせたくない。可愛くて優しい彼女を私は蕩けるほど甘やかすつもりだ」
まだこれでもダメなの?
そんなのまた奪ってしまえばいいの。
「まあ、君をうちに連れて行くことはないから他を当たりなさい」
父親の方は頭が固いわね。
「僕たちは可愛いヴィーを傷つけた君を受け入れない。そんな君でも受け入れてくれるとしたら・・・」
誰?誰なら面倒を見てくれるの?
「アレクシスだけだね」
アレクシス?
もう彼のことは飽きてるのに・・・。
でもアレクシスは侯爵家の嫡男だったわ。
彼のところに行くのもいいかもしれないわ。
「彼にはもう君しかいないから大切にしてくれるさ」
そんなのことは当たり前でしょう?
だってアレクシスはわたくしに夢中だもの。
ほとぼりが冷めるまではアレクシスを利用させてもらうわ。
彼も顔だけはいいもの。
頑なに口付けだけしかしなかったアレクシスも、一緒に住めば間違いなくわたくしを求めてくるわ。
経験のない彼があの快感を知れば、さらにわたくしに夢中になるでしょうね。
それに今はアレクシスに頼るしかないわ。
「分かりました。彼にわたくしの身をお任せしたいと思います」
「アレクシスならどんな君でも受け止めてくれるよ」
キリリとしたルイス様も良いけれど、優しく微笑むリアム様も捨て難いわね。
何れにしろ、どんな手を使っても2人を手に入れるわ。
「それでいいんだな?」
まだいましたの?アンドリュー殿下・・・
わたくしを追い出す貴方に用はないのよ!
「はい、わたくしはアレクシス様をお慕いしていますもの」
嫌になったらアレクシスを捨てて逃げ出せばいいのよ。
「そうか・・・リアム頼んだ」
「はい」
リアム様がわたくしに手を差し出して立たせてくれた。
アレクシスのところまで連れて行ってくれるのね。
え?
一瞬何が起こったのか分からなかった。
リアム様の手元が動いたと思ったら・・・
ニヤリと笑ったアンドリュー殿下と、高い位置から冷たく見下ろすリアム様と目が合ったことまでは覚えている・・・
「罪深いお前を自由にするわけがないだろう?残りの人生後悔しながら生きていきな」
遠くなる意識の片隅でアンドリュー様の言葉だけは聞き取れた・・・
経験したことの無いような痛みで目が覚めた。
あの時わたくしに何があったの?
下半身のこの痛みは何なの?
それにここは何処なの?
痛みと恐怖に自然と涙が浮かんでくる。
誰か、誰かいないの?
真っ暗な部屋に月明かりがカーテンの隙間から少しだけ入っている。
あれから何時間、何日経ったのかも分からない。
分からない、分からない、何も分からない・・・
「薬が切れたか・・・」
暗闇から聞こえたのはアレクシスの低い声だった・・・
「完全に傷が塞がるまでは寝ていろ」
傷?
どういう事?
腕にチクッとした痛みがと思ったら・・・意識・・・が遠のいてい・・・く・・・
207
お気に入りに追加
8,570
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
結婚式の日取りに変更はありません。
ひづき
恋愛
私の婚約者、ダニエル様。
私の専属侍女、リース。
2人が深い口付けをかわす姿を目撃した。
色々思うことはあるが、結婚式の日取りに変更はない。
2023/03/13 番外編追加
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
アリシアの恋は終わったのです。
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる