上 下
47 / 67

47 後半マーガレット王女視点

しおりを挟む
「・・・疲れました。私はもう帰ってもよろしいですか?」

もう、彼が分からない。
彼は自分の事ばかりで、人の気持ちが理解出来ない人なのかもしれない。

「ああ、アレクシスの処罰は宰相の公爵も交えて話し合うから、帰ってゆっくり休めばいい」

お父様は陛下と一緒に貴族会議に出席していて、まだ今日の事は知らせていないってルイス兄様が教えてくれた。
その警備にリアム兄様が付いているから、リアム兄様も知らされていないらしい。

ルイス兄様は私と一緒に帰ろうとしたんだけど、マーガレット王女のことで話があるとかで、王太子殿下に引き止められてしまった。

そっちの方が大変そう・・・。

まだ何かをブツブツ言っている彼のことは無視して、王太子殿下とドルチアーノ殿下、ハイアー侯爵様に挨拶をして部屋から出ようとしたんだけどね、頭からルイス兄様の上着を掛けられ、またお姫様抱っこされた。

「こんな顔のヴィーを見られたら憶測で変な噂が流れるかもしれませんので馬車まで送ってきます」

「そうだな。なるべく早く帰ってこいよ。ヴィクトリア嬢も暫く痛むだろうから無理はするなよ」

上着のせいで顔は見えなかったけれど王太子殿下にお礼を言ってから退室した。






「1人で帰らせることになってごめんなヴィー」

私を馬車に乗せると、ルイス兄様が謝ってきた。

「いいのルイス兄様はお仕事だもの」

「会議が終わったら父上とリアムにも伝えとくから後は任せろ」

「・・・はい。お願いします」

どんな罰が与えられたとしても、もう彼と会うことはない・・・と思う。
てか、会わなくていいし、会いたくない。





大変だったのはここからだった・・・

邸に到着し、執事と使用人たちにエントランスで迎えられて、ルイス兄様の上着を取った途端に数人の使用人から「「「キャーお嬢様!」」」と邸に響き渡るほどの悲鳴があがった。

そして、騒ぎを聞きつけたお母様が私の顔を見て倒れそうになるし、落ち着いてからは説明を求められるし、説明している間に王宮で話しを聞いたお父様とリアム兄様が急いで帰ってきて、お父様は怒りで震えるし、リアム兄様は「ヴィー待っていてね。アイツを殺してくるからね」と笑顔で物騒なことを私に告げてから2人が王宮に引き返して行くまで騒ぎは続いた。

今日一日で私の疲労はMAXだったようだ。
侍女にお風呂に入れてもらって、ベットに入るとすぐに眠気が襲ってきた。

だから私の寝顔を見てお父様や兄様たちが、悔しさに震えていたことは知らなかった・・・。




~マーガレット王女視点~

冬季休暇に入る前日・・・何時ものように朝からアレクシスがクラスまでわたくしに会いに来たの。

来るのが分かっていたから、顔にガーゼを貼って俯いて怯えているように演技すれば、あとは心配するアレクシスに『アレクシスに近づくなとディハルト様に脅されて叩かれた』と言うだけ。
それだけでアレクシスは確認する事もなく、わたくしを信じたの。

単純過ぎてつまらない男。


わたくしの計画通りアレクシスの口から彼女に婚約破棄を言い渡したところまではよかったのよ。

たくさんの生徒たちの前で恥をかかせ、悔しがる顔が拝めると思っていたのに・・・

なのにアレクシスと彼女が婚約していなかっただなんて!
アレクシスだけが婚約を結んでいたと思い込んでいただけだなんて!

こんな退屈でつまらない男に、わたくしの貴重な時間を無駄に使わされたと思うと、腹立たしさと屈辱でこの場を一刻も早く去りたくなった。


しかも彼女にわたくしとアレクシスの関係をここで暴露されるだなんて・・・

周りからはわたくし達を批判する声しか聞こえない。

アレクシスとは顔見知り程度の関係だと彼女は言った・・・。
その瞬間、何の為にわたくしがアレクシスを落としたのかすべてが無駄になってしまったの。


彼女の挑発的な態度ともの言いに、まさかアレクシスが彼女を叩くなんて思わなかったわ。
彼女は頬を真っ赤に腫らして、口の端には血が出ていた・・・。

いくら何でも女性に手をあげる?

これだけ目撃した生徒がいたら、もう言い訳も通用しない。

アレクシスが婚約破棄したら、とっとと彼を捨てて自国に帰る予定だったのに・・・

呆然とするアレクシスと同じ馬車に押し込められて王宮に連れてこられてから、彼と別れてわたくしだけが客室に閉じ込められている。

その時に医師に頬に貼っていたガーゼを外されて、診察されてわたくしの嘘がバレてしまったの。


この王宮に、わたくしの為に用意された離れに戻りたいと言っても、この部屋についている侍女も、騎士も『もう暫くお待ちください』としか言わないの。

きっとアレクシスに事情を聞いているのだと思うけれど、トライガス王国の王女である、このわたくしを何時間も待たせるなんて失礼だわ!

元々予定よりも早く帰国するつもりだったけれど、アレクシスが手をあげたのは公爵令嬢だもの、わたくしの嘘がバレた以上強制的に帰国させられることになると思うわ。



結局この日、この客室に訪ねてくる者はいなかったの。
それどころか、この日から6日間訪ねて来る者もおらず、客室から出ることも許されなかった・・・


しおりを挟む
感想 1,122

あなたにおすすめの小説

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

大好きなあなたを忘れる方法

山田ランチ
恋愛
あらすじ  王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。  魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。 登場人物 ・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。 ・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。 ・イーライ 学園の園芸員。 クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。 ・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。 ・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。 ・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。 ・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。 ・マイロ 17歳、メリベルの友人。 魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。 魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。 ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...