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29 アレクシス視点
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~アレクシス視点~
「また来て下さったのですね」
マーガレット王女の見た目に騙される男が多いと聞くが俺に言わせれば笑顔も、甘える仕草も、見つめてくる目も、体の動かし方どれ一つをとっても計算し尽くされたものに見える。
「そんな微笑みは俺には通用しない。王女がトライガスでしてきた事を俺が知らないとでも思っているのか?」
「誤解ですわ!アレクシス様わたくしを信じて下さい」
必死に言い訳をしているが、トライガスでも多少は耳に入っていたし、マーガレット王女の実の姉からも聞いている。
「そんなに俺を手に入れたいのか?」
「わたくしはアレクシス様が欲しい」と言って抱きついてきた。
初めての柔らかい感触に驚き、すぐに引き離すことが出来なかった。
黙って見下ろすと潤んだ瞳で俺を見上げるマーガレット王女に引き寄せられるように口付けをしていた。
口付けをした・・・ただそれだけだ。
それからも用もないのに俺は旧校舎に足を運んでいた。
マーガレット王女に会いに、自分から行っていたんだ。
ヴィーを待たせているのに・・・だ。
会えば当たり前のように抱き合い口付けをする。
柔らかい胸を押し当てられても、俺が反応したことは1度もない。
するのは口付けだけだ。
マーガレット王女の汚れきった身体に興味はない。
(王女がトライガスに帰るまでだ)
そう自分に言い聞かせ、何度も何度もマーガレット王女と会っていた。
ヴィーを待たせ、登下校まで別々になっても・・・
ヴィーの目がもう俺を映していなくても・・・
俺の名前すら呼ばなくなっていたとしても・・・
俺はヴィーの変化に気付きもしなかった・・・
未婚の異性が2人きりで会うことが、それが貴族社会でどう見られるかも知っていたのに、俺の頭からは指摘されるまで抜け落ちていたんだ・・・。
以前、父上にディハルト公爵家に婚約の申し込みをお願いした。
父上もディハルト公爵に話してくれると言ってくれた。
それから父上が何も言ってこないことに、ハイアー侯爵家とディハルト公爵家との話し合いで婚約が決まったと思っていた。
だから・・・
だから、ヴィーは俺の婚約者になったと思っていた。
本当にそう思っていたんだ・・・父上にも、ヴィーにも確認をしたわけでもなかったのに・・・
もうすぐ長期休暇に入る頃、久しぶりにヴィーとゆっくりと過ごそうと思い声をかけた。
『ヴィー夏期休暇に2人でどこかに出かけないか?』
『お誘いは嬉しいのですが、領地に行きますので残念ですが、お会いする時間があるかどうか・・・』
申し訳なさそうに断るヴィーに(ヴィーは長い休暇中に俺に会えなくてもいいのか?)そんな言葉が出そうになるのを何とか耐えた。
『じゃあ仕方ない、次に会うのは休暇明けだな』
苛立ちからそれだけ言って背を向けた。
まだこの時もヴィーを婚約者だと思っていた。
マーガレット王女も自国に帰ると聞いた。
そこで俺は鈍っていた体を動かすために、王宮の騎士団の練習に参加することにした。
ここのところ、マーガレット王女の相手をするのに忙しく、まともに鍛錬をしてこなかったせいか、思うように体も動かずリアム殿に手も足も出なかった。
何度挑もうと涼しい顔で逸らされ、容赦なく打ちのめされる。
それもリアム殿は本気を出していないのが分かるだけに日に日に苛立ってきていた。
毎日、毎日、鍛錬所に足を運び体の感覚が元に戻ってきたと思ってもリアム殿には全くと言っていいほど敵わなかった。
「リアム殿に向かうならもっと強くなってからにしろよ。今のお前ではリアム殿の相手は無理だと分かるだろ?」
「そうだぜ、ああ見えてリアム殿は化け物なんだぞ」
騎士の先輩方すら、今年入団したリアム殿には敵わないと言っていた。
そういえば、昔からリアム殿だけでなくルイス殿にも俺は一度も勝てたことがなかったな。
それでも俺は毎日鍛錬場に通った。
ヴィーのことを思い出したのは長期休暇もあと僅かになってからだった・・・
ヴィーに会えるまでの10年間は忘れたことなど1日もなかったはずなのに・・・。
だからヴィーに会いに行ったんだ。
休暇も終わろうとしているのに、まだ帰ってきてないとディハルト家の執事が教えてくれた。
次にディハルト家に訪問したのは新学期前日だった。
さすがに帰ってきているだろうと思っていたが、今度は疲れから休んでいると夫人から伝えられ、結局長い休暇の間にヴィーには一度も会うことなく新学期を迎えた・・・
「また来て下さったのですね」
マーガレット王女の見た目に騙される男が多いと聞くが俺に言わせれば笑顔も、甘える仕草も、見つめてくる目も、体の動かし方どれ一つをとっても計算し尽くされたものに見える。
「そんな微笑みは俺には通用しない。王女がトライガスでしてきた事を俺が知らないとでも思っているのか?」
「誤解ですわ!アレクシス様わたくしを信じて下さい」
必死に言い訳をしているが、トライガスでも多少は耳に入っていたし、マーガレット王女の実の姉からも聞いている。
「そんなに俺を手に入れたいのか?」
「わたくしはアレクシス様が欲しい」と言って抱きついてきた。
初めての柔らかい感触に驚き、すぐに引き離すことが出来なかった。
黙って見下ろすと潤んだ瞳で俺を見上げるマーガレット王女に引き寄せられるように口付けをしていた。
口付けをした・・・ただそれだけだ。
それからも用もないのに俺は旧校舎に足を運んでいた。
マーガレット王女に会いに、自分から行っていたんだ。
ヴィーを待たせているのに・・・だ。
会えば当たり前のように抱き合い口付けをする。
柔らかい胸を押し当てられても、俺が反応したことは1度もない。
するのは口付けだけだ。
マーガレット王女の汚れきった身体に興味はない。
(王女がトライガスに帰るまでだ)
そう自分に言い聞かせ、何度も何度もマーガレット王女と会っていた。
ヴィーを待たせ、登下校まで別々になっても・・・
ヴィーの目がもう俺を映していなくても・・・
俺の名前すら呼ばなくなっていたとしても・・・
俺はヴィーの変化に気付きもしなかった・・・
未婚の異性が2人きりで会うことが、それが貴族社会でどう見られるかも知っていたのに、俺の頭からは指摘されるまで抜け落ちていたんだ・・・。
以前、父上にディハルト公爵家に婚約の申し込みをお願いした。
父上もディハルト公爵に話してくれると言ってくれた。
それから父上が何も言ってこないことに、ハイアー侯爵家とディハルト公爵家との話し合いで婚約が決まったと思っていた。
だから・・・
だから、ヴィーは俺の婚約者になったと思っていた。
本当にそう思っていたんだ・・・父上にも、ヴィーにも確認をしたわけでもなかったのに・・・
もうすぐ長期休暇に入る頃、久しぶりにヴィーとゆっくりと過ごそうと思い声をかけた。
『ヴィー夏期休暇に2人でどこかに出かけないか?』
『お誘いは嬉しいのですが、領地に行きますので残念ですが、お会いする時間があるかどうか・・・』
申し訳なさそうに断るヴィーに(ヴィーは長い休暇中に俺に会えなくてもいいのか?)そんな言葉が出そうになるのを何とか耐えた。
『じゃあ仕方ない、次に会うのは休暇明けだな』
苛立ちからそれだけ言って背を向けた。
まだこの時もヴィーを婚約者だと思っていた。
マーガレット王女も自国に帰ると聞いた。
そこで俺は鈍っていた体を動かすために、王宮の騎士団の練習に参加することにした。
ここのところ、マーガレット王女の相手をするのに忙しく、まともに鍛錬をしてこなかったせいか、思うように体も動かずリアム殿に手も足も出なかった。
何度挑もうと涼しい顔で逸らされ、容赦なく打ちのめされる。
それもリアム殿は本気を出していないのが分かるだけに日に日に苛立ってきていた。
毎日、毎日、鍛錬所に足を運び体の感覚が元に戻ってきたと思ってもリアム殿には全くと言っていいほど敵わなかった。
「リアム殿に向かうならもっと強くなってからにしろよ。今のお前ではリアム殿の相手は無理だと分かるだろ?」
「そうだぜ、ああ見えてリアム殿は化け物なんだぞ」
騎士の先輩方すら、今年入団したリアム殿には敵わないと言っていた。
そういえば、昔からリアム殿だけでなくルイス殿にも俺は一度も勝てたことがなかったな。
それでも俺は毎日鍛錬場に通った。
ヴィーのことを思い出したのは長期休暇もあと僅かになってからだった・・・
ヴィーに会えるまでの10年間は忘れたことなど1日もなかったはずなのに・・・。
だからヴィーに会いに行ったんだ。
休暇も終わろうとしているのに、まだ帰ってきてないとディハルト家の執事が教えてくれた。
次にディハルト家に訪問したのは新学期前日だった。
さすがに帰ってきているだろうと思っていたが、今度は疲れから休んでいると夫人から伝えられ、結局長い休暇の間にヴィーには一度も会うことなく新学期を迎えた・・・
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