9 / 67
9
しおりを挟む
『スカーレット・トライガス王女殿下のご入場~』
紹介者の声がホールに響く・・・
海外からの使者に王女様が含まれていたの?
赤い髪に赤い瞳。
白い肌に知性のある瞳、スッキリとした鼻梁、真っ赤な口紅もよく似合っている。
そして魅惑的なスタイル。
王女様のような方を絶世の美女って言うのね。
王女様から目が離せなくて続く使者の方の紹介は耳には入ってこなかった。
国王様と王女様との挨拶が終わり、国王様の開始の言葉でパーティーが始まった。
ホールの中央ではダンスを踊るお父様とお母様も見える。
「ヴィー、私と踊ってくれるかい?」
ルイス兄様が跪いて手を差し出してくる。
その顔はイタズラっ子のよう。
私の手は自然と兄様の手に乗せていた。
「ヴィー、次は僕だからね」
「はい!行ってきます」
リアム兄様に送り出されルイス兄様と中央のダンスの輪に入って行く。
「ヴィーの初めてのダンスの相手が私で嬉しいよ」
「私もです!緊張してますが頑張りますね」
いつもルイス兄様とリアム兄様が練習に付き合ってくれていたから思いのほか、すぐに緊張もほぐれ楽しく踊れた。
ルイス兄様はキリリとしたお顔が崩れっぱなしだったし、甘いお顔のリアム兄様は優しく微笑みながらだったから、周りの令嬢からの黄色い悲鳴があちこちから聞こえた。
兄様たちが騒がれるのも納得だ。
こんな素敵な2人が私の兄なのよ!
変な優越感に浸りながら2曲のダンスを踊りきった。
それから疲れただろっと言ってホールに用意された壁際のソファに座らせてくれた。
突然ルイス兄様がチッと舌打ちした。
珍しいなとルイス兄様が見ている方に視線を向けると、アンドリュー王太子殿下、ジョシュア殿下、ドルチアーノ殿下がこっちに向かって来ていた。
「おい!ルイス!お前の妹がこんなに可愛いなんて聞いてないぞ!」
チッ!
私が挨拶しようと立ち上がろうとするのを止めたルイス兄様からまた舌打ちが・・・
「言いましたよ?私の妹は世界一可愛いとね」
兄様!そんなこと外で言ってるの!
やめて!シスコン過ぎて恥ずかしいよ!
「ディハルト嬢、卒業式以来だね」
「そうですね」
ジョシュア殿下は相変わらずマイペースだ。
隣では王太子殿下とルイス兄様がまだ言い争っている・・・不敬罪とかにならないのかな?
「それにしてもディハルト兄妹が3人揃うと圧巻だね」
なにが圧巻なんだろう?
それに、ドルチアーノ殿下何しに来たんだろう?
何も言わず、ジョシュア殿下の後ろで以前同様ずっと私を睨んでるんだけど・・・そんなに私が嫌いか?
・・・もう赤の他人だしほっとこう。
リアム兄様とジョシュア殿下も何やら話し込んでるし、暇だな~なんて思っていたらホールが騒がしくなった。
背の高い男たちが私を囲んで会話しているからホールで何があったのか気になっても全然見えない。
それに私座ったままだしね。
「お久しぶりです殿下方」
誰かが挨拶に来たの?
「「「アレクシス!」」」
アレクシス様って方ね。
「ルイス殿とリアム殿もお久しぶりです」
皆んなアレクシス様の知り合いなんだ。
「いつ帰ってきたんだ?」
「たった今ですよ」
声しか聞こえないけれど、低音ボイスが耳に心地いいわね。
「もう1年留学期間があったはずだろ?」
「はい、ですが彼女が婚約者候補を辞退したと聞きましたので、帰ってきました」
ん?
「お前まだ諦めていなかったのか?」
ルイス兄様が呆れたように言った。
「はい、何年経とうと俺が諦めることはありません」
目の前のジョシュア殿下とリアム兄様が横にズレると薄い水色の腰まである真っ直ぐな長い髪をひとつに纏め、切れ長でアイスブルーの瞳の冷たい印象のスッゴイ美形がいた。
その彼が視線を下に向けると私と目が合った。それだけでドキッと胸が高鳴った。
彼は驚いた顔をしたあと、突然私の前で跪いて手を握ってきた。
「アレクシス・ハイアーと申します。この10年間ヴィクトリア嬢のことを思わない日は1日もありませんでした。ドルチアーノ殿下の婚約者候補を辞退したと聞いて、居ても立っても居られず留学先から帰ってきてしまいました」
「は、はい」
な、な、な、何が始まったの?
「生涯貴方を守り、命ある限り貴方だけを愛すると誓います。どうか俺と、いえ私と結婚して下さい」
ぷ、ぷ、ぷ、プロポーズですと!!
こ、こんなの前世でも経験したことないよ!
ど、ど、ど、どうしたらいいの?
こ、ここはあれよね?
あ、あのセリフを私も使う時が来たのね!
「・・・お、お友達からなら・・・」
「「ヴィー!!」」
お兄様たちの焦る声が!
あれ?私なにか間違えた?
でも、しっかりと私の手を握っている冷たい印象の彼が真っ赤になって一生懸命思いを伝えてくれたんだよ?
それも10年間も私を思ってくれていたって言ってくれたんだよ?
それだけで彼の好感度が私の中で上がるのは当然でしょう?
でも・・・私・・・彼のことアレクシスって名前しか知らないんだよね。
それから兄様2人に抱えられるようにしてその場を後にした。
振り向くと「あ、明日挨拶に伺います」と、まだ赤い顔のアレクシス様がそう言うので、兄様達にバレないようにこっそりと小さく手を振った。
冷たい印象の彼の照れた顔も可愛いと思ってしまったんだよね。
その横でドルチアーノ殿下が固まっている姿なんて目にも入らなかった。
紹介者の声がホールに響く・・・
海外からの使者に王女様が含まれていたの?
赤い髪に赤い瞳。
白い肌に知性のある瞳、スッキリとした鼻梁、真っ赤な口紅もよく似合っている。
そして魅惑的なスタイル。
王女様のような方を絶世の美女って言うのね。
王女様から目が離せなくて続く使者の方の紹介は耳には入ってこなかった。
国王様と王女様との挨拶が終わり、国王様の開始の言葉でパーティーが始まった。
ホールの中央ではダンスを踊るお父様とお母様も見える。
「ヴィー、私と踊ってくれるかい?」
ルイス兄様が跪いて手を差し出してくる。
その顔はイタズラっ子のよう。
私の手は自然と兄様の手に乗せていた。
「ヴィー、次は僕だからね」
「はい!行ってきます」
リアム兄様に送り出されルイス兄様と中央のダンスの輪に入って行く。
「ヴィーの初めてのダンスの相手が私で嬉しいよ」
「私もです!緊張してますが頑張りますね」
いつもルイス兄様とリアム兄様が練習に付き合ってくれていたから思いのほか、すぐに緊張もほぐれ楽しく踊れた。
ルイス兄様はキリリとしたお顔が崩れっぱなしだったし、甘いお顔のリアム兄様は優しく微笑みながらだったから、周りの令嬢からの黄色い悲鳴があちこちから聞こえた。
兄様たちが騒がれるのも納得だ。
こんな素敵な2人が私の兄なのよ!
変な優越感に浸りながら2曲のダンスを踊りきった。
それから疲れただろっと言ってホールに用意された壁際のソファに座らせてくれた。
突然ルイス兄様がチッと舌打ちした。
珍しいなとルイス兄様が見ている方に視線を向けると、アンドリュー王太子殿下、ジョシュア殿下、ドルチアーノ殿下がこっちに向かって来ていた。
「おい!ルイス!お前の妹がこんなに可愛いなんて聞いてないぞ!」
チッ!
私が挨拶しようと立ち上がろうとするのを止めたルイス兄様からまた舌打ちが・・・
「言いましたよ?私の妹は世界一可愛いとね」
兄様!そんなこと外で言ってるの!
やめて!シスコン過ぎて恥ずかしいよ!
「ディハルト嬢、卒業式以来だね」
「そうですね」
ジョシュア殿下は相変わらずマイペースだ。
隣では王太子殿下とルイス兄様がまだ言い争っている・・・不敬罪とかにならないのかな?
「それにしてもディハルト兄妹が3人揃うと圧巻だね」
なにが圧巻なんだろう?
それに、ドルチアーノ殿下何しに来たんだろう?
何も言わず、ジョシュア殿下の後ろで以前同様ずっと私を睨んでるんだけど・・・そんなに私が嫌いか?
・・・もう赤の他人だしほっとこう。
リアム兄様とジョシュア殿下も何やら話し込んでるし、暇だな~なんて思っていたらホールが騒がしくなった。
背の高い男たちが私を囲んで会話しているからホールで何があったのか気になっても全然見えない。
それに私座ったままだしね。
「お久しぶりです殿下方」
誰かが挨拶に来たの?
「「「アレクシス!」」」
アレクシス様って方ね。
「ルイス殿とリアム殿もお久しぶりです」
皆んなアレクシス様の知り合いなんだ。
「いつ帰ってきたんだ?」
「たった今ですよ」
声しか聞こえないけれど、低音ボイスが耳に心地いいわね。
「もう1年留学期間があったはずだろ?」
「はい、ですが彼女が婚約者候補を辞退したと聞きましたので、帰ってきました」
ん?
「お前まだ諦めていなかったのか?」
ルイス兄様が呆れたように言った。
「はい、何年経とうと俺が諦めることはありません」
目の前のジョシュア殿下とリアム兄様が横にズレると薄い水色の腰まである真っ直ぐな長い髪をひとつに纏め、切れ長でアイスブルーの瞳の冷たい印象のスッゴイ美形がいた。
その彼が視線を下に向けると私と目が合った。それだけでドキッと胸が高鳴った。
彼は驚いた顔をしたあと、突然私の前で跪いて手を握ってきた。
「アレクシス・ハイアーと申します。この10年間ヴィクトリア嬢のことを思わない日は1日もありませんでした。ドルチアーノ殿下の婚約者候補を辞退したと聞いて、居ても立っても居られず留学先から帰ってきてしまいました」
「は、はい」
な、な、な、何が始まったの?
「生涯貴方を守り、命ある限り貴方だけを愛すると誓います。どうか俺と、いえ私と結婚して下さい」
ぷ、ぷ、ぷ、プロポーズですと!!
こ、こんなの前世でも経験したことないよ!
ど、ど、ど、どうしたらいいの?
こ、ここはあれよね?
あ、あのセリフを私も使う時が来たのね!
「・・・お、お友達からなら・・・」
「「ヴィー!!」」
お兄様たちの焦る声が!
あれ?私なにか間違えた?
でも、しっかりと私の手を握っている冷たい印象の彼が真っ赤になって一生懸命思いを伝えてくれたんだよ?
それも10年間も私を思ってくれていたって言ってくれたんだよ?
それだけで彼の好感度が私の中で上がるのは当然でしょう?
でも・・・私・・・彼のことアレクシスって名前しか知らないんだよね。
それから兄様2人に抱えられるようにしてその場を後にした。
振り向くと「あ、明日挨拶に伺います」と、まだ赤い顔のアレクシス様がそう言うので、兄様達にバレないようにこっそりと小さく手を振った。
冷たい印象の彼の照れた顔も可愛いと思ってしまったんだよね。
その横でドルチアーノ殿下が固まっている姿なんて目にも入らなかった。
285
お気に入りに追加
8,570
あなたにおすすめの小説
結婚式の日取りに変更はありません。
ひづき
恋愛
私の婚約者、ダニエル様。
私の専属侍女、リース。
2人が深い口付けをかわす姿を目撃した。
色々思うことはあるが、結婚式の日取りに変更はない。
2023/03/13 番外編追加
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結済】病弱な姉に婚約者を寝取られたので、我慢するのをやめる事にしました。
夜乃トバリ
恋愛
シシュリカ・レーンには姉がいる。儚げで美しい姉――病弱で、家族に愛される姉、使用人に慕われる聖女のような姉がいる――。
優しい優しいエウリカは、私が家族に可愛がられそうになるとすぐに体調を崩す。
今までは、気のせいだと思っていた。あんな場面を見るまでは……。
※他の作品と書き方が違います※
『メリヌの結末』と言う、おまけの話(補足)を追加しました。この後、当日中に『レウリオ』を投稿予定です。一時的に完結から外れますが、本日中に完結設定に戻します。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる