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ウインティア王国編
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俺とエリーの結婚式まであと一週間のところでコウカ国の王太子と婚約者が到着した。
歓迎の挨拶をし、コウカ国のジン王太子から紹介された婚約者の名はシンイー・ウェン伯爵令嬢。
黒い髪に黒い目の令嬢だった。
そのウェン嬢が泣きそうな顔で『この文字が読めましたら感想をお聞かせください』とエリーに手渡したのは、表紙に俺には読めない文字が書かれた分厚い一冊の日記だった。
表紙の文字を見たエリーが目を見開いたのを俺は見逃さなかった。
ウェン嬢には必ず読んで感想を伝えると約束してレイを呼んで部屋に閉じこもった。
何時間も部屋に籠り出てきた時のエリーとレイは複雑そうな顔をしていたが説明してくれた。
~ユーシー・シユウ伯爵令嬢の日記~
私には生まれた時からこの世界ではない前世の記憶があった。
前世では薬学部を卒業後、薬剤師の資格を取得してさらに博士課程に進学し薬学博士を授かり念願の製薬会社の研究室へ就職したはずが・・・
それがなぜこんな世界に?
言葉も話せない赤子から成長するにつれ、おおよその予測がついた。
異世界転生・・・
確かに研究の合間にストレス発散に乙女ゲームをやってはいたが、自国の名前を知っても、自分の名前を知っても思い当たる乙女ゲームはなかった。
私はシユウ伯爵家の長女として生まれた。
立派な両親と優しい兄の4人家族だ。
前世では信じられないような贅沢な暮らしと、私を大切にしてくれる家族や使用人に囲まれた生活に満足し、ただ前世の記憶があるだけだと受け入れた。
元々前世でも勉強が好きだったこともあり、4歳から始まった貴族令嬢としての教育も苦もなく学んでいけた。
それだけでは足りず図書室に籠ってはこの国以外の他国のことも頭に詰め込んだ。
その時に遠方にある『ウインティア王国』を知った。
私のやっていた乙女ゲームの舞台と一致する名前の国があるなんて、と驚きながらも当時の国王、王妃の名前を調べても、王子の名前を調べても記憶にはない。
そこで乙女ゲームの舞台となった『世界を超えた乙女の愛と友情』を思い出しながらゲームの内容を書き出していった。
ゲームが始まるのは異世界からヒロインが王宮のお茶会の場に転移してくるところから始まる。
攻略対象者は第一王子のルフラン殿下、第二王子のゾルティー殿下、悪役令嬢の双子の弟アラン、宰相の息子レックス、騎士団長の息子ガルザークの5人。
突然転移して不安にも関わらず、ヒロインの持ち前の明るさや優しい人柄に惹かれていく攻略対象者達とイベントをこなし、最後には1人を選びハッピーエンドとなる。
ルフラン殿下の婚約者候補の悪役令嬢の名はエリザベート・ウォルシュ。
ヒロインを虐め命まで奪おうとしたことで断罪される。
そんなよくあるゲーム内容だったが、悪役令嬢は後ろ姿だけで顔は最後まで出てこなかったのが印象に残っている。
私の一推しは王太子のルフラン殿下だった。
赤い髪に金色の瞳。
端正な顔なのに無表情。
彼の笑った顔が見てみたい。
寡黙なルフラン殿下が話すシーンは私にとって貴重な場面だった。
ヒロインを見るルフラン殿下の目に違和感があるような気がして、ハッピーエンドを迎えてもその後ヒロインと本当に幸せになれたのかな~なんて考えていた。
私はゲームの舞台となったウインティア王国と同じ名前の国にすごく惹かれた。
一度だけでいいから行ってみたい。
ヒロインや攻略対象者たちが通った学園が本当にあるかもしれない。
もしかしたら、私はゲームの過去か未来に転生したのかもしれない。
どうしても行きたい。
ウインティア王国に行って確認したい。
両親に留学をお願いしたのは私が10歳になったばかりの頃だった。
友好国でもない国への留学は両親にも兄たちにも反対された。
それでも諦められず執拗くお願いを続け15歳になった頃にやっと許しを得た。
私は留学の許しを乞いながら同時に、前世の記憶を頼りに薬を開発していった。
それも、毒を作り出したのだ。
絶対に留学するつもりだった私は自分の身を守るために作ったつもりだった。
良く考えれば分かることだ。
身を守るのに毒など必要ないことを・・・
これが間違いだったと気付いたのは、私の作った毒が使われた時だった。
歓迎の挨拶をし、コウカ国のジン王太子から紹介された婚約者の名はシンイー・ウェン伯爵令嬢。
黒い髪に黒い目の令嬢だった。
そのウェン嬢が泣きそうな顔で『この文字が読めましたら感想をお聞かせください』とエリーに手渡したのは、表紙に俺には読めない文字が書かれた分厚い一冊の日記だった。
表紙の文字を見たエリーが目を見開いたのを俺は見逃さなかった。
ウェン嬢には必ず読んで感想を伝えると約束してレイを呼んで部屋に閉じこもった。
何時間も部屋に籠り出てきた時のエリーとレイは複雑そうな顔をしていたが説明してくれた。
~ユーシー・シユウ伯爵令嬢の日記~
私には生まれた時からこの世界ではない前世の記憶があった。
前世では薬学部を卒業後、薬剤師の資格を取得してさらに博士課程に進学し薬学博士を授かり念願の製薬会社の研究室へ就職したはずが・・・
それがなぜこんな世界に?
言葉も話せない赤子から成長するにつれ、おおよその予測がついた。
異世界転生・・・
確かに研究の合間にストレス発散に乙女ゲームをやってはいたが、自国の名前を知っても、自分の名前を知っても思い当たる乙女ゲームはなかった。
私はシユウ伯爵家の長女として生まれた。
立派な両親と優しい兄の4人家族だ。
前世では信じられないような贅沢な暮らしと、私を大切にしてくれる家族や使用人に囲まれた生活に満足し、ただ前世の記憶があるだけだと受け入れた。
元々前世でも勉強が好きだったこともあり、4歳から始まった貴族令嬢としての教育も苦もなく学んでいけた。
それだけでは足りず図書室に籠ってはこの国以外の他国のことも頭に詰め込んだ。
その時に遠方にある『ウインティア王国』を知った。
私のやっていた乙女ゲームの舞台と一致する名前の国があるなんて、と驚きながらも当時の国王、王妃の名前を調べても、王子の名前を調べても記憶にはない。
そこで乙女ゲームの舞台となった『世界を超えた乙女の愛と友情』を思い出しながらゲームの内容を書き出していった。
ゲームが始まるのは異世界からヒロインが王宮のお茶会の場に転移してくるところから始まる。
攻略対象者は第一王子のルフラン殿下、第二王子のゾルティー殿下、悪役令嬢の双子の弟アラン、宰相の息子レックス、騎士団長の息子ガルザークの5人。
突然転移して不安にも関わらず、ヒロインの持ち前の明るさや優しい人柄に惹かれていく攻略対象者達とイベントをこなし、最後には1人を選びハッピーエンドとなる。
ルフラン殿下の婚約者候補の悪役令嬢の名はエリザベート・ウォルシュ。
ヒロインを虐め命まで奪おうとしたことで断罪される。
そんなよくあるゲーム内容だったが、悪役令嬢は後ろ姿だけで顔は最後まで出てこなかったのが印象に残っている。
私の一推しは王太子のルフラン殿下だった。
赤い髪に金色の瞳。
端正な顔なのに無表情。
彼の笑った顔が見てみたい。
寡黙なルフラン殿下が話すシーンは私にとって貴重な場面だった。
ヒロインを見るルフラン殿下の目に違和感があるような気がして、ハッピーエンドを迎えてもその後ヒロインと本当に幸せになれたのかな~なんて考えていた。
私はゲームの舞台となったウインティア王国と同じ名前の国にすごく惹かれた。
一度だけでいいから行ってみたい。
ヒロインや攻略対象者たちが通った学園が本当にあるかもしれない。
もしかしたら、私はゲームの過去か未来に転生したのかもしれない。
どうしても行きたい。
ウインティア王国に行って確認したい。
両親に留学をお願いしたのは私が10歳になったばかりの頃だった。
友好国でもない国への留学は両親にも兄たちにも反対された。
それでも諦められず執拗くお願いを続け15歳になった頃にやっと許しを得た。
私は留学の許しを乞いながら同時に、前世の記憶を頼りに薬を開発していった。
それも、毒を作り出したのだ。
絶対に留学するつもりだった私は自分の身を守るために作ったつもりだった。
良く考えれば分かることだ。
身を守るのに毒など必要ないことを・・・
これが間違いだったと気付いたのは、私の作った毒が使われた時だった。
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