99 / 122
ウインティア王国編
99
しおりを挟む
~アルマ・セルティ公爵令嬢視点~
ドレスとタキシードで着飾った子息子女がわたくしの姿を見て訝しげな顔をしながら会場の中に入って行きますの。
でも仕方がないですわよね。
まだ王家から正式に公表されていませんもの。
この卒業パーティーで初めてわたくしとルフラン殿下のお披露目がされるのですものね。
入口でルフラン殿下の到着を待っていると話しかけてきたのは第二王子のゾルティー殿下でしたわ。
後ろにはゾルティー殿下の側近候補の2人の子息。
相変わらず無表情で気味の悪い方たちだわ。
「おや?セルティ嬢こんな所でどうしたの?誰かを待っているのかな?」
何を仰っているのかしら?
ルフラン殿下の色を纏うわたくしを見て分からないのかしら?
「・・・はい」
昔からゾルティー殿下のことは苦手でしたわ。
彼に会う度に頭の奥で警笛が響いていましたの。これ以上近づくなと・・・
「もしかして私を待っていたのかな?」
有り得ませんわ。
「まさか!」
「でも、今日のセルティ嬢は私の色を纏っているよね?」
確かにゾルティー殿下もルフラン殿下と同じ色ですが、わたくしが貴方に想いを寄せているなどと勘違いされると困りますわ。
ここはしっかりと否定させていただきますわ。
「違いますわ」
これはルフラン殿下の色ですもの。
「おかしいな~その色を身に付けられるのは兄上か僕の婚約者だけだよ?」
もしかしてゾルティー殿下はルフラン殿下の婚約者の交代のことを知らないのかしら?
「ええ、勿論知っておりますわ」
このドレスを見れば分かるでしょうに。
「もしかして兄上を待っているのかな?それなら無駄だよ?」
え?
「連絡の行き違いかな?兄上は王宮でセルティ嬢を待っているはずだよ。早く行った方がいいよ」
ルフラン殿下がわたくしを待っていますの?
「分かりましたわ!急ぎ王宮へ向かいますわ」
ルフラン殿下のいない卒業パーティーなど、意味がないですもの。
我が家の馬車に乗り込み、王宮に着いてから応接室に通されるまではスムーズでしたが、既に3時間以上待たされております。
ゾルティー殿下はルフラン殿下がわたくしを待っていると仰っておりましたのに・・・
何故こんなにも待たされるのでしょうか?
もしかしたら、婚約者変更の手続きに手間取っているのかもしれませんわね。
婚姻式まであと一月しか時間がありません。
婚礼衣装を一から作るのは時間的には無理でしょうから、ウォルシュ嬢の衣装を調整すると仰れるかもしれません。
でも大丈夫なのですよ。
こうなる事は分かっておりましたもの、しっかりセルティ公爵家で準備しておりますわ。
ルフラン殿下には余計な心配は不要だと早くお伝えしとうございます。
全て計画通りなのですわよ。
わたくしこそがあの方に相応しいとやっと認められるのですね。
もう、ルフラン殿下に触れても振り払われなくなるのです。
あの鋭利な眼差しで睨まれることも無くなりますのね。
ウォルシュ嬢を見るような優しい眼差しも、あの大きな手もわたくしのもの。
心も体も全部、全部わたくしのものになるのですわ。
これもルフラン殿下が初めてわたくしに笑顔を見せてくれた日、わたくしの心を奪った日から12年かかって漸くです。
漸く貴方がわたくしを認めるのですね。
早く、一刻も早く会いとうございます。
トントンッ
扉を叩くノックと同時に愛しい方の声が聞こえましたわ。
「失礼する」
現れたルフラン殿下はまるでパーティーにでも行ってきたような衣装を身に纏い優雅にわたくしの前のソファに座られました。
いつにも増して素敵ですわ。
でも、タイロン子息まで何故入室しますの?
ああ!分かりましたわ!
彼が貴方の側近に決まりましたのね。
それで紹介されるのですね。
「お待ちしておりましたわ。ルフラン殿下」
笑顔で迎えて差し上げましたのに緊張していますの?
もう、そのような鋭利な目でわたくしを見なくてもよろしいのですよ。
貴方様のお気持ちは十分分かっております。
さあ早く次のお言葉を下さいな。
ここから始まるのですよ。
共に歩む2人の人生が・・・
ドレスとタキシードで着飾った子息子女がわたくしの姿を見て訝しげな顔をしながら会場の中に入って行きますの。
でも仕方がないですわよね。
まだ王家から正式に公表されていませんもの。
この卒業パーティーで初めてわたくしとルフラン殿下のお披露目がされるのですものね。
入口でルフラン殿下の到着を待っていると話しかけてきたのは第二王子のゾルティー殿下でしたわ。
後ろにはゾルティー殿下の側近候補の2人の子息。
相変わらず無表情で気味の悪い方たちだわ。
「おや?セルティ嬢こんな所でどうしたの?誰かを待っているのかな?」
何を仰っているのかしら?
ルフラン殿下の色を纏うわたくしを見て分からないのかしら?
「・・・はい」
昔からゾルティー殿下のことは苦手でしたわ。
彼に会う度に頭の奥で警笛が響いていましたの。これ以上近づくなと・・・
「もしかして私を待っていたのかな?」
有り得ませんわ。
「まさか!」
「でも、今日のセルティ嬢は私の色を纏っているよね?」
確かにゾルティー殿下もルフラン殿下と同じ色ですが、わたくしが貴方に想いを寄せているなどと勘違いされると困りますわ。
ここはしっかりと否定させていただきますわ。
「違いますわ」
これはルフラン殿下の色ですもの。
「おかしいな~その色を身に付けられるのは兄上か僕の婚約者だけだよ?」
もしかしてゾルティー殿下はルフラン殿下の婚約者の交代のことを知らないのかしら?
「ええ、勿論知っておりますわ」
このドレスを見れば分かるでしょうに。
「もしかして兄上を待っているのかな?それなら無駄だよ?」
え?
「連絡の行き違いかな?兄上は王宮でセルティ嬢を待っているはずだよ。早く行った方がいいよ」
ルフラン殿下がわたくしを待っていますの?
「分かりましたわ!急ぎ王宮へ向かいますわ」
ルフラン殿下のいない卒業パーティーなど、意味がないですもの。
我が家の馬車に乗り込み、王宮に着いてから応接室に通されるまではスムーズでしたが、既に3時間以上待たされております。
ゾルティー殿下はルフラン殿下がわたくしを待っていると仰っておりましたのに・・・
何故こんなにも待たされるのでしょうか?
もしかしたら、婚約者変更の手続きに手間取っているのかもしれませんわね。
婚姻式まであと一月しか時間がありません。
婚礼衣装を一から作るのは時間的には無理でしょうから、ウォルシュ嬢の衣装を調整すると仰れるかもしれません。
でも大丈夫なのですよ。
こうなる事は分かっておりましたもの、しっかりセルティ公爵家で準備しておりますわ。
ルフラン殿下には余計な心配は不要だと早くお伝えしとうございます。
全て計画通りなのですわよ。
わたくしこそがあの方に相応しいとやっと認められるのですね。
もう、ルフラン殿下に触れても振り払われなくなるのです。
あの鋭利な眼差しで睨まれることも無くなりますのね。
ウォルシュ嬢を見るような優しい眼差しも、あの大きな手もわたくしのもの。
心も体も全部、全部わたくしのものになるのですわ。
これもルフラン殿下が初めてわたくしに笑顔を見せてくれた日、わたくしの心を奪った日から12年かかって漸くです。
漸く貴方がわたくしを認めるのですね。
早く、一刻も早く会いとうございます。
トントンッ
扉を叩くノックと同時に愛しい方の声が聞こえましたわ。
「失礼する」
現れたルフラン殿下はまるでパーティーにでも行ってきたような衣装を身に纏い優雅にわたくしの前のソファに座られました。
いつにも増して素敵ですわ。
でも、タイロン子息まで何故入室しますの?
ああ!分かりましたわ!
彼が貴方の側近に決まりましたのね。
それで紹介されるのですね。
「お待ちしておりましたわ。ルフラン殿下」
笑顔で迎えて差し上げましたのに緊張していますの?
もう、そのような鋭利な目でわたくしを見なくてもよろしいのですよ。
貴方様のお気持ちは十分分かっております。
さあ早く次のお言葉を下さいな。
ここから始まるのですよ。
共に歩む2人の人生が・・・
265
お気に入りに追加
4,696
あなたにおすすめの小説
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

悪役令嬢に転生かと思ったら違ったので定食屋開いたら第一王子が常連に名乗りを上げてきた
咲桜りおな
恋愛
サズレア王国第二王子のクリス殿下から婚約解消をされたアリエッタ・ネリネは、前世の記憶持ちの侯爵令嬢。王子の婚約者で侯爵令嬢……という自身の状況からここが乙女ゲームか小説の中で、悪役令嬢に転生したのかと思ったけど、どうやらヒロインも見当たらないし違ったみたい。
好きでも嫌いでも無かった第二王子との婚約も破棄されて、面倒な王子妃にならなくて済んだと喜ぶアリエッタ。我が侯爵家もお姉様が婿養子を貰って継ぐ事は決まっている。本来なら新たに婚約者を用意されてしまうところだが、傷心の振り(?)をしたら暫くは自由にして良いと許可を貰っちゃった。
それならと侯爵家の事業の手伝いと称して前世で好きだった料理をしたくて、王都で小さな定食屋をオープンしてみたら何故か初日から第一王子が来客? お店も大繁盛で、いつの間にか元婚約者だった第二王子まで来る様になっちゃった。まさかの王家御用達のお店になりそうで、ちょっと困ってます。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
※料理に関しては家庭料理を作るのが好きな素人ですので、厳しい突っ込みはご遠慮いただけると助かります。
そしてイチャラブが甘いです。砂糖吐くというより、砂糖垂れ流しです(笑)
本編は完結しています。時々、番外編を追加更新あり。
「小説家になろう」でも公開しています。

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい
鍋
恋愛
王太子の婚約者として、常に控えめに振る舞ってきたロッテルマリア。
尽くしていたにも関わらず、悪役令嬢として婚約者破棄、国外追放の憂き目に合う。
でも、実は転生者であるロッテルマリアはチートな魔法を武器に、ギルドに登録して旅に出掛けた。
新米冒険者として日々奮闘中。
のんびり冒険をしていたいのに、ヒロインは私を逃がしてくれない。
自身の目的のためにロッテルマリアを狙ってくる。
王太子はあげるから、私をほっといて~
(旧)悪役令嬢は年下Sランク冒険者の弟子になるを手直ししました。
26話で完結
後日談も書いてます。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。
たろ
恋愛
セレンは15歳の時に16歳のスティーブ・ロセスと結婚した。いわゆる政略的な結婚で、幼馴染でいつも喧嘩ばかりの二人は歩み寄りもなく一年で離縁した。
その一年間をなかったものにするため、お互い全く別のところへ移り住んだ。
スティーブはアルク国に留学してしまった。
セレンは国の文官の試験を受けて働くことになった。配属は何故か騎士団の事務員。
本人は全く気がついていないが騎士団員の間では
『可愛い子兎』と呼ばれ、何かと理由をつけては事務室にみんな足を運ぶこととなる。
そんな騎士団に入隊してきたのが、スティーブ。
お互い結婚していたことはなかったことにしようと、話すこともなく目も合わせないで過ごした。
本当はお互い好き合っているのに素直になれない二人。
そして、少しずつお互いの誤解が解けてもう一度……
始めの数話は幼い頃の出会い。
そして結婚1年間の話。
再会と続きます。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる