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ウインティア王国編

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「オーホッホッホッ・・・」


あの日以来母上の執務室から笑い声?雄叫び?が聞こえる。

気持ちは分からなくは無い。
ゾルティーも似たようなものだからな。

ランの手柄を我が事のように自慢したいが、今回の毒に関しては箝口令が敷かれた。

あれからエリーを王宮に留めている為、当然ランもここで過ごしている。

エリーの存在が今回の関係者以外にバレないように今は使用されていない前国王が余生を過した宮殿だ。
時間があればいつものメンバーでそこで楽しく過ごしている。


今のランはゾルティーが学園から帰ってくるまでは母上の執務室で過ごし、帰ってくればゾルティーと過ごしでランも忙しそうだ。

母上とゾルティーがどんなにランを可愛がっても、寝る時だけはエリーの添い寝が一番いいようだ。

今回の二度目のランの活躍に母上とゾルティーは大絶賛。
このまま王家で飼うとまで言い出す始末。
エリーが嫁ぐまではウォルシュ家で面倒を見ると言っても納得しない2人にランが母上とゾルティーを拒絶したことで、渋々納得してくれた。
どれだけランが好きなんだよ。

今回の件でエリーを不安にさせたはずなのに、顔にも出さずに笑顔を見せる姿はまさにエリーの覚悟の現れなのだろう。

だが、俺と2人になる夜だけはエリーから甘えてきてくれるようになった。
エリーが寝付くまでは側にいるようにしている。
ランがエリーと同じベッドで寝ることに少しだけモヤモヤするが、安心して任せられるのもランだからだ。


ランには本当に感謝している。

レックスに攫われた時もランに助けられた。

ランがいなければ、エリーの捜索も上手くいかなかった。
それどころか、今の幸せもなかったかもしれない。

本当にランは凄い犬だよ。

どれだけエリーが愛情を込めて育てたんだろう。
俺にも懐いて欲しい・・・エリー捜索の時はあんなに意思の疎通ができたんだ、そのうち俺のことも認めてくれて仲良くなれるはずだ。




俺とエリーはこのまま卒業式まで学園を休む予定だ。

セルティ嬢の学園での様子はガルが毎日報告してくれる。
ずっと不気味な笑顔を浮かべている彼女に近づく者も、声をかける者もいないようだ。




毒入りの口紅をエリーに使用しようとしたメイドの情報が集まるたびにセルティ嬢の狡猾さに恐ろしくなる。
何年も前から子飼いのメイドを王宮に潜り込ませていた。

俺の相手が誰だろうが、自分以外が選ばれれば毒を盛るように指示していたのだ。
それも、時期やタイミングでどの毒を使用するのかまで決められていた・・・恐ろしい女だ。
どれだけ自分本位なんだ。

これが学園に入る前に準備されていたとメイドが吐いた。
14、15歳でここまで計画を立てていたのだ。
こんな危険な奴を野放しにすることは出来ない。

今は嘘の情報で、エリーの身体に麻痺が残っているとセルティ嬢に流している。

影からの報告では赤い生地に金の刺繍が施された俺の色に合わせたドレスで卒業パーティーに出るだとか・・・俺からのエスコートの誘いを待っているだとか・・・もうすぐ婚約者交代の知らせがくるだとか、そうなるのが当然だと言うように過ごしながら、嫁ぐための準備まで使用人に指示を出しているらしい。


潜り込ませていたメイドがセルティ嬢の指示を受けていた事が発覚後、すぐにセルティ公爵を拘束した。

取り調べの結果セルティ公爵自体は、娘の計画を知らなかったようだが次期王妃を狙ったんだ。
庇うことも言い訳も出来ない。

どんな処分になるのか想像がついたのだろう。
今は大人しく貴族牢に入っている。
勿論外部との連絡は一切取れない状態だ。




父親の不在はよくあることなのか、セルティ嬢が気にかける様子は見られないそうだ。

思い通りに事が運んでいると思い込んでいるセルティ嬢を天国から地獄に叩き落とす計画はアランが立てた。

待っていろ絶望を味あわせてやる。
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