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ウインティア王国編
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~リーゼ・ライベルン侯爵令嬢視点~
ルフラン殿下とウォルシュ嬢との婚約が発表されると両親からは役立たずと叱責されたが、王家の発表を覆すこと等できる訳もなく、何も言わず淡々と日々を過ごしていた。
そんな時2人の婚約披露パーティーの招待状が我が家にも届いた。
着飾って目立つことが大好きなフィリアは夏季休暇開けからは学園に通うと両親と約束をして、パーティーに参加することを許された。
目立ちたいが為に誰が主役か分からないほど派手なドレスを注文するフィリア。
それを止めない両親。
さすがの両親も次期当主の兄を参加させない訳にもいかず領地から呼び戻した。
久しぶりに会った兄から「当主交代の準備が整ったよ。もう少しだけ待っていて、リーゼを自由にさせてあげるよ」と言われた時には兄にしがみついて泣いた。
兄にエスコートされて参加した婚約披露パーティーは目も眩むような煌びやかさに目が回りそうだった。
堂々と入場してきたルフラン殿下とウォルシュ嬢。
学園で何度も2人を目にして見慣れた光景だった。それでもこの日は会場の誰よりも輝いて見えた。
長い片想いが実ってよかったですね。
ルフラン殿下。
挨拶のあと2人のダンスをする姿は、そこだけが光り輝いて見えた。
まだ大人しくできているフィリアも目をキラキラさせて2人を見ていたが、家族で挨拶に伺った時に嫌な予感がした。
ルフラン殿下に目を付けたことがすぐに分かった。
不機嫌な顔になって、ずっと2人を目で追いかけている。
ルフラン殿下とウォルシュ嬢への貴族からの挨拶も終わり2人は学園でもよく見かけるメンバーと楽しそうに談笑している姿を見つめるフィリアがそこへ突進しようと動き出したのを兄と必死で止めた。
ここで騒ぎを起こしたら結婚披露パーティーにも呼ばれなくなる。
兄がライベルン侯爵家当主になる邪魔だけはさせない。
家に帰ってからもルフラン殿下の美貌にウットリとはしゃぐフィリアを兄と一緒に近づくなと止めても聞きそうにない。
「可愛いわたくしならウォルシュ嬢からルフラン殿下を奪えるわ」
ライベルン侯爵家のために止めてと両親に言っても無駄だった。
「こんなに可愛いフィリアなら次期王妃にもなれるはずだ」
「ええ、ウォルシュ嬢にも負けてないわ。頑張りなさいフィリア」
止めるどころか両親はフィリアの後押しをする始末。
もうダメだ。
この3人には常識が通じない。
もうライベルン侯爵家は終わりかもしれない・・・。
約束通り夏季休暇開けから学園に通うようになったフィリアが、護衛まで付いているルフラン殿下やウォルシュ嬢に近付くことができず安心したのも束の間、"私を見て!声をかけて"アピールを始めてしまったのだ。
止めさせようとフィリアのところに行っても泣いて私を悪者にする。
学園内で少しづつ私が可愛い妹に嫉妬して虐めていると噂になりはじめた。
意地悪な姉と言われてもいい。
兄の将来だけは守りたい。
だからお願い貴方たちだけでもフィリアの庇護欲をそそる見た目にも、あの子の嘘にも騙されないで。
~ルフランの執務室では~
「また頭の悪い子が出てきちゃったね」
「「今のまま無視で!」」
「泣いて姉を悪者にして周りから同情されていますが、生徒たちはなぜ姉が止めているのか理由を知ろうともしていないね」
「「あれは全て計算された演技です!」」
「そんな演技に騙される奴らが悪いよね」
「「声をかけたら最後、今度はエリー嬢を悪者にしますよ」」
なんだと?
「それは俺も思う。狙われているのはルフラン殿下だ」
「俺はエリー以外の女が泣いていようが気にもならないが、何もしていないエリーを悪者にするだと?」
「「間違いなくします!」」
ならコイツらの意見を参考にさせてもらおう。
「この資料を見てくれ。家庭環境は最悪だ」
俺は既に調べさせていたライベルン侯爵家の内情をコイツらに見せた。
「ふ~ん、最下位クラスが嫌で仮病で休むんだ~」
「婚約披露パーティーでルフラン殿下を気に入ったからエリー嬢から奪うとか」
やめろガル!
「ルフラン殿下が欲しくなったと?」
気持ち悪い!アランも止めてくれ!
「こんな親だとこんな娘が育つのは仕方がないのか?」
「でも長男と長女は常識人だよね」
「「末っ子は甘えるのも上手いし、泣くのも演技ですから」」
グレイとザックの闇が深い・・・
「頭も悪い。マナーも悪い。嘘つき。どこを褒めたらいいの?」
ゾルティー相変わらずキツイな。
「これだけ妹と差を付けられたらこの長女が可哀想だな」
「兄だけが彼女の味方なんでしょうね」
「アラン、帰ったらエリーとレイに何があってもあの女に声をかけるなと伝えといてくれ。俺からも伝えるがな」
「ああそれなら心配ないよ。最初からレイがエリーに言い聞かせていたからね」
それなら大丈夫か。
もし、この女がエリーに冤罪をかけてくるようなら絶対に許さない。
冤罪から逃れるために一度は国を出ることを選んだエリーを傷つける奴は誰だろうと容赦しない。
「それと、こっちの資料も見てくれ」
~フィリア・ライベルン侯爵令嬢視点~
王宮のパーティーが忘れられない。
あんな煌びやかな場所で綺麗なドレスを着て皆からの視線を集められたら、どんなに気持ちがいいのかしら。
ホールの真ん中で踊る2人はキラキラ輝いて見えた。
わたくしもあの場所に行きたい。
ルフラン殿下を見るのは王宮のお茶会に招待されて以来だったわ。
わたくしはルフラン殿下よりもゾルティー殿下の方が好みだし、年々無愛想になるルフラン殿下には興味もなかったけれど、パーティーで見たルフラン殿下はすごく素敵だったわ。
だって婚約者の人にしか優しい目を向けないのよ?
だったらわたくしが婚約者になればあの目で見るのはわたくしだけになる。
皆から羨ましがられるわ。
そんな優越感に浸りたい。
それに毎日綺麗なドレスを着て、宝石も買い放題。
あの冷たそうな婚約者より、可愛くて可憐なわたくしのほうがルフラン殿下もいいに決まっているわ。
でも護衛も付いているし、近付くことが出来ないの。
何度も近付くのは止めろとうるさく言ってくるお姉様!
だから考えたの。
お姉様を利用すればいいとね。
役立たずなんだから、わたくしの為に悪者になってね。
お姉様はわたくしの引き立て役。
それぐらいしかお姉様に利用価値はないもの。
フフフ・・・意地悪な姉に泣かされる可哀想なか弱い令嬢を演じれば皆が同情してくれたわ。
さあルフラン殿下。早く可哀想なわたくしに声をかけて。
ルフラン殿下とウォルシュ嬢との婚約が発表されると両親からは役立たずと叱責されたが、王家の発表を覆すこと等できる訳もなく、何も言わず淡々と日々を過ごしていた。
そんな時2人の婚約披露パーティーの招待状が我が家にも届いた。
着飾って目立つことが大好きなフィリアは夏季休暇開けからは学園に通うと両親と約束をして、パーティーに参加することを許された。
目立ちたいが為に誰が主役か分からないほど派手なドレスを注文するフィリア。
それを止めない両親。
さすがの両親も次期当主の兄を参加させない訳にもいかず領地から呼び戻した。
久しぶりに会った兄から「当主交代の準備が整ったよ。もう少しだけ待っていて、リーゼを自由にさせてあげるよ」と言われた時には兄にしがみついて泣いた。
兄にエスコートされて参加した婚約披露パーティーは目も眩むような煌びやかさに目が回りそうだった。
堂々と入場してきたルフラン殿下とウォルシュ嬢。
学園で何度も2人を目にして見慣れた光景だった。それでもこの日は会場の誰よりも輝いて見えた。
長い片想いが実ってよかったですね。
ルフラン殿下。
挨拶のあと2人のダンスをする姿は、そこだけが光り輝いて見えた。
まだ大人しくできているフィリアも目をキラキラさせて2人を見ていたが、家族で挨拶に伺った時に嫌な予感がした。
ルフラン殿下に目を付けたことがすぐに分かった。
不機嫌な顔になって、ずっと2人を目で追いかけている。
ルフラン殿下とウォルシュ嬢への貴族からの挨拶も終わり2人は学園でもよく見かけるメンバーと楽しそうに談笑している姿を見つめるフィリアがそこへ突進しようと動き出したのを兄と必死で止めた。
ここで騒ぎを起こしたら結婚披露パーティーにも呼ばれなくなる。
兄がライベルン侯爵家当主になる邪魔だけはさせない。
家に帰ってからもルフラン殿下の美貌にウットリとはしゃぐフィリアを兄と一緒に近づくなと止めても聞きそうにない。
「可愛いわたくしならウォルシュ嬢からルフラン殿下を奪えるわ」
ライベルン侯爵家のために止めてと両親に言っても無駄だった。
「こんなに可愛いフィリアなら次期王妃にもなれるはずだ」
「ええ、ウォルシュ嬢にも負けてないわ。頑張りなさいフィリア」
止めるどころか両親はフィリアの後押しをする始末。
もうダメだ。
この3人には常識が通じない。
もうライベルン侯爵家は終わりかもしれない・・・。
約束通り夏季休暇開けから学園に通うようになったフィリアが、護衛まで付いているルフラン殿下やウォルシュ嬢に近付くことができず安心したのも束の間、"私を見て!声をかけて"アピールを始めてしまったのだ。
止めさせようとフィリアのところに行っても泣いて私を悪者にする。
学園内で少しづつ私が可愛い妹に嫉妬して虐めていると噂になりはじめた。
意地悪な姉と言われてもいい。
兄の将来だけは守りたい。
だからお願い貴方たちだけでもフィリアの庇護欲をそそる見た目にも、あの子の嘘にも騙されないで。
~ルフランの執務室では~
「また頭の悪い子が出てきちゃったね」
「「今のまま無視で!」」
「泣いて姉を悪者にして周りから同情されていますが、生徒たちはなぜ姉が止めているのか理由を知ろうともしていないね」
「「あれは全て計算された演技です!」」
「そんな演技に騙される奴らが悪いよね」
「「声をかけたら最後、今度はエリー嬢を悪者にしますよ」」
なんだと?
「それは俺も思う。狙われているのはルフラン殿下だ」
「俺はエリー以外の女が泣いていようが気にもならないが、何もしていないエリーを悪者にするだと?」
「「間違いなくします!」」
ならコイツらの意見を参考にさせてもらおう。
「この資料を見てくれ。家庭環境は最悪だ」
俺は既に調べさせていたライベルン侯爵家の内情をコイツらに見せた。
「ふ~ん、最下位クラスが嫌で仮病で休むんだ~」
「婚約披露パーティーでルフラン殿下を気に入ったからエリー嬢から奪うとか」
やめろガル!
「ルフラン殿下が欲しくなったと?」
気持ち悪い!アランも止めてくれ!
「こんな親だとこんな娘が育つのは仕方がないのか?」
「でも長男と長女は常識人だよね」
「「末っ子は甘えるのも上手いし、泣くのも演技ですから」」
グレイとザックの闇が深い・・・
「頭も悪い。マナーも悪い。嘘つき。どこを褒めたらいいの?」
ゾルティー相変わらずキツイな。
「これだけ妹と差を付けられたらこの長女が可哀想だな」
「兄だけが彼女の味方なんでしょうね」
「アラン、帰ったらエリーとレイに何があってもあの女に声をかけるなと伝えといてくれ。俺からも伝えるがな」
「ああそれなら心配ないよ。最初からレイがエリーに言い聞かせていたからね」
それなら大丈夫か。
もし、この女がエリーに冤罪をかけてくるようなら絶対に許さない。
冤罪から逃れるために一度は国を出ることを選んだエリーを傷つける奴は誰だろうと容赦しない。
「それと、こっちの資料も見てくれ」
~フィリア・ライベルン侯爵令嬢視点~
王宮のパーティーが忘れられない。
あんな煌びやかな場所で綺麗なドレスを着て皆からの視線を集められたら、どんなに気持ちがいいのかしら。
ホールの真ん中で踊る2人はキラキラ輝いて見えた。
わたくしもあの場所に行きたい。
ルフラン殿下を見るのは王宮のお茶会に招待されて以来だったわ。
わたくしはルフラン殿下よりもゾルティー殿下の方が好みだし、年々無愛想になるルフラン殿下には興味もなかったけれど、パーティーで見たルフラン殿下はすごく素敵だったわ。
だって婚約者の人にしか優しい目を向けないのよ?
だったらわたくしが婚約者になればあの目で見るのはわたくしだけになる。
皆から羨ましがられるわ。
そんな優越感に浸りたい。
それに毎日綺麗なドレスを着て、宝石も買い放題。
あの冷たそうな婚約者より、可愛くて可憐なわたくしのほうがルフラン殿下もいいに決まっているわ。
でも護衛も付いているし、近付くことが出来ないの。
何度も近付くのは止めろとうるさく言ってくるお姉様!
だから考えたの。
お姉様を利用すればいいとね。
役立たずなんだから、わたくしの為に悪者になってね。
お姉様はわたくしの引き立て役。
それぐらいしかお姉様に利用価値はないもの。
フフフ・・・意地悪な姉に泣かされる可哀想なか弱い令嬢を演じれば皆が同情してくれたわ。
さあルフラン殿下。早く可哀想なわたくしに声をかけて。
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