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公爵家に到着して馬車から降りる時、毎回ルフランが流れるように手を差し出してくる。
ルフランは隠そうとしているが、彼の身につけた仕草や洗練された作法は隠しきれていない。
おおよその予測はついている。
というより、間違いないだろう。
分からないのは変装してまで、アトラニア王国の学院に平民のフリをしてまで通っていること。
確かにウインティア王国とアトラニア王国とは友好国でもある。
だから立場を隠す必要なんてどこにもないはずだ。
それにウインティア王国の学園は今どうなっているのだろう?
悪役令嬢の私も、攻略対象者のアランもいない学園でヒロインは誰かにイジメられたりしていないのだろうか?
ゲームのヒロインは何も分からない世界で困りながらも健気で優しい少女だったはずだ。
(記憶に自信がないが・・・いや、天真爛漫で純真無垢だったか?)
そんな彼女に惹かれる子息たちは多かった。
攻略対象者が減ったとしても、そんなヒロインなら誰かしらとハッピーエンドを迎えることができるだろう。
出迎えてくれた公爵家の執事に伯母様に大切な話しがあるから時間を作ってもらえないか伺ってきて欲しいとお願いした。
その間、ルフランとお茶をしている時に伯母様の方が応接室まで来てくれた。
礼儀正しいルフランは伯母様のお気に入りなのだ。
今日の出来事をすべて話してアランがビジョップ家に挨拶に行ったと伝えると、泣き出してしまった。
伯母様もアランとレイが初めて会った時から思い合っていることを知っていただけに、婚約者のレイがいながら、不貞を行いレイを蔑ろにするラティオス王子のことをよく思っていなかったからね。
それが今回のことで婚約破棄になる事が約束された。
「アランってば挨拶に行くなんて行動が早いわね。ビジョップ侯爵夫人もきっと喜ぶわ。あの時の2人を見ていたのですもの」
ハンカチで目を押えながらそう言って笑っていた。
伯父様への報告をお願いすると、「彼なら今頃すべての情報を耳に入れていると思うわ。あとは彼に任せなさい。」
なるほど、さすが宰相なだけはある。
呑気にそう思っていたが伯母様とルフランが悪い顔で頷きあっていた事には気づかなかった。
~ミーシャ男爵令嬢視点~
失敗した、失敗した、失敗した。
何でこんなことになったの。
わたしがヒロインなのに・・・
学院に入学してから3ヶ月が経つのに、悪役令嬢のレイチェルが何もしてこないから焦っていたのもあるけれど、何よりわたしよりも目立つエリザベートの存在が面白くなかった。
立っているだけでも男女関係なく見惚れてしまう気品溢れる佇まい。
まるで女王のような貫禄。
何よりあの美しい顔。
冷たく見えるその美しい顔もアランやレイチェル、そして平民のモブに笑いかけているところは女神のようで陰でエリザベートを崇拝している者達もいる。
それでも最初は我慢できた。
ラティオスもゲームの通りあっさりとわたしに夢中になったし、彼から甘い言葉を囁かれるのも悪くはなかった。
わたしに侍る男たちにも満足していた。
それでもやっぱりアランを諦められなかった。
アランの整った優しそうな顔で、わたしだけに甘い言葉と蕩けるような眼差しを向けて欲しい。
アランをわたしだけの物にしたい。
それなのに、一向にわたしにその目が向けられることがない。
アランの目はレイチェルとエリザベートしか見ていなかった。
わたしを見ようともしなかった。
ゲーム通りレイチェルを悪役令嬢にすればよかったの?
3年間もゲームの期間があったのに急ぎ過ぎたのがいけなかったの?
ゲームとは関係の無いエリザベートを悪役令嬢に仕立てようとした事がいけなかったの?
でもこのゲームに存在しないエリザベートを退場させて、軌道修正をしたらゲームのようにレイチェルが悪役令嬢になると思ったの。
だからエリザベートを悪役令嬢に仕立てようとしたのに・・・
エリザベートに虐められる可哀想な女を演じ、ありもしないイジメをでっち上げた。
まさか第二王子が出てきて噂を流した者をタダでは済ませないと言い出すとは思わなかった。
噂を辿ればわたしがでっち上げた事はすぐにバレるだろう。
怖い、これからわたしはどうなるのだろう?
ラティオスもわたしとの不貞でレイチェルと婚約破棄になる。
この責任も取らされることになるのだろうか?
バカだった。
ここはゲームの世界であっても現実だ。
たとえラティオスとハッピーエンドを迎えたところで王族が男爵家の娘と結婚なんて出来るわけがない。
わたしが王子妃になることは最初から無理だったのだ。
ゲームの中だからこそ王子とヒロインが結ばれることができるだけ。
現実はそんなに甘くはない。
追い詰められてから冷静になれるなんて・・・
本当にバカだった。
もうすぐこの広い会議室に陛下や国の重鎮達が来る。
ここに一緒に連れてこられた彼らも既に一人一人事情聴取された後だ。
顔色を悪くしてみんな震えている。
原因はわたしだとしても、でっち上げた嘘を疑うこともせずエリザベートを断罪しようとしたのだ。
あのウォルシュ家の令嬢で、宰相がとても大事にしていると噂の姪であるエリザベートを。
今、目の前には初めて見るこの国の王とその周りには重鎮と呼ばれる何人かの男の人達がいる。
その中にいるエリザベートと同じ髪色と目の色をしたクールな人が宰相だろう。
まるで実の親子のように似ている。
結果わたしは退学になる事が決まった。
それだけで済んで良かったとしか思えない。
現世の両親は王家に忠誠を誓っている。
こんな事を仕出かしたわたしが家に帰ることを許さないだろう。
結局わたしは命以外すべてを失ってしまったことになる。
侍っていた12人の男たちは2週間の停学。
停学処分といっても、それだけでは済まないだろう。
彼らの中には婚約者のいた人もいた。
その婚約者の人たちまで傷付けてしまった。
家同士の繋がりさえ壊してしまったかもしれない。
前世でわたしが軽蔑していた男を取っかえ引っ変えしていた女と変わらない事をヒロインだと調子に乗ってわたしはしていたのだ。
自分がヒロインだと舞い上がって、何をしても許されると勘違いしていた。
そんなこと許されるワケないのに・・・
ゲームの世界なんかじゃなかった。
ここは現実だった。
ラティオスも2週間の停学だが、卒業後は継承権は剥奪されただの王子となり、生涯結婚するどころか子供も作れない体にされて離宮に閉じ込められる事になった。
もちろん、ラティオス有責で婚約破棄も決まった。
ラティオスもここまでキツイ処分になるとは思わなかったのだろう。
『今回の責任を取ってウォルシュ嬢を傷つけた私が彼女と婚姻を結びます。』
堂々と宣言したラティオスのこの言葉にその場は静まり返った。
こんな馬鹿な人だったとは思わなかった。
『ふざけるなよ小僧、誰がお前のような馬鹿で不誠実な男に可愛い姪を嫁がせなければならないんだ?』
宰相の地を這うような言葉にこの場にいる全員が震え上がった。
不敬だと言葉にする者すらいなかった。
結局ラティオスは泣きながら許しを乞うたが王の決定が覆ることは無かった。
今までのラティオスの傍若無人な振る舞いや、王族の責務を放棄して遊び呆ていた事も理由に含まれているそうだ。
ラティオスは見限られたのだろう。
それでもわたしがラティオスの人生を狂わせてしまった事に違いない。
本当にバカだった。
わたしは彼らにも、彼らの家族にも一生恨まれ続けるのだろう。
もっと早く現実に気がついていれば、普通の幸せぐらいなら掴めていたかもしれないのに・・・
これからどうやって生きていこう。
行く宛てなんて無い。
自分がバカすぎて涙がでた。
ルフランは隠そうとしているが、彼の身につけた仕草や洗練された作法は隠しきれていない。
おおよその予測はついている。
というより、間違いないだろう。
分からないのは変装してまで、アトラニア王国の学院に平民のフリをしてまで通っていること。
確かにウインティア王国とアトラニア王国とは友好国でもある。
だから立場を隠す必要なんてどこにもないはずだ。
それにウインティア王国の学園は今どうなっているのだろう?
悪役令嬢の私も、攻略対象者のアランもいない学園でヒロインは誰かにイジメられたりしていないのだろうか?
ゲームのヒロインは何も分からない世界で困りながらも健気で優しい少女だったはずだ。
(記憶に自信がないが・・・いや、天真爛漫で純真無垢だったか?)
そんな彼女に惹かれる子息たちは多かった。
攻略対象者が減ったとしても、そんなヒロインなら誰かしらとハッピーエンドを迎えることができるだろう。
出迎えてくれた公爵家の執事に伯母様に大切な話しがあるから時間を作ってもらえないか伺ってきて欲しいとお願いした。
その間、ルフランとお茶をしている時に伯母様の方が応接室まで来てくれた。
礼儀正しいルフランは伯母様のお気に入りなのだ。
今日の出来事をすべて話してアランがビジョップ家に挨拶に行ったと伝えると、泣き出してしまった。
伯母様もアランとレイが初めて会った時から思い合っていることを知っていただけに、婚約者のレイがいながら、不貞を行いレイを蔑ろにするラティオス王子のことをよく思っていなかったからね。
それが今回のことで婚約破棄になる事が約束された。
「アランってば挨拶に行くなんて行動が早いわね。ビジョップ侯爵夫人もきっと喜ぶわ。あの時の2人を見ていたのですもの」
ハンカチで目を押えながらそう言って笑っていた。
伯父様への報告をお願いすると、「彼なら今頃すべての情報を耳に入れていると思うわ。あとは彼に任せなさい。」
なるほど、さすが宰相なだけはある。
呑気にそう思っていたが伯母様とルフランが悪い顔で頷きあっていた事には気づかなかった。
~ミーシャ男爵令嬢視点~
失敗した、失敗した、失敗した。
何でこんなことになったの。
わたしがヒロインなのに・・・
学院に入学してから3ヶ月が経つのに、悪役令嬢のレイチェルが何もしてこないから焦っていたのもあるけれど、何よりわたしよりも目立つエリザベートの存在が面白くなかった。
立っているだけでも男女関係なく見惚れてしまう気品溢れる佇まい。
まるで女王のような貫禄。
何よりあの美しい顔。
冷たく見えるその美しい顔もアランやレイチェル、そして平民のモブに笑いかけているところは女神のようで陰でエリザベートを崇拝している者達もいる。
それでも最初は我慢できた。
ラティオスもゲームの通りあっさりとわたしに夢中になったし、彼から甘い言葉を囁かれるのも悪くはなかった。
わたしに侍る男たちにも満足していた。
それでもやっぱりアランを諦められなかった。
アランの整った優しそうな顔で、わたしだけに甘い言葉と蕩けるような眼差しを向けて欲しい。
アランをわたしだけの物にしたい。
それなのに、一向にわたしにその目が向けられることがない。
アランの目はレイチェルとエリザベートしか見ていなかった。
わたしを見ようともしなかった。
ゲーム通りレイチェルを悪役令嬢にすればよかったの?
3年間もゲームの期間があったのに急ぎ過ぎたのがいけなかったの?
ゲームとは関係の無いエリザベートを悪役令嬢に仕立てようとした事がいけなかったの?
でもこのゲームに存在しないエリザベートを退場させて、軌道修正をしたらゲームのようにレイチェルが悪役令嬢になると思ったの。
だからエリザベートを悪役令嬢に仕立てようとしたのに・・・
エリザベートに虐められる可哀想な女を演じ、ありもしないイジメをでっち上げた。
まさか第二王子が出てきて噂を流した者をタダでは済ませないと言い出すとは思わなかった。
噂を辿ればわたしがでっち上げた事はすぐにバレるだろう。
怖い、これからわたしはどうなるのだろう?
ラティオスもわたしとの不貞でレイチェルと婚約破棄になる。
この責任も取らされることになるのだろうか?
バカだった。
ここはゲームの世界であっても現実だ。
たとえラティオスとハッピーエンドを迎えたところで王族が男爵家の娘と結婚なんて出来るわけがない。
わたしが王子妃になることは最初から無理だったのだ。
ゲームの中だからこそ王子とヒロインが結ばれることができるだけ。
現実はそんなに甘くはない。
追い詰められてから冷静になれるなんて・・・
本当にバカだった。
もうすぐこの広い会議室に陛下や国の重鎮達が来る。
ここに一緒に連れてこられた彼らも既に一人一人事情聴取された後だ。
顔色を悪くしてみんな震えている。
原因はわたしだとしても、でっち上げた嘘を疑うこともせずエリザベートを断罪しようとしたのだ。
あのウォルシュ家の令嬢で、宰相がとても大事にしていると噂の姪であるエリザベートを。
今、目の前には初めて見るこの国の王とその周りには重鎮と呼ばれる何人かの男の人達がいる。
その中にいるエリザベートと同じ髪色と目の色をしたクールな人が宰相だろう。
まるで実の親子のように似ている。
結果わたしは退学になる事が決まった。
それだけで済んで良かったとしか思えない。
現世の両親は王家に忠誠を誓っている。
こんな事を仕出かしたわたしが家に帰ることを許さないだろう。
結局わたしは命以外すべてを失ってしまったことになる。
侍っていた12人の男たちは2週間の停学。
停学処分といっても、それだけでは済まないだろう。
彼らの中には婚約者のいた人もいた。
その婚約者の人たちまで傷付けてしまった。
家同士の繋がりさえ壊してしまったかもしれない。
前世でわたしが軽蔑していた男を取っかえ引っ変えしていた女と変わらない事をヒロインだと調子に乗ってわたしはしていたのだ。
自分がヒロインだと舞い上がって、何をしても許されると勘違いしていた。
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ラティオスも2週間の停学だが、卒業後は継承権は剥奪されただの王子となり、生涯結婚するどころか子供も作れない体にされて離宮に閉じ込められる事になった。
もちろん、ラティオス有責で婚約破棄も決まった。
ラティオスもここまでキツイ処分になるとは思わなかったのだろう。
『今回の責任を取ってウォルシュ嬢を傷つけた私が彼女と婚姻を結びます。』
堂々と宣言したラティオスのこの言葉にその場は静まり返った。
こんな馬鹿な人だったとは思わなかった。
『ふざけるなよ小僧、誰がお前のような馬鹿で不誠実な男に可愛い姪を嫁がせなければならないんだ?』
宰相の地を這うような言葉にこの場にいる全員が震え上がった。
不敬だと言葉にする者すらいなかった。
結局ラティオスは泣きながら許しを乞うたが王の決定が覆ることは無かった。
今までのラティオスの傍若無人な振る舞いや、王族の責務を放棄して遊び呆ていた事も理由に含まれているそうだ。
ラティオスは見限られたのだろう。
それでもわたしがラティオスの人生を狂わせてしまった事に違いない。
本当にバカだった。
わたしは彼らにも、彼らの家族にも一生恨まれ続けるのだろう。
もっと早く現実に気がついていれば、普通の幸せぐらいなら掴めていたかもしれないのに・・・
これからどうやって生きていこう。
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