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~レイチェル視点~
わたしは転生者だ。
物心ついた時には前世の記憶があった。
あのお茶会でエリザベート様を見た瞬間に『世界を超えた乙女の愛と友情』の悪役令嬢だと気づいた。
あのゲームには裏モードがあった。
普通にゲームをしても悪役令嬢が断罪され、乙女ゲームではよくあるパターンでエンディングを迎えるが、わたしは登場人物のアラン様が好きで好きで何度もやり込んだ。
アラン様がわたしの理想そのものだった。
アラン様攻略を30回を超えた時、突然画面が真っ黒になり『真実が知りたいか?』の白い文字だけが浮かんだ。
その文字が消えると画面の真ん中にはYES、Noの文字。
もちろんYESを選択した。
新しく始まったゲームは第一王子が主人公で進められる物語だった。
幼い頃にエリザベートに一目惚れした王子だったが、エリザベートだけに素直になれず、どんどん墓穴を掘るうちに、最後の王子の一言からエリザベートに長く会えない時間を過ごすことになってしまった。
その時の後悔から、年々王子の顔から表情が消えてしまう。
その時の王子の後悔がゲームをやっていて痛いくらい伝わってきた。
そんな時ヒロインが現れた。
突然現れたヒロインに城内も慌ただしくなるなか、王子は指示を出すだけでヒロインには関心を示さなかった。
学園に入学してからも遠くからエリザベートを見ることしか出来ない王子。
アラン様が側にいない時はいつも一人でいるエリザベート。
そのうち、アランもヒロインに惹かれてエリザベートはひとりぼっちになってしまう。
他の攻略対象者たちがヒロインに惹かれていく中、王子だけは一途にエリザベートだけを思い続けていた。
そんな時、エリザベートがヒロインを虐める悪役令嬢だと噂が流れる。
ヒロインへのイジメにエリザベートが関わっていないことを王子は知っていた。
ヒロイン自身が自作自演でエリザベートを悪役令嬢に仕立て陥れたことも。
正規のゲームでは断罪後、悪役令嬢は生涯を修道院で終えたとあったが、それは違う。
断罪後、王都から離れた緑豊かな場所で、ご両親が用意した屋敷でエリザベートを慕うメイド達と楽しく穏やかに過ごしていたのだ。
そんなエリザベートに会いに王都から何度も通い、素直に一途な想いを伝え続ける王子。
時間はかかったが受け入れてもらえた時の王子の笑顔は本当に嬉しそうで、見ているわたしまでが幸せな気持ちになった。
王子は無責任だと思いながらも王位継承権を放棄し、弟の第二王子に王の椅子を譲る事に決めていた。
エリザベートと一緒に生きていくために。
第一王子の思いを知っていた第二王子は、『いつかこんな日がくると思っていたよ。覚悟は兄上から表情が消えた時から出来ている。それは父上も母上も同じだよ。後のことは任せて安心して幸せになって欲しい。やっと兄上の想いが届いたのでしょう?』
第一王子はエリザベートが自由になりたがっていることに気づいて、ワザと断罪したのだ。
断罪後は継承権を捨ててでも幼い頃の言動の許しを乞い、想いを伝え貴族社会の据から自由になったエリザベートを自分の手で幸せにするために。
裏モードでも後ろ姿しか見えなかった悪役令嬢が、王子ではなくなった元王子が継承権を放棄してエリザベートのもとへと帰ってきた時、はじめて画面に映った悪役令嬢の笑顔が最っ高に可愛いかったんだ。
裏モードのエンディング後に、アランが物陰から幸せそうなエリザベートと元王子を見て「エリー幸せになるんだよ」って寂しそうに笑って言うんだよ。
アラン様の優しさに泣けた。
そして真相が明かされる。
早くからヒロインの裏の顔に気づいたアランが姉のエリーを窮屈な貴族社会から逃がす為に第二王子と手を組んでいたこと。
ヒロインの嘘を疑うことなく信じた宰相の息子と騎士団長の息子、その他の取り巻きを国の中枢に置くことを王家も良しとせず、見極めるために王からの命令でアランがヒロインの側で監視していたこと。
もちろん宰相も騎士団長も息子が試されていることは知っていた。
最後まで目を覚まさなかった息子を見限り廃嫡にしたのだ。
その他の取り巻き達も似たような結果だ。
そしてヒロインは自身の欲の為に何人もの人生を狂わせた罪で死ぬまで陽の光を浴びることなく牢の中で過ごすことになる。
これが真実だった。
ゲームが終わって、アランが騙されていなかったこと、王子の一途な思いが報われたこと、エリザベートと元王子の幸せそうな顔すべてに感動した。
アランは悪役を演じてまでエリザベートの幸せを願っていた事に涙した。
その悪役令嬢のエリザベート様がなぜ今この国にいるの?
もしかして彼女もゲームの内容を知っている転生者だとか?
それでもさすがに裏モードは知らないだろう。
彼女に聞きたいことが山ほどある。
早く会って話がしたい。
まあ、これは冷静になった今だから言えることだわ。
だってあの時わたしの理想のアラン様が子供の姿で目の前に生きて存在していたのよ!
しかも!自惚れじゃなくあの目はわたしに好意を寄せている目に違いないわ!
でも、わたし別の乙女ゲームの悪役令嬢なんだよね~
大っ嫌いな王子に断罪されて婚約破棄されるの。
そして国外追放される予定。
そのゲームの名は『みんなわたしの虜にしちゃうゾ!ドッキュ~ン♡』
なんてフザケたネーミングなんだ!
力が抜けるわ!トホホ・・・
この世界が2つの乙女ゲームが同時進行するなんて、こんな事ってある~~
わたしは転生者だ。
物心ついた時には前世の記憶があった。
あのお茶会でエリザベート様を見た瞬間に『世界を超えた乙女の愛と友情』の悪役令嬢だと気づいた。
あのゲームには裏モードがあった。
普通にゲームをしても悪役令嬢が断罪され、乙女ゲームではよくあるパターンでエンディングを迎えるが、わたしは登場人物のアラン様が好きで好きで何度もやり込んだ。
アラン様がわたしの理想そのものだった。
アラン様攻略を30回を超えた時、突然画面が真っ黒になり『真実が知りたいか?』の白い文字だけが浮かんだ。
その文字が消えると画面の真ん中にはYES、Noの文字。
もちろんYESを選択した。
新しく始まったゲームは第一王子が主人公で進められる物語だった。
幼い頃にエリザベートに一目惚れした王子だったが、エリザベートだけに素直になれず、どんどん墓穴を掘るうちに、最後の王子の一言からエリザベートに長く会えない時間を過ごすことになってしまった。
その時の後悔から、年々王子の顔から表情が消えてしまう。
その時の王子の後悔がゲームをやっていて痛いくらい伝わってきた。
そんな時ヒロインが現れた。
突然現れたヒロインに城内も慌ただしくなるなか、王子は指示を出すだけでヒロインには関心を示さなかった。
学園に入学してからも遠くからエリザベートを見ることしか出来ない王子。
アラン様が側にいない時はいつも一人でいるエリザベート。
そのうち、アランもヒロインに惹かれてエリザベートはひとりぼっちになってしまう。
他の攻略対象者たちがヒロインに惹かれていく中、王子だけは一途にエリザベートだけを思い続けていた。
そんな時、エリザベートがヒロインを虐める悪役令嬢だと噂が流れる。
ヒロインへのイジメにエリザベートが関わっていないことを王子は知っていた。
ヒロイン自身が自作自演でエリザベートを悪役令嬢に仕立て陥れたことも。
正規のゲームでは断罪後、悪役令嬢は生涯を修道院で終えたとあったが、それは違う。
断罪後、王都から離れた緑豊かな場所で、ご両親が用意した屋敷でエリザベートを慕うメイド達と楽しく穏やかに過ごしていたのだ。
そんなエリザベートに会いに王都から何度も通い、素直に一途な想いを伝え続ける王子。
時間はかかったが受け入れてもらえた時の王子の笑顔は本当に嬉しそうで、見ているわたしまでが幸せな気持ちになった。
王子は無責任だと思いながらも王位継承権を放棄し、弟の第二王子に王の椅子を譲る事に決めていた。
エリザベートと一緒に生きていくために。
第一王子の思いを知っていた第二王子は、『いつかこんな日がくると思っていたよ。覚悟は兄上から表情が消えた時から出来ている。それは父上も母上も同じだよ。後のことは任せて安心して幸せになって欲しい。やっと兄上の想いが届いたのでしょう?』
第一王子はエリザベートが自由になりたがっていることに気づいて、ワザと断罪したのだ。
断罪後は継承権を捨ててでも幼い頃の言動の許しを乞い、想いを伝え貴族社会の据から自由になったエリザベートを自分の手で幸せにするために。
裏モードでも後ろ姿しか見えなかった悪役令嬢が、王子ではなくなった元王子が継承権を放棄してエリザベートのもとへと帰ってきた時、はじめて画面に映った悪役令嬢の笑顔が最っ高に可愛いかったんだ。
裏モードのエンディング後に、アランが物陰から幸せそうなエリザベートと元王子を見て「エリー幸せになるんだよ」って寂しそうに笑って言うんだよ。
アラン様の優しさに泣けた。
そして真相が明かされる。
早くからヒロインの裏の顔に気づいたアランが姉のエリーを窮屈な貴族社会から逃がす為に第二王子と手を組んでいたこと。
ヒロインの嘘を疑うことなく信じた宰相の息子と騎士団長の息子、その他の取り巻きを国の中枢に置くことを王家も良しとせず、見極めるために王からの命令でアランがヒロインの側で監視していたこと。
もちろん宰相も騎士団長も息子が試されていることは知っていた。
最後まで目を覚まさなかった息子を見限り廃嫡にしたのだ。
その他の取り巻き達も似たような結果だ。
そしてヒロインは自身の欲の為に何人もの人生を狂わせた罪で死ぬまで陽の光を浴びることなく牢の中で過ごすことになる。
これが真実だった。
ゲームが終わって、アランが騙されていなかったこと、王子の一途な思いが報われたこと、エリザベートと元王子の幸せそうな顔すべてに感動した。
アランは悪役を演じてまでエリザベートの幸せを願っていた事に涙した。
その悪役令嬢のエリザベート様がなぜ今この国にいるの?
もしかして彼女もゲームの内容を知っている転生者だとか?
それでもさすがに裏モードは知らないだろう。
彼女に聞きたいことが山ほどある。
早く会って話がしたい。
まあ、これは冷静になった今だから言えることだわ。
だってあの時わたしの理想のアラン様が子供の姿で目の前に生きて存在していたのよ!
しかも!自惚れじゃなくあの目はわたしに好意を寄せている目に違いないわ!
でも、わたし別の乙女ゲームの悪役令嬢なんだよね~
大っ嫌いな王子に断罪されて婚約破棄されるの。
そして国外追放される予定。
そのゲームの名は『みんなわたしの虜にしちゃうゾ!ドッキュ~ン♡』
なんてフザケたネーミングなんだ!
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