12 / 122
12
しおりを挟む
僕が物心ついた時には、隣にはいつも姉のエリーがいた。
エリーは幼い頃から、同じ歳だというのにお姉さんぶって何かと僕の世話をやきたがった。
僕が笑っているだけでエリーが幸せそうな顔をするから、僕まで幸せになった気がしていたんだ。
僕や家族といる時は、よく笑うエリーだけど1人になると難しい顔をして何かを考え込んでいる姿を何度も見かけた。
両親や祖父母もそれには気づいていたけど、黙って見守っているようだった。
そして家庭教師がついた頃から、何かに追われるように学んでいる姿を見ていて、いつかエリーがどこか遠い所に行くかもしれないと漠然と思ったんだ。
6歳の時、王宮のお茶会に招待された時に気づいたんだ。
王子たちが登場した瞬間、初めて会ったはずなのにエリーの顔が真っ青になって震えていることに。
僕の世話をすることで落ち着いたのか、いつものエリーに戻ったけれど、他の令嬢たちは2人の王子に群がって自分のことをアピールしているのに、エリーは王子たちを避けて目も合わせようとしなかった。
そして僕の世話を喜でしているエリーのことを第一王子が見ていることにも気づいてしまった。
その時は何事もなく帰ってきたが、次の年からのお茶会でも、エリーは王子たちに近づこうとしなかった。
他にも優良物件と言われる令息に話しかけられても、挨拶するだけで交流しようとはしなかった。
毎回適当な時間が過ぎると急いで帰ろうとする理由も分からないが、エリーが帰るなり両親や祖父母に泣きついてまで王子を嫌がっている理由も分からない。
まあ、嘘泣きだと皆んなが気づいているのにエリーだけがバレていないと思っているところが、我が姉ながらバカだなと思う。
まあ、確かにエリーに対して第一王子の態度や言い方には問題があるが、僕が見る限り第一王子はエリーのことが気になっているのは間違いないだろう。
お茶会で聞く第一王子の評判は眉目秀麗、頭脳明晰、文武両道、品行方正と完璧王子と聞くが、なぜかエリーに対しては当てはまらない。
僕から見ても王子が緊張して傲慢な言い方になってしまったのだろうと予測できるが、エリーには伝わらない。鈍いからね。
エリーは僕のことを"可愛い!とっても美形よ!"ってよく言っているが、それはエリーの方だ。
エリーはいつも背筋をピンと伸ばし、凛とした佇まいが近づき難い雰囲気を醸し出しているが、そんなエリーを遠目で見ている令息はすごく多い。
ただでさえ僕と同じ紫がかった銀髪は目立つ。真っ白な肌に小さな顔、赤みがかった紫の瞳はキツめだがエリーは誰よりも綺麗で人目を引く。
そんなエリーが僕にだけ、笑顔を見せるんだ、キツい雰囲気が一転して凄く可愛くなる。天使の笑顔ってやつだ。
その笑顔を見てしまえばエリーに惹かれてしまうのも無理はない。
きっと第一王子もそれにやられたのだと思う。
それなのに『お前なんか嫌いだ!二度と王宮に来るな!』なんて言うものだから、ずっと避けていたエリーはご褒美を貰ったかのように笑顔で『承知致しました』と僕を連れて嬉々揚々と帰ったんだ。
エリーの満面の笑顔を見た王子は真っ赤になって見惚れていた。
すぐに我に返った王子はエリーを引き留めようと「待ってくれ」と発した言葉は背を向けたエリーには届かなかった。
この頃から、エリーの何かに追い詰められているような姿を見ることがなくなってきた。
本来のエリーの性格が出てきたように思う。
そして、養子の話が出た時には嬉々として自分がいくと言い出した。
家族を誰よりも大事にしているのに、きっとエリーは何かしらの理由でこの国にいたくないのだろう。
それは両親も祖父母も気づいたようだった。
だから、反対出来なかったんだ。
それでも大切な姉なんだ。
養子に行くまでは僕が側で見守ろう。
何を仕出かすか分からないエリーには、まだ僕が必要だ。
エリーは幼い頃から、同じ歳だというのにお姉さんぶって何かと僕の世話をやきたがった。
僕が笑っているだけでエリーが幸せそうな顔をするから、僕まで幸せになった気がしていたんだ。
僕や家族といる時は、よく笑うエリーだけど1人になると難しい顔をして何かを考え込んでいる姿を何度も見かけた。
両親や祖父母もそれには気づいていたけど、黙って見守っているようだった。
そして家庭教師がついた頃から、何かに追われるように学んでいる姿を見ていて、いつかエリーがどこか遠い所に行くかもしれないと漠然と思ったんだ。
6歳の時、王宮のお茶会に招待された時に気づいたんだ。
王子たちが登場した瞬間、初めて会ったはずなのにエリーの顔が真っ青になって震えていることに。
僕の世話をすることで落ち着いたのか、いつものエリーに戻ったけれど、他の令嬢たちは2人の王子に群がって自分のことをアピールしているのに、エリーは王子たちを避けて目も合わせようとしなかった。
そして僕の世話を喜でしているエリーのことを第一王子が見ていることにも気づいてしまった。
その時は何事もなく帰ってきたが、次の年からのお茶会でも、エリーは王子たちに近づこうとしなかった。
他にも優良物件と言われる令息に話しかけられても、挨拶するだけで交流しようとはしなかった。
毎回適当な時間が過ぎると急いで帰ろうとする理由も分からないが、エリーが帰るなり両親や祖父母に泣きついてまで王子を嫌がっている理由も分からない。
まあ、嘘泣きだと皆んなが気づいているのにエリーだけがバレていないと思っているところが、我が姉ながらバカだなと思う。
まあ、確かにエリーに対して第一王子の態度や言い方には問題があるが、僕が見る限り第一王子はエリーのことが気になっているのは間違いないだろう。
お茶会で聞く第一王子の評判は眉目秀麗、頭脳明晰、文武両道、品行方正と完璧王子と聞くが、なぜかエリーに対しては当てはまらない。
僕から見ても王子が緊張して傲慢な言い方になってしまったのだろうと予測できるが、エリーには伝わらない。鈍いからね。
エリーは僕のことを"可愛い!とっても美形よ!"ってよく言っているが、それはエリーの方だ。
エリーはいつも背筋をピンと伸ばし、凛とした佇まいが近づき難い雰囲気を醸し出しているが、そんなエリーを遠目で見ている令息はすごく多い。
ただでさえ僕と同じ紫がかった銀髪は目立つ。真っ白な肌に小さな顔、赤みがかった紫の瞳はキツめだがエリーは誰よりも綺麗で人目を引く。
そんなエリーが僕にだけ、笑顔を見せるんだ、キツい雰囲気が一転して凄く可愛くなる。天使の笑顔ってやつだ。
その笑顔を見てしまえばエリーに惹かれてしまうのも無理はない。
きっと第一王子もそれにやられたのだと思う。
それなのに『お前なんか嫌いだ!二度と王宮に来るな!』なんて言うものだから、ずっと避けていたエリーはご褒美を貰ったかのように笑顔で『承知致しました』と僕を連れて嬉々揚々と帰ったんだ。
エリーの満面の笑顔を見た王子は真っ赤になって見惚れていた。
すぐに我に返った王子はエリーを引き留めようと「待ってくれ」と発した言葉は背を向けたエリーには届かなかった。
この頃から、エリーの何かに追い詰められているような姿を見ることがなくなってきた。
本来のエリーの性格が出てきたように思う。
そして、養子の話が出た時には嬉々として自分がいくと言い出した。
家族を誰よりも大事にしているのに、きっとエリーは何かしらの理由でこの国にいたくないのだろう。
それは両親も祖父母も気づいたようだった。
だから、反対出来なかったんだ。
それでも大切な姉なんだ。
養子に行くまでは僕が側で見守ろう。
何を仕出かすか分からないエリーには、まだ僕が必要だ。
279
お気に入りに追加
4,559
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢が死んだ後
ぐう
恋愛
王立学園で殺人事件が起きた。
被害者は公爵令嬢 加害者は男爵令嬢
男爵令嬢は王立学園で多くの高位貴族令息を侍らせていたと言う。
公爵令嬢は婚約者の第二王子に常に邪険にされていた。
殺害理由はなんなのか?
視察に訪れていた第一王子の目の前で事件は起きた。第一王子が事件を調査する目的は?
*一話に流血・残虐な表現が有ります。話はわかる様になっていますのでお嫌いな方は二話からお読み下さい。
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
【完結】用済みと捨てられたはずの王妃はその愛を知らない
千紫万紅
恋愛
王位継承争いによって誕生した後ろ楯のない無力な少年王の後ろ楯となる為だけに。
公爵令嬢ユーフェミアは僅か10歳にして大国の王妃となった。
そして10年の時が過ぎ、無力な少年王は賢王と呼ばれるまでに成長した。
その為後ろ楯としての価値しかない用済みの王妃は廃妃だと性悪宰相はいう。
「城から追放された挙げ句、幽閉されて監視されて一生を惨めに終えるくらいならば、こんな国……逃げだしてやる!」
と、ユーフェミアは誰にも告げず城から逃げ出した。
だが、城から逃げ出したユーフェミアは真実を知らない。
戻る場所がなくなったようなので別人として生きます
しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。
子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。
しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。
そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。
見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。
でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。
リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる