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カルセイニア王国編
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~レックス・ディスター侯爵視点~
何を言われても反応しない俺にアイザック王太子が言った。
『やり直してみる?』
やり直す?何を?
そのやり直すという言葉にやっと反応した俺に、ありえない話をした。
王家に伝わる巻き戻りの剣という物があるそうだ。
実際に使った者はいないが、時を戻せると伝えられている剣があると言うのだ。
だがそれは、自分の心臓をその剣で刺さねばならないと⋯⋯
真偽のほどは分からないが本当に時を戻せるのならどんな事でもする。妹弟にまた会えるのならば俺の命なといくらでもくれてやる。
次はあの子たちが心から笑えるように、俺はなんだってする。
そして俺は実行した。
『もし、戻れたらアイザックの側近になってやるよ。そしてお前に生涯忠誠を誓ってやる』
そう言い残して。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
目が覚めたら懐かしい俺の部屋だった。
手が小さい。長い夢を見ていたのかと思ったが俺の机の上には見覚えのある日記があった。
急いで内容を確認した。間違いなくベルが遺した日記だった。
なぜこれがあるのか⋯⋯ 疑問はあったがベルの部屋に走った。
⋯⋯そこには小さなベルティアーナにくっついてウィルダーまで一緒に眠っていた。
涙がとめどなく流れた。
俺の妹弟はこんなに可愛かったのか⋯⋯(今度こそ兄様が守ってやるからな)そう誓って日記を持って父上の部屋に向かった。
突然部屋に押し掛けた俺に驚く父上に、早く日記を読んでくれと願い、読んでいる合間に俺の知る限りの補足も加えた。
まだ起こっていない出来事に最初は信じてくれなかったが、ベルとウィルの最後を教えると真っ青になって走り出した。
もちろん向かった先はベルの部屋だ。
想像したのだろう。
娘と息子を亡くすことを⋯⋯起きたばかりで目を擦りながら手を繋いでいる2人を抱きしめておいおい泣いていた。
それから、まずは教育係の言動を父上と一緒に隠れて聞いた。日記の通りベルの人格を否定し、泣きだすと腕を鞭で打っていた。
こんな事が俺たちの知らないところで日常的に行われていたなんて⋯⋯自分が許せなかった。
その教育係はその日のうちにクビにし、二度と同じ職につけないようにした。
その事で日記を信じた父上の行動は早かった。
まず、国王に引き止められても強引に宰相を辞めた。
そしてベルとウィルを子供らしく育てられる環境を作った。
それから国王からベルに婚約の打診が来るも断り続けた。が、それにも限界がある。
『辞退ありきの婚約者候補』で手を打った。
今はこれでいい。
ラシード殿下にはベルは渡さない。
その頃には我が家に可愛らしい笑い声が聞こえるようになっていた。
育つ環境がどれだけ大切か分かったのは、戻る前は自分を押し殺していたベルが、自分の意見を言い行動も活発になった。大人しかったウィルダーは自から剣の稽古を学びたいと言い出したこと。
他にも変わったことは沢山あるが2人が笑っているならそれでいい。
前とは全然違う。本物の笑顔はこんなにも愛らしいものだと初めて知った。
そして、俺たちの計画を進めるために、うしろ髪ひかれながら俺はカルセイニア王国に留学した。
当然だが再会したアイザック王太子には記憶がなかった。が、俺を側近に誘うのは前と同じだった。
もちろん快諾したさ。
俺はアイザックに生涯忠誠を誓ったからな。
着々と準備を進め、いつでも家族を呼び寄せられる環境も作った。
予定通りいま俺たち家族はカルセイニア王国で幸せに暮らしている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
あんなに女嫌いだったヴォルフ殿下がベルだけは特別だったようだ。
あのお披露目パーティー以降、ベルに付きまとい隣のポジションを見事手に入れた。
俺から言わせればストーカーだ。
ヴォルフ殿下の執着は凄かった。
結婚願望のなかったベルをその気にさせたのだからな。
今もベルの前では可愛い忠犬で、その他大勢の人間の前では野生の狼だがな。
今のベルは何でも選べる。なんならヴォルフ殿下の執着に嫌気がさしたら離婚して帰ってきてもいいんだ。
俺はベルが笑っているならいいんだ。
ベルが幸せならそれでいいんだ。
次はウィルだな。
ウィルが尊敬するモルダーだが、私生活は乱れに乱れている。それを真似をしないか心配していたが、どうもウィルは一途なようだ。
早く彼女に告白して兄様に紹介してくれ。
2人の幸せを見届けたら、俺も相手を探そうと思う。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そうそう、ラシード王太子殿下から一度ベルに未練の手紙が届いたが、兄様がしっかり処理したから安心しろ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
これで完結です。
稚拙な小説にたくさんのエールやお気に入り登録とても励みになりました。
ありがとうございました。m(_ _)m
何を言われても反応しない俺にアイザック王太子が言った。
『やり直してみる?』
やり直す?何を?
そのやり直すという言葉にやっと反応した俺に、ありえない話をした。
王家に伝わる巻き戻りの剣という物があるそうだ。
実際に使った者はいないが、時を戻せると伝えられている剣があると言うのだ。
だがそれは、自分の心臓をその剣で刺さねばならないと⋯⋯
真偽のほどは分からないが本当に時を戻せるのならどんな事でもする。妹弟にまた会えるのならば俺の命なといくらでもくれてやる。
次はあの子たちが心から笑えるように、俺はなんだってする。
そして俺は実行した。
『もし、戻れたらアイザックの側近になってやるよ。そしてお前に生涯忠誠を誓ってやる』
そう言い残して。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
目が覚めたら懐かしい俺の部屋だった。
手が小さい。長い夢を見ていたのかと思ったが俺の机の上には見覚えのある日記があった。
急いで内容を確認した。間違いなくベルが遺した日記だった。
なぜこれがあるのか⋯⋯ 疑問はあったがベルの部屋に走った。
⋯⋯そこには小さなベルティアーナにくっついてウィルダーまで一緒に眠っていた。
涙がとめどなく流れた。
俺の妹弟はこんなに可愛かったのか⋯⋯(今度こそ兄様が守ってやるからな)そう誓って日記を持って父上の部屋に向かった。
突然部屋に押し掛けた俺に驚く父上に、早く日記を読んでくれと願い、読んでいる合間に俺の知る限りの補足も加えた。
まだ起こっていない出来事に最初は信じてくれなかったが、ベルとウィルの最後を教えると真っ青になって走り出した。
もちろん向かった先はベルの部屋だ。
想像したのだろう。
娘と息子を亡くすことを⋯⋯起きたばかりで目を擦りながら手を繋いでいる2人を抱きしめておいおい泣いていた。
それから、まずは教育係の言動を父上と一緒に隠れて聞いた。日記の通りベルの人格を否定し、泣きだすと腕を鞭で打っていた。
こんな事が俺たちの知らないところで日常的に行われていたなんて⋯⋯自分が許せなかった。
その教育係はその日のうちにクビにし、二度と同じ職につけないようにした。
その事で日記を信じた父上の行動は早かった。
まず、国王に引き止められても強引に宰相を辞めた。
そしてベルとウィルを子供らしく育てられる環境を作った。
それから国王からベルに婚約の打診が来るも断り続けた。が、それにも限界がある。
『辞退ありきの婚約者候補』で手を打った。
今はこれでいい。
ラシード殿下にはベルは渡さない。
その頃には我が家に可愛らしい笑い声が聞こえるようになっていた。
育つ環境がどれだけ大切か分かったのは、戻る前は自分を押し殺していたベルが、自分の意見を言い行動も活発になった。大人しかったウィルダーは自から剣の稽古を学びたいと言い出したこと。
他にも変わったことは沢山あるが2人が笑っているならそれでいい。
前とは全然違う。本物の笑顔はこんなにも愛らしいものだと初めて知った。
そして、俺たちの計画を進めるために、うしろ髪ひかれながら俺はカルセイニア王国に留学した。
当然だが再会したアイザック王太子には記憶がなかった。が、俺を側近に誘うのは前と同じだった。
もちろん快諾したさ。
俺はアイザックに生涯忠誠を誓ったからな。
着々と準備を進め、いつでも家族を呼び寄せられる環境も作った。
予定通りいま俺たち家族はカルセイニア王国で幸せに暮らしている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
あんなに女嫌いだったヴォルフ殿下がベルだけは特別だったようだ。
あのお披露目パーティー以降、ベルに付きまとい隣のポジションを見事手に入れた。
俺から言わせればストーカーだ。
ヴォルフ殿下の執着は凄かった。
結婚願望のなかったベルをその気にさせたのだからな。
今もベルの前では可愛い忠犬で、その他大勢の人間の前では野生の狼だがな。
今のベルは何でも選べる。なんならヴォルフ殿下の執着に嫌気がさしたら離婚して帰ってきてもいいんだ。
俺はベルが笑っているならいいんだ。
ベルが幸せならそれでいいんだ。
次はウィルだな。
ウィルが尊敬するモルダーだが、私生活は乱れに乱れている。それを真似をしないか心配していたが、どうもウィルは一途なようだ。
早く彼女に告白して兄様に紹介してくれ。
2人の幸せを見届けたら、俺も相手を探そうと思う。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そうそう、ラシード王太子殿下から一度ベルに未練の手紙が届いたが、兄様がしっかり処理したから安心しろ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
これで完結です。
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