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カルセイニア王国編
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気持ち悪い表現があります。
苦手な方は読み飛ばしてください。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
~アイザック王太子視点~
その日も王太子教育の授業が終わり、剣術の稽古までの時間を庭園を散歩していた時だった。
ヴォルフの授業も終わりお茶をしていると知らせてくれたヴォルフの侍女に、そこまで案内してもらうことにした。
お茶をするヴォルフを見つけ手を振るが、いつもなら私と会うと嬉しそうな顔で駆け寄ってくるヴォルフの目が恐怖に見開いていた。
その視線は私のすぐ横に向けられ、ヴォルフの悲鳴と同時に私は温かいものに包まれていた。
『う、動かないで⋯く、下さ⋯い』
ドサッと護衛の1人が倒れるのが見えた。その手には剣が握られていた。
私を狙ったのか?私の護衛騎士が?
『アイザック様ご無事ですか!』
『私は大丈夫だ。それより』
『バクラ先生!バクラ先生!』
言い切る前にヴォルフが泣きなが呼ぶのは⋯⋯
私を抱きしめているのはヴォルフの家庭教師か?
『しっかりして下さい!バクラ先生!』
『わ、分かり⋯ましたか?う、裏切りも、あるの⋯ですよ』
『バクラ先生~』
『つ、強く⋯⋯賢くなって⋯くださ⋯い。だ、誰にも⋯⋯り、利用され⋯ないでくだ⋯さいね』
私を狙った護衛は宰相の補佐だった男に恋人を人質に取られ脅されていたそうだ。
素直なヴォルフの前で私を殺し、心に傷を負ったヴォルフをさらに追い詰め、壊していくつもりだったらしい。
自分で判断できないように、補佐の男に依存するように、そして影から王となったヴォルフを操るつもりだった。と⋯⋯その為に今までヴォルフを可愛がっている振りをしていた。と拷問の末自白した。
確かに補佐の男にヴォルフは懐いていた。
こんな子供を?
まだ6歳だぞ?
この日から素直だったヴォルフは眉間に皺を寄せて扱いにくい子供を演じ、人を近づけなくなった。
常に人を警戒し観察するようになったんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そして、女嫌いになった原因だが、それは何年もヴォルフの世話をしていた侍女だった。
それから7年後、ヴォルフが13歳の時だ。
13歳といえど、綺麗な顔をしているヴォルフは令嬢や、我が子を王子妃にと望む者から狙われていた。
それでもあの事件から人一倍警戒心の強いヴォルフが見た目や、甘い言葉に騙されることは無かった。
だが侍女は違った。
それまで献身的に仕える侍女にヴォルフは警戒を解いていた。
ただそれは侍女はヴォルフの精通が始まるまでのことだった。
どうやって忍び込んだのか10歳以上年下の子供相手に、痺れ薬を使ってまで夜這いをかけたのだ。
それは王家の血を引く子が欲しかった訳でもなく、ヴォルフを愛していた訳でもなく、ただ単に初めてを奪いたかったと告白した。
だがそれはヴォルフだから初めてを奪いたかったのではなく、初めてなら相手は誰でもよかったと⋯⋯それまでにも何人もの少年の初めてをいただいてきたと告白した。
結局、身体中触られたそうだが、運よくおぞましい行為に及ぶ前に、たまたま母上がヴォルフの寝顔を見に行き、その現場を目撃し現行犯で取り押さえヴォルフ自身は守られたが、その時の侍女の手が、目が、言葉がヴォルフを女嫌いにしたのだ。
そんなヴォルフが恋をした。
レフタルド王国の王太子であるラシード殿下の元婚約者候補だった、ベルティアーナ・ディスター侯爵令嬢に⋯⋯
苦手な方は読み飛ばしてください。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
~アイザック王太子視点~
その日も王太子教育の授業が終わり、剣術の稽古までの時間を庭園を散歩していた時だった。
ヴォルフの授業も終わりお茶をしていると知らせてくれたヴォルフの侍女に、そこまで案内してもらうことにした。
お茶をするヴォルフを見つけ手を振るが、いつもなら私と会うと嬉しそうな顔で駆け寄ってくるヴォルフの目が恐怖に見開いていた。
その視線は私のすぐ横に向けられ、ヴォルフの悲鳴と同時に私は温かいものに包まれていた。
『う、動かないで⋯く、下さ⋯い』
ドサッと護衛の1人が倒れるのが見えた。その手には剣が握られていた。
私を狙ったのか?私の護衛騎士が?
『アイザック様ご無事ですか!』
『私は大丈夫だ。それより』
『バクラ先生!バクラ先生!』
言い切る前にヴォルフが泣きなが呼ぶのは⋯⋯
私を抱きしめているのはヴォルフの家庭教師か?
『しっかりして下さい!バクラ先生!』
『わ、分かり⋯ましたか?う、裏切りも、あるの⋯ですよ』
『バクラ先生~』
『つ、強く⋯⋯賢くなって⋯くださ⋯い。だ、誰にも⋯⋯り、利用され⋯ないでくだ⋯さいね』
私を狙った護衛は宰相の補佐だった男に恋人を人質に取られ脅されていたそうだ。
素直なヴォルフの前で私を殺し、心に傷を負ったヴォルフをさらに追い詰め、壊していくつもりだったらしい。
自分で判断できないように、補佐の男に依存するように、そして影から王となったヴォルフを操るつもりだった。と⋯⋯その為に今までヴォルフを可愛がっている振りをしていた。と拷問の末自白した。
確かに補佐の男にヴォルフは懐いていた。
こんな子供を?
まだ6歳だぞ?
この日から素直だったヴォルフは眉間に皺を寄せて扱いにくい子供を演じ、人を近づけなくなった。
常に人を警戒し観察するようになったんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そして、女嫌いになった原因だが、それは何年もヴォルフの世話をしていた侍女だった。
それから7年後、ヴォルフが13歳の時だ。
13歳といえど、綺麗な顔をしているヴォルフは令嬢や、我が子を王子妃にと望む者から狙われていた。
それでもあの事件から人一倍警戒心の強いヴォルフが見た目や、甘い言葉に騙されることは無かった。
だが侍女は違った。
それまで献身的に仕える侍女にヴォルフは警戒を解いていた。
ただそれは侍女はヴォルフの精通が始まるまでのことだった。
どうやって忍び込んだのか10歳以上年下の子供相手に、痺れ薬を使ってまで夜這いをかけたのだ。
それは王家の血を引く子が欲しかった訳でもなく、ヴォルフを愛していた訳でもなく、ただ単に初めてを奪いたかったと告白した。
だがそれはヴォルフだから初めてを奪いたかったのではなく、初めてなら相手は誰でもよかったと⋯⋯それまでにも何人もの少年の初めてをいただいてきたと告白した。
結局、身体中触られたそうだが、運よくおぞましい行為に及ぶ前に、たまたま母上がヴォルフの寝顔を見に行き、その現場を目撃し現行犯で取り押さえヴォルフ自身は守られたが、その時の侍女の手が、目が、言葉がヴォルフを女嫌いにしたのだ。
そんなヴォルフが恋をした。
レフタルド王国の王太子であるラシード殿下の元婚約者候補だった、ベルティアーナ・ディスター侯爵令嬢に⋯⋯
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