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カルセイニア王国編
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何で?
何で私が令息たちに囲まれて責められているの?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ウィルまで私に付き合って壁の花にならなくていいのよ?ほら、ウィルの誘いを待っている令嬢の視線には気付いているのでしょう?」
「その半分は姉上を睨んでいるけどね。中には変な奴もいるから僕から離れないでね」
そう言ってやっぱり私から離れようとしない。
「ディスター殿。楽しんでおられるところ申し訳ございません。ちょっとご相談がありましてお時間をいただけませんか?」
突然切羽詰まった顔でウィルの同級生らしき子息に声をかけられた。
嫌そうな顔をして断ろうとするウィルに、『ここから動かないから行ってきて』と背中を押した。
ここまではいい。
そこへ「あ、あの、ウィル君のお姉様ですよねぇ?わたくしはミーシャ・ローテックス。子爵令嬢です。少しお願いがあって⋯⋯」と、話し掛けてきた令嬢はウィルが面倒臭い子だと言っていた子だった。
うん、ちょっと目上の人に対しての言葉遣いは減点だけど先に名乗った分、以前の令嬢たちよりマシなのかな?
だけどウィル君?
ウィルは親しいとは言っていなかったけど?
まあ、これも別にいい。
でも、次のローテックス嬢の言葉はどうなの?
「お姉様の周りって素敵な男性が多いですよねぇ?」
いきなり何?
それに周りって、レックス兄様とウィル以外だと⋯⋯モルダー兄様も含まれているとか?
「ウィル君も可愛くていいですけどぉ、侯爵家を継げないからぁ、お友達の立場しか与えられないんですぅ」
⋯⋯⋯⋯。
ローテックス嬢の言いたいことを察してしまえば、これ以上聞く必要はないと背を向けた。
普通はここで相手を怒らせたと思うか、失礼を犯したと思うだろう。
でも彼女は違った。
「お姉様ぁ、まだわたくしの話は終わっていませんよぉ?」
「⋯⋯まだ何か?」
「わたくし、モルダー様にぃ嫁いであげようと思いますので紹介して下さいねぇ」
この子は何を言っているのだろう?
だったらこの子の周りにいる子息たちは何なの?ただの友達には見えないけれど⋯⋯
「本当はレックス様の方が好みなのですが、たかが侯爵家でしょう?わたくしには公爵家程度でないと相応しくないでしょう?」
たかが侯爵家?
自分は子爵家の令嬢なのに?
しかも相手の気持ちを考えていない。
自分が選ばれるのが当然だと思っているようだ。
「王家でもよかったのですが、王太子殿下は結婚していますしぃ、第2王子は地位も顔も良いですけれどぉ、いつも怒った顔しているしぃ、去年の卒業パーティーで、せっかくわたくしから声を掛けてあげたのに無視したんですよぉ。だから嫌いなんですぅ」
この子はどこまで失礼で不敬なんだろう?
この子から悪意が伝わってこないってことは、本心からそう思っているのだろう。
でも!
「お断りします。紹介はしません」
「えぇ?何でですかぁ?わたくしがお願いしているんですよぉ?」
私に断られるとは本気で思っていなかったのか驚いているけれど⋯⋯この子は無理だ!
「コレが貴女のお願いなら話は終わりですね。では失礼します」
「待って下さい!」
こんな子には付き合っていられない。
呼び止められても振り向いたりしない。
ウィルを探そう。
「ちょっと待てよ!」
「ミーシャのお願いを叶えないなんてお前頭おかしいの?」
「そうですよ。こんなに必死でお願いしているのですから聞いてあげて下さい」
何なの?この子息たちはローテックス嬢に思いを寄せているのでしょう?それなのに彼女が他の男に嫁ぐのを悲しむどころか応援するなんて⋯⋯
バカバカしい。
!!
「待てって言ってるだろ!」
「痛っ!は、離しなさい!」
「ミーシャのお願いを聞くと言うまで離さないぞ」
これじゃあまるで脅しだ。
掴まれた手首が痛い⋯⋯誰か⋯⋯助けを求めるよりも早く、横から大きな手が出て掴まれていた手が離された。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。ありがとうございます」
「ほら、あそこに弟がいる、早く行け」
ヴォルフ殿下の指す方向にこっちに向かって来るウィルが見えた。
「で、でも」
私の手首を掴んでいた子息は見る見る顔色が悪くなっているけれど、ローテックス嬢は⋯⋯何故かこの状況で嫌いだと言っていたヴォルフ殿下を頬を染めてうっとり見つめている。
「いいから行け」
「あ、ありがとうございました」
まただ⋯⋯
またヴォルフ殿下に助けられた⋯⋯
近付き難そうに見えて実は⋯⋯困っている人を見たら助けてしまう優しい人なのかもしれない。
その後、ローテックス嬢とそのお友達たちがどうなったのかは関わらないと決めた私には関係ない。
何で私が令息たちに囲まれて責められているの?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ウィルまで私に付き合って壁の花にならなくていいのよ?ほら、ウィルの誘いを待っている令嬢の視線には気付いているのでしょう?」
「その半分は姉上を睨んでいるけどね。中には変な奴もいるから僕から離れないでね」
そう言ってやっぱり私から離れようとしない。
「ディスター殿。楽しんでおられるところ申し訳ございません。ちょっとご相談がありましてお時間をいただけませんか?」
突然切羽詰まった顔でウィルの同級生らしき子息に声をかけられた。
嫌そうな顔をして断ろうとするウィルに、『ここから動かないから行ってきて』と背中を押した。
ここまではいい。
そこへ「あ、あの、ウィル君のお姉様ですよねぇ?わたくしはミーシャ・ローテックス。子爵令嬢です。少しお願いがあって⋯⋯」と、話し掛けてきた令嬢はウィルが面倒臭い子だと言っていた子だった。
うん、ちょっと目上の人に対しての言葉遣いは減点だけど先に名乗った分、以前の令嬢たちよりマシなのかな?
だけどウィル君?
ウィルは親しいとは言っていなかったけど?
まあ、これも別にいい。
でも、次のローテックス嬢の言葉はどうなの?
「お姉様の周りって素敵な男性が多いですよねぇ?」
いきなり何?
それに周りって、レックス兄様とウィル以外だと⋯⋯モルダー兄様も含まれているとか?
「ウィル君も可愛くていいですけどぉ、侯爵家を継げないからぁ、お友達の立場しか与えられないんですぅ」
⋯⋯⋯⋯。
ローテックス嬢の言いたいことを察してしまえば、これ以上聞く必要はないと背を向けた。
普通はここで相手を怒らせたと思うか、失礼を犯したと思うだろう。
でも彼女は違った。
「お姉様ぁ、まだわたくしの話は終わっていませんよぉ?」
「⋯⋯まだ何か?」
「わたくし、モルダー様にぃ嫁いであげようと思いますので紹介して下さいねぇ」
この子は何を言っているのだろう?
だったらこの子の周りにいる子息たちは何なの?ただの友達には見えないけれど⋯⋯
「本当はレックス様の方が好みなのですが、たかが侯爵家でしょう?わたくしには公爵家程度でないと相応しくないでしょう?」
たかが侯爵家?
自分は子爵家の令嬢なのに?
しかも相手の気持ちを考えていない。
自分が選ばれるのが当然だと思っているようだ。
「王家でもよかったのですが、王太子殿下は結婚していますしぃ、第2王子は地位も顔も良いですけれどぉ、いつも怒った顔しているしぃ、去年の卒業パーティーで、せっかくわたくしから声を掛けてあげたのに無視したんですよぉ。だから嫌いなんですぅ」
この子はどこまで失礼で不敬なんだろう?
この子から悪意が伝わってこないってことは、本心からそう思っているのだろう。
でも!
「お断りします。紹介はしません」
「えぇ?何でですかぁ?わたくしがお願いしているんですよぉ?」
私に断られるとは本気で思っていなかったのか驚いているけれど⋯⋯この子は無理だ!
「コレが貴女のお願いなら話は終わりですね。では失礼します」
「待って下さい!」
こんな子には付き合っていられない。
呼び止められても振り向いたりしない。
ウィルを探そう。
「ちょっと待てよ!」
「ミーシャのお願いを叶えないなんてお前頭おかしいの?」
「そうですよ。こんなに必死でお願いしているのですから聞いてあげて下さい」
何なの?この子息たちはローテックス嬢に思いを寄せているのでしょう?それなのに彼女が他の男に嫁ぐのを悲しむどころか応援するなんて⋯⋯
バカバカしい。
!!
「待てって言ってるだろ!」
「痛っ!は、離しなさい!」
「ミーシャのお願いを聞くと言うまで離さないぞ」
これじゃあまるで脅しだ。
掴まれた手首が痛い⋯⋯誰か⋯⋯助けを求めるよりも早く、横から大きな手が出て掴まれていた手が離された。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。ありがとうございます」
「ほら、あそこに弟がいる、早く行け」
ヴォルフ殿下の指す方向にこっちに向かって来るウィルが見えた。
「で、でも」
私の手首を掴んでいた子息は見る見る顔色が悪くなっているけれど、ローテックス嬢は⋯⋯何故かこの状況で嫌いだと言っていたヴォルフ殿下を頬を染めてうっとり見つめている。
「いいから行け」
「あ、ありがとうございました」
まただ⋯⋯
またヴォルフ殿下に助けられた⋯⋯
近付き難そうに見えて実は⋯⋯困っている人を見たら助けてしまう優しい人なのかもしれない。
その後、ローテックス嬢とそのお友達たちがどうなったのかは関わらないと決めた私には関係ない。
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