39 / 42
39 アルベルト視点
しおりを挟む「素敵な店を見つけたけど、一人では入り難くて」
食事は本当にして、ドサクサに紛れて酒を飲ませた彼女を介抱する態で自分の家へ招き入れれば、後は簡単だ。外気の匂いを纏うジャケットを脱いで煙草に火を付ける。美空は案内されたベッドの上でふらふらと酩酊感に躰を揺らしながら「るいうさぁん」と無意味に自分の名を呼び小首を傾げていた。味わい慣れた煙草の味が、今日は一段と格別に思えて涙雨は唇を釣り上げる。
「みぃちゃんって本当におバカさんねぇ」
吸い込んだ煙草の煙を、愛しい顔へと吹きかけた。
力の入らない手足から服と下着を抜き取った。女の残り香を吸い込み、滑らかな肌を舐めしゃぶり、涙雨はいたいけな獲物をどんどんと追い詰めてゆく。筋肉量の多い男は華奢な女のそれとの差は歴然で、広いベッドの真ん中に押し倒した細い輪郭は簡単に涙雨の躰の下で踊ってみせた。
(嗚呼、最高だ)
涙雨は微笑む唇をきめ細やかな肌に押し付け、音を立てながら降下してゆく。柔く波打つパープルの髪にくしゃりとか細い指が絡みついて引っ張られる感覚がして、それしきの抵抗で止められるものかと余計に愉しさが増してゆく。
「あ、ぅ」
美空は紅潮した頬で涙雨の行動を見ていた。先程外で食事をした際、彼女は酒に弱いのか慣れていないだけなのか、ずいぶん簡単に酔っていたようだった。それにしても現在進行形のこの行為における抵抗は、本当に形だけのように思えた。そう、まるで暗黙の内に合意をして一夜限りの関係にしけこむ男女のように。
『キスをして良いか』という合図を込めて小さな顎に指を添えた。やたら赤く染まった半開きの唇は、舌を差し込まれるのを待ち侘びていた。天真爛漫で純朴そうに見える普段の姿からは想像もつかない、淫靡な匂い。さあ満願成就の夜は来た。彼女に己の存在を刻むこむ為に。
食事は本当にして、ドサクサに紛れて酒を飲ませた彼女を介抱する態で自分の家へ招き入れれば、後は簡単だ。外気の匂いを纏うジャケットを脱いで煙草に火を付ける。美空は案内されたベッドの上でふらふらと酩酊感に躰を揺らしながら「るいうさぁん」と無意味に自分の名を呼び小首を傾げていた。味わい慣れた煙草の味が、今日は一段と格別に思えて涙雨は唇を釣り上げる。
「みぃちゃんって本当におバカさんねぇ」
吸い込んだ煙草の煙を、愛しい顔へと吹きかけた。
力の入らない手足から服と下着を抜き取った。女の残り香を吸い込み、滑らかな肌を舐めしゃぶり、涙雨はいたいけな獲物をどんどんと追い詰めてゆく。筋肉量の多い男は華奢な女のそれとの差は歴然で、広いベッドの真ん中に押し倒した細い輪郭は簡単に涙雨の躰の下で踊ってみせた。
(嗚呼、最高だ)
涙雨は微笑む唇をきめ細やかな肌に押し付け、音を立てながら降下してゆく。柔く波打つパープルの髪にくしゃりとか細い指が絡みついて引っ張られる感覚がして、それしきの抵抗で止められるものかと余計に愉しさが増してゆく。
「あ、ぅ」
美空は紅潮した頬で涙雨の行動を見ていた。先程外で食事をした際、彼女は酒に弱いのか慣れていないだけなのか、ずいぶん簡単に酔っていたようだった。それにしても現在進行形のこの行為における抵抗は、本当に形だけのように思えた。そう、まるで暗黙の内に合意をして一夜限りの関係にしけこむ男女のように。
『キスをして良いか』という合図を込めて小さな顎に指を添えた。やたら赤く染まった半開きの唇は、舌を差し込まれるのを待ち侘びていた。天真爛漫で純朴そうに見える普段の姿からは想像もつかない、淫靡な匂い。さあ満願成就の夜は来た。彼女に己の存在を刻むこむ為に。
215
お気に入りに追加
1,783
あなたにおすすめの小説

手放したくない理由
ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。
しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。
話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、
「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」
と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。
同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。
大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?
柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。
婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。
そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――
ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました
柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》
最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。
そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?
ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。
レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。
アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。
ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。
そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。
上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。
「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。
アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。
もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。
お姉様のお下がりはもう結構です。
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。
慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。
「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」
ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。
幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。
「お姉様、これはあんまりです!」
「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」
ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。
しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。
「お前には従うが、心まで許すつもりはない」
しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。
だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……?
表紙:ノーコピーライトガール様より
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる