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「聞いたな?」
「「ああ」」
「調べて報告しろ」
「「御意」」
一礼して2人は去った。
ライアンとダンゼルにはこれだけで伝わる。


さっきのティアの貼り付けた微笑みを見て胸が痛くなった。
貴族女性はみんなあの顔だ。
特に高位に行くほどあの顔を崩すことは無い。
高位の令嬢らしくない、照れ顔も素直に喜びを表す顔もティアの魅力なのに、あんな顔をさせるなんて・・・


教室に向かっている最中にもヒソヒソとティアの噂が聞こえてくる。
気分が悪い。

午前の講義が終わり急いで食堂への通路で待機する。
前回で上手く関わることが出来たんだ、今回は自然に誘えるはずだ。

来た!いつもの友人2人と並んで会話をしながら微笑んでる顔が見れて安心した。

偶然を装って「ティア」と声をかけるとパァと満面の笑みでこっちに寄って来るなり、「ルイ様!お見舞いの品ありがとうございました。気を使っていただいて感謝致します。」と見事なカーテシーを見せてくれた。
一瞬見惚れて思考が遥か彼方に飛び掛けたがライアンの「さぁ一緒にランチにしよう」と赤髪を誘っている。
否定する間もなく自然にエスコートするライアン恐るべし!
ダンゼルもそれに続いて緑髪をエスコートする。
おい!お前らどこでそんな技術を身に付けたんだ!
もちろん俺も流れに乗って腕を出す。
恥ずかしそうに「ルイ様ありがとうございます」と小さな声が聞こえた「俺がティアをエスコートするのは当たり前だろ」と空いてる方の手でそっとティアの頭をポンポンと撫でてみた。
調子に乗りすぎたかと不安になったが、ティアは真っ赤になって上目遣いで見上げてきた。可愛い過ぎる!きっと俺の顔も真っ赤だろうな。

食堂に入った時、雰囲気がいつもと違った。
またティアの噂だ。
ティアの耳に入れたくなく鋭い目付きで周りを見渡すと、察したのか目線を逸らし違う会話にシフトしたようだ。

この食堂は誰もが使用することができる。
メニューも豊富で美味しいと評判だ。

各自が並んで好きな料理をトレーに乗せていくのが通常だ。

ティアはスープとサラダ、サンドイッチを選んだようだ。
デザートの並んだコーナーでは少し迷ってチーズケーキを選んだ。
俺はかぶらないように生クリームたっぷりのシフォンケーキを選んだ。
もちろんティア用だ。
チーズケーキかシフォンケーキで迷ってるのが視線でわかったからな。

俺がシフォンケーキを手に取ると、大きな目をパチクリさせて俺を見上げた。前に甘い物は食べないことを覚えてくれてたんだなと笑みが出た。「これはティアの分だよ」と屈んでティアの耳元で囁くとビクッと肩が揺れたあと真っ赤になりコクコクと頷いて、「ありがとうございます。もう食いしん坊がバレてしまって恥ずかしです」と下を向いてしまった。

今日も可愛い!
もちろん席は俺の隣だ。


「怪我の状態はどうなんだ?」と聞くとまだ痛みはあるが大丈夫だと、学園を休んだのも過保護なレオンと父親の公爵が大騒ぎをするから納得させる為に休んだようなものだと教えてくれた。

予鈴が鳴るまで会話を楽しみ今回はティアの教室まで送った。もちろんエスコートは忘れないぞ!
ティアの教室を覗き周りを人睨みしてから、皆に聞こえるように「ティア何かあれば俺に言うんだよ」と頭を撫でて教室を後にした。
これで教室内は大丈夫だと思うのだが。

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