上 下
30 / 48

30

しおりを挟む
ふっふふん!ふふふ~ん!
ひっさしぶりだ~!
久っしぶりのダンジョンだ~!

オルセロー嬢の警戒は怠らないまま夏季休暇に入ってすぐ、私はジンとサラと一緒にダンジョンに潜ることにした。
家族から外泊は認められず日帰りだ。

約半年間、死と隣り合わせの特訓から遠ざかっていたため、肩慣らしに以前攻略したダンジョンに潜ることに決まった。


「気を引き締めなさいフィー!」

「そうだぞ~ダンジョン舐めるなよ~死ぬぞ~」

相変わらず厳しいサラと、すっかりサラの尻に敷かれているジン。

「分かってるって!ちょっとテンションが上がってるけど、ダンジョンを舐めたりしないわ」

そう、初ダンジョンでは体力と魔力の分配を誤って悔しい思いをしたし、その後もジンとサラには何度も命を助けられたもの。
高ランクの冒険者でも、ダンジョンでは浅い階でも気を抜くと簡単に命を落とすことは、実際に見てきた私は知っている。

うん⋯⋯自分がSランクだからと調子に乗っていた。
ダンジョンは遊び場じゃない。
一瞬の気の緩みが命取りになる。

「もう大丈夫!行くよ!ジン!サラ!」










⋯⋯⋯⋯。

目の前にはリオネル殿下、ラシュベル様、グレン様が意識を手放して倒れている⋯⋯
満身創痍だけれど唯一立っているのがレオニール様だ。

どうしてこんな事になったのか⋯⋯





あの日気合いを入れ直してダンジョンに潜った。

今回も身体強化以外の魔法は使わず、体術と剣技だけで魔物を屠っていた。⋯⋯そういう縛りをジンとサラに付けられたからね!
順調に60階層を超えたところまで進んだ。
まだまだここからが本番というところで、魔物に囲まれたパーティーがいた。
助け舟を出すか?と思ったところでよく見るとメンバー全員に焦りも慌てた様子もなく、連携も取れている。なかなか高レベルのパーティーだ。

⋯⋯てか、あれって⋯生徒会のメンバーだよね?

「ん?アイツら見たことのある顔だな」

「前に連れて帰ってあげた子たちよ」

「⋯⋯(そうです)」

「ああ!アイツらか!」

「結構やるわね」

「まだまだヒヨっ子だ!俺はあの歳の頃もっと強かった!」

こんな小さなことでヤキモチ妬くなんて、ジンって器が小さいな。

「だが、4ともかなりポテンシャルが高いな」

4? ああ、アンバー様が居ないんだ。
そう言えば学園でもアンバー様は私たちと一緒に摂っていなかったな。
う~ん⋯⋯噂の絶えない彼だからいろんな令嬢と食べていたのかもしれないね。

暫く見物しているとすべての魔物を倒したようで、やっと私たちが居ることに気付いたようで一瞬驚いた顔をしたあと駆け寄ってきた。

『あの時は助けて頂きありがとうございます』

4人いっせいに頭を下げてお礼を言われたが、1人は我が国の第2王子だ。
恐れ多くて慌てて止めようとしてやめた。
だって今の私は変装中だし、誰もフィオナだって気付いていなさそうだったから。
⋯⋯いや、レオニールは気付いているのかもしれない。

最近見慣れた優しい目で見つめられているから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹に人生を狂わされた代わりに、ハイスペックな夫が出来ました

コトミ
恋愛
子爵令嬢のソフィアは成人する直前に婚約者に浮気をされ婚約破棄を告げられた。そしてその婚約者を奪ったのはソフィアの妹であるミアだった。ミアや周りの人間に散々に罵倒され、元婚約者にビンタまでされ、何も考えられなくなったソフィアは屋敷から逃げ出した。すぐに追いつかれて屋敷に連れ戻されると覚悟していたソフィアは一人の青年に助けられ、屋敷で一晩を過ごす。その後にその青年と…

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐

当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。 でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。 その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。 ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。 馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。 途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。

《完》わたしの刺繍が必要?無能は要らないって追い出したのは貴方達でしょう?

桐生桜月姫
恋愛
『無能はいらない』 魔力を持っていないという理由で婚約破棄されて従姉妹に婚約者を取られたアイーシャは、実は特別な力を持っていた!? 大好きな刺繍でわたしを愛してくれる国と国民を守ります。 無能はいらないのでしょう?わたしを捨てた貴方達を救う義理はわたしにはございません!! ******************* 毎朝7時更新です。

訳ありヒロインは、前世が悪役令嬢だった。王妃教育を終了していた私は皆に認められる存在に。でも復讐はするわよ?

naturalsoft
恋愛
私の前世は公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者だった。しかし、光魔法の使える男爵令嬢に汚名を着せられて、婚約破棄された挙げ句、処刑された。 私は最後の瞬間に一族の秘術を使い過去に戻る事に成功した。 しかし、イレギュラーが起きた。 何故か宿敵である男爵令嬢として過去に戻ってしまっていたのだ。

溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ
恋愛
 いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。 「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」 「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」  ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。  ──対して。  傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。

婚約破棄されたら騎士様に彼女のフリをして欲しいと頼まれました。

屋月 トム伽
恋愛
「婚約を破棄して欲しい。」 そう告げたのは、婚約者のハロルド様だ。 ハロルド様はハーヴィ伯爵家の嫡男だ。 私の婚約者のはずがどうやら妹と結婚したいらしい。 いつも人のものを欲しがる妹はわざわざ私の婚約者まで欲しかったようだ。 「ラケルが俺のことが好きなのはわかるが、妹のメイベルを好きになってしまったんだ。」 「お姉様、ごめんなさい。」 いやいや、好きだったことはないですよ。 ハロルド様と私は政略結婚ですよね? そして、婚約破棄の書面にサインをした。 その日から、ハロルド様は妹に会いにしょっちゅう邸に来る。 はっきり言って居心地が悪い! 私は邸の庭の平屋に移り、邸の生活から出ていた。 平屋は快適だった。 そして、街に出た時、花屋さんが困っていたので店番を少しの時間だけした時に男前の騎士様が花屋にやってきた。 滞りなく接客をしただけが、翌日私を訪ねてきた。 そして、「俺の彼女のフリをして欲しい。」と頼まれた。 困っているようだし、どうせ暇だし、あまりの真剣さに、彼女のフリを受け入れることになったが…。 小説家になろう様でも投稿しています! 4/11、小説家になろう様にて日間ランキング5位になりました。 →4/12日間ランキング3位→2位→1位

王宮の片隅で、醜い王子と引きこもりライフ始めました(私にとってはイケメン)。

花野はる
恋愛
平凡で地味な暮らしをしている介護福祉士の鈴木美紅(20歳)は休日外出先で西洋風異世界へ転移した。 フィッティングルームから転移してしまったため、裸足だった美紅は、街中で親切そうなおばあさんに助けられる。しかしおばあさんの家でおじいさんに襲われそうになり、おばあさんに騙され王宮に売られてしまった。 王宮では乱暴な感じの宰相とゲスな王様にドン引き。 王妃様も優しそうなことを言っているが信用できない。 そんな中、奴隷同様な扱いで、誰もやりたがらない醜い第1王子の世話係をさせられる羽目に。 そして王宮の離れに連れて来られた。 そこにはコテージのような可愛らしい建物と専用の庭があり、美しい王子様がいた。 私はその専用スペースから出てはいけないと言われたが、元々仕事以外は引きこもりだったので、ゲスな人たちばかりの外よりここが断然良い! そうして醜い王子と異世界からきた乙女の楽しい引きこもりライフが始まった。 ふたりのタイプが違う引きこもりが、一緒に暮らして傷を癒し、外に出て行く話にするつもりです。

処理中です...