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私とレオニールの噂はいつの間にか消えていた。

まあ、あれから何日も経つけれど彼を見かけることも、すれ違うこともなかったからね。

だけど男子生徒を侍らしたオルセロー嬢を度々見かけるようになった。
・・・・・・学年も校舎も違うから彼女に遭遇する確率はかなり低いはずなんだけれど・・・。

入学して1ヶ月程で食堂で初めて彼女を見かけた。それだって私が好奇心で覗かなければよかっただけ。

次に遭遇したのは、そこから1ヶ月以上経ってから。
それも、偶然だった。
廊下を曲がった出会い頭に走っていた彼女とぶつかった。
その時もレオニールが支えてくれたけれど、彼女の方は私に弾き飛ばされたようで尻もちをついていた。
甘えた声でレオニールに手を伸ばしたけれど、レオニールは冷たく突き放していた。

それ以来なんだよね。
視線を感じると彼女がこっちを見ているのだ。
それも睨むかニヤニヤした嫌な顔で・・・

結局私が何もしなくても、接点すらなくても彼女は私が気に入らないらしい。
最初は殺すほど嫌われる理由が分かれば・・・なんて思った時もあったけれど、どうとでも出来る相手に私が怯える必要などないと言うことに気付いた。
それに、1人で抱え込むことはもうない。
今の私には事情を知るお父様もお母様も、エル姉様もアル兄様もいる。
密かにジンとサラも後ろから見守ってくれている。
人生のように簡単に殺られることはない。
だから、睨まれようが何かを企んでいそうな顔をされようが私が彼女を恐れることはない。






この日もエル姉様とアル兄様と一緒に食事をしに個室に向かった。
部屋の扉を開けるとリナ様だけで、いつもなら先に来ているベルティナ様はまだのようだった。



「何かあったのかしら?」

「ええ、彼女なら遅れるなら連絡してきますものね」

「ちょっと僕が見てくるよ」

しばらく待ってもベルティナ様は来ずアル兄様が席を立とうとしたとき、扉を叩くノックの音がした。
エル姉様が返事をすると入ってきたのはリオネル殿下とラシュベル様だった。
今日も日課のランチのお誘いを断ったのにナゼ?

「食事中にすまない。ベルティナ嬢は来られない」

嫌な予感がする。

「何か知っていますの?」

「先程ベルティナ嬢が階段から落ちた。本人は誰かに後ろから突き飛ばされたと言っているが目撃者はいない」

!!

「それでお怪我は?」

「たまたま私たちが通りかかったところでグレンが受け止めたのだが腕を痛めた・・・ベルティナ嬢の方はかすり傷ですんだよ」

はぁよかった・・・
でも、突き飛ばされたって・・・ベルティナ様は大人しくて控え目な方で人から恨まれるような人ではない。
人を突き飛ばすなんて信じられない。下手したら大怪我ですまなかったかもしれない。犯人は何でそんなことをしたのか・・・犯人は普通に考えて生徒。
目撃者がいないなんて、そんな人気の無い所にベルティナ様が1人で何をしに行っていたの?
・・・呼び出されたとか?

「かすり傷とはいえかなりショックだったようで、今日のところはグレンがベルティナ嬢を送って行ったよ」

「そうですか・・・グレン様の腕は大丈夫なのですか?」

「ああ、あいつは頑丈に出来ているからね」

「分かりました。知らせていただきどうもありがとうございました」

エル姉様を見つめたままリオネル殿下が部屋から出て行こうとしない。まだ何か話があるのだろうか?

「本当にベルティナ嬢が突き飛ばされたのなら犯人がいるはずだ。エルシア嬢も1人で行動しないように・・・わ、私が近くにいた方がよくないか?」

ああ、コレが言いたかったのか。

「・・・わたくしにはアルバンがいますのでリオネル殿下が心配されることはありませんわ」

エル姉様・・・

「そうだね。エルシア、なるべく僕から離れないようにね。フィオナもだよ」

ガックリ肩を落としたリオネル殿下をラシュベル様が促してやっと部屋から出て行った。

「でも心配ね。ベルティナ様が登校してきましたら詳しく聞きましょう」

うん。
私も気になるし嫌な感じがする。
これが気の所為ならいいのだけれど・・・
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