雨音に溶けるカフェラテ

はるまき

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冬の温もり

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冬の始まりを告げる冷たい風が公園を包み込んでいた。

木々の葉はすっかり落ち、地面に敷き詰められた枯れ葉が、歩くたびにカサカサと音を立てる。
空気は澄んでいて、息が白く立ち上る。

美咲と加奈は、手を繋いで公園を散歩していた。
冬の寒さが二人の頬を赤らめ、幸せそうな表情を浮かべている。

「寒いですね」
と美咲が微笑みながら言うと、加奈は頷いた。

「そうですね。でも、一緒にいると温かいです」

「それは良かったです」
と美咲が照れくさそうに言う。

公園の一角に、古びた自販機がポツンと設置されているのが見えた。

「こんなに寒い日には、コンポタの気分ですね」と加奈が言い、
美咲と一緒に自販機の前に立った。加奈はボタンを押して温かいコンポタを取り出し、美咲に手渡す。

「どうぞ、温かいですよ」

美咲はカップを受け取り、一口飲む。口の中に広がるクリーミーな味わいが、体をじんわりと温めた。

「美味しいです。ありがとうございます、加奈さん」
と美咲は笑顔でお礼を言う。

加奈はふと美咲の手が寒そうにかじかんでいるのに気づき、自分のマフラーを外して差し出した。

「これ、使ってください。風邪を引かないように」

美咲は驚きながらも、優しくマフラーを受け取った。

「でも、加奈さんは?」

「大丈夫です。あなたに暖かくなってほしいから」

加奈が自分のマフラーを美咲に巻きつけると、美咲の頬が少し赤くなり、心からの感謝を込めて微笑んだ。

「これで心も体も温かいです。ありがとう、加奈さん」

二人はコンポタを手に持ちながら、公園のベンチに腰掛けた。冬の空気が冷たい中、二人の間に流れる温かな時間が、静かに広がっていった。

美咲は、加奈と過ごすこの穏やかな時間がとても心地よく、冬の冷たさにも関わらず、心の中は温かく満たされていた。
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