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交差する心の線
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美咲が「コクリコ」に通うようになってから、数週間が過ぎた。
梅雨が明けた街は初夏の陽気に包まれている。
カフェの外に広がる青空と緑の景色が、
店内の落ち着いた雰囲気と調和していた。
その日も美咲は仕事の合間に「コクリコ」に立ち寄り、窓際の席に座った。
彼女はスケッチブックを広げ、
店内の様子を描こうとしていた。
加奈はいつものようにカウンターでコーヒーを準備しているが、今日はいつもとは少し様子が異なるようである。
「こんにちは、美咲さん。今日は暑いですね」
と加奈がカウンター越しに声をかけた。
「こんにちは、加奈さん。そうですね、夏らしい陽気です」
と美咲は微笑んで応えた。
「今日は外の景色も描きたいなと思って」
加奈は、美咲が窓の外を眺める姿を見て、ふと思いついた。
「美咲さん、少しだけ外に出てみませんか?カフェのテラスに席を用意しておきます」
美咲は驚きながらも興味津々に頷いた。
「それはいいですね、ぜひお願いします」
テラスに出るとそこには、軽やかな風と陽光が降り注ぎ、周囲の緑に囲まれた心地よい空間が広がっていた。
「こちらがテラス席です。どうですか?」
加奈は微笑みながら、
美咲に新しい席を案内した。
「素敵ですね。この場所でスケッチするのが楽しみです」
「今日は特別に、店からのサービスで冷たいレモネードもご用意しました。暑い日にはぴったりです」
加奈はカフェラテと共に冷たいレモネードを持ってきた。
「とても美味しいです」
美咲はそのレモネードを一口飲み、爽やかな味わいに驚く。
「ありがとうございます。美咲さんに気に入っていただけて嬉しいです」
と加奈は照れくさそうに笑った。
美咲がスケッチを進めていく中、加奈は時折テラス席に目をやり様子を見ていた。
(あんなに真剣に…絵を描けるのって
すごいなぁ。私は絵はまるっきり駄目
だから)
(集中している様子…可愛いなあ。)
美咲が集中して描く姿に、加奈は胸の奥で温かい感情が芽生えるのを感じていた。
「美咲さん、どうですか?描き上がったらぜひ見せてくださいね」
と加奈は声をかけた。
「完成しました。こんな風に描けました」
「………」
加奈はスケッチをじっと見つめる。
「本当に素敵な作品ですね。こんなに上手に景色を描けるなんて」
「そう言っていただけて嬉しいです」
美咲は照れ臭そうに、はにかんだ。
「ご馳走様でした。またお邪魔しますね」
「いつでもいらしてくださいね」
会計が終わり、去っていく美咲。
(もう帰っちゃうんだ…寂しいなぁ…)
彼女がカフェを去るとき、加奈はその後ろ姿を見送りながら、自分の心の中に変化を感じていた。
(あれ…寂しい?)
何故だろう?と加奈は疑問に思った。
美咲と同じ時間を過ごすひとときは穏やかで心地よい。
加奈の中の美咲の存在が日々の中で
少しずつ大きくなっているようだった。
その日の晩、美咲はベッドに横たわりながら、加奈との会話や彼女の笑顔を思い返していた。
(加奈さんのレモネード美味しかったな…あといつも思うけど可愛らしい人だよね…)
ぼんやり加奈のことを考えると、胸の奥が少しずつ高鳴っていうのを感じた。ぎゅうっと胸が締め付けられる。
(加奈さん癒されるんだよな…また会いたいな)
彼女との次のひとときが待ち遠しくてたまらなかった。
静かな夜が流れ、二人の関係は少しずつ深まりながら、心の中に新たな感情の芽が育ち始めていた。
恋の予感が静かに膨らんでいく中で、美咲と加奈の物語は、今まさに始まったばかりだった。
梅雨が明けた街は初夏の陽気に包まれている。
カフェの外に広がる青空と緑の景色が、
店内の落ち着いた雰囲気と調和していた。
その日も美咲は仕事の合間に「コクリコ」に立ち寄り、窓際の席に座った。
彼女はスケッチブックを広げ、
店内の様子を描こうとしていた。
加奈はいつものようにカウンターでコーヒーを準備しているが、今日はいつもとは少し様子が異なるようである。
「こんにちは、美咲さん。今日は暑いですね」
と加奈がカウンター越しに声をかけた。
「こんにちは、加奈さん。そうですね、夏らしい陽気です」
と美咲は微笑んで応えた。
「今日は外の景色も描きたいなと思って」
加奈は、美咲が窓の外を眺める姿を見て、ふと思いついた。
「美咲さん、少しだけ外に出てみませんか?カフェのテラスに席を用意しておきます」
美咲は驚きながらも興味津々に頷いた。
「それはいいですね、ぜひお願いします」
テラスに出るとそこには、軽やかな風と陽光が降り注ぎ、周囲の緑に囲まれた心地よい空間が広がっていた。
「こちらがテラス席です。どうですか?」
加奈は微笑みながら、
美咲に新しい席を案内した。
「素敵ですね。この場所でスケッチするのが楽しみです」
「今日は特別に、店からのサービスで冷たいレモネードもご用意しました。暑い日にはぴったりです」
加奈はカフェラテと共に冷たいレモネードを持ってきた。
「とても美味しいです」
美咲はそのレモネードを一口飲み、爽やかな味わいに驚く。
「ありがとうございます。美咲さんに気に入っていただけて嬉しいです」
と加奈は照れくさそうに笑った。
美咲がスケッチを進めていく中、加奈は時折テラス席に目をやり様子を見ていた。
(あんなに真剣に…絵を描けるのって
すごいなぁ。私は絵はまるっきり駄目
だから)
(集中している様子…可愛いなあ。)
美咲が集中して描く姿に、加奈は胸の奥で温かい感情が芽生えるのを感じていた。
「美咲さん、どうですか?描き上がったらぜひ見せてくださいね」
と加奈は声をかけた。
「完成しました。こんな風に描けました」
「………」
加奈はスケッチをじっと見つめる。
「本当に素敵な作品ですね。こんなに上手に景色を描けるなんて」
「そう言っていただけて嬉しいです」
美咲は照れ臭そうに、はにかんだ。
「ご馳走様でした。またお邪魔しますね」
「いつでもいらしてくださいね」
会計が終わり、去っていく美咲。
(もう帰っちゃうんだ…寂しいなぁ…)
彼女がカフェを去るとき、加奈はその後ろ姿を見送りながら、自分の心の中に変化を感じていた。
(あれ…寂しい?)
何故だろう?と加奈は疑問に思った。
美咲と同じ時間を過ごすひとときは穏やかで心地よい。
加奈の中の美咲の存在が日々の中で
少しずつ大きくなっているようだった。
その日の晩、美咲はベッドに横たわりながら、加奈との会話や彼女の笑顔を思い返していた。
(加奈さんのレモネード美味しかったな…あといつも思うけど可愛らしい人だよね…)
ぼんやり加奈のことを考えると、胸の奥が少しずつ高鳴っていうのを感じた。ぎゅうっと胸が締め付けられる。
(加奈さん癒されるんだよな…また会いたいな)
彼女との次のひとときが待ち遠しくてたまらなかった。
静かな夜が流れ、二人の関係は少しずつ深まりながら、心の中に新たな感情の芽が育ち始めていた。
恋の予感が静かに膨らんでいく中で、美咲と加奈の物語は、今まさに始まったばかりだった。
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