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悪役令嬢にルート改変は無理だけど
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「アリ、シア……」
声がうまく出なかった。心臓が、不穏にスピードを上げる。
ずんずんと、アリシアが歩いて来る。近づくにつれて、その表情も見えてきた。きゅっと口を結んで、眉根を寄せている。
すぐ側で立ち止まったアリシアは、明らかに不機嫌だった。彼女は、ゆっくりと口を開く。
「抜けがけはナシだって、言ったでしょ」
そう言って、アリシアが、にらみつけたのはレオンで。
「へ?」
思わず、声が漏れた。二人には、聞こえなかったらしい。
「君が勝手に言っただけだろう」
すぐさま、レオンが言い返し、アリシアも応酬する。
「私に協力してくれるって、言ったじゃない」
「君も、俺に協力すると言ったじゃないか。だったら、今、協力してくれ」
「それ、ズルい!」
二人は、ズルい、ズルくないと言い争う。ケンカするほど仲が良いなんて言うけど。
……って、のんきに見てる場合じゃなかった。
「ちょっといい?」
私はアリシアの腕を引っ張った。レオンから少し離れて、尋ねる。
「ねぇ、アリシア。あなた、レオンのことが好きなのではなくて?」
「何、それ? 誰が言ったの?」
そんなの、でまかせよ。アリシアは言って、そんなことよりと、話を替える。
「ねえ、イザベラ。一緒に収穫祭、行かない?」
「えっ⁉ 私?」
どうなってるの?
アリシアと一緒に収穫祭へ行くのは、個別ルートが確定した人物。
誘う相手、間違ってない?
そう思った瞬間。目の前が真っ白になって。
──思い出していた。
リメイク版を買わなかった理由。
『リメイクで生ぬるくなった。監禁とかのバッドエンドは、一切なし。ルークのストーカー設定は削除、イザベラも事件を起こさない。悪役令嬢どころか、ただのお友達。取ってつけたようにイザベラルートが追加されたけど、乙女ゲームに親友エンドは必要なし!『なんだ』好きにはオススメしたくない』
そんな低レビューを見たからだった。
つまり、この状況は、イザベラルートへの入り口らしい。
それどころか、リメイク版のこの世界では、イザベラはただのクラスメイトで、ざまぁ死もしない……。
何で、忘れてたんだろう。この二ヶ月は、一体、何だったのよ。
「……ベラ、イザベラ?」
「え、何?」
「だから、収穫祭。公園にね、旅一座の見世物や、食べ物の屋台がたくさん、出てるんですって。きっと、楽しいわ」
「そうね」
とりあえず、美味しいものをお腹いっぱい食べたい気分。
「じゃあ、行きましょうか。アリシア、レオン」
私は、二人の腕をとる。
取ってつけたような親友ルート?
そもそも、私にはルート改変なんて、できないんだから。
だったら。
これからは、思いっきり、元・悪役令嬢の人生を楽しむことにした。
─ 終 ─
声がうまく出なかった。心臓が、不穏にスピードを上げる。
ずんずんと、アリシアが歩いて来る。近づくにつれて、その表情も見えてきた。きゅっと口を結んで、眉根を寄せている。
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「抜けがけはナシだって、言ったでしょ」
そう言って、アリシアが、にらみつけたのはレオンで。
「へ?」
思わず、声が漏れた。二人には、聞こえなかったらしい。
「君が勝手に言っただけだろう」
すぐさま、レオンが言い返し、アリシアも応酬する。
「私に協力してくれるって、言ったじゃない」
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「それ、ズルい!」
二人は、ズルい、ズルくないと言い争う。ケンカするほど仲が良いなんて言うけど。
……って、のんきに見てる場合じゃなかった。
「ちょっといい?」
私はアリシアの腕を引っ張った。レオンから少し離れて、尋ねる。
「ねぇ、アリシア。あなた、レオンのことが好きなのではなくて?」
「何、それ? 誰が言ったの?」
そんなの、でまかせよ。アリシアは言って、そんなことよりと、話を替える。
「ねえ、イザベラ。一緒に収穫祭、行かない?」
「えっ⁉ 私?」
どうなってるの?
アリシアと一緒に収穫祭へ行くのは、個別ルートが確定した人物。
誘う相手、間違ってない?
そう思った瞬間。目の前が真っ白になって。
──思い出していた。
リメイク版を買わなかった理由。
『リメイクで生ぬるくなった。監禁とかのバッドエンドは、一切なし。ルークのストーカー設定は削除、イザベラも事件を起こさない。悪役令嬢どころか、ただのお友達。取ってつけたようにイザベラルートが追加されたけど、乙女ゲームに親友エンドは必要なし!『なんだ』好きにはオススメしたくない』
そんな低レビューを見たからだった。
つまり、この状況は、イザベラルートへの入り口らしい。
それどころか、リメイク版のこの世界では、イザベラはただのクラスメイトで、ざまぁ死もしない……。
何で、忘れてたんだろう。この二ヶ月は、一体、何だったのよ。
「……ベラ、イザベラ?」
「え、何?」
「だから、収穫祭。公園にね、旅一座の見世物や、食べ物の屋台がたくさん、出てるんですって。きっと、楽しいわ」
「そうね」
とりあえず、美味しいものをお腹いっぱい食べたい気分。
「じゃあ、行きましょうか。アリシア、レオン」
私は、二人の腕をとる。
取ってつけたような親友ルート?
そもそも、私にはルート改変なんて、できないんだから。
だったら。
これからは、思いっきり、元・悪役令嬢の人生を楽しむことにした。
─ 終 ─
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