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慰謝料『10億』請求します!
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グレースが書類を一式、揃えている間、アフォードは上機嫌で、しゃべりを続けていた。
「父上、母上。お聞きの通りです。僕はグレースとの婚約を破棄し、このネトリーン・ザマーナイワと結婚いたします!」
「何を言っておるんだ! アフォード!」
「そうよ。考え直してちょうだい」
「考え直すのは、父上と母上の方です。男爵家ならば、この僕とも釣り合いが取れるではないですか! ネトリーンのお父上、つまり、ザマーナイワ男爵にも既に承諾を得ています!」
「アフォード!」
父である伯爵がアフォードを怒鳴りつけ、すぐさま夫人とともにグレースの元へやってきた。
「グレース、これは違うの。私たちも、知らなかったのよ。こんなこと……」
「アフォードには、よく言って聞かせる。だから、」
すがりつこうとした伯爵の手を、グレースはするりと交わした。
「ご縁がなかったようですね」
「待ってくれ、グレース!」
「おじ様、おば様。これが、アフォードの幸せなんです。彼の望んだ通りにしてあげてください」
グレースは、伯爵と夫人に告げた。
「その通りです! 父上、母上。ネトリーンとの結婚で、我がオーバッカ家、ザマーナイワ家、双方ともに、ますます発展することでしょう!」
「あぁ……」
伯爵夫人がよろめいた。その横で、伯爵もまた額に手を当てている。
「違う……違うんだ、アフォード。お前は……」
つぶやいた伯爵の声は、アフォードには聞こえなかったようだ。ネトリーンと手を取り、微笑み合っている。まるで、ロマンス演劇のラストシーンのような二人。
その眼の前へ。グレースは、書類を突きつけた。
「婚約は解消します。ただし、慰謝料として十億エーン、支払っていただきます」
「じゅじゅじゅじゅっ、十億⁉ 何だ、そのバカげた金額は! ぼったくるつもりか!」
アフォードは怒りをあらわに、グレースの手から書類をはたき落とした。辺り一面に散らばる書類。グレースは、マーキスと共に一枚一枚、拾い集めながら、ため息混じりに話しかける。
「ねぇ、アフォード。あなた、どこまで、ドアホなの?」
「は?」
「私という婚約者がありながら、ネトリーンと付き合ってたんでしょ。これを世間じゃ、二股って言うの」
しかも、この二人はコソコソするわけではなく、堂々とデートまでしていたらしい。
オーバッカ家の息子がどこかの令嬢とイチャついてたと、お得意様からタレコミがあるほど、世間でも噂になっていたようだ。おかげで、グレースまでも巷では、アーキンドー商会の看板娘ならぬ、寝取られ娘になっていた。
「そのうえ、私との婚約を解消する前に、ネトリーンとも結婚の約束をしてた? この国は一夫一妻制。もちろん、知ってるわよね? それを知りながら、複数の人物と結婚の約束をするのは、結婚詐欺にあたるわ」
「いっ、いや、それは……君との婚約を、破棄、する、つもりで……」
「私が、応じなかったら?」
「え?」
そこまで考えてなかったのか。アフォードは、ポッカーンと口を半開きにし、間抜けな顔をさらす。
ここでグレースは、一気にたたみかけた。
「そもそも、あなたたち、半年以上も前から、お付き合いしてるのよね?」
三ヶ月前にあったお得意様のタレコミから、グレースの方でも調べさせた結果だ。
「私は何も知らず、二人にだまされていたということでしょう? そこに誠意はあるの?」
「え、あ……それは、その……」
しどろもどろのアフォード。そんな彼を守るかのように、
「それは違うわ!」
答えたのは、ネトリーンだった。
「父上、母上。お聞きの通りです。僕はグレースとの婚約を破棄し、このネトリーン・ザマーナイワと結婚いたします!」
「何を言っておるんだ! アフォード!」
「そうよ。考え直してちょうだい」
「考え直すのは、父上と母上の方です。男爵家ならば、この僕とも釣り合いが取れるではないですか! ネトリーンのお父上、つまり、ザマーナイワ男爵にも既に承諾を得ています!」
「アフォード!」
父である伯爵がアフォードを怒鳴りつけ、すぐさま夫人とともにグレースの元へやってきた。
「グレース、これは違うの。私たちも、知らなかったのよ。こんなこと……」
「アフォードには、よく言って聞かせる。だから、」
すがりつこうとした伯爵の手を、グレースはするりと交わした。
「ご縁がなかったようですね」
「待ってくれ、グレース!」
「おじ様、おば様。これが、アフォードの幸せなんです。彼の望んだ通りにしてあげてください」
グレースは、伯爵と夫人に告げた。
「その通りです! 父上、母上。ネトリーンとの結婚で、我がオーバッカ家、ザマーナイワ家、双方ともに、ますます発展することでしょう!」
「あぁ……」
伯爵夫人がよろめいた。その横で、伯爵もまた額に手を当てている。
「違う……違うんだ、アフォード。お前は……」
つぶやいた伯爵の声は、アフォードには聞こえなかったようだ。ネトリーンと手を取り、微笑み合っている。まるで、ロマンス演劇のラストシーンのような二人。
その眼の前へ。グレースは、書類を突きつけた。
「婚約は解消します。ただし、慰謝料として十億エーン、支払っていただきます」
「じゅじゅじゅじゅっ、十億⁉ 何だ、そのバカげた金額は! ぼったくるつもりか!」
アフォードは怒りをあらわに、グレースの手から書類をはたき落とした。辺り一面に散らばる書類。グレースは、マーキスと共に一枚一枚、拾い集めながら、ため息混じりに話しかける。
「ねぇ、アフォード。あなた、どこまで、ドアホなの?」
「は?」
「私という婚約者がありながら、ネトリーンと付き合ってたんでしょ。これを世間じゃ、二股って言うの」
しかも、この二人はコソコソするわけではなく、堂々とデートまでしていたらしい。
オーバッカ家の息子がどこかの令嬢とイチャついてたと、お得意様からタレコミがあるほど、世間でも噂になっていたようだ。おかげで、グレースまでも巷では、アーキンドー商会の看板娘ならぬ、寝取られ娘になっていた。
「そのうえ、私との婚約を解消する前に、ネトリーンとも結婚の約束をしてた? この国は一夫一妻制。もちろん、知ってるわよね? それを知りながら、複数の人物と結婚の約束をするのは、結婚詐欺にあたるわ」
「いっ、いや、それは……君との婚約を、破棄、する、つもりで……」
「私が、応じなかったら?」
「え?」
そこまで考えてなかったのか。アフォードは、ポッカーンと口を半開きにし、間抜けな顔をさらす。
ここでグレースは、一気にたたみかけた。
「そもそも、あなたたち、半年以上も前から、お付き合いしてるのよね?」
三ヶ月前にあったお得意様のタレコミから、グレースの方でも調べさせた結果だ。
「私は何も知らず、二人にだまされていたということでしょう? そこに誠意はあるの?」
「え、あ……それは、その……」
しどろもどろのアフォード。そんな彼を守るかのように、
「それは違うわ!」
答えたのは、ネトリーンだった。
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