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ブチ切れヒロインの逆上

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 昼休み、話があると、私は校舎の外まで連れ出された。人目のない場所でスカーレットは止まる。

「あんた、何したのよ」

 いつもの口調とは、ガラリと変わっていた。
 
「突然、何?」
「マーティンもジョシュアも、ダグラスも! あんたが何かしたに決まってるでしょ!」

 いや、ダグラスは知らない。でも。

「あなた、私に悪役を望んでいたでしょう?」
「うるさい! マーティンもジョシュアもダグラスも、あんたのせいで、私から離れて行ったんじゃない!」
「それは、嘘をついていた、あなたが悪いんじゃないの?」
「うるさい、うるさい、うるさい‼」

 スカーレットは、ドスドスと、足を踏み鳴らす。まるで幼稚園児。
 
「あんたは私に、ざまぁされて終わるの! これ以上、勝手なことしないで‼」
「勝手? これは私の人生よ。私は私の望むように生きるの。あなたに強要される覚えはないわ」
「うるさい! 黙れ‼」

 いきなり突き飛ばされて、尻もちをついた。そこへさらに、スカーレットが、大きく手を振り上げるのが見え。
 ぶたれる!
 思わず、目をつぶってしまったところへ。

「ロベリア様!」と、声がした。

 少し離れた木の影から飛び出してきたのは、ディランだった。彼は私を守るよう、スカーレットと私の間に立つ。

「お怪我は?」
「大丈夫です」

 手をついた時に擦りむいただけで、大したことはない。

「何よ、そのおっさん。あんたの護衛ってわけ? 私があんたに何かすると思って、連れて……」

 スカーレットが不満げな顔で、話をしていたかと思ったら。彼女は、突然、ズザーッと、土の上にスライディングをした。

「あなた、何して、」

 わけが分からなかった。
 すると、彼女は地面に伏したまま、叫び声を上げたのだった。

「きゃぁああああ! 誰かぁああ! 助けてぇえええ‼」

 甲高カンダカい声は、校舎に大きく反響して。
 すぐに先生が飛んできた。

「先生、早く、捕まえて! 突然、殴られたんですぅ!」

 スカーレットが「そいつ」と、指差したのは、ディランだった。
 彼女の訴えに、先生が慌ててディランを拘束する。彼はいつものように、学生服を着て、見るからに不審者で。
 もう一人の先生がスカーレットを、私もあとから来た先生に、その場から引き離された。

「先生、待って下さい!」

 その人は何も悪くない。そう言おうとしたところで、ディランと目が合った。彼は、地面に押さえつけられながらも、小さく首を振る。

『何も言うな』と、彼は言うのだ。

 ディランは魔法のロープで体を縛られ、そのまま不審者として、連行された。

 続けて、スカーレットが先生に連れられて行く。重症者みたいに、よろよろと歩きながらも、ふと、彼女はこちらを振り向いて。そして、ニヤリと笑った。

「あなたも医務室に行きましょうか」
「大丈夫です」

 私は答えて、三年の教室へ向かった。


 上級生の教室を順番に覗き込んで、見つけたバーノンは、事情を説明すると、あっけらかんと笑った。

「確かに、あいつは不審者だな」
「笑いごとではありません! 私のせいで、ディランが」
「お前たちが何か悪いことをした訳ではないのだろう? だったら謝るな。ディランのことは心配ない」
「本当に?」

 バーノンは声をぐっと潜め、

「俺を誰だと思っているんだ?」
 
 なんて、おちゃらけて笑う。

「ここの校長は、校長になる前は、俺の家庭教師だった。俺のことはもちろん、ディランのこともよく知っているし、俺の父親ともズブズブだ。心配しなくとも、すぐに解放されるだろう」

 それを聞いて、ほっとした。

「ご迷惑をおかけしました」
「なぁ、ロベリア。『自分のことは自分でどうにかする』と言う、お前の心持ちは素晴らしい。でも、俺はお前が困っていたら、助けてやりたいと思うし、俺を頼ってほしいと思う。だから、迷惑ではない。次からは俺を頼れ」
「……ありがっと、ございます」

 答えた声が、変にうわずってしまった。


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