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逆襲のヒロイン

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 週が明け、また、スカーレットの大騒ぎが始まった。
 休日をゆっくり過ごして、心と体の充電はできたものの、それも週の半ばに切れてしまった。

 昨日も、悪口の書かれた手紙が届いたと大騒ぎ。普通、そういう物は匿名だけど、ばっちり私のサインが入っていた。
 その前は、私に財布を盗まれたって大騒ぎ。私がスカーレットをトイレに閉じ込めたのは、その前の前の……忘れた。

 結局、サインは私の筆跡ではなかったし、財布は落とし物で届けられていて、トイレはドアが壊れてただけってオチ。ただ、ドアに貼ってあった注意書きを、誰がはがしたのかは不明のまま。スカーレットなら、自分ではがして、自ら閉じ込められたってこともありえるかもしれない。
 毎日毎日、よくネタが尽きない。その点だけは感心する。

「あ~、疲れた……」

 あちらの世界で会社員をやってた時より、スカーレットの方がブラックかも。

「……ホント、疲れた」

 つぶやいたところで、慰めてくれる人なんていない。がくんと、気分が落ち込んだところで。

「どうした? また説教でもされたか?」

 からかうような声があった。
 笑みを浮かべたバーノンを見て、ホッとする。
 何気ない普通の話を少しして、王室御用達だという飴玉をもらった。食べてみると、どこにでも売っている普通の飴で。特別なところはない。

「これのどこが、王室御用達なのです?」

 尋ねてみれば、

「俺が食せば、御用達だ」

 なんて尊大な顔で言うものだから、思わず笑ってしまった。

「よし。笑ったな。お前は笑っている方がいい」

 さらりと笑って、バーノンは行ってしまった。
 ほんの数分、たった一つの飴玉。それだけで、私の心は軽くなっていた。けれど、気分がよかったのも一瞬。
 少し歩いたところで、角から現れたのは、スカーレットだった。

「へぇ、意っ外~」

 彼女は、にんまりと笑う。こちらを少しイラつかせる笑みを浮かべながら、隣に来た。

「今の、ダグラスと同じクラスの人よねぇ? 名前はなんて言うの?」

 誰が答えるか。ニヤニヤ笑うスカーレットを無視して、私は歩く。

「ロベリアってぇ、あぁいう人がタイプなんだぁ? かなりのイケメンだったよねぇ? お金持ちっぽかったしぃ?」

 スカーレットは、しつこくつきまとい、そしてクスっと笑った。

「てぇっきりぃ、ロベリアの本命は、ジョシュアだと思ってたぁ~」
「……」
「まぁ、ジョシュアは、す~ぐ、私のことを好きになってくれたけどぉ?」

 クスクスと笑うスカーレット。
 私は逃げるように、彼女を振り切り、寮へ戻った。
 明日は、土の曜日。
 スカーレットが、特別授業をサボりますように!
 どうか……どうか、彼女が関わることなく、ゆっくりまったり、過ごせますように‼

 ……でも。
 私の祈りは、届かなかったらしい。

 翌日、魔導院へ向かっていると。

「おっはよー! ロベリア!」

 その、やけに明るい声に振り向けば、スカーレットがにっこりと笑っていた。
 フリフリのワンピースを着て、今日も、特別授業をサボって、誰かとデートらしい。
 呆れながらも、ほっとしたところで。寮から出てきたのはバーノンだった。
 そこへ。

「待ってましたぁ~! バーン先輩!」

 猫なで声で、スカーレットが飛びついて。

「は?」

 私は思わず、ポカンとしてしまった。

「ロベリア⁉」

 バーノンもこちらに驚いていたようだけど、それは私も同じ。

「ほらぁ、行きましょう。バーンせ~んぱっい!」

 スカーレットが、バーノンに腕をからませ、引っ張って行く。
 私はただただ、それを眺めているだけだった。
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