二度目の人生は、地雷BLゲーの当て馬らしい。

くすのき

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新たな脅威⑨ ※本番はありませんがエロです

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 牙狼メンバー先導の元、小一時間。
 二度休憩を挟み、漸く目的地に到着した時には太陽が真上に昇っていた。
 場所はファニージャ洞窟の程近く。
 リーダーの男はやや大きな岩を背もたれに座っていた。
 辺りには忌避剤を掻き消すくらい鉄錆の臭いが漂い、地面にも夥しい血液がやや乾いた状態で広がっていた。
 重苦しい空気が流れる。
 恐らく誰もが同じ結論に到達していたのだろう。けれど誰一人としてそれを口に出すことはなく、各自治療に必要なものを用意する。
 俺は患部を見渡す。
 ざっと見た限り一番大きな傷は背面、残りは鋭いもので斬りつけられた細かな裂傷ばかり。
 一応彼の仲間の手によりある程度の応急処置が施されてはいるが、青ざめた顔色と周りの出血量から何時急変してもおかしくない状態だ。
 直ぐさま戦利品の入った鞄を漁る。
 薬草に軟膏、ポーション、包帯。
 必要な物をその場に並べ、ついでに以前グノーの話しにあった栄養ドリンクも彼から貰う。

「う、」

 男の目が力無く開く。
 赤みを帯びた眼が俺を捉え――いや、焦点の合わないそれを揺らし、口は何やらぼそぼそと何かを紡ぐ。
 何か伝えたい事でもあるのか。よく聞こうと男の傍に片耳を近付け、神経を集中する。
 だがしかし、その言葉は思ってもみない一言だった。
 捕 ま え た 。
 男の手が俺の腕を強く掴む。途端、俺の視界が絵の具をぶちまけたように赤一色に染まる。
 遠くで俺の名を叫ぶ仲間、レオの焦ったような声がして、けれどそれも途中で搔き消える。
 鼻腔を劈く血臭。
 咄嗟に目を瞑り、そしてまた視界を開くと――そこは草叢ではなかった。
 ファニージャ洞窟近くの草原は草一つないごつごつとした穴倉に変わっていた。頭上にて輝いていた太陽も姿を消し、代わりに壁にて灯った照明が夜のようなそこを僅かに照らしている。
 直ぐ傍にいた男はいない。
 入口方面からひゅうぅと肌寒い風が吹き抜けた。
 俺は数回瞬きを繰り返す。
 広がる先は恐らく洞窟だ。
 けれど何故。突然の瞬間移動に、脳がうまく働かない。
 そんな茫然とする俺の鼓膜が聞き覚えのない男の声を拾う。

「コレは何だ」
「演出の一部に御座います。ヘルブリン様」
「ほぅ」

 石の玉座に座した白髪の男が俺を見下ろしていた。服装はそこそこ立派なみなりをしており、威圧に似た何かを全身から発しているかのよう。
 ただ顔はやけに整っているのに、こちらの生理的嫌悪感を増長する不気味さも兼ね備えている。
 声は高く、そして低く。二つの音が重なり合って耳に届く。端的にいうと物凄く耳触り。

「名は?」

 ヘルブリンなる存在が問いかけるが、俺は黙した。いや、正確には唇が動かなかった。
 そんな俺に業を煮やしてか、それとも他の意図があったのか後方に佇んでいた赤いのっぺらぼうが進言する。
 その声はあのリーダーらしき男のものとよく似ていた。

「ヘルブリン様、このような下賤な者などに」
「五月蠅いぞ」
「ハッ! 申し訳ありません!」
「もう一度訊く。名は?」
「……ユニ」
「ふむ」

 頬杖をついたヘルブリンは、一つ指を鳴らす。
 すると突如、地中から一匹の真白い細蛇が現れ、俺の右手にしゅるしゅると絡みつく。氷の如き冷たさに全身の毛が総毛立つ。

「ヒッ……痛っ」

 蛇が手の甲へ牙を突き立てる。
 ちくっとした痛みが走り、次いで蛇は消え、傷口周辺が淡く光っては何かを浮かび上がらせる。
 俺は目を見開く。
 それは以前、大森林ダンジョンにて刻まれ、何時の間にか消失した凹マークだった。

「やはりビューイストの刻印か……面白い」
「あの、ヘルブリン様」
「気に入った。これは我に寄越せ」
「でっ、ですがそれは演出に」
「――我の命が聞けぬか」
「いえ、決して! 決してそのような事は!」
「ならば下がれ」
「ハハッ」

 のっぺらぼうが支部同様、地面に溶けて消える。
 残ったのは俺とヘルブリン。
 恐怖に体を強張らせる俺を、ヘルブリンは喜色の乗った眼で見つめた。

「さて、ユニとやら。近う寄れ」
「……っ」
「なんだ。恥ずかしがっているのか」

 ヘルブリンがまた指を鳴らす。
 一瞬またあの蛇が来ると身構えたが、そうではなく、俺の体が宙に浮かび、勝手にヘルブリンの膝の上に移動する。

「ふむ。顔は悪くないな」

 見たくないのに、顎に添えられて手の所為で強制的に視線が合う。

「はな、せ」
「ほう。我に刃向かうか」

 ヘルブリンの瞳が怪しげに細められる。そして次の瞬間、彼の唇が俺の唇と重なり合う。

「!?」
「逃げるな」
「んんっ……はぁ……なにす……んー、んぐっ!」

 ヘルブリンの手が後頭部を固定し、深い口付けを強要する。
 最初は通すまいと強く噛み合わせた歯も一瞬の隙を突いてこじ開けられ、生き物のような舌が中を暴き、俺の舌をきつく吸いあげた。

「んんんっ……ん、ぷはっ」

 漸く解放されると、俺とヘルブリンの口と口の間に、混ざり合った唾液の糸が滴り落ちる。

「ふむ。ビューイストだけと思いきやもう一つ、ローフェウスの残滓もあったか」
「なにを、んんっ!」

 一人勝手に納得したヘルブリンが再度噛みつくようなキスをする。
 じゅ、じゅる、ぢゅぱ。耳を塞ぎたくなる音が穴倉内に響き渡る。
 勝手に反応する体が憎い。

「んむ……ふぁ……は……!?」

 何時の間にか服の下に侵入した指が胸の頂に触れる。
 潰して引っ張り、指の腹で転がしていく。

「やぁっ」
「逃げるな」
「んぅ、んんっ、ふ」

 五分後。
 酸素が足りないせいで頭の芯が、ぼおっとする。抵抗の弱まった俺に気を良くしたヘルブリンは、器用に俺の服を剥き、全裸にする。
 そうして自分を背もたれにする形、いや、M字開脚させた俺を膝に乗せ直した。

「ここも可愛がってやろう」
「あっ」

 緩く勃ちあがった陰茎をヘルブリンが揉みしだき、もう片方は先程弄らなかった乳首で遊ぶ。

「や、いや、やめっ、アァッ」
「善いだろう」
「っく、よくな」
「ならばその腰の揺れはなんだ」
「ひァ、ちが、これ、はぁ」

 俺の意志に反して揺れる腰が恨めしい。目を瞑りたいのに、ヘルブリンの見事な手管がそれを許さない。

「ぁ……ん……ふぁ……ぁン」
「そろそろイくか」
「や、やだ、やめ……アーーー!」

 ぷしゅっと俺のペニスがヘルブリンの手で果てる。
 もう何も考えられない。
 涙で滲んだ視界に、ヘルブリンが白濁で汚した手を見せつけて、その人差し指を腹に置く。

「んあアっ!」

 腹の中に熱が湧いた。
 同時に奥がきゅんきゅんと疼き、まるで媚薬でも盛られたように厭らしい気持ちが俺の中で膨らんでいく。

「ひ、あ、な……にぃ」
「どれ。此方も存分に解してやろう」
「へ……ァン」

 そう言うと、ヘルブリンは精液のついた指を窄まりに差し入れる。
 信じられなかった。
 スライムで緩ませてもいないそこが、拒むでもなく、柔らかく異物を受け入れ、美味しそうに食んだのだ。

「な、ぁ、んで……あっ」
「おおっ。此方の方がローフェウスの気を残しておるな」

 声を弾ませ、ヘルブリンの指が内壁を引っ掻く。そして精液を潤滑油のように全体に馴染ませ、拡げていく。
 阻みたいのに力の抜けた俺はただただその刺激を受け入れ、喘ぐしかない。ある程度拡張を終えた指が、更なる工事をしようと増える。
 今度は抜き差しに変わり、キスの水音を超える淫らな音が反響する。

「もう一本挿れるぞ」
「はぁ……あッ、あッ……ん……いやぁ」

 軈て俺はまた射精した。
 はぁはぁと大きく胸を上下させ、過ぎた快楽に、意識が闇に落ちていく。
 ヘルブリンが何かを言っているが、聞こえない。
 俺はゆっくりと瞳を閉じた。
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