人虎は常に怪奇な騒動に巻き込まれる 

東堂大稀(旧:To-do)

文字の大きさ
上 下
41 / 42

41 さようならは、忘れずに言おう

しおりを挟む
 歩き始めてまだ1時間と少し。景色はガラリグラリと変わり、今はマグマが煮えたぎる火山の中。
 見上げれば火山口で、空も少しだが見える。だが、さっきまでは青空だったのが、今では藍色の夜空になっていた。

「おいおい、どうなってやがんだ?」
「なぜか、この空間の時間の流れは長いようっすね」
「で、これは幻だから暑くないんだよね。助かる~」
「そういうわけじゃなく、ここは塔の中だ。温度も塔と同じってだけだ」

 俺はこういう暑苦しいものは、見るだけでも汗が出てくるぜ…。そうだ、試しに触ってみるか。

「よっと…」
『ジュワァ!』
「ドワっ⁉︎ なんだこりゃ、生きてんのか⁉︎」

 マグマに俺の指を近づけた途端、その指をマグマが飲み込もうとした。偶然かと思われそうだが、今のマグマの流れから、微かに脅威のような感覚がした。
 てことは、「俺たちにとって有害な物質=脅威」と考えて良さそうだな。

「おいオメェら! 危険なものに触るんじゃねぇぜ! このマグマみてぇに、俺たちを喰らおうとしてくるぜ!」
「スッゲェ! 体張って実験するなんて、流石父ちゃんだぜ!」
「ニャハハ! やっぱ俺ってスゲェだろ!」
「ただ単に、危機管理能力が低いだけだろ。で、課長。ノールさんは見つかりそうですか?」
「いや…何も感じられない。まだ遠いのかも知れねぇな」

 おいおい、まだ遠いのか? いや待てよ、このドロドロとした流動性のないマグマが脅威ってことは、コイツらはもう死にかけている…っていうことになるよな。
 ニャルほど、面白そうなことができそうだな。

「分かったぜ、この偶像がどういう場所か」
「本当⁉︎」
「分からねぇか?」
「あぁ…ハッキリ言おう、分からない」
「へっ。なら、そのまま分からねぇままで良いぜ。知るだけ無駄だ」

 俺は、分かっちまった。この世界を形成するものが何かを、な。それは、なんとも言えねぇくらい俺には似合わねqqけ結末が起こった証だ。
 なによりコイツらの前では絶対口外できねぇ。こればかりは、何が何でも秘密だ。

「あの…もしかしてっすけど、ノールって-」
「よし、行くぞ! こんな場所、早く抜けてぇしな」
「ドンボ…。そうだな、早く抜けるぞ。キールも、早く会いたいだろ?」
「もちろん! ねっ、早く行こうよ!」

 フォールの一言で、キールは調子に乗って目を閉じて駆け出した。しかし、キールの前にはエルゴがいたためにぶつかった。もちろん、俺の教育で育ったエルゴだ、そう簡単に許すわけはないぜ。

「ちょ、テメェ! 前見て走れや!」
「ご、ごめんね。でも、エルゴのウロコって案外柔らかいんだね。ほら、プニプニ~」
「ちょ、やめ! ダッハハ、くすぐってぇよ!」
「おいキール、はしゃぐのは良いけどよ…その、エルゴが困ってるからその辺にしておいてくれ」
「それもそうだね。アハハ、蛙の子は蛙だね。ホントにそっくり」

 当たり前だろ、そんなことに今更気づくなんて、理解力なさすぎだろ。そう言う俺は、状況把握だけは誰よりも早い自信あるしな。理解力とは、ちっと違うが。
 それはさておき、ズンズン進ませてもらうか。俺の口から語るよりも、そっちのほうが断然マシになるだろ。それに、ただでさえこの空間は時の流れが早い。そうなると、頼りになるのは空だけだ。満月のときまで、残り14日。つまり14時間か。
 辿り着くかが不安だが、辿り着かなきゃなんねぇんだ。やるっきゃねぇ、ってのは楽しみだぜ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

アポリアの林

千年砂漠
ホラー
 中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。  しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。  晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。  羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。

タクシー運転手の夜話

華岡光
ホラー
世の中の全てを知るタクシー運転手。そのタクシー運転手が知ったこの世のものではない話しとは・・

歩きスマホ

宮田 歩
ホラー
イヤホンしながらの歩きスマホで車に轢かれて亡くなった美咲。あの世で三途の橋を渡ろうとした時、通行料の「六文銭」をモバイルSuicaで支払える現実に——。

ショートホラーストーリー「帰宅途中に」

『むらさき』
ホラー
短い短編です。帰宅途中などに読んでもらうと幸いです。

【ホラー】バケモノが、いる。 ー湖畔の森ー

鳥谷綾斗(とやあやと)
ホラー
大学四年生の夏休み、七虹(ななこ)はH県のS高原にいた。 頼りない自分を変えたくて、たったひとりで、新しい世界に飛び込むために。 そこで出会ったのは、椿(つばき)という人懐っこい少女と、大和(やまと)という美少年。 謎の多い椿と大和、そして『グロススタジオ』という会社のメンバーと合流した七虹は、湖のある森の中のログハウスで過ごす。 その夜、湖に行った宿泊客のひとりが姿を消す。 その湖には、人間を喰う『人魚』がいるという噂があった……。 * 超弩級のB級ホラー(バトル要素もある)です。 志知 七虹(しち ななこ) /主人公 木瀬 椿(きせ つばき) 大和 柊(やまと ひらぎ) /謎の多い少女と少年 仁藤 健太(にとう けんた) /グロススタジオの責任者 四条 剛樹(しじょう ごうき) 伍川 圭助(ごかわ けいすけ) 六人部 雄一(むとべ ゆういち) /グロススタジオの関係者(男) 一ノ宮 蓮絵(いちのみや はすえ) 三井 果蘭(みつい からん) /グロススタジオの関係者(男)

牢獄/復讐

月歌(ツキウタ)
ホラー
秋山アキラは突然拉致されて、目覚めれば監獄の中にいた。高校時代のいじめっ子5人が囚人として囚われている。そして、俺の横にはかっての苛められっ子金田光一がいた。 ※スタンフォード監獄実験とは、監獄の空間を再現して「環境が行動に影響を与えるか」を調べた実験。心理学者のフィリップ・ジンバルドーが行った。 ☆月歌ってどんな人?こんな人↓↓☆ 『嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す』が、アルファポリスの第9回BL小説大賞にて奨励賞を受賞(#^.^#) その後、幸運な事に書籍化の話が進み、2023年3月13日に無事に刊行される運びとなりました。49歳で商業BL作家としてデビューさせていただく機会を得ました。 ☆表紙絵、挿絵は全てAIイラスです

【完結】復讐の館〜私はあなたを待っています〜

リオール
ホラー
愛しています愛しています 私はあなたを愛しています 恨みます呪います憎みます 私は あなたを 許さない

処理中です...