20 / 42
20 聞かれた事には素直に答えよう 後
しおりを挟む
オレは谷口の話と同時に、怪物に襲撃された場にいた少女についても報告していた。
こちらは通常の情報交換だ。
特に焦りや含みがある情報ではない。
「そっちは直感的に襲撃者に関わりがありそうだと思っただけで、根拠はないな。ただ、偶然だとは思えない」
「……確かにな。一度であれば偶然で済ませられるが、二度目なのだろう?」
「ああ、その通りだ」
オレは人気のない場所を選んで行動していた。
そちらの方がオレを襲いやすいと思ったからだ。囮として、そちらの方が効率が良いと考えていた。
だから、あの場にいること自体が不自然だ。
「あの……」
不意に、立ち会っていたボディーガードが口を挟んだ。
今、この場にいるのは三人。オレとキザ長谷川と、ボディーガードのリーダーぽいやつ。一応はオーナー側の人間として事情を把握するために立ち会っていた。
ボディーガードが口を挟んだことで、オレとキザ長谷川はそちらに視線を向ける。
なぜか、ボディーガードは挙動不審になり、一気に顔色を青くさせた。何やら怯えているようにも見える。
オレ、怖くないよ?キザ長谷川は知らんけど。
「なんだ?発言があるなら早くいいたまえ」
「言いたまえ」って、いかにもキザな口調だよな。
オレも話を促すように、軽く笑みを浮かべる。すると、ボディーガードはさらに挙動不審になってしまった。
オレって、怖いの?フレンドリーだろ?
「そ、その。それは佐夜子だと思います」
「へ?」
挙動不審ながら口を開いたボディーガードの言葉に、オレは思わず変な声を出してしまった。
あの女の子と顔見知りなのかよ?
昔のホラー映画でそんな名前のキャラクターがいた気がする。白塗りの子供とセットで化けて出てくるやつ。
「佐夜子?」
「あ、いえ、その……確信はないです」
キザ長谷川が聞き返すと、ボディーガードは歯切れの悪い返事を返した。
「構わない。不確かでも、情報は多い方が良い。話してくれ」
なんか大物ぶってキザな口調でキザな奴が言う。こういう奴って理由もなく殴りたくなるよな。
「その……このあたりの怪談話なんですよ」
なんだ、マジでホラーじゃねぇか。
「真っ白な格好をした少女の幽霊で、危ない場所に行ったり夜遅くまで遊んでいる悪い子供のところに、仲間の怪物を引き連れて現れるそうなんです。私のカノ……その、知り合いの女がこちらの出身でして、子供の頃から言われてて、昔から目撃した話も結構あるらしいんです」
彼女がいるのかよ!そっちの情報の方が驚きだ。
格闘技と筋トレが生き甲斐みたいな見た目をしてるくせに。
わざわさ彼女がこっちの出身だって言うからには、コイツ自身は他の地方の人間なんだよな?こっちに来てオーナーのボディーガードになってから作ったのか?
現地妻か?現地妻だな?サイテーなヤツだな。色香に迷ってないでちゃんと仕事しろってんだ。
「そうか」
そうか、じゃねーよ。キザ男がキザに呟きやがって。
女作って現を抜かしてるバカに説教でもしてやれよ。アンタ、こいつらを仕切ってるんだろ?オレが説教するとお前が言うなって言われそうだから、キザがキザな口調で説教してやれ。
「そういう都市伝説なのだな。隠れ蓑に利用したのか。いや、その都市伝説を模して行動していると思った方が良いようだな」
確かに、その怪談話は現状と似過ぎている。
キザ長谷川の言葉通り、あえてその怪談を模して行動していると思った方が良さそうだな。
ということは、命を狙われているオーナーは悪い子ってことか。
あれ?いや、オーナーは女の子を目撃していない。目撃しているのはオレだ。
この場合、悪い子はオレか!?オレ、何もしてないだろ?
「しかし、怪談か。オーナーを狙ってる連中はどんなやつらなのだろうな?白石虎児くん?」
フルネーム呼びをいい加減やめろや。
「さあね。でも、その怪談を知ってるってことは地元の人間なんだろ。それが絞れただけ良かったじゃないか」
オーナーに恨みを持っている人間は、このホテルの地元の人間が圧倒的に多かった。
オレもその線に絞って調べてたし、ほぼ確定だろうという話にはなっていた。
だが、あくまでほぼで、確定ではない。
地元の人間以外で、何らかの理由でオーナーを恨んでいる人間だという可能性も捨てきれなかった。
敵がその怪談に準えて行動しているのなら、地元の人間だという裏付けの一つになる。
これは良い情報だろう。
「なるほど」
キザ長谷川はスタイリッシュに腕を動かして髭を撫でる。あの髭、堅そうに見えて意外と撫で心地は良さそうだ。毎日リンスでもしてるんだろうか?
「だが、人間がバケモノに変えられるという最大の謎は残っているな。あのバケモノどもの死体を分析してもらったが、何故あのような姿になっているか分からなかったそうだよ。DNAは間違いなく人間で、薬物や整形の痕跡も、何もバケモノになるような要素はなかったそうだ」
「へぇ……」
それは、不思議な話だな。
だが、世の中には不思議が溢れている。
経験上、ありうる話だ。
そんなことよりとっとと解放されたいんだが?谷口のことを伝えて情報をもらえる段取りができれば、こんなところから早く退散したい。
男とゆっくり話す趣味はない。
明日から客が入ることもあって、事前のチェックも兼ねて今夜から大浴場が使えるようになるらしいんだよな。
オープン直前の慰労の意味もあって、従業員に解放することになってるらしい。
ここの湖に臨む露天風呂が楽しみだったんだよ。パンフレットで読んでから気になってた。
従業員も一緒に入ることになるが、従業員の人数なんて多いと言っても限られてるだろう。
時間を上手くずらせば、貸切状態にできるんじゃないかと目論んでる。
あと、今夜も麻衣子さんが来るかもしれないから、さっさと飯食って風呂入って色んなところをキレイに洗って準備万端にしておかないといけない。
来てくれたら、最後の夜だ。気合を入れないと。
「君は、その謎について何か知らないかな?白石虎児くん?」
そう言うキザ長谷川の目は、探るようだ。
今までオレに質問を投げかけるタイミングを図っていたのだろう。確かにオーナーがいなくて、谷口の件である意味貸しを作った今はベストなタイミングだ。
「君なら何か知ってると思ったんだがな」
空気が変わる。
口調は軽いが、長谷川の雰囲気が変わった。キザ男から、獲物を狙うハンターに。
何か…………たぶん、オレ自身の情報を探ろうとしているのだろう。
ボディーガードが身をビクリと震わせる。顔色が一気に変わった。
長谷川から殺気が漏れ出してる。こいつ、オレを挑発してるな?怒らせて口を滑らすのを狙っているのか。
まあオレはそんな挑発を受ける気はない。
オレが挑発されて受けるのは女だけだ。それも大人の女な。
「オレが知ってるわけないだろ」
ニッコリと微笑んで言ってみたが、長谷川は髭の生えた頬をわずかに引き攣らせた。
「君のところにはバケモノがたくさんいるらしいからね。何か知っていると思ったんだがね」
「ふーん」
いや、まあ、騒動処理人の、特にトップの連中はバケモノ揃いだけどね。
一応、ぜんぶ人間で、今話してるバケモノとは別物でただの比喩だと思う。
たぶんね。あんまり自信無いけど。あいつらと付き合ってたら人間の定義が揺らぐからなー。
「それに、君については色々な噂があってね。白石虎児くん。白石組組長……お父様の命令で小学生の頃から人を殺してる血に飢えたバケモノだとか、殺した人間の血を啜ってるのを見たとか」
「噂って怖いねー」
誰だよそんな噂を流してるのは?たぶん、身内だな。
「撃ち殺したはずの君が、次の日には平気な顔で現れたという話もあるな」
「うちの防弾装備は独自開発で優秀だからな」
「車で移動したのに、先回りされたと言っていたな」
「渋滞につかまったか、道に迷ったんだろ。都会なら電車移動の方が早いぞ」
「暗視ゴーグルが必要な暗闇で襲撃しても、まるで見えているかの様に対処されたとも聞いた」
「気配ぐらいアンタでも分かるだろ?」
追及がウザい。
オレを探ると同時に、オレを怒らせようとしてるんだろう。
「君と戦っていたはずの人間が、大型の獣の爪で引き裂かれて殺されてたなんて話もあったな。日本では動物園でしか見られないような、大きな獣の爪痕がついていたそうだよ」
「ホント、噂って怖いな。噂話なんてもんは、話が広がれば広がるほど尾ひれが付いて大きくなるもんだろ」
「狼男に変身したのを見たと言ってるやつもいるよ」
あああ、うぜぇ!
叫びだしたいのを抑えて飲みこむ。マジでウゼェ!殴りたい。殴ってバックれて終わりにしたい。
大きな露天風呂入ってお姉さんとイチャイチャしてグッスリ寝たい。こんな陰湿男の相手なんかしてたくない!
「まったく心当たりがありませんねぇ。映画かなんかと間違えてるんじゃないですか?」
殴りたい衝動を抑え込もうとして、オレは何故か敬語になってしまった。
「とにかく、オレは怪物の秘密なんて全く分からない。他に話が無いなら、部屋に戻らせてもらうよ。こう見えても忙しいんでね」
強引だが、話を終わらせよう。
オレは席を立つ。
その瞬間にボディーガードがビクリと身体を震わせて腕で頭を庇おうとしたが、オレは関係ないよな?
あれ、オレ、殺気立ってる?
「それじゃ!」
オレは自分の顔が強張っていることに気付いて、慌てて笑顔を作ってから会議室を出た。
背後でキザ長谷川がニヤニヤと笑っている気配がした。
まず、風呂に入ろう。
今、頭の中でグルグルと回ってる嫌なことを洗い流してしまおう。
オレは足早に大浴場に向かった。
こちらは通常の情報交換だ。
特に焦りや含みがある情報ではない。
「そっちは直感的に襲撃者に関わりがありそうだと思っただけで、根拠はないな。ただ、偶然だとは思えない」
「……確かにな。一度であれば偶然で済ませられるが、二度目なのだろう?」
「ああ、その通りだ」
オレは人気のない場所を選んで行動していた。
そちらの方がオレを襲いやすいと思ったからだ。囮として、そちらの方が効率が良いと考えていた。
だから、あの場にいること自体が不自然だ。
「あの……」
不意に、立ち会っていたボディーガードが口を挟んだ。
今、この場にいるのは三人。オレとキザ長谷川と、ボディーガードのリーダーぽいやつ。一応はオーナー側の人間として事情を把握するために立ち会っていた。
ボディーガードが口を挟んだことで、オレとキザ長谷川はそちらに視線を向ける。
なぜか、ボディーガードは挙動不審になり、一気に顔色を青くさせた。何やら怯えているようにも見える。
オレ、怖くないよ?キザ長谷川は知らんけど。
「なんだ?発言があるなら早くいいたまえ」
「言いたまえ」って、いかにもキザな口調だよな。
オレも話を促すように、軽く笑みを浮かべる。すると、ボディーガードはさらに挙動不審になってしまった。
オレって、怖いの?フレンドリーだろ?
「そ、その。それは佐夜子だと思います」
「へ?」
挙動不審ながら口を開いたボディーガードの言葉に、オレは思わず変な声を出してしまった。
あの女の子と顔見知りなのかよ?
昔のホラー映画でそんな名前のキャラクターがいた気がする。白塗りの子供とセットで化けて出てくるやつ。
「佐夜子?」
「あ、いえ、その……確信はないです」
キザ長谷川が聞き返すと、ボディーガードは歯切れの悪い返事を返した。
「構わない。不確かでも、情報は多い方が良い。話してくれ」
なんか大物ぶってキザな口調でキザな奴が言う。こういう奴って理由もなく殴りたくなるよな。
「その……このあたりの怪談話なんですよ」
なんだ、マジでホラーじゃねぇか。
「真っ白な格好をした少女の幽霊で、危ない場所に行ったり夜遅くまで遊んでいる悪い子供のところに、仲間の怪物を引き連れて現れるそうなんです。私のカノ……その、知り合いの女がこちらの出身でして、子供の頃から言われてて、昔から目撃した話も結構あるらしいんです」
彼女がいるのかよ!そっちの情報の方が驚きだ。
格闘技と筋トレが生き甲斐みたいな見た目をしてるくせに。
わざわさ彼女がこっちの出身だって言うからには、コイツ自身は他の地方の人間なんだよな?こっちに来てオーナーのボディーガードになってから作ったのか?
現地妻か?現地妻だな?サイテーなヤツだな。色香に迷ってないでちゃんと仕事しろってんだ。
「そうか」
そうか、じゃねーよ。キザ男がキザに呟きやがって。
女作って現を抜かしてるバカに説教でもしてやれよ。アンタ、こいつらを仕切ってるんだろ?オレが説教するとお前が言うなって言われそうだから、キザがキザな口調で説教してやれ。
「そういう都市伝説なのだな。隠れ蓑に利用したのか。いや、その都市伝説を模して行動していると思った方が良いようだな」
確かに、その怪談話は現状と似過ぎている。
キザ長谷川の言葉通り、あえてその怪談を模して行動していると思った方が良さそうだな。
ということは、命を狙われているオーナーは悪い子ってことか。
あれ?いや、オーナーは女の子を目撃していない。目撃しているのはオレだ。
この場合、悪い子はオレか!?オレ、何もしてないだろ?
「しかし、怪談か。オーナーを狙ってる連中はどんなやつらなのだろうな?白石虎児くん?」
フルネーム呼びをいい加減やめろや。
「さあね。でも、その怪談を知ってるってことは地元の人間なんだろ。それが絞れただけ良かったじゃないか」
オーナーに恨みを持っている人間は、このホテルの地元の人間が圧倒的に多かった。
オレもその線に絞って調べてたし、ほぼ確定だろうという話にはなっていた。
だが、あくまでほぼで、確定ではない。
地元の人間以外で、何らかの理由でオーナーを恨んでいる人間だという可能性も捨てきれなかった。
敵がその怪談に準えて行動しているのなら、地元の人間だという裏付けの一つになる。
これは良い情報だろう。
「なるほど」
キザ長谷川はスタイリッシュに腕を動かして髭を撫でる。あの髭、堅そうに見えて意外と撫で心地は良さそうだ。毎日リンスでもしてるんだろうか?
「だが、人間がバケモノに変えられるという最大の謎は残っているな。あのバケモノどもの死体を分析してもらったが、何故あのような姿になっているか分からなかったそうだよ。DNAは間違いなく人間で、薬物や整形の痕跡も、何もバケモノになるような要素はなかったそうだ」
「へぇ……」
それは、不思議な話だな。
だが、世の中には不思議が溢れている。
経験上、ありうる話だ。
そんなことよりとっとと解放されたいんだが?谷口のことを伝えて情報をもらえる段取りができれば、こんなところから早く退散したい。
男とゆっくり話す趣味はない。
明日から客が入ることもあって、事前のチェックも兼ねて今夜から大浴場が使えるようになるらしいんだよな。
オープン直前の慰労の意味もあって、従業員に解放することになってるらしい。
ここの湖に臨む露天風呂が楽しみだったんだよ。パンフレットで読んでから気になってた。
従業員も一緒に入ることになるが、従業員の人数なんて多いと言っても限られてるだろう。
時間を上手くずらせば、貸切状態にできるんじゃないかと目論んでる。
あと、今夜も麻衣子さんが来るかもしれないから、さっさと飯食って風呂入って色んなところをキレイに洗って準備万端にしておかないといけない。
来てくれたら、最後の夜だ。気合を入れないと。
「君は、その謎について何か知らないかな?白石虎児くん?」
そう言うキザ長谷川の目は、探るようだ。
今までオレに質問を投げかけるタイミングを図っていたのだろう。確かにオーナーがいなくて、谷口の件である意味貸しを作った今はベストなタイミングだ。
「君なら何か知ってると思ったんだがな」
空気が変わる。
口調は軽いが、長谷川の雰囲気が変わった。キザ男から、獲物を狙うハンターに。
何か…………たぶん、オレ自身の情報を探ろうとしているのだろう。
ボディーガードが身をビクリと震わせる。顔色が一気に変わった。
長谷川から殺気が漏れ出してる。こいつ、オレを挑発してるな?怒らせて口を滑らすのを狙っているのか。
まあオレはそんな挑発を受ける気はない。
オレが挑発されて受けるのは女だけだ。それも大人の女な。
「オレが知ってるわけないだろ」
ニッコリと微笑んで言ってみたが、長谷川は髭の生えた頬をわずかに引き攣らせた。
「君のところにはバケモノがたくさんいるらしいからね。何か知っていると思ったんだがね」
「ふーん」
いや、まあ、騒動処理人の、特にトップの連中はバケモノ揃いだけどね。
一応、ぜんぶ人間で、今話してるバケモノとは別物でただの比喩だと思う。
たぶんね。あんまり自信無いけど。あいつらと付き合ってたら人間の定義が揺らぐからなー。
「それに、君については色々な噂があってね。白石虎児くん。白石組組長……お父様の命令で小学生の頃から人を殺してる血に飢えたバケモノだとか、殺した人間の血を啜ってるのを見たとか」
「噂って怖いねー」
誰だよそんな噂を流してるのは?たぶん、身内だな。
「撃ち殺したはずの君が、次の日には平気な顔で現れたという話もあるな」
「うちの防弾装備は独自開発で優秀だからな」
「車で移動したのに、先回りされたと言っていたな」
「渋滞につかまったか、道に迷ったんだろ。都会なら電車移動の方が早いぞ」
「暗視ゴーグルが必要な暗闇で襲撃しても、まるで見えているかの様に対処されたとも聞いた」
「気配ぐらいアンタでも分かるだろ?」
追及がウザい。
オレを探ると同時に、オレを怒らせようとしてるんだろう。
「君と戦っていたはずの人間が、大型の獣の爪で引き裂かれて殺されてたなんて話もあったな。日本では動物園でしか見られないような、大きな獣の爪痕がついていたそうだよ」
「ホント、噂って怖いな。噂話なんてもんは、話が広がれば広がるほど尾ひれが付いて大きくなるもんだろ」
「狼男に変身したのを見たと言ってるやつもいるよ」
あああ、うぜぇ!
叫びだしたいのを抑えて飲みこむ。マジでウゼェ!殴りたい。殴ってバックれて終わりにしたい。
大きな露天風呂入ってお姉さんとイチャイチャしてグッスリ寝たい。こんな陰湿男の相手なんかしてたくない!
「まったく心当たりがありませんねぇ。映画かなんかと間違えてるんじゃないですか?」
殴りたい衝動を抑え込もうとして、オレは何故か敬語になってしまった。
「とにかく、オレは怪物の秘密なんて全く分からない。他に話が無いなら、部屋に戻らせてもらうよ。こう見えても忙しいんでね」
強引だが、話を終わらせよう。
オレは席を立つ。
その瞬間にボディーガードがビクリと身体を震わせて腕で頭を庇おうとしたが、オレは関係ないよな?
あれ、オレ、殺気立ってる?
「それじゃ!」
オレは自分の顔が強張っていることに気付いて、慌てて笑顔を作ってから会議室を出た。
背後でキザ長谷川がニヤニヤと笑っている気配がした。
まず、風呂に入ろう。
今、頭の中でグルグルと回ってる嫌なことを洗い流してしまおう。
オレは足早に大浴場に向かった。
1
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
アポリアの林
千年砂漠
ホラー
中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。
しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。
晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。
羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。
【完】意味が分かったとしても意味のない話 外伝〜噂零課の忘却ログ〜
韋虹姫 響華
ホラー
噂話や都市伝説、神話体系が人知れず怪異となり人々を脅かしている。それに対処する者達がいた。
エイプリルフールの日、終黎 創愛(おわり はじめ)はその現場を目撃する。怪異に果敢に立ち向かっていく2人の人影に見覚えを感じながら目の当たりにする非日常的光景────。
そして、噂の真相を目の当たりにしてしまった創愛は怪異と立ち向かうべく人並み外れた道へと、意志とは関係なく歩むことに────。
しかし、再会した幼馴染のこれまでの人生が怪異と隣り合わせである事を知った創愛は、自ら噂零課に配属の道を進んだ。
同時期に人と会話を交わすことの出来る新種の怪異【毒酒の女帝】が確認され、怪異の発生理由を突き止める調査が始まった。
終黎 創愛と【毒酒の女帝】の両視点から明かされる怪異と噂を鎮める組織の誕生までの忘れ去られたログ《もう一つの意味ない》がここに────。
※表紙のイラストはAIイラストを使用しております
※今後イラストレーターさんに依頼して変更する可能性がございます
『霧原村』~少女達の遊戯が幽から土地に纏わる怪異を呼び起こす~転校生渉の怪異事変~
潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。
渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。
《主人公は和也(語り部)となります。ライトノベルズ風のホラー物語です》

闇に蠢く
野村勇輔(ノムラユーリ)
ホラー
関わると行方不明になると噂される喪服の女(少女)に関わってしまった相原奈央と相原響紀。
響紀は女の手にかかり、命を落とす。
さらに奈央も狙われて……
イラスト:ミコトカエ(@takoharamint)様
※無断転載等不可
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる