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20 聞かれた事には素直に答えよう 後
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オレは谷口の話と同時に、怪物に襲撃された場にいた少女についても報告していた。
こちらは通常の情報交換だ。
特に焦りや含みがある情報ではない。
「そっちは直感的に襲撃者に関わりがありそうだと思っただけで、根拠はないな。ただ、偶然だとは思えない」
「……確かにな。一度であれば偶然で済ませられるが、二度目なのだろう?」
「ああ、その通りだ」
オレは人気のない場所を選んで行動していた。
そちらの方がオレを襲いやすいと思ったからだ。囮として、そちらの方が効率が良いと考えていた。
だから、あの場にいること自体が不自然だ。
「あの……」
不意に、立ち会っていたボディーガードが口を挟んだ。
今、この場にいるのは三人。オレとキザ長谷川と、ボディーガードのリーダーぽいやつ。一応はオーナー側の人間として事情を把握するために立ち会っていた。
ボディーガードが口を挟んだことで、オレとキザ長谷川はそちらに視線を向ける。
なぜか、ボディーガードは挙動不審になり、一気に顔色を青くさせた。何やら怯えているようにも見える。
オレ、怖くないよ?キザ長谷川は知らんけど。
「なんだ?発言があるなら早くいいたまえ」
「言いたまえ」って、いかにもキザな口調だよな。
オレも話を促すように、軽く笑みを浮かべる。すると、ボディーガードはさらに挙動不審になってしまった。
オレって、怖いの?フレンドリーだろ?
「そ、その。それは佐夜子だと思います」
「へ?」
挙動不審ながら口を開いたボディーガードの言葉に、オレは思わず変な声を出してしまった。
あの女の子と顔見知りなのかよ?
昔のホラー映画でそんな名前のキャラクターがいた気がする。白塗りの子供とセットで化けて出てくるやつ。
「佐夜子?」
「あ、いえ、その……確信はないです」
キザ長谷川が聞き返すと、ボディーガードは歯切れの悪い返事を返した。
「構わない。不確かでも、情報は多い方が良い。話してくれ」
なんか大物ぶってキザな口調でキザな奴が言う。こういう奴って理由もなく殴りたくなるよな。
「その……このあたりの怪談話なんですよ」
なんだ、マジでホラーじゃねぇか。
「真っ白な格好をした少女の幽霊で、危ない場所に行ったり夜遅くまで遊んでいる悪い子供のところに、仲間の怪物を引き連れて現れるそうなんです。私のカノ……その、知り合いの女がこちらの出身でして、子供の頃から言われてて、昔から目撃した話も結構あるらしいんです」
彼女がいるのかよ!そっちの情報の方が驚きだ。
格闘技と筋トレが生き甲斐みたいな見た目をしてるくせに。
わざわさ彼女がこっちの出身だって言うからには、コイツ自身は他の地方の人間なんだよな?こっちに来てオーナーのボディーガードになってから作ったのか?
現地妻か?現地妻だな?サイテーなヤツだな。色香に迷ってないでちゃんと仕事しろってんだ。
「そうか」
そうか、じゃねーよ。キザ男がキザに呟きやがって。
女作って現を抜かしてるバカに説教でもしてやれよ。アンタ、こいつらを仕切ってるんだろ?オレが説教するとお前が言うなって言われそうだから、キザがキザな口調で説教してやれ。
「そういう都市伝説なのだな。隠れ蓑に利用したのか。いや、その都市伝説を模して行動していると思った方が良いようだな」
確かに、その怪談話は現状と似過ぎている。
キザ長谷川の言葉通り、あえてその怪談を模して行動していると思った方が良さそうだな。
ということは、命を狙われているオーナーは悪い子ってことか。
あれ?いや、オーナーは女の子を目撃していない。目撃しているのはオレだ。
この場合、悪い子はオレか!?オレ、何もしてないだろ?
「しかし、怪談か。オーナーを狙ってる連中はどんなやつらなのだろうな?白石虎児くん?」
フルネーム呼びをいい加減やめろや。
「さあね。でも、その怪談を知ってるってことは地元の人間なんだろ。それが絞れただけ良かったじゃないか」
オーナーに恨みを持っている人間は、このホテルの地元の人間が圧倒的に多かった。
オレもその線に絞って調べてたし、ほぼ確定だろうという話にはなっていた。
だが、あくまでほぼで、確定ではない。
地元の人間以外で、何らかの理由でオーナーを恨んでいる人間だという可能性も捨てきれなかった。
敵がその怪談に準えて行動しているのなら、地元の人間だという裏付けの一つになる。
これは良い情報だろう。
「なるほど」
キザ長谷川はスタイリッシュに腕を動かして髭を撫でる。あの髭、堅そうに見えて意外と撫で心地は良さそうだ。毎日リンスでもしてるんだろうか?
「だが、人間がバケモノに変えられるという最大の謎は残っているな。あのバケモノどもの死体を分析してもらったが、何故あのような姿になっているか分からなかったそうだよ。DNAは間違いなく人間で、薬物や整形の痕跡も、何もバケモノになるような要素はなかったそうだ」
「へぇ……」
それは、不思議な話だな。
だが、世の中には不思議が溢れている。
経験上、ありうる話だ。
そんなことよりとっとと解放されたいんだが?谷口のことを伝えて情報をもらえる段取りができれば、こんなところから早く退散したい。
男とゆっくり話す趣味はない。
明日から客が入ることもあって、事前のチェックも兼ねて今夜から大浴場が使えるようになるらしいんだよな。
オープン直前の慰労の意味もあって、従業員に解放することになってるらしい。
ここの湖に臨む露天風呂が楽しみだったんだよ。パンフレットで読んでから気になってた。
従業員も一緒に入ることになるが、従業員の人数なんて多いと言っても限られてるだろう。
時間を上手くずらせば、貸切状態にできるんじゃないかと目論んでる。
あと、今夜も麻衣子さんが来るかもしれないから、さっさと飯食って風呂入って色んなところをキレイに洗って準備万端にしておかないといけない。
来てくれたら、最後の夜だ。気合を入れないと。
「君は、その謎について何か知らないかな?白石虎児くん?」
そう言うキザ長谷川の目は、探るようだ。
今までオレに質問を投げかけるタイミングを図っていたのだろう。確かにオーナーがいなくて、谷口の件である意味貸しを作った今はベストなタイミングだ。
「君なら何か知ってると思ったんだがな」
空気が変わる。
口調は軽いが、長谷川の雰囲気が変わった。キザ男から、獲物を狙うハンターに。
何か…………たぶん、オレ自身の情報を探ろうとしているのだろう。
ボディーガードが身をビクリと震わせる。顔色が一気に変わった。
長谷川から殺気が漏れ出してる。こいつ、オレを挑発してるな?怒らせて口を滑らすのを狙っているのか。
まあオレはそんな挑発を受ける気はない。
オレが挑発されて受けるのは女だけだ。それも大人の女な。
「オレが知ってるわけないだろ」
ニッコリと微笑んで言ってみたが、長谷川は髭の生えた頬をわずかに引き攣らせた。
「君のところにはバケモノがたくさんいるらしいからね。何か知っていると思ったんだがね」
「ふーん」
いや、まあ、騒動処理人の、特にトップの連中はバケモノ揃いだけどね。
一応、ぜんぶ人間で、今話してるバケモノとは別物でただの比喩だと思う。
たぶんね。あんまり自信無いけど。あいつらと付き合ってたら人間の定義が揺らぐからなー。
「それに、君については色々な噂があってね。白石虎児くん。白石組組長……お父様の命令で小学生の頃から人を殺してる血に飢えたバケモノだとか、殺した人間の血を啜ってるのを見たとか」
「噂って怖いねー」
誰だよそんな噂を流してるのは?たぶん、身内だな。
「撃ち殺したはずの君が、次の日には平気な顔で現れたという話もあるな」
「うちの防弾装備は独自開発で優秀だからな」
「車で移動したのに、先回りされたと言っていたな」
「渋滞につかまったか、道に迷ったんだろ。都会なら電車移動の方が早いぞ」
「暗視ゴーグルが必要な暗闇で襲撃しても、まるで見えているかの様に対処されたとも聞いた」
「気配ぐらいアンタでも分かるだろ?」
追及がウザい。
オレを探ると同時に、オレを怒らせようとしてるんだろう。
「君と戦っていたはずの人間が、大型の獣の爪で引き裂かれて殺されてたなんて話もあったな。日本では動物園でしか見られないような、大きな獣の爪痕がついていたそうだよ」
「ホント、噂って怖いな。噂話なんてもんは、話が広がれば広がるほど尾ひれが付いて大きくなるもんだろ」
「狼男に変身したのを見たと言ってるやつもいるよ」
あああ、うぜぇ!
叫びだしたいのを抑えて飲みこむ。マジでウゼェ!殴りたい。殴ってバックれて終わりにしたい。
大きな露天風呂入ってお姉さんとイチャイチャしてグッスリ寝たい。こんな陰湿男の相手なんかしてたくない!
「まったく心当たりがありませんねぇ。映画かなんかと間違えてるんじゃないですか?」
殴りたい衝動を抑え込もうとして、オレは何故か敬語になってしまった。
「とにかく、オレは怪物の秘密なんて全く分からない。他に話が無いなら、部屋に戻らせてもらうよ。こう見えても忙しいんでね」
強引だが、話を終わらせよう。
オレは席を立つ。
その瞬間にボディーガードがビクリと身体を震わせて腕で頭を庇おうとしたが、オレは関係ないよな?
あれ、オレ、殺気立ってる?
「それじゃ!」
オレは自分の顔が強張っていることに気付いて、慌てて笑顔を作ってから会議室を出た。
背後でキザ長谷川がニヤニヤと笑っている気配がした。
まず、風呂に入ろう。
今、頭の中でグルグルと回ってる嫌なことを洗い流してしまおう。
オレは足早に大浴場に向かった。
こちらは通常の情報交換だ。
特に焦りや含みがある情報ではない。
「そっちは直感的に襲撃者に関わりがありそうだと思っただけで、根拠はないな。ただ、偶然だとは思えない」
「……確かにな。一度であれば偶然で済ませられるが、二度目なのだろう?」
「ああ、その通りだ」
オレは人気のない場所を選んで行動していた。
そちらの方がオレを襲いやすいと思ったからだ。囮として、そちらの方が効率が良いと考えていた。
だから、あの場にいること自体が不自然だ。
「あの……」
不意に、立ち会っていたボディーガードが口を挟んだ。
今、この場にいるのは三人。オレとキザ長谷川と、ボディーガードのリーダーぽいやつ。一応はオーナー側の人間として事情を把握するために立ち会っていた。
ボディーガードが口を挟んだことで、オレとキザ長谷川はそちらに視線を向ける。
なぜか、ボディーガードは挙動不審になり、一気に顔色を青くさせた。何やら怯えているようにも見える。
オレ、怖くないよ?キザ長谷川は知らんけど。
「なんだ?発言があるなら早くいいたまえ」
「言いたまえ」って、いかにもキザな口調だよな。
オレも話を促すように、軽く笑みを浮かべる。すると、ボディーガードはさらに挙動不審になってしまった。
オレって、怖いの?フレンドリーだろ?
「そ、その。それは佐夜子だと思います」
「へ?」
挙動不審ながら口を開いたボディーガードの言葉に、オレは思わず変な声を出してしまった。
あの女の子と顔見知りなのかよ?
昔のホラー映画でそんな名前のキャラクターがいた気がする。白塗りの子供とセットで化けて出てくるやつ。
「佐夜子?」
「あ、いえ、その……確信はないです」
キザ長谷川が聞き返すと、ボディーガードは歯切れの悪い返事を返した。
「構わない。不確かでも、情報は多い方が良い。話してくれ」
なんか大物ぶってキザな口調でキザな奴が言う。こういう奴って理由もなく殴りたくなるよな。
「その……このあたりの怪談話なんですよ」
なんだ、マジでホラーじゃねぇか。
「真っ白な格好をした少女の幽霊で、危ない場所に行ったり夜遅くまで遊んでいる悪い子供のところに、仲間の怪物を引き連れて現れるそうなんです。私のカノ……その、知り合いの女がこちらの出身でして、子供の頃から言われてて、昔から目撃した話も結構あるらしいんです」
彼女がいるのかよ!そっちの情報の方が驚きだ。
格闘技と筋トレが生き甲斐みたいな見た目をしてるくせに。
わざわさ彼女がこっちの出身だって言うからには、コイツ自身は他の地方の人間なんだよな?こっちに来てオーナーのボディーガードになってから作ったのか?
現地妻か?現地妻だな?サイテーなヤツだな。色香に迷ってないでちゃんと仕事しろってんだ。
「そうか」
そうか、じゃねーよ。キザ男がキザに呟きやがって。
女作って現を抜かしてるバカに説教でもしてやれよ。アンタ、こいつらを仕切ってるんだろ?オレが説教するとお前が言うなって言われそうだから、キザがキザな口調で説教してやれ。
「そういう都市伝説なのだな。隠れ蓑に利用したのか。いや、その都市伝説を模して行動していると思った方が良いようだな」
確かに、その怪談話は現状と似過ぎている。
キザ長谷川の言葉通り、あえてその怪談を模して行動していると思った方が良さそうだな。
ということは、命を狙われているオーナーは悪い子ってことか。
あれ?いや、オーナーは女の子を目撃していない。目撃しているのはオレだ。
この場合、悪い子はオレか!?オレ、何もしてないだろ?
「しかし、怪談か。オーナーを狙ってる連中はどんなやつらなのだろうな?白石虎児くん?」
フルネーム呼びをいい加減やめろや。
「さあね。でも、その怪談を知ってるってことは地元の人間なんだろ。それが絞れただけ良かったじゃないか」
オーナーに恨みを持っている人間は、このホテルの地元の人間が圧倒的に多かった。
オレもその線に絞って調べてたし、ほぼ確定だろうという話にはなっていた。
だが、あくまでほぼで、確定ではない。
地元の人間以外で、何らかの理由でオーナーを恨んでいる人間だという可能性も捨てきれなかった。
敵がその怪談に準えて行動しているのなら、地元の人間だという裏付けの一つになる。
これは良い情報だろう。
「なるほど」
キザ長谷川はスタイリッシュに腕を動かして髭を撫でる。あの髭、堅そうに見えて意外と撫で心地は良さそうだ。毎日リンスでもしてるんだろうか?
「だが、人間がバケモノに変えられるという最大の謎は残っているな。あのバケモノどもの死体を分析してもらったが、何故あのような姿になっているか分からなかったそうだよ。DNAは間違いなく人間で、薬物や整形の痕跡も、何もバケモノになるような要素はなかったそうだ」
「へぇ……」
それは、不思議な話だな。
だが、世の中には不思議が溢れている。
経験上、ありうる話だ。
そんなことよりとっとと解放されたいんだが?谷口のことを伝えて情報をもらえる段取りができれば、こんなところから早く退散したい。
男とゆっくり話す趣味はない。
明日から客が入ることもあって、事前のチェックも兼ねて今夜から大浴場が使えるようになるらしいんだよな。
オープン直前の慰労の意味もあって、従業員に解放することになってるらしい。
ここの湖に臨む露天風呂が楽しみだったんだよ。パンフレットで読んでから気になってた。
従業員も一緒に入ることになるが、従業員の人数なんて多いと言っても限られてるだろう。
時間を上手くずらせば、貸切状態にできるんじゃないかと目論んでる。
あと、今夜も麻衣子さんが来るかもしれないから、さっさと飯食って風呂入って色んなところをキレイに洗って準備万端にしておかないといけない。
来てくれたら、最後の夜だ。気合を入れないと。
「君は、その謎について何か知らないかな?白石虎児くん?」
そう言うキザ長谷川の目は、探るようだ。
今までオレに質問を投げかけるタイミングを図っていたのだろう。確かにオーナーがいなくて、谷口の件である意味貸しを作った今はベストなタイミングだ。
「君なら何か知ってると思ったんだがな」
空気が変わる。
口調は軽いが、長谷川の雰囲気が変わった。キザ男から、獲物を狙うハンターに。
何か…………たぶん、オレ自身の情報を探ろうとしているのだろう。
ボディーガードが身をビクリと震わせる。顔色が一気に変わった。
長谷川から殺気が漏れ出してる。こいつ、オレを挑発してるな?怒らせて口を滑らすのを狙っているのか。
まあオレはそんな挑発を受ける気はない。
オレが挑発されて受けるのは女だけだ。それも大人の女な。
「オレが知ってるわけないだろ」
ニッコリと微笑んで言ってみたが、長谷川は髭の生えた頬をわずかに引き攣らせた。
「君のところにはバケモノがたくさんいるらしいからね。何か知っていると思ったんだがね」
「ふーん」
いや、まあ、騒動処理人の、特にトップの連中はバケモノ揃いだけどね。
一応、ぜんぶ人間で、今話してるバケモノとは別物でただの比喩だと思う。
たぶんね。あんまり自信無いけど。あいつらと付き合ってたら人間の定義が揺らぐからなー。
「それに、君については色々な噂があってね。白石虎児くん。白石組組長……お父様の命令で小学生の頃から人を殺してる血に飢えたバケモノだとか、殺した人間の血を啜ってるのを見たとか」
「噂って怖いねー」
誰だよそんな噂を流してるのは?たぶん、身内だな。
「撃ち殺したはずの君が、次の日には平気な顔で現れたという話もあるな」
「うちの防弾装備は独自開発で優秀だからな」
「車で移動したのに、先回りされたと言っていたな」
「渋滞につかまったか、道に迷ったんだろ。都会なら電車移動の方が早いぞ」
「暗視ゴーグルが必要な暗闇で襲撃しても、まるで見えているかの様に対処されたとも聞いた」
「気配ぐらいアンタでも分かるだろ?」
追及がウザい。
オレを探ると同時に、オレを怒らせようとしてるんだろう。
「君と戦っていたはずの人間が、大型の獣の爪で引き裂かれて殺されてたなんて話もあったな。日本では動物園でしか見られないような、大きな獣の爪痕がついていたそうだよ」
「ホント、噂って怖いな。噂話なんてもんは、話が広がれば広がるほど尾ひれが付いて大きくなるもんだろ」
「狼男に変身したのを見たと言ってるやつもいるよ」
あああ、うぜぇ!
叫びだしたいのを抑えて飲みこむ。マジでウゼェ!殴りたい。殴ってバックれて終わりにしたい。
大きな露天風呂入ってお姉さんとイチャイチャしてグッスリ寝たい。こんな陰湿男の相手なんかしてたくない!
「まったく心当たりがありませんねぇ。映画かなんかと間違えてるんじゃないですか?」
殴りたい衝動を抑え込もうとして、オレは何故か敬語になってしまった。
「とにかく、オレは怪物の秘密なんて全く分からない。他に話が無いなら、部屋に戻らせてもらうよ。こう見えても忙しいんでね」
強引だが、話を終わらせよう。
オレは席を立つ。
その瞬間にボディーガードがビクリと身体を震わせて腕で頭を庇おうとしたが、オレは関係ないよな?
あれ、オレ、殺気立ってる?
「それじゃ!」
オレは自分の顔が強張っていることに気付いて、慌てて笑顔を作ってから会議室を出た。
背後でキザ長谷川がニヤニヤと笑っている気配がした。
まず、風呂に入ろう。
今、頭の中でグルグルと回ってる嫌なことを洗い流してしまおう。
オレは足早に大浴場に向かった。
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